虫喰いの花器

「使えない」という印象を変えたプロダクト

個性豊かな木目を持った花器は、富山県の虫喰いナラ材から作られている。虫喰いによる穴や、菌が入ることによってできる黒い墨模様(スポルテッド模様)は、同じものが2つとない、自然がおりなす表情だ。しかし、虫喰いの被害によって穴があいたり墨模様が入った木材は、「使えない」という考えから多くが山に放置されたり、おが屑などに加工されているのが現状である。

そんな里山の状況や、木に関わる人たちの状況を危惧し、富山県にある尾山製材株式会社は虫喰い材を使ったブランド「RetRe(リツリ)」を立ち上げた。デザインは富山県の鋳物メーカーのデザインなどを多く手がける、BLOCK DESIGNの山崎義樹氏が担当。

RetReの花器はどっしりとした形の「筒」と「ボビン」の2種類。両方とも「旋盤加工」という、回転させた木材を削り出して成形する方法で作られている。ドライフラワーはもちろん、小さなガラス管が付属しているので生花を生けることも可能だ。

ナラ材などの広葉樹は木の辺部分の傷や虫喰い跡に菌が入ると、スポルテッドウッドと呼ばれる黒い墨模様が入り、面白い表情が出る。その広葉樹特有の表情の面白さを伝えたいと、ブランドではこのほかにも鍋敷きやカトラリーレスト、フローリングなどにも取り組んできた。

RetReというブランド名には、

・Re tree:使われなくなった木を道具として再生していく
・Re + Re:ブランドを通して里山再生を積み重ねていく

という2つの意味が含まれている。

尾山製材株式会社代表の尾山嘉彦氏は、「これまで流通してこなかった富山県産の虫喰いナラ材を活用して、林業→製材業→木加工業者→販売業という流れにより地域の山へ利益を還元する仕組みを作る。地域の山や虫喰いナラ材を通じて、木に携わる仕事をしている人たちと利益を共有し、後世に残せる仕組みづくりをしていくことが私の考える“里山再生”です」と、話す。

これまで廃材とされてきた木材を活用し、マイナスをプラスの印象に変えた製品の、自然だけがつくり出せる表情を手に取っていただきたい。

デザイナー:山崎 義樹

1976年富山県生まれ。富山県高岡市の鋳物メーカーやデザイン事務所に勤務し、製造・設計・デザインの現場を経て、2011年BLOCKDESIGN設立。現場から感じることを大切にし、メーカーのデザイン・ブランドディレクションを手がける。

虫喰いの花器 筒

サイズ 直径63×H93mm
樹種 ナラ
仕上げ みつろうクリーム
価格(税抜) 5,500円

虫喰いの花器 ボビン

サイズ 直径82×H180mm
樹種 ナラ
仕上げ みつろうクリーム
価格(税抜) 12,500円