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クリエーターの仕事場:フィンランド編

クリエーターの仕事場:フィンランド編

フィンランドのデザイン事務所「Design Office Hakaniemi」

2013/07/17

レポーター:靴家 さちこ

アルテック、イッタラ、マリメッコなど、泉のごとくデザインがあふれ出す国フィンランド。同国では、常に新しい デザイナーが新しいデザインを展開しており、それでいて実に多くのタイムレスな作品が形となって世に残されています。それらのフィンランド・デザインの歴史を紡ぎだすデザイナーの日常を探るべく、フィンランド中部で創業5年目を迎える気鋭のJonas・Hakaniemi(ヨナス・ハカニエミ)のデザイン事務所を訪問しました。

1階が100㎡、2階が20㎡のミーティングルームになっているシェアオフィス。カーテンの仕切りの手前の撮影用のスタジオは共同で使っている
1階が100m2、2階が20m2のミーティングルームになっているシェアオフィス。カーテンの仕切りの手前の撮影用のスタジオは共同で使っている
マッチ箱からヒントを得たBox Lightは、デザインハウスストックホルムで商品化された
マッチ箱からヒントを得たBox Lightは、デザインハウスストックホルムで商品化された

フィンランド建築の父アルヴァ・アアルトが暮らし、30もの建造物を残したユヴァスキュラは、ヘルシンキから北270kmの地方都市。市の中心から少し離れた新旧の建物が並ぶ大通り沿いに、プロダクトデザイナー ヨナス・ハカニエミのデザイン事務所、Design Office Hakaniemi(デザインオフィス・ハカニエミ)があります。ラハティ応用科学大学在学中の2007年にミラノのメッセに出展した「Box Light(ボックスライト)」で世界的な注目を集めていたヨナスは、2009年、大学を卒業後すぐにこの事務所を設立し、以来破竹の勢いでデザイン活動を続けてきました。

以前は食糧貯蔵庫だったスペースをロフトに改築した事務所は、広告会社とのシェアオフィス。現在インターンが一人通ってきていますが、デザイナーとしての仕事はヨナス自身でこなしています。大学進学前には出版社や新聞社でイラストやグラッフィックを手掛け、現在でもグラッフィックデザイナーやイラストレーターとしての活動も続けているヨナスにとって、コラボレーションが生まれやすい理想的なワークスペースです。

オフィスの立地をフィンランド中部にこだわった理由は特に無いそうですが、ユヴァスキュラはフィンランドでも7番目に大きなビジネス都市。デザイナーが集中する首都圏の喧騒から逃れ、地方でのびのびとデザインに没頭し、地元企業からの受注の可能性も考えたというヨナス。その発想には彼の秘められた策略家的な一面が垣間見られます。

実際に、ヨナスの最新作「ILOA(イロア)チェア」シリーズは、デザインオフィス・ハカニエミから3kmほど離れたところにある地元のデザイン家具メーカー、myKolme design(マイコルメ・デザイン)からの依頼で始まったプロジェクト。すぐ近くで密なコラボレーションが可能なデザイナーを探していた同社は、ヨナスのウェブサイトを見つけ、ミラノやイタリア、パリなどの展示会で国際的にも活動していた彼にコンタクトを取ってきました。

自作の大きなランプが明るいミーティングルームでクライアントとの打ち合わせ
自作の大きなランプが明るいミーティングルームでクライアントとの打ち合わせ

「自然に良い姿勢で座れる、座り心地と見た目重視のデザインチェア」の製品化と日本での販売を目指していたマイコルメ・デザイン社。社名のKolme(コルメ=フィンランド語で数字の「3」)から、座面の形は「三角形」に決め、このジオメトリックな形状からどれだけ親しみが持ちやすい、美しいデザインが生み出せるか――そこからヨナスのチャレンジが始まりました。

手描きのスケッチから始まり、遠くから見ると折り紙の作品のような座面のデザインが考案されるまで一か月。素材には木の温もりを活かし、日本人にも好まれそうな白樺やアッシュのプライウッド(合板)が選ばれました。プロトタイプができてからは、座り心地の良さを追求しながら座面の三角の角度を調整し、クッション部分のファブリックの縫合方法やファブリックもフェルトやウールに変えてみるなど、半年ほどかけて完成品に仕上げました。

7月下旬には日本企業各社に向けてお披露目会が予定されており、初めて日本の土を踏むことになるヨナスは、「この経験から得られるものは大きい」と胸を膨らませています。人口540万人規模の国で生き伸びる為に多種多様なスキルを身に付けているフィンランド人デザイナーが、国際的なチャンスに恵まれるのはクライアントとの縁次第。だからといって、クライアントに媚びるのではなく、対等な視線で有意義な提案をするのがフィンランドのデザイナーたち。まさにその王道を貫くヨナスがどこまで活躍の場を広げていくのか、デザインオフィス・ハカニエミの今後の展開が楽しみです。

日本でお披露目間近の新作、イロア・チェアシリーズ。フィンランド語でILOAとは「喜び」を意味する
日本でお披露目間近の新作、イロア・チェアシリーズ。フィンランド語でILOAとは「喜び」を意味する
撮影も同じ建物の中。広告会社とのコラボレーションで
撮影も同じ建物の中。広告会社とのコラボレーションで

Profile

靴家 さちこ

靴家 さちこ/フリーライター・ジャーナリスト

1974年生まれ。青山学院大学文学部卒業。Ingergraph Japan, Nokia Japanなどを経て2004年に渡芬。以降デザイン、ビジネスや教育など幅広い分野での執筆活動を行っている。

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