レポート イベント、アートフェス、見本市、新店舗など、編集部目線でレポート

岡崎京子展 戦場のガールズ・ライフ

岡崎京子展 戦場のガールズ・ライフ

マンガ家・岡崎京子氏が見つめた時代とその行方

2015/02/12

JDN編集部

「pink」「リバーズ・エッジ」「ヘルタースケルター」などの作品で知られ、時代のリアルを果敢に切り取って1980~90年代を象徴するマンガ家となった岡崎京子氏。1996年の不慮の事故による活動休止以降も、未刊作品の出版や復刊が相次ぎ、2012年には「ヘルタースケルター」が映画化されるなど、今なお新しい読者を獲得し続けている。岡崎京子氏のこれまでの仕事を取り上げた、初めての大規模な展覧会「岡崎京子展 戦場のガールズ・ライフ」が東京・芦花公園の世田谷文学館で開催中だ。

新たな読者を増やし続けているとはいえ、なぜいま岡崎京子氏の展覧会が開かれるのか?世田谷文学館学芸員の庭山さんにお話しをうかがったところ、かねてから世田谷文学館のスタッフの間で温めていた企画だそうだ。地元である世田谷区(岡崎京子氏は下北沢出身)での開催を快諾してくれたことからスタートした。

岡崎京子展 戦場のガールズ・ライフ 展示風景 (1)
岡崎京子展 戦場のガールズ・ライフ 展示風景 (2)

まず、会場で目に飛び込んでくるのは岡崎作品の言葉の力だ。本展示の公式カタログやポスターのデザインを担当した、祖父江慎氏のアートディレクションもあり、切り文字の構成がとても効果的だ。都市に生きる少女の日常、変容する家族像、女性の欲望や不安を的確にとらえた、作中の台詞をキーにした展示方法は、世田谷文学館ならではのこだわりと力の注ぎ方が感じられる。

岡崎京子展 戦場のガールズ・ライフ 展示風景 (3)
岡崎京子展 戦場のガールズ・ライフ 展示風景 (4)

ところ狭しと並べられた、300点を超える原画の生々しさもみごたえ十分。中には幻の単行本未収録作品の原画も展示されている。大胆なスクリーントーンの使い方、計算された余白の活かし方、街並みや風景の描写など、現在のマンガ表現へつながる先見性を改めて実感することができる。そのほか多数の関連書籍や掲載誌、学生時代のイラストなどを通して、岡崎京子氏の表現の魅力に迫る構成となっている。

岡崎京子展 戦場のガールズ・ライフ 展示風景 (5)
岡崎京子展 戦場のガールズ・ライフ 展示風景 (6)
岡崎京子展 戦場のガールズ・ライフ 展示風景 (7)
岡崎京子展 戦場のガールズ・ライフ 展示風景 (8)

展覧会公式カタログは、よしもとばなな氏や小沢健二氏のエッセイ、桜沢エリカ氏×安野モヨコ氏×しまおまほ氏によるトークイベントの採録、他ジャンルの作家たちによるトリビュート作品などが掲載され、ボリュームは400ページ近くにもおよぶ。いわゆる図録とは異なる構成になっているのは、回顧録にしたくないというスタッフたちの思いからだ。

当初、リアルタイムあるいは少し遅れてファンになった30代〜40代をメインの来場者と想定していたそうだが、20代の若者や学生の来場者も予想以上に多いとのこと。マンガ雑誌だけにととどまらず表現の場を拡げて闘って来た岡崎京子氏から、勇気をもらえるような注目の展覧会だ。会期は3月31日(火)まで。

岡崎京子展 戦場のガールズ・ライフ 展示風景 (9)
岡崎京子展 戦場のガールズ・ライフ 展示風景 (10)

岡崎京子展 戦場のガールズ・ライフ
http://www.setabun.or.jp/exhibition/exhibition.html