男前豆腐店株式会社内デザイン企画室「オレッチ」、の存在

新商品のネーミングやパッケージは、伊藤氏とデザイナーのロッキー氏のやりとりから形になる。


商品
商品の数々

伊藤 「アイデアが湧いたらロッキーに描いてもらって、もっとこうしようとかイメージをふくらませるキャッチボールをしながら進めます。次に出す新商品でこけるかこけないかっていう、1回勝負なんですよね! そんなのビビってたらしょうがないんで、やるしかないんですけど(笑)。急に新商品が出たり、なくなったり、スピードは早いです。やだな、と思ったものは出しておきたくないんですよね。作ったときはまずくないんですよ。でもだんだん他のが出て、おいしくなってきたときに振り返ってみて、お客さんが納得しないだろうと思う商品は、止めます。新しい味が見つかって、今までの作り方を見直していくうちに、1年前と今では作り方が全く違ってくることも少なくありません。
他のメーカーも今、世に出ている商品について研究するでしょうから、面白いものができるうちは、定番商品ができるのも先になるだろうな、とは思います。立ち上げてまだ2年なので、僕がネタ切れになるまでは突っ走ろうと思っています」


数々のインパクトある商品に共通するのは、デザインのストーリー性。そんなある種の世界観さえ感じられるパッケージや、関連グッズを生みだしているのが、社内のデザインチーム「オレッチ」だ。京都工場の正面入口を入ってすぐのところにある。現在、“社長懐刀”の肩書きを持つデザイナーのロッキー氏が、すべてを手がけている。


伊藤 「商品企画だけじゃなく、戦略的な部分も大きいんですよ。豆腐の作り方をすべて公開して見てもらうわけにはいかないけど、豆腐にもストーリーが必要だと思ったんです。お客さんに伝えるためには、ストーリーで見せるのもひとつのアイデア。それに、豆腐屋にデザイン室がある、なんていうのって、格好良いじゃないですか(笑)」


ロッキー氏
ロッキー氏

ロッキー氏(以下、ロッキー) 「子供が遊んでたら託児所みたいな雰囲気の場所ですね。入口近くにあるので、よく覗かれます。部屋に溢れるパッケージサンプル、と言えば聞こえが良いけど、片付いてないだけ、という感じもする(笑)」

伊藤 「僕は欲求を伝えて、ロッキーが采配をとる感じ。言葉でやり取りしたり、ラフスケッチをもとに話し合うこともあります。びしっとデザインが上がってきて、僕もおっ! と思うこともあれば、そうじゃなくてまた悶々と悩んだりすることもある。そういうときはたいてい、僕自身の中でまだ最終形が見えてないっていうことですね。
どうしても自分でこう、と思ったものができるまでは動きたくない、動けない、っていうのがあるんですよ。アイデアとやりたいことがぴったり重なれば、仕上がるのは早いです。豆腐と同時進行なので、味ができたときに形も見つかれば、ぱっとわかる。

これぐらいで抑えておいたほうが格好いい、というデザインのポイントはロッキーが良く知ってるんですが、わざとバランスを崩して気持ち悪くする、っていうのが、僕は好きなんですよね。
たとえば、築地魚河岸の発砲スチロールに、水で濡れても消えないようにクレヨンで書いてある雑な文字とか、漁船の大漁旗とかね。ガツンとした文字や色だったり、あとは商店の前掛けのデザインとか、デコトラに描かれている波飛沫だったり……ああいうのが大好きな世界です。でも“男前”って名乗っていても、体育会系じゃないですから、全然軟弱なんです(笑)」


伊藤氏自身が、たとえば「風に吹かれて豆腐屋ジョニー」のパッケージではセリフのような文字を全面に置く、というイメージを創出する。


伊藤 「豆腐売り場でこんなこと言われても、ってパッケージでしたけどね、それがインパクトの強さだと思います。
訴えたいことだけは自分の中にある。それに対して、今はロッキーが配置を決めてくれたり、デザインを加えてくれる。でもだいたい、僕がこうやってこうして、と言います。そこですごく上手にまとめてしまうことがあると、ダメダメ、もっと崩して、とかお願いしますね。すごい垢抜けちゃったりするときは特に」


ロッキー 「垢抜けさせることもあるんですけど、インパクトがあるまんま、生すぎるままだとちょっとマズイなあと思うこともあるんですね。どっか、確信犯的に伝わるようにしておきたいという場合とか」



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「interview 3 / 全国規模、そして世界にも進出する、店頭での展開」




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