デザインのチカラ

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INTERVIEW 22 Haier 既成概念を捨て去り、新しい家電を世に送り出す

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INTERVIEW 22

ハイアールアジアR&D株式会社 デザイングループ 既成概念を捨て去り、新しい家電を世に送り出す

ハイアールアジアR&D株式会社 デザイングループ 草瀬真吾氏(ディレクター)、小助川和宏氏(マネージャー)、石浜真也氏、佐藤周氏

2015.09.16

ハイアール アジアが日本と東南アジア向けに展開する家電ブランド、AQUA(アクア)の勢いに注目が集まっている。従来の洗濯機や冷蔵庫とは一線を画す発想はどのように生まれ、実現できたのか。各製品のデザインに迫る。

叩き洗いという行為を形にした「コトン」

ハイアール アジア R&Dデザイングループ マネージャー 小助川和宏氏は、三洋電機入社後、先行開発や白物家電シリーズを担当。電子レンジやオーブンレンジ、食器洗い機、洗濯機を中心にデザインを手がけてきた。

小助川氏が開発初期から携わってきた「COTON(以下、コトン)」は、手のひらに収まるサイズのハンディ洗濯機。洗濯物の部分洗い、特に汚れを叩いて落とすという行為に形を与え、今までにはない機能性が手軽さとともに具現化されたアイテムだ。

洗濯に必要な技術的要素を変えず、機能と形をシンプルにし、わずか5ccの水をタンクに入れてスイッチを入れれば、簡単に汚れを落とす。出先で服を不意に汚してしまったとき、ハンカチで叩いたり部分的に水で洗ったりした経験は誰にでもあるだろう。そこから生まれたアイデアだ。

小助川 和宏
小助川 和宏 こすけがわ かずひろ
ハイアールアジアR&D株式会社 デザイングループ マネージャー
1989年三洋電機㈱に入社。洗濯機、電子レンジ、食器洗い乾燥機等の白物を中心とした家電商品のデザインおよび先行開発業務に従事。2012年から、AQUAブランドの洗濯機関連商品のデザインを担当。2014年、ハンディ洗濯機COTONのデザインを担当。現在ハイアールアジアの商品全般のデザインに携わっている。

小助川:部分洗いはもともと中国で定着していて、汚れたところだけ洗い、またすぐに着るという文化がありました。それを製品にしてみようと、中国の青島で業務用洗濯機を製造していた開発拠点との技術交流からスタートしたプロジェクトです。そこにデザイナーとして加わったのですが、もともと大きな業務用を扱う部署とのプロジェクトなので、お互いに新鮮な試みでした。

業務用洗濯機にはシミ取りなどの専門技術も必要とされてきた背景もあり、小型の部分洗い洗濯機にも、その経験は活かされている。

小助川:よりきれいに落とせる性能に特化し、叩き洗いという昔からある洗い方を機械化することで手軽に、かつ、確実に落とせるように開発していきました。アイデアの発端は中国のプロジェクトから出ましたが、製品は日本先行で出すことになりました。その後、中国でも発売しています。

洗面所に置いておける小さなもので、出かけるときには鞄に入れやすいサイズ。それを考えていったとき、据え置き型の機器よりも、ハンディさがキーになるという方向が見えてきた。

小助川:食べこぼしやちょっとしたシミは、汚れたらすぐに落とすことが大切なので、洗濯機を持ち運べることは非常に有効です。すぐに洗うという時間軸を味方にすることで性能が高まりますから、一つの武器だと思いますね。製品が完成したことによって、いろいろな使い方が想像できますし、話題にもなりました。新しい製品が起点となり、用途が広がる特別な事例だと自負しています。

色と素材でパーソナル感を演出

ハンディ洗濯機「COTON」
ハンディ洗濯機「COTON」
時間をおかずに洗濯できると、汚れはさらに落ちやすい
時間をおかずに洗濯できると、汚れはさらに落ちやすい
追加された10色とカモフラージュ柄
追加された10色とカモフラージュ柄

片手で持てるコトンはシンプルな筒形。外装にはアルマイトのパイプを使用し、樹脂の成型品にはない手触りと触感を重視したデザインで上質感を高めている。

小助川:持ち運べる利便性が重要な価値です。よりコンパクトでパーソナルな洗濯機を目指したので、それなりの質感やモノとしての魅力を備えたい、とデザインしていきました。パーソナルな製品は、触った感覚が重視されるので、開発中から手触りの質感を大切に考えてきました。近年、家電の嗜好品化が進んでいるので、直接手で持つ筒形の外装部分はアルマイト仕様だけでなく、塗装や転写プリントによるカモフラージュ柄も揃えてパーソナル感を高めています。

メイン機種は、オレンジをキーカラーにグレーとピンクの3色。その後10色を投入しカモフラージュも3柄を追加。転写プリントが可能なので、有名キャラクター等とのコラボレーションも今後、さらに増える。

小助川:実は、カモフラージュ柄では、企画や営業担当と戦いました(笑)。メイン機種と同様にブランドロゴが入っているのが当たり前だと主張するので、それじゃあカモフラージュにならないでしょう、と。最終的に、外観にはロゴも番号も入れずに進めることができました。

「コトン」というネーミングは、「ことこと洗う」といったイメージから音感で決まった。部分洗いについて潜在ニーズはあったはずだが、特化した小型な製品は存在しなかった。新カテゴリーの開発に幅広くチャレンジする姿勢が現れた好例だろう。

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株式会社イマジカデジタルスケープ

1995年の創業以来、デジタルコンテンツのクリエイターの育成・供給、及びコンテンツ制作サービスをコアビジネスとして展開。現在では国内最大規模のクリエイター人材のコンサルティング企業として、企業とクリエイター、双方への支援を行っています。http://www.dsp.co.jp/