デザインのチカラ

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INTERVIEW 19 Panasonic チームワークから生み出された美容家電

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INTERVIEW 19

Panasonic チームワークから生み出された美容家電

パナソニック株式会社 デザインカンパニー アプライアンスデザインセンター 村松悦司氏(チームリーダー) 渡邊亜弥氏(主任意匠技師) 堂本夏菜氏、パナソニック株式会社 アプライアンス社 ビューティ・リビング事業部 商品企画グループ スタイラ・アイロン商品企画チーム 清藤美里氏(チームリーダー)

2014.10.01

女性の潜在ニーズを掘り起こした「頭皮ケア」

「女性は現状に満足しない生き物」。ビューティ・リビング事業部商品企画グループ スタイラ・アイロン商品企画チームリーダー 清藤美里氏は、女性特有の美に対する向上心に着目してきた。

頭皮エステ ラインナップ
頭皮エステ 新旧形状比較

清藤:とてもキレイになったとしてもさらに美しく、という願望欲求に応えられるよう、技術改良を重ねています。私自身はナノケアドライヤーのお客様に興味がありました。というのも、ドライヤーの平均単価3000円以下に対しナノケアドライヤーは高単価商品です。にも関わらず、初代が発売されてすぐに購入したお客様がいらっしゃる。その方々の関心がどういった方向にあるのかを定期的に調査してきました。そこから、髪の本質ケアに目を向けるようになったんです。

堂本 夏菜 パナソニック株式会社 デザインカンパニー アプライアンスデザインセンター
堂本 夏菜 どうもと かな
パナソニック株式会社 デザインカンパニー アプライアンスデザインセンター
2009年入社。配属後、頭皮エステのデザインを担当。その後、ポケットドルツ、ナノケアスチーマーなどを手掛ける。2013年からは「Mi-ta-me Up」シリーズのデザイン開発に主担当として携わっている。

髪の毛を表面上で美しくすることと、どんな違いがあるのか。美容の専門家に話を聞いたり、学会資料をあたったり、様々なアプローチで本質ケアを深堀りした結果、頭皮ケアにたどり着いた。ナノケアドライヤーと連携する商品と位置づけることで予算を得て、総合的な頭髪ケア商品開発が始まった。

シャンプー時に頭皮を動かしながら洗浄する商品「頭皮エステ」が発売になったのは、2011年。企画には5年もかかった。世の中のトレンドやニーズの変化とともに紆余曲折あり、なかなか形にならなかったが、デザイナーとして加わったのが当時、新入社員だった堂本夏菜氏。入社して手がけた、最初の商品になった。

堂本:当初は、頭皮ケアというと男性用というイメージが強く、それを払拭するデザインから考え始めました。女性が隠したくなってしまうものではなく、お風呂場に自然と置いてもらえるようにしたかったですね。

手のひらで包み込むような形の初代機を経て、シャンプーや石けんで手が滑るという意見も受けながら、2代目でも改良を重ね、現行の3代目では指をしっかり入れて持つ形に工夫されている。

新しい習慣を与えるデザイン

全く新しい習慣として提案する「頭皮エステ」。購入しても面倒くさく、仕舞い込んでしまうようではアウト。継続使用してもらうためには、日常的に手の届く場所に置いておけるサイズが必要だった。デザインにあたり、堂本氏は一般的なユニットバスの棚サイズを調べたという。

堂本:プロダクトとして可愛らしくしたかったので円形のデザイン案もありましたが、それだと外周が130ミリほどになり、洗面台や浴室の一般的な棚には乗らないことが分かりました。約94ミリが棚の平均的なサイズだったので、90ミリにしよう、と。でも丸みは残したいので全体的に大きなRをかけています。設計の担当者からも大きくしたいという意見が出ますが、デザインで絶対に譲れないのは大きさでしたね。1日のうちで頭皮ケアをするのはほんの4分程度です。残りの23時間56分をどう収めておけるか、充電はどうするのか…。使っていないときのスタイリングまで考えなければなりません。本体を乾燥させるためにも、ブラシ面を上にするのではなく水抜きトレイを用意するなど、お客様の生活スタイルに合うものでありたいと考えました。

本体は、頭皮をしっかり動かすための回転方向に即した正しい持ち方が決まっている。シャンプーをしながらでも手探りで間違えなく持てるように、細部にまで気を配った。

堂本:それまで男性用だと思われてきた頭皮ケア商品を女性でも違和感なく扱ってもらえる、認知してもらえるようになったのはひとつの成果だと実感しています。

ナノケアドライヤーと共に、パナソニックの美容家電を象徴する商品へと成長しつつある「頭皮エステ」は、男性用のアタッチメント、キャンドルの灯りを思わせる光るモードなど、ニーズに合わせて進化し続けている。チームリーダーの村松悦司氏は、「最初に世の中に商品が出たときに、印象づける形は非常に大切。お客様がシルエットだけで記憶して、それを探しに店頭へ向かい、そこで見つけ出していただけるアイコン的なデザインを確立することが重要」だと強調する。

村松:デザインも企画も、設計の担当者もお客様の顔を思い浮かべながら考える姿勢に違いはありません。チームの全員が調査に立ち会い、人から聞いた調査結果ではなく、自分自身が聞いた生の声を咀嚼していく。デザインに求められる大切な姿勢だと考えています。

新しい市場を切り拓くデザインが、独善的であってはならない。求められる機能や習慣に最適な形を与えるのが、デザインの大きな役割のひとつだろう。


取材協力:
パナソニック株式会社 http://panasonic.jp/
パナソニックデザイン http://panasonic.co.jp/design/


インタビュー:高橋美礼 撮影:永友啓美

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株式会社イマジカデジタルスケープ

1995年の創業以来、デジタルコンテンツのクリエイターの育成・供給、及びコンテンツ制作サービスをコアビジネスとして展開。現在では国内最大規模のクリエイター人材のコンサルティング企業として、企業とクリエイター、双方への支援を行っています。http://www.dsp.co.jp/


パナソニック美容家電チームが一緒に働きたい人材像についてお聞きしました

全社的には「新しいことを生み出すために、能動的に、時には周囲を巻き込んで動ける人。コミュニケーション能力と語学力も大切」とのことです。以下、取材にご対応いただいた皆様から一言頂きました。

「デザイナーとして好む形が、一般に受け入れられるとは限らないことを、お客様目線から学ぶことができる。その経験を積み重ねることが大切です」(堂本夏菜氏)

「独自の考えをきちんと持ち、それを周囲に伝えたり、デザインで表現できることが大切です。広く・浅くでも良し、狭く・深くでも良い。異業種が集まって成立するプロジェクトチームの中で、個性を活かせる人であってほしい」(村松悦司氏)

「デザイナーが陥りがちな『これ、かっこいいでしょ』という感覚は、組織内では通用しません。逆に、苦手意識を持つことがプラスに働くこともあります。コンプレックスがあるから、それを乗り越えようとする自分なりの方程式を身につけて、実力を伸ばそうと努力する姿勢を持ち続けてほしいと思います」(渡邊亜弥氏)

「マーケティングの仕事は、ノウハウを持っていても、ひとりでは役に立ちません。チームとして心をひとつにするために、企画担当者としては自分自身に強い軸を持っていることが必要だと思っています。私は“心のパンデミック現象”と呼んでいますが、人と共通項を持つことが大切です。そのために、素直に心を開いて、相手を知り、デザインや技術などの壁を感じずに全てを吸収する力を身につけてほしいと思います」(清藤美里氏)