第18回 文化庁メディア芸術祭 受賞作品展
2015/01/21 UPDATE
アート、エンターテインメント、アニメーション、マンガの4部門において優れた作品を顕彰するメディア芸術の総合フェスティバル「文化庁メディア芸術祭」。今年は世界71の国と地域から3,853作品の応募があり、受賞作品が決定した。2015年2月4日から15日まで、東京・六本木の国立新美術館を中心に開催される受賞作品展を前に、各部門新人賞受賞者からエンターテインメント部門の香月 浩一氏とマンガ部門の阿部 共実氏にお話を聞いた。
Vol.1エンターテインメント部門新人賞 香月 浩一氏
― 文化庁メディア芸術祭にどういった印象を持たれていましたか。また、エンターテイメント部門新人賞を受賞された率直な感想をお聞かせください。
香月:学生の頃から馴染みのある賞なので、受賞できて素直に嬉しいです。自分一人の力ではなく、スタッフみんなの力で頂けた賞だと思っています。福岡ローカルのテレビ番組ですが、パリのジャパンエキスポや、ロンドンでも公開でき、またこうして受賞し東京で見ていただく機会が生まれ、幸運な作品だと思っています。
― どうしてアイドルと伝統工芸の音を組み合わせようと発想したのか、そのあたりも含めて、今回の受賞作品の魅力についてお教えください。
香月:アイドル番組を作る話が出た際、何か、今までにない演出が出来ないかと考えたのがきっかけです。アイドルとある意味で対極にある伝統工芸を組み合わせられないだろうか。その接点は何か。ブレストを重ねる中で、博多の織り機や梵鐘など、楽器ではない「日本の生活に潜む音」に行き着きました。 通常だとリズムに成り得ないような音が重なっていき、ありえない場所でパフォーマンスが始まるのが見所です。個人的には、ブレイクダンサーをものともせず、ひたすらに手漉き和紙に没頭する八女のお婆さんの姿が好きです。
― 今後の展開についてお教えください。
香月:冒頭のキャラクターは、情報の編纂の使命を帯びた少女なのですが、彼女がメインのストーリーも用意してあります。今後ますますネットワーク化やクラウド化が進む50年後、100年後の世界で、人間と情報の関係を描く物語です。 今シリーズは、次々に生成しては埋もれていく情報、映像群の中で、残すべき価値がある作品として、ブラッシュアップしながら果敢に作り続けていきたいです。そして彼女のストーリーを通して、情報と人間の関わりを考えていきたいです。
― 受賞作品展の来場者へのメッセージをお願いします。
香月:テレビコンテンツの新たな形として、伝統文化の新たな捉え方として、シンプルに楽しんで頂ければ幸いです。
「5D ARCHIVE DEPT.」香月浩一(日本)
映像作品
次世代に残したい風景や文化を映像で保存し、伝えるプロジェクト。「伝統的な音」をテーマに福岡・九州朝日放送(KBC)の地域プロモーションTV番組として制作された。博多織の織機が奏でる筬打ちの音、簀桁で和紙を溜め漉く音、木片を削る鉋がけの音?。そんな伝統工芸が奏でる音を収録し、九州発のアイドルグループLinQによるテーマ曲「GARNET」のイントロとして編集し、番組ではアイドルが博多織の工房内でダンスパフォーマンスを繰り広げる。タイトルは、時空間(4D)と音(1D)を合わせた5次元のデータを保存する架空の部署の名称で、未来から来た美少女キャラクターのヒビキ・ガーネットが、音や景色、人々の想いをシュート(撮影)し後世に残すという設定だ。この映像自体が、現代的な感性がミックスされた伝統的な技術の映像アーカイヴとなっている。
http://www.kbc.co.jp/web/5dad/index_ja.html
香月浩一/KATSUKI Kohichi
1980年、熊本県生まれ。佐賀・福岡育ち。映像プロデューサー兼ディレクター。サンライズでTVアニメの制作に携わった後、福岡でTV番組の制作に携わる。慶應義塾大学卒。KBC映像所属。