結婚指輪の専門ジュエラーだったニーシングは、ジュエリー制作のためのさまざまなツールや機械類を開発

ウズラー・エクスナーはヒュウセン教授とともにコンテンポラリー・デザインに特化したジュエリーへのデザイン哲学を定めた

ドイツVOGUE（ヴォーグ）誌に広告を掲載。H.P.ホフマンによる「かたどられたライト」の撮影手法が特徴的

美術品としても高い評価を受ける「The Niessing Ring（ザ・ニーシングリング）」の存在もあり、モダンジュエリーブランドとして確固たる地位を築いたNiessing。ジュエリー界におけるモダンデザインの先駆者として、どのようなデザイン哲学を確立していったのだろうか。その軌跡を辿ってゆくと、ひとりのキーパーソンが浮かび上がってくる。創業者の孫であり、2代目社長フランツ・ニーシングの娘、ウズラー・エクスナーである。

1873年、のどかなフレーデンの地に創業したNiessingは、シームレスを実現した鍛造方法や、さまざまな工作機械の開発など、技術面においてマリッジリング界を牽引する存在となっていた。1970年代に入ると、文化や芸術に造詣の深いウズラーの指揮のもとデザイン哲学が定義され、Niessingは大きな転換期を迎えることとなる。

Niessing創業者の孫として1924年に誕生したウズラーは、高等教育修了後ジュエリー学校へ進学。その後グラニュレーション技法を再発見したことで有名なドイツ人デザイナー、エリザベート・トレスカヴの工房で働きながら金細工の技術を習得した。さらに建築家のマックス・フォン・ヒュウセンとの出会いが、ウズラーをデザイナーとしても大きく成長させる。ヒュウセンは「非論理的なフォルムは人に不快感を与える」と語り、ジュエリーに装飾を施しすぎないようにしばしば忠告した。デザインをロジカルに構築していくヒュウセンの考え方は、まさに現在のNiessingにおけるデザイン哲学とシンクロする。

1974年、Niessingは初めてのモダンシリーズ「Setario（セタリオ）」を発表。異なるカラーのリングをパズルのように組み合わせてバリエーションを楽しむことができる斬新なシリーズだった。当時のマリッジリングはジュエリーに分類されていなかったため「Setario」がリリースされたことで、マリッジリング専門ブランドとして認識されていたNiessingは、ジュエリーブランド市場においても広くその人気を集めることになった。そのプロモーション戦略においてもウズラーは優れた能力を発揮する。

モダンジュエリーラインである「Setario」シリーズを広く一般へ浸透させるためにはカタログ製作が有効であると判断し、コマーシャルグラフィックデザイナー&フォトグラファーのH.P.ホフマンを起用。ウズラーから絶大な信頼を得て、長期にわたりNiessingの広告クリエイションのプロデュースを担当したホフマンは、1979年、ドイツにおけるヴォーグ創刊号へ、Niessing初の広告キャンペーンを展開。自立した女性たちに斬新なジュエリーラインを広めていくことに成功した。