第153回 志村信裕 (アーティスト)

[桐山登士樹の推薦文]

ヴィジュアルコミュニケーションは、これからの産業を担う重要な役割を担っている。この数年、この分野のクリエーターに注目しチェックしてきたが、その中で目に留まったアーティストが志村信裕さんである。昨年の夏、黄金町バザール2011「まちをつくるこえ」に出向き「Iace2011」ほか作品を見せていただいた。この時、日常的に溢れているモノ(大量消費材)に着眼し、新たな映像としての生命を与えている点に興味を持った。例えば、待ち針やゼムクリップ、ボタン、鈴などである。そこで志村さんに、このイメージングの世界を越えた作品を作れないかと話を持ちかけた。それが先ほどキヤノンから発表されたミラノサローネ、NEOREAL IN THE FORESTである。現在、完成度の高い作品制作の真っただ中にいるが、ハイテク技術を生かすには、アーティストの鋭い時代を捉える感性が必要である。そして、それはハイテクのオンパレードよりどこかアナログの味(人間味)がマッチングすると信じている。私たちは日々感覚を信じ、感覚で判断し、生きている。それだけに深層に入り込む作品を強くリクエストしている。

デザインディレクター桐山登士樹

桐山登士樹

デザインディレクター

デザインの可能性を探っていきたい。そんなことを考えて30年。さまざまなプロジェクトを通じて、デザインの力をアピールしています。

志村信裕(アーティスト)

志村信裕(アーティスト)

1982年東京都生まれ。2007年武蔵野美術大学大学院映像コース修了。「光をあてる」をテーマに、これまで一貫して映像プロジェクションによるインスタレーションを発表。身近なものを題材にした実写映像を日常風景に重ねあわせることで、見慣れた風景に新たな視点をつくりだす。近年では代表作《赤い靴》をきっかけに国内外のパブリックスペースを中心とした屋外プロジェクトにも多数参加し、その表現は場所に限定することなく自由に展開される。2007年NHKデジスタ・アウォード2007インタラクティブ/インスタレーション部門グランプリ、2011年地域が選ぶ黄金町バザール賞を受賞。
http://nshimu.blogspot.com/