レポート イベント、アートフェス、見本市、新店舗など、編集部目線でレポート
Ambiente 2014
パートナーカントリーは日本。世界中に日本のデザインや文化を発信した「アンビエンテ2014」
2014/03/12
レポーター:山崎 泰
インテリア・ライフスタイル分野で世界最大級として知られる国際消費財見本市Ambiente(アンビエンテ)。2月7日から11日の5日間、今年も世界中からバイヤーやメーカー、流通などの関係者を集めてドイツ・フランクフルトで開催された。出展者は89カ国・地域から4,724社、来場者は161カ国・地域から約14万4千人と、全て昨年を上回った。
橋本夕紀夫プロデュースによる特別展示「Super Ennichi(スーパー縁日)」
今年の最大の話題と言えば、この巨大な見本市の特別企画である「パートナーカントリープログラム」に日本が選ばれたことだろう。2012年のデンマーク、13年のフランスに続き、欧州以外では初めての選出。アンビエンテ・テンデンスの総責任者ニコレット・ナウマンによる選定理由は以下。
「日本は重要な輸出国であり、世界を牽引する経済大国です。さらに、デザインと伝統的な手工芸で無類の存在です。最新デザインと伝統技術の融合こそが日本のものづくりの特徴であり、世界を魅了する要素だと思います」
一つひとつの言葉は聞き慣れたものだが、外部の視点から、日本の美点、可能性を改めて指摘したコメントだ。
このパートナーカントリーの「アンバサダー(大使)」として起用されたのが、デザイナー・橋本夕紀夫氏。プロデュースした特別展示「Super Ennichi(スーパー縁日)」のテーマについて次のように語る。
「日本の文化は、禅やワビ、サビだけではない。昔から、一般の人たちはもっとグラマラスで愉快な文化を楽しんでいる。縁日は巨大なお祭りではないが、特別で非日常なものだ。日本文化に深く根づくエンターテインメントの一形態と言えるだろう。この日本の元気な面をお届けしたい」
展示コンテンツは、「伝統」「カワイイ」「布」「金属」「硝子」等、7テーマに分けてブランドを横断し製品を集めたもの。場所は、テーブルウェアの中心であるホール4.1のホワイエ。賑やかな展示と職人の実演やワークショップ等により、常に人だかりであった。
さらに特筆すべきは、ホール11.0ホワイエのJapan Creativeと、Galleria0でのDENSAN(伝統的工芸品産業振興協会)の出展。いずれも特別に目立つ場所ではあるが、受注を主目的とした展示ではない。商談目的の来場者が多いAmbienteにおいて反応が気になるところだが、会期中何度か足を運んだ限りでは、高品質な日本の技術や製品のプレゼンテーションに足を止めて熱心に見る人がおり、好意的に受けとめられたようだ。
気鋭の若手デザイナーを紹介する「Talents」には日本から4組が参加
神戸意匠操練所は、インテリア ライフスタイルのTalentsに出展し「Young Designer Award」を受賞し出展。子ども視線を大切に、様々なプロダクトを提案しており、2011年のコクヨデザインアワードでグランプリを受賞した「roll table」は製品化され話題となっている。
STUDIO SURUMEも、同じく受賞し出展。椅子、ランプシェード、定規、掛け時計、一輪挿し、タオルハンガー等を展示。繊細で、微笑みを生むデザインを作る男女デュオ。
PROOF OF GUILDは、IFFT/Interior Lifestyle LivingのTalentsに出展し受賞。職人技とアンティークを感じさせる金属や磁器、木の使い方が特徴。もともとはジュエリーをデザインしていたと聞き納得。
小林幹也スタジオは、エルデコ日本版が選ぶヤングジャパニーズデザインタレント賞2013受賞で参加。丹青社とのシェルフプロジェクトで作成した二つのシェルフと、木のフラワーベースを展示。
それぞれ、日本では予想もしないような大量のオファーや、作りたいという申し出、カスタマイズの相談などを受けたとのことで、今後の展開が期待される。また業界関係者しか入場できない見本市ながら、土日の来場者が多いことにも日本との違いを感じたようだ。
日本のデザイン・文化を発信する出展の数々
ホール11.0は注目どころも多いのだが、日本関連からあえて選出すると以下。
まず、今年6年目となるJapan Style。今年は石塚硝子、かまわぬ、能作、YOnoBI、TIME & STYLEなど16社が集結した。ブースデザインは橋本夕紀夫氏で、「Super Ennichi」との関連も感じさせる意匠。
ほぼ中央に出展したアッシュコンセプトは、商談にも確実な手応えがあったとのことだ。日本でも話題を呼んでいる梶本博司氏デザインの「UnBRELLA」に驚く来場者が多かったのが印象的。
ミュンヘンで日本デザインを紹介するショップ「SHUSHU」を展開するSATOMI SUZUKI TOKYOは、東京にも拠点を設け、さらに日本とドイツの交流を促進したいとのこと。
Nextでは、昨年のインテリア ライフスタイルの特別展示も記憶に新しい伊藤千織デザイン事務所が、合成紙ユポを使った「paper wreath」を展示。
ホールによっては、昨年と比べると、初日の早い時間帯には「来場者数が今ひとつではないか」という印象もあったが、閉会してみれば昨年以上の来場者数となり、出展者それぞれに手応えを得ることができたようだ。パートナーカントリーが日本だから、という理由で商談が進む訳でもないだろうが、日本のデザイン・文化を強く発信したことは、日本というブランド価値を高める方向に働くだろう。その意味では、これからの、そして来年以降のAmbienteにおける日本の存在感・評価に期待したいところだ。