デザインの芽

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目指すは「差し替え式」が当たり前に溶け込むこと-新しいシャンプー容器「SPOPS」(2)

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目指すは「差し替え式」が当たり前に溶け込むこと-新しいシャンプー容器「SPOPS」(2)
日本製紙株式会社
世界初(*)となるシャンプーの“差し替え”容器「SPOPS」

「SPOPS」がもたらすさまざまなメリット

野田:SPOPSは、消費者にとって詰め替えの手間を省けるメリットがありますが、メーカーや流通における利点も考慮しました。メーカー側にとっては、製造設備が1種類で済むのが大きなメリットではないでしょうか。従来の「詰め替え式」は、ボトルとパウチの2種類がありますので、それぞれに充填するために製造設備も2種類必要です。SPOPSはカートリッジのみへの充填で済みますので、製造工程が簡略化されます。

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流通の面では、梱包と輸送効率の向上です。パウチはダンボールへの梱包時に隙間ができますが、箱型のSPOPSのカートリッジは隙間なく詰められます。同じ大きさのダンボールを使用して詰めた場合、SPOPSならダンボールの容量を45%カットすることが可能です。結果的にトラック1台あたりの積載効率が上がり、CO2の削減にもつながります。

奥出:「人々の暮らしを豊かにする」という点でいえば、親子間のコミュニケーションのあり方にもつながるかもしれません。シャンプーの詰め替えって子どもはこぼしてしまうので、おそらくお手伝いの範疇ではないと思うんです。でも、簡単に差し替えられるSPOPSなら、子どもも楽しく参加できるのではないかと感じています。

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高嶋:子どもはおそらく、プスッと差した時の感触というか、気持ちよさが好きだと思うんです。だから率先してやりたがるでしょうし、親もあまり手を煩わせることなく子どものお手伝いを見守ることができるのかなと。SPOPSが親子間のコミュニケーションツールになればいいね、なんてみんなで話しています。

<「SPOPS」の差し替え方法> 「SPOPS」は、外側のディスペンサー部分と内側のカートリッジ(紙パック)部分に分かれた構成となっている。ディスペンサーの下側部分を引き抜き、古いカートリッジを新しいカートリッジに交換後、ディスペンサーの上部を上から差しこむことで内容物の交換が完了する

<「SPOPS」の差し替え方法>
「SPOPS」は、外側のディスペンサー部分と内側のカートリッジ(紙パック)部分に分かれた構成となっている。ディスペンサーの下側部分を引き抜き、古いカートリッジを新しいカートリッジに交換後、ディスペンサーの上部を上から差しこむことで内容物の交換が完了する

野田:「プスッと差した時の感触」ということで、よく聞かれるSPOPSというネーミングですが、実はなんてことはないんです。商品名をメンバーに考えてもらった時に、プロジェクトの若手メンバーが「スポッと抜いてプスッと差すからスポップスってどうですか?」と。満場一致で決まりました(笑)。

奥出:ローマ字にした時に、左から読んでも右から読んでもSPOPSだしいいねってことでね(笑)。

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高嶋:SPOPSのすごいところは、驚くような新しい技術ではなく、今ある技術を組み合わせてまったく新しいシステムを構築したところだと思います。優れたイノベーションほど、実はそういうものだと僕は思っています。ロゴを考える際にもそれを念頭に置き、奇抜なものよりスタンダードで誰もが普通に読めるものにしようと考えました。エコ的な要素も取り入れたいと思ったので、「O」を矢印で回転させるイメージに。「P」は「プスッ」と差すノズルの先端を思い浮かべていただけると思います。

「P」は「プスッ」と差すノズルの先端をイメージし、「O」は矢印で回転させるエコ的な要素も取り入れた、SPOPSのロゴ

「P」は「プスッ」と差すノズルの先端をイメージし、「O」は矢印で回転させるエコ的な要素も取り入れた、SPOPSのロゴ

「TOKYO PACK 2016」で世界初披露

金子:いろいろな試行錯誤の末に、今ようやくでき上がったのがSPOPSという仕組みです。次の段階では、「実際に使ってみよう」というお客様と実際に話を進めていかないことには、商品化ははじまりません。そうしたお客様(メーカー)と出会う場が、10月4日から10月7日に開催される「TOKYO PACK 2016(東京国際包装展)」だと思っています。SPOPSの初公開の場でもあります。日本で最大の包装の展示会なので、残りの時間をフルに使って、お客様が私たちのブースに足を運んでいただけるような仕掛けを考えたいと思っています。そのためにエレガンスや和のテイストなどデザインバリエーションを増やし、お客様がイメージしやすいプロトタイプを用意するつもりです。

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高嶋:SPOPSのお話をいただいて私たちが思ったのが、ある1社のメーカーに買っていただいて、そこの商品として採用される未来ももちろんあるのですが、製品がすごくいいものなので、1社に限定せずあらゆるメーカーに採用されてほしいなと。外側のディスペンサーを、シャンプーメーカーさんだけでなく例えば家具メーカーさんなどにもつくっていただいて、消費者の方が気に入ったものを購入して差し替える。そういう未来の方が絶対おもしろいと思うんです。SPOPSという規格が世の中に浸透して、雑貨店やインテリアショップにディスペンサーを買いに行ったとします。これがいいなと思ってディスペンサーの裏を見ると、「SPOPS」と書いてある。「あ、差せるんだな」と。そういう形が理想ですよね。

金子:もしかしたらアイフォンケースみたいに、サードパーティーがそれこそいろんなディスペンサーをつくる未来があるかもしれないですね。

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「差し替え式」が当たり前の世の中に

野田:僕も、いつの間にか差し替え式が人々の生活に溶け込んでいるのが理想だと感じます。例えばコンビニのおにぎりですが、最初は「おにぎりにわざわざお金を出して買うなんて……」という感覚だったと思うんです。でも、いつの間にか当たり前のようにみんなが買っていますよね。そんなふうに、最初は「え?」と思ったことが、気づいたら人々の生活に当たり前のように溶け込んでいる。近い将来、SPOPSがそうなってほしいというのが今の僕の夢ですね。

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奥出:差し替えが当たり前になってほしいという想いは私も同じです。そして消費者が普通に手にとってレジに持っていく姿を、後ろからこっそり見てみたいですね。極端な話、SPOPSが人々の生活に溶け込んでくれれば、日本製紙がつくったものだと知られなくてもいいんです。牛乳パックの世界でもわれわれがつくっているという認識は、消費者の方にはないですよね。それくらい馴染んでほしいと思っています。

金子:そういった意味では、私たちは本当に黒子なんです。消費者の方は日本製紙だからではなく、メーカーさんのブランドで買っていくわけですよね。僕がずっとやってきたのは出版用紙ですが、すごくいい紙ができても、読者はどこの誰がつくったものなのかはわかりません。でも書店で手にとって、レジに持っていく。それを僕らは陰から見ているわけですよ。売れたら裏で「よしっ!」と思わずガッツポーズ(笑)。それがメーカーの密かな楽しみなんです。SPOPSはシャンプーの常識を変える可能性のある製品です。紙の新しい領域がまたひとつ実現できれば、おもしろくなるのではないでしょうか。

取材・文:開洋美 撮影:葛西亜理沙

日本製紙株式会社
http://www.nipponpapergroup.com/