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Ambiente 2015

Ambiente 2015

国際的な商談の場 アンビエンテ2015で注目を集めた日本のデザイン

2015/03/18

レポーター:高橋 美礼

世界最大規模の国際消費材見本市「Ambiente(アンビエンテ)」が今年もドイツ・フランクフルトで開催された。出展者数は94カ国・地域から4,811社と昨年を上回り、2月13日から17日までの5日間の会期に約135,000人の来場者を記録。特にドイツ国外からの来場数が全体の53%を占め、かつてないほどにインターナショナルな商談の場となったことを示している。(上写真:今年のパートナーカントリー、アメリカの特別展示「Seashore Galore」はスコット・ヘンダーソンのデザイン)

巨大な会場は12棟27ホールで構成され、消費材の種類によって「Living」、「Giving」、「Dinning」の3カテゴリーに分かれている。「Living」は主にインテリア関連、家具、家庭用品。「Giving」はギフトアイテム、ステーショナリー、ファッション雑貨。「Dining」はキッチン用品、テーブルウェア。特に「Dining」には15ホール分の会場が割り当てられており、世界有数のキッチンツールメーカーやテーブルウェアメーカーがアンビエンテでブランド力をアピールしようとする姿勢がよくわかる。一方、「Living」の中でも「Loft」と呼ばれるホール11.0はデザイン感度の高い商材が集まる、アンビエンテで注目すべき場だ。

日本を感じるデザインが人気

アッシュコンセプト
アッシュコンセプト
solutions 2015に選出された「UnBRELLA」デザイン:梶本博司
solutions 2015に選出された「UnBRELLA」デザイン:梶本博司

アッシュコンセプトも継続してロフトに出展してきたメーカーのひとつ。真っ白な空間に浮かび上がるさまざまなデザインに多くの来場者が足を止めた。シリコーン製のグラス「shupua」が初日に高額の受注を決めるなど、今年も良い結果を残せたようだ。生活を楽しくするアイデアと洗練されたデザイン、そして少しの遊び心が世界に広まりつつある。

そしてアッシュコンセプトの+dブランドから発売している傘「UnBRELLA」が「solutions 2015」に選出されたことも特筆すべき話題だ。これはアンビエンテを主催するメッセフランクフルト社が全出展者の中から、キッチンと家庭用品に優れた解決策を与えたデザインを顕彰する制度で、今年は22製品が選ばれホール4.0のホワイエで展示された。「真のイノベーションを伴った超現実的なもの」という賛辞は、「UnBRELLA」のデザインを的確に見抜いている。

ホール11.0のJAPAN STYLEには15社が参加
ホール11.0のJAPAN STYLEには15社が参加
ミュンヘンのデザインショップ、SHUSHUは日本のデザインを世界へ紹介
ミュンヘンのデザインショップ、SHUSHUは日本のデザインを世界へ紹介

7年連続の参加となった「JAPAN STYLE」。TIME&STYLEとYOnoBIの2社がディレクターとなり、今の日本を感じさせるデザインを集結する場所に今年は15社が参加した。小ぶりながらもオリジナル色の強いプロダクトを紹介するブースの集合という認識が、アンビエンテでも定着してきているようだ。一角では連日、各種の実演が行なわれた。大橋量器の枡「HAKOMASU」など緻密な手技に見とれる来場者で常に賑わっていた。

ミュンヘンで日本デザインを紹介するショップ「SHUSHU」は、オリジナル商品を増やした印象だ。日本各地の伝統技術を活かした新作を、SATOMI SUZUKI TOKYOが主体的に欧州での展開を広げていく。デザイナー澄川伸一の新作で、岐阜の風呂メーカーがヒノキ材で作り上げたワイン・シャンパンクーラーや、新潟の鉋(かんな)専門店がSHUSHUと開発した鉛筆削りなど、素材と製法への審美眼を持つエンドユーザーの心をつかむプロダクトが人気だ。

高いデザイン性と精緻な構造で信頼を得ているタカタレムノスの時計
高いデザイン性と精緻な構造で信頼を得ているタカタレムノスの時計
伝統的工芸品産業振興協会は昨年に続きガレリアの中央に2度目の出展
伝統的工芸品産業振興協会は昨年に続きガレリアの中央に2度目の出展

高岡のタカタレムノスは欧州のディストリビューターと共にブースを構えるスタイルで、継続した出展を果たしている。高いデザイン性に加え、さまざまなデザイナーの個性を支える高い技術が人気の秘訣だ。タンポポの綿毛の本数で時刻を伝える「dandelion」、子どもが時計の読み方を覚えられる「fun pun clock」、美しいギャラモン書体の時計としてロングセラーのAYクロックを電波時計に甦らせた「AY clock RC」など、全てにストーリーが隠されている。昨年同様、目標を上回る商談を進められたようだ。

昨年に続き2度目の出展となったDENSAN(伝統的工芸品産業振興協会)は、ガレリアで再び印象的なインスタレーションを行なった。21社のメーカーに3社の参考出品を加え、お茶・食事・酒宴という3つのスタイルを表現。高品質なテーブルウェアを実際にコーディネートすることで、伝統産業が今なお日本の生活に根強く受け継がれていることも伝えられたのではないだろうか。また、すぐ隣のエリアでは数社が共同でブースを構え、商談に結びつけていたのは昨年からの進歩だろう。記念的展示で終わらせない工夫が、日本文化の発信力を強めている。

イギリスのBliss Home社がアーティスト高橋理子のブランドを創設
イギリスのBliss Home社がアーティスト高橋理子のブランドを創設
TAKAHASHI HIROKOブランドとしてまずはルームフレグランスとタオルを発売予定
TAKAHASHI HIROKOブランドとしてまずはルームフレグランスとタオルを発売予定

今年のアンビエンテで驚かされたニュースを一つ紹介したい。イギリスのメーカーが、アーティスト高橋理子の新ブランドを立ち上げたことだ。これまでもデザイナーのオリジナルブランドを手がけてきたBliss Home社が、高橋理子が直線と円だけで構成する世界観に着目。ライセンスビジネスではなく、独自の商品を展開していきたいという。第一弾はルームフレグランスからスタートし、キャンドルやアロマなど商品のすべてに「TAKAHASHI HIROKO」とブランド名が入る。会場で披露されていた商品パッケージやタオル類などはまだ試作中のもので、さらにブラッシュアップを重ねてから発売する。今のところ日本での発売予定はない。昨年はパリのセレクトショップが個展を開催するなど、直線と円の組み合わせで描くモノトーンの表現はヨーロッパでも好印象を残しているだけに、期待は大きい。新星ブランドとして注目していきたい。

ホール5.1と6.1を結ぶホワイエで行なわれたイベント「Plagiarius」、いわゆる「パクリ」商品を集めてオリジナルと比較して見せた
ホール5.1と6.1を結ぶホワイエで行なわれたイベント「Plagiarius」、いわゆる「パクリ」商品を集めてオリジナルと比較して見せた
「Plagiarius」のひとつジャン・ポール・ゴルティエの香水、左がオリジナルで右が偽物、悪質な偽物は世界中で後を絶たない
「Plagiarius」のひとつジャン・ポール・ゴルティエの香水、左がオリジナルで右が偽物、悪質な偽物は世界中で後を絶たない

インテリアトレンド「Trends」やデザインアワード「Design Plus」といったアンビエンテならではの企画は今年も充実していた。(詳細は次ページのスナップ写真へ)

ホール5.1と6.1のホワイエでは「Plagiarius」と題された、一風変わった企画が目を引いた。plagiarizeからの造語と考えられるplagiariusは「パクリ」と訳すのが良さそうだ。ここでは、明らかにそれとわかる偽物をコレクションし、オリジナルと比較して展示。ミーレの掃除機からライゼンタールのキャリーバッグまで、あらゆる偽物を集め、生産販売者の情報も明記し、最高(最悪)製品を選定してしまおうという企画だった。

オリジナルと比較すれば明らかに偽物だとわかるものも、もしかしたら単独で手にした場合には気づかないかもしれない。オリジナルのメーカーは被害を被り、エンドユーザーは騙されたまま。悪質な偽物が生産され続けているのはあまりに酷いし、許されないことだ。法律で取り締まられるのを待つのではなく、アンビエンテという消費材見本市会場で積極的に現実を伝える姿勢が素晴らしいと感じた。(しかも賞を授与してしまうユーモアにはセンスがある!)

今年の来場者数は実のところ、昨年を1万人ほど下回る結果だった。特にヨーロッパの経済だけでなく、不安定な政治情勢にも理由があるだろう。一方で、中東とアジアからの来場者は増加傾向にあるという。来年のパートナーカントリーに決まったイタリアは、ドイツ国外からの来場者数のトップ。日本とも親和性の高い文化をもつ国がどんな力を発揮するか楽しみにしたい。

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Profile

高橋美礼/Mirei Takahashi

高橋美礼/デザイナー、デザインジャーナリスト

多領域のデザインに携わりながら、国内外のデザインを考察している。編集、執筆、デザインコンサルティングをおこなう。主なデザインに「TsunTsun」(宮城壮太郎氏と共同デザイン/アッシュコンセプト「+d」)、「物語がはじまる」(世田谷美術館)、「トーキング・トーキンビ」(東京国立近代美術館)など。共著に「ニッポン・プロダクト」(美術出版社)、「2000万個売れる雑貨のつくり方」(日経BP社)など。多摩美術大学非常勤講師。落語好き。

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