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もしもの時のデザイン「災害時に役に立つ物や心のデザイン」展

もしもの時のデザイン「災害時に役に立つ物や心のデザイン」展

災害時の様々な“もしもの時”を解決するデザインを日本パッケージデザイン協会(JPDA)の会員を中心にデザイナー100人が提案

2014/10/22

JDN編集部

キルプチ(大坂菜穂/花王株式会社)
キルプチ
防寒着にもなる緩衝材で作られた衣服。温かさを保つこともでき、物資を送る際の緩衝材の役割も果たし、ムダにならない(大坂菜穂/花王株式会社)

日本に住む以上は、地震、噴火、津波、台風といった自然災害とは付き合っていかざるを得ない。そうした災害で日常が断絶されたもしもの時に、パッケージデザインは人々のために役に立つことができるだろうか。

現在、印刷博物館にて『もしもの時のデザイン「災害時に役に立つ物や心のデザイン」展』が開催されている。この展覧会は、ほんの些細な“もしも”から命にかかわる“もしも”まで、災害時の様々な“もしもの時”を解決するデザインを日本パッケージデザイン協会(JPDA)の会員を中心にデザイナー100人が提案しているものだ。

2WAYクッション(渡辺真佐子/株式会社資生堂)
2WAYクッション
防災頭巾になる封筒。不燃紙+2種類の緩衝材が入っている(渡辺真佐子/株式会社資生堂)
エマージェンシーバッグ(三原美奈子/三原美奈子デザイン)
エマージェンシーバッグ
普段はサブバッグとして使用し、いざという時は中身を取り出して防災頭巾に。目立つ色彩と底には反射するステンレス板が付けてあり、遭難した場合などに見つけられやすくなる(三原美奈子/三原美奈子デザイン)

展示は「衣」「食」「住」「心」の4つの視点で紹介されている。「衣」では新しい防寒着の提案や頭を守るための防災頭巾やヘルメット、「食」では食品を入れるための容器や非常食のパッケージや提案、「住」ではポケットティッシュのデザインや避難所で使える椅子や掲示物、ペットのためのデザインの提案、「心」では非常時の不安な気持ちを緩和するためのデザインなどだ。

新たなものを生み出す、というよりは既存のものをいかに変化させて効率の良いものにできるか、避難所での生活を快適にリラックスできる時間を与えられるかなど、自分がその立場に立ったらと想像させるものが多かった。消費するだけではなく、その後の用途も考えた上での素材を使用するなど、製作にあたったデザイナーも“生活者”としての視点から考えたのだろうと感じる提案が多い。

いずれも商品化されたものではなくデザイナーからの提案ではあるが、どれも実際に存在していたらとても役立つだろうものばかり。目新しさや、派手さはないものの、一考させられる提案が多く、ぜひ実現して欲しいと思うものばかりだ。

展示ではメインの「もしもの時のデザイン」提案のほかに、実際に商品化されている非常食やグッドデザイン賞の最近の受賞作から、パッケージデザインの視点で選んだ防災に関する商品、災害時に役立つアプリやウェブサイト、身近な日用品を転用して活用する方法などの豆知識が展示されており、近年高まっている防災需要を考える良い機会にもなるはずだ。

Re-Xボトル(グループ:Re-X Project/代表者:加藤芳夫)
Re-Xボトル
転用することを目的にしたペットボトル。切って使うことで多用使いできる容器に変わり、既存の形のものを切って使うよりスタイリッシュで見苦しくないものに(グループ:Re-X Project/代表者:加藤芳夫)
Kamisara(笠島未来、竹之内ゆりえ)
Kamisara
一見するとサランラップだが、中身は折って組み立てる紙食器。一区切りで一人分の皿、お箸、コップなどのセットができあがるようになっており、場所を取らずに備蓄できる(笠島未来、竹之内ゆりえ)
訪日外国人向け地震対策ティッシュ(小比類巻蘭/川路ヨウセイデザインオフィス)
訪日外国人向け地震対策ティッシュ
地震時の基本行動を多言語でまとめたポケットティッシュ。訪日した外国人に防災意識を持ってもらうためのデザイン(小比類巻蘭/川路ヨウセイデザインオフィス)
はこ 時々 いす(髙木直也/有限会社サン・クリエイト)
はこ 時々 いす
組み立てると椅子にかわる段ボール。救援物資などを中に入れていた段ボールは不要になるとかさばる。そういった時のために、強度もあり、再利用できるプロダクトデザイン(髙木直也/有限会社サン・クリエイト)
call key(佐々木晴美/underline graphic)
call key
笛とカギがひとつになったプロダクト。カギの中の構造がフエラムネのようになっており、非常時に吹くことで自分の位置などを知らせることができる。気軽にもしもの備えを持ち歩けるようにと開発されたもの(佐々木晴美/underline graphic)
はこ 時々 いす(髙木直也/有限会社サン・クリエイト)
猫のための防災用品「キャット・キット」
非常時には人だけでなく愛するペットも防災が必要になる。ドライフードや水、リードやタオルなど猫が安心して過ごせるためのキット(犬塚達美/株式会社犬塚デザイン事務所)
ペットもヒトも安心して避難したい(湯本逸郎/花王株式会社)
ペットもヒトも安心して避難したい
災害時の混乱で、ケージや鑑札を持参できなかった飼い主のための、迷子防止タグと仮説ケージのセット(湯本逸郎/花王株式会社)
キャット・ハウス/パオ“包”(丸山和子/丸山デザイン事務所)
キャット・ハウス/パオ“包”
狭い所に隠れるのが好きな猫のための、短期用緊急避難時のスペース。素材は段ボールなので保管・携帯、組み立て、廃棄が簡単に出来る。移動民族の組み立てテント「パオ“包”」をイメージしている(丸山和子/丸山デザイン事務所)
救援物資段ボールのコミュニケーションデザイン(木村将太/underline graphic)
救援物資段ボールのコミュニケーションデザイン
あらかじめ中に何を入れるかが決まっている段ボール。東日本大震災の際、救援物資が送られてくるが、中に何が入っているかわからなかったため手間取ったそうだ。「衣・食・住」というわかりやすいアイコンになっており、とてもスムーズな開封ができそうだ(木村将太/underline graphic)
避難所の【色用紙】(椿原ヨシハル/スプリングデザインカンパニー)
避難所の【色用紙】
目的別に色分けした用紙。秩序が失われがちで情報を見つけにくい避難所の掲示板に秩序をあたえ、情報が探しやすくなる。とてもシンプルだけど重要なデザイン(椿原ヨシハル/スプリングデザインカンパニー)
表札ポスト君(高尾ススム/タカオデザイン事務所)
表札ポスト君
避難所などで遠くからでも居場所がわかる、ポストをイメージした組み立て式の表札スタンド。探す人の目印にもなり、不在の場合はポストの役割も果たす(高尾ススム/タカオデザイン事務所)
だいたい似てるシール(上西伸一/大日本印刷株式会社)
だいたい似てるシール
避難場所の掲示板などで使用するシール。顔を選び伝言メモ等に添えて使用する。顔にヒゲやメガネなどを書き込むことでその人物に似る、文字だけでは伝えきれない応急のコミュニケーションツール(上西伸一/大日本印刷株式会社)

【関連イベント】
日時:11月1日(土)14:00~16:30(終了時間予定)
会場:同会場
●講演「パッケージデザインのココロ」(加藤芳夫/クリエイティブディレクター/JDP理事長)
●出品者4名によるトークショー
※申込方法など詳細は公式ホームページを参照
http://www.printing-museum.org/exhibition/pp/140830/index.html