インタビュー 編集部が注目するデザイナー・クリエイターのアイデアと実践に迫る

深澤直人氏インタビュー「INFOBAR A03(インフォバー エー ゼロ サン)とスマートフォンのデザイン」

深澤直人氏インタビュー「INFOBAR A03(インフォバー エー ゼロ サン)とスマートフォンのデザイン」

初代から12年が経ち登場した6代目、どのような考えでデザインされたのか

2015/02/25

JDN編集部

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2003年にau design projectの第一弾端末として登場し、デザインケータイとして世の話題をさらったINFOBAR(インフォバー)。2001年の展示会に参考出品された「info.bar」をベースにして製品化されたもので、デザインはご存知の通り深澤直人氏。入手困難になるほどの売れ行きと共に、GマークやiFの受賞、MoMAに収蔵とプロダクトデザインとして世界的な評価も得た。

その最新型が2015年2月20日に発売された。報道資料には「機能での差別化がなくなってきたこの時代に、もう一度プロダクトデザイン、モノとしての魅力に回帰」とある。

初代から12年が経ち登場した6代目は、どのような考えでデザインされたのか。スマートフォンのデザインの将来について、どのように考えているのか。プロダクトデザイナー深澤直人氏に尋ねた。

深澤直人氏
深澤直人 ふかさわなおと
プロダクトデザイナー
デザインの領域は、腕時計や携帯電話などの小型情報機器からコンピュータとその関連機器、家電、生活雑貨用品、家具、インテリアなど幅広い。イタリア、ドイツ、フランス、スイス、北欧などのヨーロッパやアジアを代表するブランドのデザインを手掛ける。2007年 ロイヤルデザイナー・フォー・インダストリー(英国王室芸術協会)の称号を授与されるなど受賞歴多数。
2010~2014年グッドデザイン審査委員長。

― まず、今回のINFOBARについて、どのように考えられて、この外観、デザインに至ったのかお聞かせください。

深澤:12年前のINFOBAR登場の背景には、携帯電話がいずれスマートフォン ── 当時はPDAと呼んでいましたが ── になるだろうという予測がありました。その出力画面を配置する必要から、当時の主流であった二つ折りではなくバータイプのフラットな提案となり、そこにはテンキーが必要だから、物理的なキーを付けましょう、となりました。でも、それがただ計算機のように並んでいるのではなく、そこに色合いなどを含めることで、よりファッショナブルになるだろう、と。キーは、目で見て押すものではなく、手で感じて押すもの。装飾として色をつけても、機能を邪魔しないだろうという予測のもとに、過激な提案をしたのがINFOBARでした。

INFOBAR A03、奥はスマートフォンになってからのINFOBAR
INFOBAR A03、奥はスマートフォンになってからのINFOBAR
マルニウッドスタンド、専用ケースなどと共に並ぶ歴代のINFOBARを前に
マルニウッドスタンド、専用ケースなどと共に並ぶ歴代のINFOBARを前に

それからぶれずに、INFOBARという存在をずっと守り続けた12年間で、これだけの機種が出てきたということかと思います。

先代のA02はiidaUIの使いやすさを最優先に考えたので物理キーはなくてよいとの判断でキーは消えてしまいました。ただ、INFOBARファンからは落胆の声もありました。

コンセプトモデルからあるタイルキーと、キーの色を変えたINFOBARという強烈な印象に回帰しましょうというのが今回です。

INFOBARは他のスマートフォンに先駆けて新しい構造や技術を使い、市場をリードしてきました。専門家が見ると「今回のINFOBARは、あれをやってきたな」と分かる訳です。これについては、たとえばiPhone6は湾曲ガラスを使っていますが、INFOBARはこれをA02の時点で導入しています。iPhoneを競合と見ている訳ではなく、業界標準がiPhoneという状況の中で、INFOBARは何をしていくか、何を築いていくのかということを考えています。

INFOBARのDNAを残しつつ、単なるシルバーや黒の板ではないものにしよう。KDDIさんの意向も受けて、特にファッションへと今回はその舵を激しくきりました。

スマートフォンは既に一人一台の存在で、自分の分身みたいなものです。ライフスタイルという側面は大きいと思います。そうはいっても機能主義的なところもある。そこを思い切って、ここまで幅広く考えましょうと、皆川明さん、マルニ木工さん、専用のケースにスタイラス、伊勢丹さんとのコラボレーション等まで広げています。