「Experimental Creations」より、TAKT PROJECTの「Composition」

「Experimental Creations」より、TAKT PROJECTの「Composition」

プロダクトデザインを素材や実験から考える、そんな刺激を得られた展示を紹介

ブランドディレクター山崎泰の「design week @tokyo」通信(10月25日午後)

3週にわたるデザインウィークの折り返し点、10月25日は晴天に恵まれました。この日は、早朝からデザインウィークの核イベントであるTOKYO DESIGN WEEKを見たのですが、午後はちょっとマニアック(?)な観点で、プロダクトデザインに関連して素材づかいや加工に特徴のある展示を見て回りました。

<10月25日午後の訪問先>
・Objects by MAGIS
・MATERIAL DESIGN EXHIBITION
・Experimental Creations

Objects by MAGIS

会期:11月3日まで
会場:MAGIS東京ショールーム

昨年のデザインウィークでは、椅子やテーブルの製造過程をカットモデルと映像で見せてくれたMAGIS。様々な素材をどのように扱っているかが良く分かりました。素材使いやフォルムがユニークなMAGISの製品ですが、今年はその製品自体をオブジェとして扱い、コンテンポラリーなインテリアの中で見せるプレゼンテーションでした。

「Objects by MAGIS」にて

「Objects by MAGIS」にて

壁面にはデンマークのKvadrat社のテキスタイル。これは、カーテン用のテキスタイルという訳ではなく椅子などに用いるもの。色合いがMAGISの家具たちと絶妙な組み合わせです。床面の一部には無垢のフローリングが敷かれ、柄がなく均一な調子である家具や壁面に、ナチュラルな木目でアクセントを加えています。

「Objects by MAGIS」にて、銅色の脚と白いシェルの縁取り。iPhoneにゴールドが出て、ピンクゴールドが追加されましたが、銅の赤い色も市場の要請でしょうか

「Objects by MAGIS」にて、銅色の脚と白いシェルの縁取り。iPhoneにゴールドが出て、ピンクゴールドが追加されましたが、銅の赤い色も市場の要請でしょうか

それぞれの椅子の素材も、樹脂、木、金属と様々。

「Objects by MAGIS」にて、2016年の発表に向けて試作中の椅子、この形はどうやったら一体成形できるのだろうか?と思ってまじまじと見てしまいました

「Objects by MAGIS」にて、2016年の発表に向けて試作中の椅子「この形はどうやったら一体成形できるのだろうか?」とまじまじと見てしまいました

MATERIAL DESIGN EXHIBITION

会期:12月25日まで
会場:Material ConneXion Tokyo

革新的でサステナブルな素材を世界中から集め、素材情報とコンサルティングを行うMaterial ConneXion。東京に拠点ができたのは2013年10月で、ものづくりに関わるデザイン関係者の大きな話題となりました。

専門家向けの場所ですが、12月25日までの平日はショールームの展示が公開されています。展示のディレクションはデザイナーの鈴木啓太さん。素材を提供するのは4社、それに応えるデザイナーは吉田真也さん、北川大輔さん、倉本仁さん、小池和也さん、福嶋賢二さんと橋本崇秀さんの5組です。

「MATERIAL DESIGN EXHIBITION」にて、吉田真也さんによる「piece of flame」、旭硝子のGlasceneを使った提案。火はガラスの製造に不可欠、また、美しいが触ることができない炎と鋭角なガラスの関係も連想され、ガラスに映像を投影できる素材の特性を引き出しています

「MATERIAL DESIGN EXHIBITION」にて、吉田真也さんによる「piece of flame」、旭硝子のGlasceneを使った提案。ガラスに映像を投影できる素材の特性を、炎のオブジェとして表現

「MATERIAL DESIGN EXHIBITION」にて、北川大輔さんによる「Fasten」、NBCメッシュテックのポリエステルメッシュTB30を使った提案、メッシュなのに水をためることができる驚き

「MATERIAL DESIGN EXHIBITION」にて、北川大輔さんによる「Fasten」、NBCメッシュテックのポリエステルメッシュTB30を使った提案、メッシュなのに水をためることができる驚き

「MATERIAL DESIGN EXHIBITION」にて、倉本仁さんによる「Phantom tray」、NBCメッシュテックのポリエステルメッシュTB30を使った提案、素材の表情を活かしながら小物入れという機能を与えています

「MATERIAL DESIGN EXHIBITION」にて、倉本仁さんによる「Phantom tray」、NBCメッシュテックのポリエステルメッシュTB30を使った提案、素材の表情を活かしながら小物入れという機能を与えています

「MATERIAL DESIGN EXHIBITION」にて、小池和也さんによる「decresc series」、岐センの染色ツキ板を使った提案、木目は連続しているが色が段階的に変わり、フラットな家具が立体感や奥行きを伴って見えます

「MATERIAL DESIGN EXHIBITION」にて、小池和也さんによる「decresc series」、岐セン株式会社の染色ツキ板を使った提案、木目は連続しながら色が段階的に変わり、フラットな家具が立体感や奥行きを伴って見えます

「MATERIAL DESIGN EXHIBITION」にて、福嶋賢二さんと橋本崇秀さんによる「Japanese paper cord」、ダイワボウノイの紙糸OJO+を使った提案、糸をよって太くして染色しています。紙のコードを使った椅子といえばYチェアですが、色のコーディネートから金色に

「MATERIAL DESIGN EXHIBITION」にて、福嶋賢二さんと橋本崇秀さんによる「Japanese paper cord」、ダイワボウノイの紙糸OJO+を使った提案、糸をよって太くして染色しています。紙のコードを使った超定番椅子であるYチェアでプレゼンテーション

Experimental Creations

会期:10月27日まで
会場:LIGHT BOX STUDIO AOYAMA 3F

3回目となるExperimental Creations。初めて見たのは昨年ですがとても面白くて、今年も楽しみにしていた展示の一つ。とは言っても、様々なイベントがあるデザインウィークの中では分かりにくい部類かもしれません。ポジティブに言えば通好み。

というのは、デザイナーによる素材や加工の実験を展示しているからです。実験しているデザイナー自身も、その可能性を探っている途中。デザインとして結実する前の前段階を一緒に見てあれこれ考える、というようなスタンスで臨めると、とても楽しめます。

同じ会場の1Fと2Fでは5回目となる「青フェス」が開かれていました。青フェスはCMFの展覧会。CMFというのはColor、Material、Finishの略で、文字通り色や素材や加工に関連する15社が出展しています。こちらも素材や加工に関心がある方には必見なのですが、通好みであることは同じかもしれません。

昨年は、この青フェス会場の一角で開催していたExperimental Creations。今年は、3F全部を使って一点一点をゆったりと配置。ただ、3Fとは屋上のことなので仮設の屋根も作られて、それも含めてExperimental(実験用の)という雰囲気でした。

「Experimental Creations」にて、STUDIO BYCOLOR 秋山かおりさんによる「動の和紙 WASHI do」、エキスパンドメタルに絡みつく和紙の表情が面白いです

「Experimental Creations」にて、STUDIO BYCOLOR 秋山かおりさんによる「動の和紙 WASHI do」、エキスパンドメタルに絡みつく和紙の表情が面白いです

「Experimental Creations」にて、早川和彦さんによる「Concretone」、コンクリートに顔料を混ぜてできる偶然の柄、なんだか美味しそうです

「Experimental Creations」にて、早川和彦さんによる「Concretone」、コンクリートに顔料を混ぜてできる偶然の柄、なんだか美味しそうです

「Experimental Creations」にて、TAKT PROJECTによる「Composition」、アクリル樹脂に電子部品を封入してできた懐中電灯、充電は非接触、モーションセンサーによるOnOffなので外側にボタンなどは無い

「Experimental Creations」にて、TAKT PROJECTによる「Composition」、アクリル樹脂に電子部品を封入してできた懐中電灯、充電は非接触、モーションセンサーによるOnOffなので外側にボタンなどはありません

素材自体をクリエイティブな発想で「実験」してクリエイションすることでデザインの可能性を広げよう、というExperimental Creations。写真を紹介した3組の他には、AZUCHI、kamina&C、工藤健太郎さん、小宮山洋さん、富松暖さん、花澤啓太さん、松田優さん、吉田真也さんが参加していました。

デザインが生まれる前の新たな種を探るような企画なので、それぞれの展示から刺激を受けて、場合によっては出展しているデザイナーと会話をして、新しい何かを考える、そんな場になっているように思います。

以上、午前はTOKYO DESIGN WEEKでデザインの広がりを考え、午後は素材と加工という観点からデザインの始まりを考えました。催しが集中する青山エリアは、歩き回るには素晴らしい場所です。万歩計を見ると、デザインウィーク中で最多となる1万8749歩と出ていました。