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「高齢者施設の第一人者」と監修の梶本氏が外山義氏を紹介します。高齢者の行動メカニズムを考慮し、利用者の視点に立った高齢者施設計画の実際について話を聞くことができた最終回です。
環境をデザインするということ
外山氏は、環境と人間が相互に影響し合っているという立場をとっています。それを進めるとtrance-actionalism、つまり‘自分の身体及びその延長’と‘環境’との線引きが簡単にはできない、という状況になります。
またハンディキャップについては、disability*1が帰結して社会的な不利に陥る状態をいう、と説明します。人自身がハンディキャップを負っているのではなく、人とその人の生活を取り巻いている人的・物的環境との関係の中にハンディキャップは存在するのです。
「環境をデザインするということは、一人一人の心と体を機能させていく環境を作ることだと思う」と外山氏は言います。「私にとって、デザインの究極の問いは、使い手と空間がワンセットで存在して、使い手が本当に幸せかどうかということなのです」。
高齢者施設の現状
ほとんどが4人部屋や6人部屋で、プライバシーはなく、食事やお風呂の時間は決まっています。共有スペースは和風とも洋風ともつかない大きなホールのみ…。
このように施設環境が貧しいのは、病院の真似をしたためだと指摘する外山氏。病院では患者のためではなく、医者や看護婦、他の管理者の論理に従って物事が決められている。高齢者施設も高齢者が主人公のはずが、そうはなっていません。
「施設側の都合で皆同じように処遇されてきたのが、日本の施設が貧しい一番の原因だ」。
地域の暮らしと施設の暮らしとの格差
高齢者が施設に移ると生気を失ってしぼんでしまう理由を、様々な格差から考えます。
まず空間の格差。施設は大きく単純な構造なので、わかりにくく、自分の位置が定位できなくなります。入居者はどう行動してよいかわからなくなるのです。
また4人部屋などでストレスが溜まると、自分のペースを守るために感覚を閉じ、お互いに干渉しなくなります。
元々プライバシーがないので人と交流したいという欲求が生まれません。リズムのずれもあります。一人一人の生活リズムが、集団生活のリズムに飲み込まれ、また忙しいスタッフのペースにもついていけないのです。
そして言葉の面。地域や家族では責任を持って長い間生きてきた高齢者に対して、施設では命令・教育・指示といった型の言葉が使われます。一方的に押しつけられるルールがあるのも大きな格差です。
外山氏は「一番大きな落差は役割の損失、出番がなくなるということだ」と言います。高齢者は、スタッフの介護を受けるだけでは生きる手応えを感じられないのです。
現状を変えるためには
これまで話してきた状況の解決策をスライドで紹介していきます。
施設全体を管理単位と呼び、それを介護単位に、介護単位を生活単位に分解する*2。このことによって、スタッフが高齢者を介護するといった垂直関係が、高齢者をスタッフが横からサポートする水平の関係に変化し、高齢者一人一人の顔が活き活きとしてきます。
またこれまでの施設には、プライベートゾーンとセミパブリックゾーンしかありませんでした。そこにセミプライベートゾーンとパブリックゾーンを作ることで、施設内の友人や、外部の人と交流することができます*3。受け身でなく自発的に空間を利用できるのです。
痴呆症も大きな問題です。たとえば施設に入って、普通の家には必ずあった玄関がなくなることで、痴呆症の人は玄関にまつわる行為も忘れてしまいます。そこで施設の玄関とは別に、自分のプライベートな領域と他人が行き交うパブリックな領域の結節点にある‘内玄関’を作り、出会いや別れの行為が継続して行われるようにします。「昔の暮らしの中にあった様々な仕掛けを、施設空間の中に用意していくことによって、痴呆症の高齢者の方に、ごく普通の表情や様々な行動が見られるようになる」と外山氏は話します。
「落ち着きやストレスなど心理・生理の感覚まで汲み取って、環境を作らなければならない」。「人間の心と体から分断された‘客体としてのデザイン’が世の中を支配している」ことに警鐘を鳴らし講座を終えました。
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外山義氏
 梶本久夫氏
*1 機能が不足しているものはimpairment(インペアメント)。機能が不足していることによって遂行できない能力のことをdisability(ディサビリティ)。
*2 介護単位;介護職の職務管理上のローテーションが成り立つ単位。
生活単位;生活する側から考える、しばらく一緒にいれば顔を覚えられる人数の輪や、初めて入って来たときに、気後れしないで向き合えるサイズなど。
*3 プライベートゾーン;入居者個人の所有物を持ち込み管理する領域。
セミプライベートゾーン;プライベートゾーンの外部にあって複数の入居者により自発的に利用される領域。
セミパブリックゾーン;基本的に集団的かつ規律的行為が行われる領域。スタッフが主導権を握っている。
パブリックゾーン;地域の人たちが自由に出入りできる、内部居住者と外部社会の双方に開かれた施設内領域。一番外側にある。

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