デザインのチカラ

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INTERVIEW 19 Panasonic チームワークから生み出された美容家電

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INTERVIEW 19

Panasonic チームワークから生み出された美容家電

パナソニック株式会社 デザインカンパニー アプライアンスデザインセンター 村松悦司氏(チームリーダー) 渡邊亜弥氏(主任意匠技師) 堂本夏菜氏、パナソニック株式会社 アプライアンス社 ビューティ・リビング事業部 商品企画グループ スタイラ・アイロン商品企画チーム 清藤美里氏(チームリーダー)

2014.09.17

新しいデザインの領域として注目を集める“美容家電”。従来になかった商品を世に送り出すことで消費者の潜在的ニーズを掘り起こしてきたのは、ヘアードライヤー「ナノケア」に代表される一連の美容家電を手がけるパナソニックのデザインだ。その背景にあるデザイン哲学について、デザインカンパニーの村松悦司氏、渡邊亜弥氏、堂本夏菜氏、そして商品企画の清藤美里氏に話を伺った。

すべての源にあるデザインフィロソフィー

村松悦司 パナソニック株式会社 デザインカンパニー アプライアンスデザインセンター チームリーダー
村松悦司 むらまつ えつし
パナソニック株式会社 デザインカンパニー アプライアンスデザインセンター チームリーダー
1989年入社。メンズシェーバーやドライヤーなどの理美容家電、マッサージチェアやジョーバ―などの健康家電のデザイン開発担当などを歴任。現在は主に女性向けビューティ関連商品とオーラルケア商品全般のデザインマネージメントを担っている。

パナソニックが掲げるデザインフィロソフィー「Future Craft」。全ての商品デザインに一貫するこの哲学は、当然ながら美容家電にも踏襲されている。デザインカンパニー アプライアンスデザインセンター チームリーダーの村松悦司氏は、「デザインフィロソフィーFuture Craftの要件である、『憧れを魅せる』『誠実に造り込む』『人を見つめる』『地球と共に』をデザイン開発の根底に置いています」と話す。

村松:女性が中心になる商品が多いので、女性特有のライフスタイルや価値観が前提になります。Future Craftの4つの要件を追求しながら、ユーザー理解が特に重要という意味で、『人を見つめる』ための様々な取り組みをしています。

美容関連の商品群は、ヘアケア、フェイスケア、ボディケアの3カテゴリーで構成されている。村松氏は入社以来、長年にわたって美容家電を担当してきた。

村松:最近では女性に限らず、若い男性が使うようになった美容商品もあり、身だしなみの価値観が高まっていることを実感します。その点では、女性だけ、あるいは男性だけを意識するのではないものづくりだと言えますね。他のプロダクトとは少し異なるかもしれません。たとえば、メンズシェーバーのデザインだとしても、女性が男性にプレゼントするという視点で捉えることも大切になってきます。企画や開発の担当者など商品に関わるメンバー全員が集まって新商品づくりに着手します。企画担当者と一緒にユーザー調査してその結果をデザインに盛り込んでいきますし、できる限り最初から関わるようにしています。

村松氏とともに商品開発に携わってきたのは、ビューティ・リビング事業部商品企画グループ スタイラ・アイロン商品企画チーム チームリーダー 清藤美里氏だ。

清藤:一心同体、ひとつのプロジェクトチームとしてお客様の顔を見ながら進めるのが、私たちの商品開発です。各々の専門分野に軸を置きながらも、互いに垣根なく意見を交わしながら新しいものを考え出せる環境が強みだと思っています。

常に“お客様目線”で考える

清藤美里 きよふじ みさと パナソニック株式会社 アプライアンス社 ビューティ・リビング事業部 商品企画グループ スタイラ・アイロン商品企画チーム チームリーダー
清藤美里 きよふじ みさと
パナソニック株式会社 アプライアンス社 ビューティ・リビング事業部 商品企画グループ スタイラ・アイロン商品企画チーム チームリーダー
2000年入社。携帯電話用のデバイスのBtoB営業を経験した後、社内公募制度を利用し、現職のビューティ商品企画に異動。ナノケアドライヤー、頭皮エステなど様々な商品企画を担当。現在は全世界向けのヘアケア・衣類アイロン商品の企画と戦略立案を担当。
ヘアードライヤー「ナノケア」
ヘアードライヤー「ナノケア」

市場にない全く新しい商品を生み出すために、デザインや企画といった部署の垣根を越え、常にメンバーが集まり向き合っている。

清藤:気をつけているのは、常にお客様目線でいることです。技術やデザインはどうしても専門的な視点に寄っていくことが多くなりますが、そこはマインドを統一してお客様目線でいよう、と話しています。お互いがイメージするお客様の顔が、同じに見えるように、認識をひとつにする感覚です。

開発商品によって、見つめる顧客の顔は毎回違う。戦略上、尖った感性の顧客をターゲットにして、そこから広めていくようなマーケティングもあれば、最初からマスを狙う考え方もある。

清藤:例えば、『ヘアードライヤー ナノケア』は現在、年間約70万台を売り上げるヒット商品です。ヘアードライヤーとしては高単価商品にも関わらず、すでにお客様に受け入れられている市場に育っています。一方で、頭皮エステのように市場になかった商品を出すときには、最初からマスを狙うことはできません。まずは少ないニーズを確実に掴むためにも、感性の尖ったお客様を見ます。具体的には、仕事や年収、世帯構成、住居の情報など細かい部分まで想定してターゲット像を固め、その人に絶対に選ばれる商品を目指します。逆に言えば、その人に買ってもらえない商品は作らないという確固たる軸を持って進めています。

チームのメンバーで繰り返し行なうワークショップには、非常に時間をかける。実際に作ってみて、全員で議論を重ねるのが基本的姿勢なのだ。

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株式会社イマジカデジタルスケープ

1995年の創業以来、デジタルコンテンツのクリエイターの育成・供給、及びコンテンツ制作サービスをコアビジネスとして展開。現在では国内最大規模のクリエイター人材のコンサルティング企業として、企業とクリエイター、双方への支援を行っています。http://www.dsp.co.jp/


パナソニック美容家電チームが一緒に働きたい人材像についてお聞きしました

全社的には「新しいことを生み出すために、能動的に、時には周囲を巻き込んで動ける人。コミュニケーション能力と語学力も大切」とのことです。以下、取材にご対応いただいた皆様から一言頂きました。

「デザイナーとして好む形が、一般に受け入れられるとは限らないことを、お客様目線から学ぶことができる。その経験を積み重ねることが大切です」(堂本夏菜氏)

「独自の考えをきちんと持ち、それを周囲に伝えたり、デザインで表現できることが大切です。広く・浅くでも良し、狭く・深くでも良い。異業種が集まって成立するプロジェクトチームの中で、個性を活かせる人であってほしい」(村松悦司氏)

「デザイナーが陥りがちな『これ、かっこいいでしょ』という感覚は、組織内では通用しません。逆に、苦手意識を持つことがプラスに働くこともあります。コンプレックスがあるから、それを乗り越えようとする自分なりの方程式を身につけて、実力を伸ばそうと努力する姿勢を持ち続けてほしいと思います」(渡邊亜弥氏)

「マーケティングの仕事は、ノウハウを持っていても、ひとりでは役に立ちません。チームとして心をひとつにするために、企画担当者としては自分自身に強い軸を持っていることが必要だと思っています。私は“心のパンデミック現象”と呼んでいますが、人と共通項を持つことが大切です。そのために、素直に心を開いて、相手を知り、デザインや技術などの壁を感じずに全てを吸収する力を身につけてほしいと思います」(清藤美里氏)