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秋の東京デザイン特集2010
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[ REPORT ] TOKYO DESIGNERS WEEK 2010 レポート  開催概要  写真一覧

くらしと環境のために、デザインが出来ること。TOKYO DESIGNERS WEEK 2010(後編)

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世界に誇る技術をデザインの力で輝かせる。工房織座×SPREAD:ITO

 数多くの出展者でひしめくDESIGN TENT内で、鮮やかな色使いの織物に目を奪われました。愛媛県今治市の「工房織座」と、クリエイティブ・ユニット「SPREAD」のコラボレーションで生まれた「ITO(イト)」のブースです。カラーパレットのように並べられた、色とりどりのストール。その柔かく上質な肌触りからは、丁寧に丹精を込めて作られたことが感じとれます。
 2010年4月1日にデビューした「ITO」は、4種(WAVE/CONTRAST/FLASH/FOREST)19色からなる織物ブランドです。発売開始から一年も経たずに、2010年グッドデザイン賞、2010年アジアデザイン賞を受賞しました。いくつもの織物ブランドが既に存在するなかで、ITOが注目される理由はどこにあるのでしょう。

世界唯一の技術と織機を持つ「工房織座」

 質感の良さを売りにする織物の商品は、柔かさを連想させる淡い色使いと、ナチュラルなデザインが多くを占めます。ITOは対照的に、ビビットな色使いと特徴のある模様が印象的です。例えば、「WAVE」(写真22)は、平面である布に凹凸を感じる立体的なデザイン。「FLASH」(写真24)では、織りの世界の常識である水平・平行のラインをくつがえし、傾斜の織りで斜めのラインを実現しています。WAVEの「たてよこよろけもじり織り」、FLASHの「傾斜もじり織り」は、工房織座が開発した世界初の技術です。

 世界に誇る卓越した技術を持つ「工房織座」の代表をつとめるのは、織り職人の武田正利氏です。現在「ITO」の他に「KARAMI」ブランドも展開し、綿織物の産地・四国今治で織物の可能性を追求し続けています。40年近く今治のタオルメーカーに務めていた武田氏は、勤務の傍ら独自に織物の研究を重ね、独立。そして2007年、工房織座を設立しました。工房織座の今までと今後について、代表の武田氏にお話を伺いました。

_ 織物に惹かれた、最初のきっかけは何だったのでしょうか?

 以前勤めていたタオル会社に入社したのは1967年、16歳の時でした。当時の日本は高度成長期です。私の地元の今治市はタオル生産業が盛んで将来有望であると考え、織物の業界に勤め始めました。なので、初めから織物に惹かれて入社した訳ではありません。タオル会社に勤め、奥深い織物の世界に触れるうちに、その魅力にのめり込んでいきました。

_ 40年務めた企業を辞め、独立すると決めた一番の理由は?

「独立を決心したきっかけの一つに、勤めていた会社の社長が亡くなったことがあります。それを機に会社の体制が変わり、私は解雇されました。当時55歳です。地元の企業からも数社のオファーを頂きましたが、残りの人生で自分が納得できる織物作りをしたい、という気持ちが強くありました。業界で一般的な高速織物とは真逆の、低速で着尺の巾で、他には無い工房織座オリジナルの織物作りを始めました。」

 工房織座の製品は、世界に一つしかない「着尺一列機」で織られています。これは、武田氏が廃棄物として扱われていた昭和初期の織機を回収し、手を加えたオリジナル織機です。部品は既に販売が終了しているため、自らの手で作るそう。改良に改良を重ね、現在の姿に辿りつきました。
 着尺一列機では1枚1枚を職人の手で織るため、1日に30枚の限定生産です。現在主流の高速織機では成し得ない糸の交差や結びの技術で、美しく軽やかな織物に仕上がります。素材は厳選された最高級のコットン、リネン、ウールを用い、フリンジは全て手作業で付けられているそうです。

_ 現在、工房は何名で運営されているのですか?

「現在、工場にはアルバイト・パートを含む7名が在籍しています。初めは妻と知人の何名かに協力してもらい、織物づくりを始めました。その後、娘の英里子がUターンで今治にもどり、工房織座の営業や企画などに参画することになりました。今回のITOは、英里子のプロデュースによるものです。少しずつ事業を大きくしていくなかで人手も必要になり、前職のタオル会社の人脈からお願いしている方もいます。その後、織りは未経験でも当社のモノづくりに携わりたいという方も現れ、手伝って頂くことになりました。」

_ 工房織座の今後は、どのように発展していくのでしょう?

「社内体制がまだまだ個人企業のため、在庫管理、商品企画、販売システム、顧客管理、人材育成など、あらゆる面の体制を整えることは今後の課題です。しかし、10倍20倍と大きな会社にすることは考えておりません。設備や織機の関係もありますが、工房織座の考え方として、大量生産は望んでいないからです。  昨年より少し上を目指しながら、クオリティの高い織物作りが続けられたらと思います。もちろん、新しい織物作りの挑戦はずっと続けていくつもりです。」


 地域に根ざし、ひたむきに“織り”に挑み続ける姿勢は、作品に如実に表れるものです。工房織座の製品は、「21世紀えひめ伝統工芸大賞 準大賞」、「第三回ものづくり日本大賞 伝統技術の応用部門 経済産業大臣賞」を受賞し、高く評価されています。そして、今回「ITO」のトータルディレクションを手がけたSPREADとの出会いも、工房織座に大きな転機を与えました。

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「ITO」というネーミングには、織物の「糸」の他に「いと(=とても)」の意味を織り込んでいます。ロゴは、糸をインクで写しとった「糸拓」で制作。
【19】「ITO」というネーミングには、織物の「糸」の他に「いと(=とても)」の意味を織り込んでいます。ロゴは、糸をインクで写しとった「糸拓」で制作。

今治の企業「工房織座」とクリエイティブユニット「SPREAD」による織物ブランド「ITO」
【20】今治の企業「工房織座」とクリエイティブユニット「SPREAD」による織物ブランド「ITO」。

4種19色のストールがカラフルに並ぶ。
【21】4種19色のストールがカラフルに並ぶ。

「WAVE」凹凸を感じるデザインで「たゆたう波」を表現。
【22】「WAVE」凹凸を感じるデザインで「たゆたう波」を表現。

「CONTRAST」2色の糸で「対照・対比」を美しく表現。
【23】「CONTRAST」2色の糸で「対照・対比」を美しく表現。

「FLASH」。傾斜の織りで「光・ひらめき・感動」を表現。
【24】「FLASH」。傾斜の織りで「光・ひらめき・感動」を表現。

工房織座 工場の様子。
【25】工房織座 工場の様子。

工房織座オリジナル織機「着尺一列機」。
【26】工房織座オリジナル織機「着尺一列機」。

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