レポート イベント、アートフェス、見本市、新店舗など、編集部目線でレポート

アジアで力をつけつつある台湾デザイン

アジアで力をつけつつある台湾デザイン

国家レベルでデザインに取り組む台湾の現状をレポート

2014/07/30

レポーター:五十嵐 洋

ドイツのデザインアードの「reddot」の受賞数(2011年調べ)が、ドイツに続いて世界2位の取得数を誇る台湾。ここ数年デザインに力をいれており、その活動は国家レベルはもちろんのこと、市民レベルでも現れている。今回は、そんな台湾デザインの現状をレポートする。

デザインへの関心が高まる台湾のライフスタイル

台湾クリエイティブ産業展の様子
台湾クリエイティブ産業展の様子
台湾デザインセンター内にあるギャラリー
台湾デザインセンター内にあるギャラリー
台湾のキッチンウェアブランド「JIA」
台湾のキッチンウェアブランド「JIA」

台湾カルチャーの発信地となっている「誠品書店」や「世界でもっとも美しい本屋ベスト20」に選ばれた「VVG Something」をはじめ、街にはカフェやインテリアショップを併設したライフスタイル型の店舗が多くあり、デザインが生活の一部に入り込んでいる台湾。

デザインイベントも数多く開催されている。2003年から続く政府主催の国家級デザインイベント「台湾デザインエキスポ」の来場者は毎年増加し、11年間の来場者数は延べ400万人にも及ぶ。台湾最大のデザインイベントの一つ、「台湾デザイナーズウィーク」は2007年から毎年秋に開催され、業界関係者はもちろん、デザイン関係者以外からも熱い注目を集めている。

去年の秋に開催されたクリエイティブ産業の見本市「台湾クリエイティブ産業展(Taiwan International Cultural and Creative Industry Expo 2013)」を見に行った。どちらかというと、ガラスや木を使った伝統工芸品が多かったが、回を重ねるごとに今の生活スタイルに合わせたデザインアイテムも確実に増え、グラフィックに特徴のあるペーパー素材のバッグやスチール製の家具など、素材もデザインにおいてもオリジナル性の高い商品が台湾発のブランドとして多数発表されており、台湾の文化クリエイティブ産業の発展が大いに期待される展示の数々だった。

個人的な感想も入るが、台湾を始め、アジアのデザイン小物をみると、10年ほど前から実力をつけていると感じてはいるが、まだまだ、キャラクターや動物がモチーフになっている可愛いデザインが多く、雑貨の枠を出ていない物が多い。街中で見る商品も伝統工芸品寄りのデザインかファンシーなデザインが多いが、「JIA」というヨーロッパでも人気の台湾のキッチンウェアブランドのように、伝統的なフォルムや商品の中に現代の生活スタイルに合わせたデザインも登場していて、台湾の人々の人気を集めているのを肌で感じた。

国を挙げてデザインを推進する「台湾デザインセンター」

日本の展示会に合わせた、モダンでユニークなデザインアイテム
日本の展示会に合わせた、モダンでユニークなデザインアイテム

何故台湾デザインが力をつけているのかを考えると、国を挙げてのデザイン専門機関の「台湾デザインセンター」が一貫して活動している事が大きい。

海外の展示会の出展サポートはもちろん、現地でのショップ情報やバイヤーとの商談のセッティングなどデザイン業務に関する事以外のマーケティング部門までしっかりサポートしている事が強みだ。

メゾン・エ・オブジェやアンビエンテをはじめ、ニューヨークでも展示会に積極的に参加し、さまざまな作品を発表。The New York Timesで取り上げられ、MoMAやKitsonなど、ハイクオリティなデザインショップでの発売にもつながった。台湾企業は、マイケルヤングやnendoをはじめ海外デザイナーとの国を超えての積極的なデザインコラボレーションを行い、自国のデザイン力の底上げを行っている。

6月に日本で開催された「インテリアライフスタイル展」にも参加。元々は、世界の様々なブランドのOEMを行ってきたモノ作りが盛んな台湾だが、OEMで培われた技術力と他国からのデザインを間近で見てきた経験を生かし、オリジナリティーを出したデザインの商品が数多く並んだ。台湾製品を海外に出展する場合、自国の伝統産業を感じさせることが多いが、今回はモダンでユニークなデザインアイテムが多く、日本のバイヤーからも注目を集めていた。

革小物工房「greenroom」の革アイテム
革小物工房「greenroom」の革アイテム
リアルでセンスの良いキャンドルが話題の「eye candle」
リアルでセンスの良いキャンドルが話題の「eye candle」

アジアビジネスのハブ拠点というと、シンガポールや香港だが、アジアデザインにおいては台湾がデザインのハブになる日も近いのだろう。

台北市は、国際インダストリアルデザイン団体協議会(ICSID)による国際イベント「世界デザイン首都2016」(World Design Capital,略称WDC)に選定されており、今後の活動にも注目だ。

Profile

五十嵐 洋

五十嵐 洋/PRディレクター

インテリアやプロダクトデザイン、オーガニック、ソーシャル活動を中心にコミュニケーション・PR活動を行うCasokdoを運営。デザイナー、商品開発、宣伝広報など様々な職種の経験をいかしトータルにコンサル活動を行う。