レポート イベント、アートフェス、見本市、新店舗など、編集部目線でレポート

地域住民から愛される建築 METI Handmade School / DESI Center

地域住民から愛される建築 METI Handmade School / DESI Center

バングラデシュを変えつつある二つの学校

2014/12/24

レポーター:河野 洋一郎

今回は、バングラデシュ北西部の農村に建設されたMETI Handmade SchoolとDESI Centerについてご紹介します(上写真:1階の土壁部分を残し、2階の竹の部分を解体したMETI Handmade School)。

METI Handmade Schoolについては以前の記事で紹介させて頂いています。この学校が建てられることになった素晴らしいエピソードはこちらをご覧下さい。
» World Report「METI Handmade School」

蘇ったMETI Handmade School

2013年11月、METI Handmade Schoolが解体されるという話を聞き、村を訪れました。干し草を混ぜた土と竹という現地住民が住んでいる住居と同じ材料を使用し作られているMETI Handmade Schoolですが、竹の防虫対策が不十分であったために、再建する必要性があったようです。

解体された2階から見るMETI Handmade School
解体された2階から見るMETI Handmade School
地域住民の手により組まれる竹
地域住民の手により組まれる竹

現地を訪れたときには、竹で作られた2階部分が取り除かれており、現場では防虫対策を施した竹を乾かし、現地住民の手によって竹の構造部分が修復されていました。地元の資材を使うことで、現地の住民の手によって建設することができ、メンテナンスや修復も現地の住民の手で行うことができます。そして、何よりも現地の住民がMETI Handmade Schoolに愛着を持ち、大切に使われているということが非常に印象に残りました。

そして、約3か月の改修期間を経て、METI Handmade Schoolは元の形に再建されました。通常、建物を再建する場合にはデザインや規模、用途といったものを変更することがありますが、今回のMETI Handmade Schoolでは以前のデザインを忠実に再現し、元の形に戻っていました。これも、現地の人に愛される学校ならではの、再建の形だと思います。

発展途上国では、教室の量が不足しておりコンクリートやレンガで作られた学校を見かけることがあります。このような学校は、教室の量の確保という面では有効であり必要なことだと思います。しかし、地元住民に愛され、地元住民の手によって維持・管理出来る学校こそが、持続可能な建築の形ではないかと考えさせられました。

生活向上のための職業訓練校DESI Center

DESI Center、1階の窓の配置と意匠に特徴がある
DESI Center、1階の窓の配置と意匠に特徴がある

職業訓練校DESI CenterはMETI Handmade Schoolと同一敷地内にあり、DIPSHIKHAという団体により運営されています。DIPSHIKHAは農村部の発展の為、型にはまらない教育・訓練という考えの元、運営されており、DESI Centerは農村部の住民の生活収入向上の為に電気技術を教えています。また、同一敷地内には、ゲストルームや集会場などが併設されています。

DESI (Dipshikha Electrical Skill Improvement) Centerでは電気技術を学ぶため2年間のコースが設定されており、地域住民や農村部からDESI Centerへ受講者が訪れます。また、受講者へ金銭的負担がかからないよう、スイスやオーストラリア等の団体からの基金を使用し、運営されています。また、スイスからボランティアとして派遣されている講師も、DESI Centerで働いていました。

教室の様子
教室の様子

DESI Centerでは高度な技術を教えるのではなく、バングラデシュの農村部に必要な技術を教えることで、卒業生が地域に貢献できるような仕組み作りを行っています。バングラデシュの農村部には、無電化地域があり、ソーラーパネルで得た電気を利用している地域も存在します。ソーラーパネルの修復や電気工事の技術を教えることで、農村部に必要な技術をを得ることができ、社会に還元しています。大きな変化を望むのではなく、地域に密着し、地域の伝統や技術を守りながら、生活向上を進めていく役割を担っています。

決して無理に開発を進めるのではなく、地域に寄り添って、現地の材料で現地住民による学校建設や農村部に還元することができる技術を提供していました。バングラデシュの農村部の現地住民に寄り添いながら支援している様子が印象的でした。

  • METI Handmade School、竹の内部に防虫対策を施し、乾かす
    METI Handmade School、竹の内部に防虫対策を施し、乾かす
  • 再建後のMETI Handmade School、以前と同じデザイン
    再建後のMETI Handmade School、以前と同じデザイン
  • METI Handmade School、回転扉と竹の構造
    METI Handmade School、回転扉と竹の構造
  • METI Handmade School、子どもが喜びそうなデン(隠れ家)
    METI Handmade School、子どもが喜びそうなデン(隠れ家)
  • METI Handmade School、デン内部
    METI Handmade School、デン内部
  • METI Handmade School、竹構造の2階
    METI Handmade School、竹構造の2階
  • DESI Center外観、木々に囲まれている
    DESI Center外観、木々に囲まれている
  • DESI Center外観、太陽光発電パネル
    DESI Center外観、太陽光発電パネル
  • DESI Center、2階部分竹格子の廊下
    DESI Center、2階部分竹格子の廊下

METI Handmade School
http://www.meti-school.de/daten/index_e.htm

Profile

河野 洋一郎

河野 洋一郎 1級建築士

1984年生まれ。立命館大学建築都市デザイン学科卒業後、積水ハウス株式会社へ入社。
2013年より青年海外協力隊・建築隊員としてバングラデシュ政府、住宅・公共事業省、建築局で活動中。