レポート イベント、アートフェス、見本市、新店舗など、編集部目線でレポート
Maison&Objet Asia 2014
アジアで初めて開催されたメゾン・エ・オブジェの様子をレポート
2014/05/21
レポーター:井原 鉄吾朗
フランス・パリで年に2回行われているインテリア&ライフスタイルデザインの国際見本市「Maison&Objet(メゾン・エ・オブジェ)」が、2014年3月10日から13日までの4日間、シンガポールデザインウィークのイベントパートナーとしてアジアで初めて開催された。
会場となったのは、シンガポールの新名所である「MARINA BAY SUNDS」のコンベンションセンター。世界26ヶ国・地域から270を越える出展者が集まり、うち日本を含む東南アジア地域からの出展数は71と全体の約25%を占めた(欧州メーカーのアジア法人による出展者含む)。
アジアで初開催ということで、特に東南アジアの国・地域のブースを見ていくと、独自性を織り交ぜつつも欧米のようなライフスタイルをキャッチアップするメーカーと、東南アジアならではの素材やライフスタイルを活かしたデザインを提案するメーカーに大別される印象だ。
LUZERNE
前者の代表として、地元シンガポールの食器ブランド「LUZERNE」を取り上げてみたい。「LUZERNE」は、1947年にシンガポールで第一号店を開業して以来、オリエンタルなテイストを取り入れつつ、欧米系のホテルに調和するデザインで、世界40ヶ国以上で展開されている。
Design Philippine
一方、後者の代表は、メゾン・エ・オブジェ・アジアのデザイン・オブ・ザ・イヤーに輝いたKenneth Cobonpue氏のコレクション「Design Philippine」であろう。ラタン素材を使ったデザインで知られる氏が、フィリピンのみならず東南アジアのインテリアデザイン界を牽引しているのは間違いない。
Thai Design Showcase
また、タイの小規模デザイナーを集めたブース「Thai Design Showcase」の取り組みにも目を向けてみたい。伝統的な手工芸の職人技術とタイ各地の素材を少数民族や農村地域の振興と結びつけることで、素朴な風合いの製品群が生まれ、クラフトマンシップとサステナビリティを提案するだけでなく、日本でも展開されはじめたエシカルデザインに通じるものとして注目される。
乾唐軒
中国からは上海の陶磁器メーカー「乾唐軒(ACERA)」が出展。中国らしい装飾が施された茶器類は、まさに中国茶文化という生活様式とともに提案される意欲的なものだ。
日本からの出展
日本からは、同じ愛媛県今治市を地盤とする今治タオルとORIMの2社の出展が目を引いた。すでに世界中のタオルメーカーでひしめく市場に、機能性でアピールするのが日本メーカーならではといったところか。
展示構成
会場内は、講演などが行われるステージや出版物のコーナー、新進デザイナーのブース、飲食スペースを除くと、出展者の国・地域属性や、キッチン・寝具・リビングといった用途属性などに分かれることなく、各ブースがランダムに配置されている。属性に分かれていないことによって隣接する他のブースの世界観に影響されるといったことがなく、むしろ製品ひとつひとつのデザインを中立的な感覚で見て回れるように思えた。
10,340人という登録訪問者数は、主催者側が見込んだ22,000人の半分にも満たないものではあるが、東南アジアのデザイナーやメーカーが国際的な場に出展するきっかけになったことや、洋の東西を橋渡しする人的な交流を見るに、訪問者数で考える以上の成果があったのではないかという印象を持った。
Profile
井原 鉄吾朗
大学卒業後、バンダイナムコグループを経て(株)ソニー・コンピュータエンタテインメントに入社。デザイン、著作権業務に携わる他、クール・ジャパン関連業務を担当。東日本大震災を機に本格的に写真を撮りはじめ、写真を通じて日本のクリエイティブを伝える活動を展開している。
