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アップサイクルの元祖「FREITAG(フライターグ)」変わらぬデザイン哲学

アップサイクルの元祖「FREITAG(フライターグ)」変わらぬデザイン哲学

フライターグ兄弟へのインタビューとスイス・チューリッヒの工場と旗艦店から

2014/10/15

JDN編集部

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■FREITAG

サステイナブル(持続可能)なものづくり方法として、世界的な潮流の一つとなったアップサイクル。リサイクルとの違いは、元の製品が持っていなかった新たな価値を持つ製品が生み出されることだ。素材の活用方法や機能性の実現、外観の表現、ブランドイメージの発信、経営理念や事業戦略の具体化等、アップサイクルにおけるデザインが果たす役割は大きい。

そうしたアップサイクルの代表と言えるのが「FREITAG(フライターグ)」。中古のトラックの幌(ターポリン)と捨てられた自転車のチューブとシートベルトを使った自転車用のメッセンジャーバッグに始まり、そのビジネスは世界規模で成功している。全てが一点物でハンドメイド。エコロジー、ロングライフといったエシカルな観点だけでなく、創業者であるフライターグ兄弟の哲学を反映して、ストリート、ヘビーデューティー、ユーモアといった感覚も色濃く表現されているブランドだ。

創業から21年を迎えたフライターグ兄弟へのインタビューと、スイス・チューリッヒの工場と旗艦店への取材から、その変わらぬデザイン哲学を紹介する。(上写真:フライターグ兄弟、FREITAG渋谷店にて)

コンテナを積み上げたチューリッヒの旗艦店「FREITAG Individual Recycled Freeway Store」、左のフリーウェイが創業時のエピソードを思わせる
コンテナを積み上げたチューリッヒの旗艦店「FREITAG Individual Recycled Freeway Store」、左のフリーウェイが創業時のエピソードを思わせる
最初の製品「F13 TOP CAT」、現在も一番人気とのこと、チューリッヒの工場「FREITAG F-actory NOERD」にて
最初の製品「F13 TOP CAT」、現在も一番人気とのこと、チューリッヒの工場「FREITAG F-actory NOERD」にて

FREITAGの創業者は兄Markus Freitag(マーカス・フライターグ)と弟Daniel Freitag(ダニエル・フライターグ)のフライターグ兄弟。彼らが二十代前半の時、住んでいたアポートの窓から見えたのが、様々な色の自動車がひしめく交差点だった。その景色が、トラックの幌を使うバッグを思いついたきっかけになったという。無料でもらった幌を自宅の風呂で洗い母親のミシンで最初のバッグを作ったのは1993年のこと。それが話題となり、高感度なショップで扱われ、サクセスストーリーが始まった。

2003年にはMoMAのコレクション入り。2006年にチューリッヒ・ウエストに開設した旗艦店は、19の中古コンテナでできたタワーとしても話題となった。2011年には工場を現在のNOERDに移転し、東京の銀座に直営店を開いている。創業20周年の2013年には、日本で2店目となる渋谷店も開設。トラフ建築設計事務所も設計に加わった店舗は、明治通りとキャットストリートをつなぐ街路のような雰囲気で、軽トラックの幌へのライブペインティングが行われたオープニングも話題になった。

  • FREITAG F-actory NOERD
    FREITAG F-actory NOERD
  • 入荷した幌、色もよれ具合も様々
    入荷した幌、色もよれ具合も様々
  • 大きな作業台に拡げる
    大きな作業台に拡げる

■ターポの入手と下処理

FREITAGの工場はチューリッヒの北部郊外にある。4階建て箱形の機能的な施設で、FREITAGはその半分弱を占める最大の入居者だ。工場の名前は「FREITAG F-actory NOERD」。

工場での最初の工程は、素材であるトラックの幌の入荷だ。「素材が中古品なので、色や品質の安定供給が難しい。地域別に5人の“ターポリン・ハンター”がいるよ」(フライターグ兄弟、以降同じ)

今までは捨てていた物を素材として活用しているため、既存の素材流通ルートというものが無い。イレギュラーで小規模な取引は面倒もあるだろうし、アップサイクルにおける最初のハードルがこの素材の手配だ。

次にカット。金具等をはずし、規程の大きさにカットする。素材の状態が文字通り千差万別なので手作業とならざるを得ない。

  • 規程の大きさにカット
    規程の大きさにカット
  • 地下の雨水貯蔵庫への入口
    地下の雨水貯蔵庫への入口
  • 雨水貯蔵庫、水に反射し鏡絵に
    雨水貯蔵庫、水に反射し鏡絵に

そして洗濯。雨水を使っている。「イニシャルコストもかかるので、実際のところ、15年かけてようやく採算が合うんだ。ただサステイナブルを目指しているし、僕たちは商品を売る前にストーリーを売っているので、やるべきだと判断した。こうしたエコについての哲学は創業以来変わっていない」

洗濯が終わると、独自の基準による品質チェック。3ランクあり、その呼び名はとても“らしい”ものだ。そして色や柄による分類。

ここまでの工程は、通常のバッグメーカーにはないFREITAG独自のものだろう。長年の経験により組み立てられた工程は、効率的な事業活動のノウハウでもあるはずだが、オープンな姿勢である。

  • 洗濯機
    洗濯機
  • 洗濯後、全体の写真や関連情報のタグを付けて保管
    洗濯後、全体の写真や関連情報のタグを付けて保管
  • 品質のレベル分け見本、新しすぎるものは良くない
    品質のレベル分け見本、新しすぎるものは良くない

●取材協力
FREITAG
http://www.freitag.ch
日本・スイス国交樹立150周年記念 特設ウェブサイト
http://swiss150.jp
日本・スイス国交樹立150周年記念