グラフィックデザインに留まらず、パッケージデザインやプロダクトデザイン、商品企画などと、幅広くご活躍中の佐藤氏です。
一つの‘スタイル’に固まることなく、柔軟に多種多様な仕事をこなしている氏の貴重な話を聞くことができました。
インヴィジブルスタイル
‘いろんなことをやりたい性格’と自身を分析する氏は‘自分のスタイル’を持てず「『ダメなのかな』って本気で悩んだ時期がありました」と語ります。
多くのクリエイターは、自分のスタイルを視覚的な部分に全面的に押し出してきます。その‘スタイル’がキーになり、仕事を依頼されるという時期がありました。そのような中、悩み、出した答えは「デザインは、人のためにあるものなので、自分の中に様々なタイプがあって良い」。
「毎回、全く白紙の状態からデザインに携わるという気持ちで仕事に取り組んでいます。見える部分に共通を作らない、それが自分のスタイル。インヴィジブルスタイル。最近は、それをはっきりと意識しています」。
プレゼンテーション
自身のアイデアやデザインを貫くために、まず最初に説得しなければならないクライアント。そのプレゼンテーションを、その時々のエピソードとともに話していきます。
点滴の瓶のようだと反対されつつも、ビジュアルイメージを優先させることで、メーカーの印象を良くする結果となった酒瓶のデザイン。何かにすがりたいときに人は‘中身が何だかわからないから飲むのだろう’と解釈した滋養強壮剤に施した‘わからないデザイン’など。
今まで一般とされていた考えに縛られずにデザインを提案してきた氏は、次のように語ります。「アイデアは誰でも出せます。しかし、メーカーサイドの説得など、自分の考えを完成品にまで通していくためには、たいへんなエネルギーを使います」。
また「ものと人の関係は‘便利’が100%良いとは限りません」と付け加えました。
約束ごとを決める
‘カラムーチョ’の仕事を受けたときの話です。それまで、お酒や化粧品などある意味で部屋に残るデザインを手掛けてきた氏。あっという間に捨てられてしまう可能性のあるお菓子の袋に、新しい考え方を見い出します。「100円のお菓子でブランドを作るべきだ」。
氏は、ロゴや位置関係、特別企画(ヒーヒーお婆ちゃんの登場・増量表示など)のための空きスペースを決め、イメージの統一を提案しました。現在カラムーチョの担当は佐藤氏ではありませんが、その約束ごとは変えられることなく守られています。「約束ごとを決めるのも、デザイナーの仕事の一つなんです」。
ものと周りの関係
氏は自らデザインしたバーバーサインを、街角の様々な場所に置き写真に収めました。「ある意味でバーバーサインのように、街に埋もれたデザインの一つとしてしか見てもらえないようなものを使い、置かれるシーンにより、ものはどのように周りに影響を与えるかを自分で検証したいと思った」と佐藤氏。
「パッケージデザインも同じ」と氏は語ります。「コンビニやスーパーに置かれたとき、周りとの関係によってどう見えるか。デザインは常に周りとの関係で成り立っているという事実の中で、我々は全てのデザインをすることになるんです」。
「‘自分’を自分から積極的に出すのではなくて、その都度ニュートラルなところから携わる。そのことにより結果的に共通部分が見えてきたときに、それが‘自分’なんだろうと思って、いま作品づくりや仕事に携わっています。積極的に表現としての自分を出すやり方はしていません。それでもデザイナーという職業は成り立つことを、お知らせしたかったんです」と話し、講義を終了しました。
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