[JDN] クリエイティブを刺激するデザイン情報サイト

クリエイティブを刺激する
デザイン情報サイト[JDN]

JDN編集部が注目するデザインやイベントをレポート

トリエンナーレ「水と土の芸術祭2012」現地レポート

トリエンナーレ「水と土の芸術祭2012」現地レポート

新潟市内各地を舞台に開催される現代アートの国際展

2012/09/05

レポーター:五十嵐 洋

7月14日、新潟市で現代アートの国際展「水と土の芸術祭2012」が開幕しました。2009年に続いて2回目となる今回のテーマは「転換点~地域と生命の再生に向けて~」。3.11後のこれからを踏まえ、展示を通して人々の心に残った思いが次への希望につながる機会になればという思いが込められています。
会期中は、「アートプロジェクト」、「市民プロジェクト」、「シンポジウム」の3つのプロジェクトにわけ、石川直樹、大友良英×飴屋法水たち、みかんぐみの曽我部昌史+神奈川大学曽我部研究室、日比野克彦、ら約60組のアーティストによる作品展示のほか、新潟市民が主体となった地域の魅力を発信する多様なイベントが新潟市の各所で展開されます。

万代島旧水揚場をメイン会場とした大規模インスタレーション

メイン会場は、2年前まで魚の水揚げを行っていた新潟市の港にある巨大空間 万代島旧水揚場(通称:大かまぼこ)。音楽家の大友良英と主に演劇の分野で活動してきた飴屋法水による、音と造形による大規模インスタレーション「Smile」が私たちを迎えます。新潟に眠っていた、古材を使って会場内に「家」を建て、そこへ多様な音楽を据えています。作品を前にすると、静かに満ちる気配や記憶が私たちの感覚を研ぎ澄ませてくれます。会場の高い天井と広さがなければ完成しない、ここでしか見る事ができないダイナミックな作品です。天井には開口が設けられ、そこからふりそそぐ日差しや季節の移り変わりによって、作品の気配や痕跡の感じ方の変化も楽しめる空間です。

メイン会場外観:万代島旧水揚場(通称:大かまぼこ)
メイン会場外観:万代島旧水揚場(通称:大かまぼこ)

奥には原口典之氏の作品が。廃油を満たした巨大な鉄のプールと、天井から吊るされた太く長いロープ。「新潟で、対象となる風景やその場所と歴史に触れ、また今日まで様々な対象を見てきた私にとって、それが仮に人工物であり、かつて、あるいは今日でも何かしらの目的を持って存在しているものであっても、実に自然の一部であるという事を感じている。」と原口氏。鉄材や廃油、綱などの工業素材を用いた作品には、「物質」に深くこだわった作家の意図が反映されています。

  • 廃油を満たした鉄のプールと、太く長いロープは原口典之氏の作品
    廃油を満たした鉄のプールと、太く長いロープは原口典之氏の作品
  • 「大友良英×飴屋法水たち」による大型展示作品「Smile」
    「大友良英×飴屋法水たち」による大型展示作品「Smile」
  • 演奏シーンが投影された幻想的な空間
    演奏シーンが投影された幻想的な空間

貴重な文化施設でのアート作品展示

この芸術祭の特徴の一つに、文化施設での作品展示があります。メイン会場近くの北方文化博物館新潟分館では、書家の華雪の作品が展示されています。この施設自体、新潟市出身の書家・歌人の会津八一が晩年を過ごした魅力的な場所であり、日本家屋の良さと手入れの行き届いた庭がなんともいえません。華雪の作品は、会津八一が書いた新潟日報、朝刊の題字の中にある「日」という字を屏風に毎日書写しいていき、その「日」という字の積み重ねが作品になっています。作品と展示会場がまさに一体化した作品です。

さらに同じ地区にある旧齋藤家別邸も歴史と文化を感じさせる施設です。展示しているのは、紙袋の一面を木の形に切り抜いて袋の中に立体的な木を作り上げた照屋勇賢氏の作品。日本庭園に広がる木々の中でこの作品が浮かび上がり、よりいっそう作品をひきたたせています。捨てられる紙袋がアートに変わり、袋の穴から木漏れ日のような光が入ることで、紙の木を表情豊かなアートに仕上げています。

美しい自然とともにアートを楽しむ照屋勇賢氏の作品
書家・華雪の作品。会津八一の過ごした部屋が会場
美しい自然とともにアートを楽しむ照屋勇賢氏の作品
美しい自然とともにアートを楽しむ照屋勇賢氏の作品

新潟市内から車で20分ほど行った所に、角田山妙光寺という国登録有形文化財に選ばれた寺院があります。客殿を覆う大きな格子天井が展示会場です。普段は入れない天井裏のスペースに、佐々木愛氏が「渡り」をテーマに新潟特有の景色をモチーフにした白砂糖で描いた大きな壁画を展示しています。格子天井の傾斜を上手く利用した作品展示で、この場所の持っている歴史と文化の力を感じます。

また、屋外の大型アートも充実しています。「海抜ゼロ」を体感できるアートや旧浄水場が一変し蓄える場所から水が放出されるアートを表現している作品など、やはりここでしか見る事が出来ない作品ばかりです。

  • 格子天井の傾斜に砂糖で描いた佐々木愛氏の壁画
    格子天井の傾斜に砂糖で描いた佐々木愛氏の壁画
  • 海抜ゼロメートルの視界を体感できる屋外アート
    海抜ゼロメートルの視界を体感できる屋外アート
  • 旧浄水場という蓄える場所から水が放出されるアートを表現
    旧浄水場という蓄える場所から水が放出されるアートを表現

自然や文化、歴史と作品が融合して醸し出す場の力

今回、メイン会場の構成を手掛けたのは、「曽我部昌史+神奈川大学曽我部研究室」。水揚場にちなんで、全て漁港関係の造作物になっています。テーブルは、水槽と魚をいれていた木箱を使用し、水揚場ならではの素材と空気感を醸しだしています。会場では、アート作品以外に、限定ショップやカフェ、イベントステージなども用意され、家族連れでも十分に楽しめるパブリックスペースになっているのも特徴です。芸術祭自体にもスタンプラリーが取り入れられ、早速、子供達がこぞって押している様子も見られました。

水揚場ならではの素材を活用したパブリックスペース
水揚場ならではの素材を活用したパブリックスペース
限定ショップには漁業手ぬぐいトートなどオリジナルグッズが並ぶ
限定ショップには漁業手ぬぐいトートなどオリジナルグッズが並ぶ

水と土の芸術祭2012は、自然の中で一体化したアートもありますが、新潟市内にある、文化施設や伝統として残された施設をうまくいかし、建物自体の歴史の重みと空間の力が作品と見事に融合され、通常の美術館とは違う、場の力を醸し出しています。アーティストや、市民、そして水と土に支えられてきた新潟市の歴史と文化が一体化した、ここでしか見ることが出来ないトリエンナーレ。12月24日クリスマスイブまでの約5ヶ月間、季節の移ろいとともに変化していく作品が見れるのも、この芸術祭ならではの楽しみ方です。

[開港都市にいがた 水と土の芸術祭2012]
会期:2012年7月14日(土)~ 12月24日(月・休日)
http://www.mizu-tsuchi.jp/

[関連記事] 水と土の芸術祭2012から新ブランド「blue&brown」誕生

Profile

五十嵐 洋

五十嵐 洋/PRディレクター

インテリアやプロダクトデザイン、オーガニック、ソーシャル活動を中心にコミュニケーション・PR活動を行うCasokdoを運営。デザイナー、商品開発、宣伝広報など様々な職種の経験をいかしトータルにコンサル活動を行う。

RANKING 月間アクセスランキング

    LATEST REPORT 最新レポート

      SNS ソーシャルメディアサービス

      INTERVIEW インタビュー

        PAGE TOP