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桑沢デザイン塾

2003年1期 ファッション 第1回 藤巻 幸夫 「混迷期のファッションビジネス 打開のカギを考える」

■ 潜在と顕在
「1991年伊勢丹に戻り、当時まだ代官山の路面店しかなかった『APC(アーペーセー)』を、伊勢丹の1階に出店させました」。
百貨店の1階という伝統やステイタスのある売場に、一部には熱狂的な支持を持ち玄人的な評価がされていても、マスな人気ではないブランドが出店するのは非常に珍しいことです。
かねてから、独自の視点で注目していた氏。「潜在化しているものと顕在化しているものを見極める力が問われます。顕在化している現状の分析は必要なこと。しかし潜在、つまり隠れていても次にこれがくるのではないかという自分の考えや想いを貫く道もあるのです。その潜在ニーズを掘り起こし、形にして見せるのがデザインの世界」。

それでもまだ、デザイナーに対する売場の閉塞感は払拭できずにいました。
「『まだ世に出ていない人を見つけるのが、バイヤーの使命』『デザイナーもバイヤーがいなければチャンスを得られない』とバーニーズのバイヤーが言っていた通りの気持ちから」。デザイナーを選び、『解放区』を作りました。「たとえば、ウォームかクールか。パッと見て分かりやすい服が、私にとって良いと思う基準です。独自の観点を持つことを忘れないで欲しい」。
 

■ 破壊と創造を支えるコミュニケーション
「破壊と創造の精神はバイヤーにも大切です」。
「伊勢丹だけでなく百貨店独特の、年代で売場を分けるやり方がおかしいとずっと疑問を抱いていました。そこで4階の家具売場を壊し、『リ・スタイル』を作ったわけです。いわば、その頃さらに百貨店を追い上げてきていたセレクトショップに対する、私が出した一つのメッセージです」。

99年、「『もう伊勢丹を辞める』と言い出した時、地下2階のボイラー室を売場にする話を聞きました。まさか、大型の機械がつまっているボイラー室なんてどうやって売場にするんだ、と企画書を見た。ところが面白いとは全く思えず、『オリジナリティがない』と批判したら、『じゃあおまえがやれ』と」。
グッドプライス、グッドクオリティ、グッドセンスの頭文字から名付けた『BPQC』がこうして生まれました。「私が仕事でも使えるようにと、欲しかったカフェを作り、音楽が好きだから仲間の『ボンジュールレコード』に声をかけてCDショップを呼んで。それから花、匂い、モノ‥‥」。アイデアは次々と膨らみました。

「自分がこうやりたいと想像するイメージがあっても、私には作ることができない。だからデザイナーという作れる人との出会いを常に求めています」。「提案したいことを具現化するために、『人軸(ひとじく)』を作る。おもしろそうな場所や集まりにはどんどん顔を出し、どの業界の人にでも私からアピールするんです」。
「徳永俊一をプロデュースすることになったのも、出会いがあればこそ。今日もここに来るまで10人くらい『ミュルミュールデール』のバッグを持っている若い人を見かけました。六本木ヒルズにも新しい店がオープンしましたし」。
「今は、キタムラというバリューを基に、トラッドの世界を研究して、もっとカジュアルに持てるバッグを作り出したいと考えています」。
 

■ デザイナーもビジネスを意識したビジョンを
「デザイナーは作家と違い、商業として成り立っていくには、バイヤーへ訴えてくるビジョンを持っている必要があります」。
「それもまた、思い込みではなく思い入れ。ビジネスになるには、ビジョンとオリジナルのテイストを掲げることに打ち込み、独自の判断基準で動くことが重要。そのためには経験。自ら行動を起こして、より多くの経験をどこまで積み上げられるか挑戦していって欲しいと思います」。
 

質疑応答より
 
もし今、時間があるとしたらどこを見て歩きたいですか?
最近は(六本木ヒルズをはじめ)商業施設がいろいろとオープンしていますが、むしろ美術館に行きたいですね。現実にはなかなか時間が取れないのが悩みですが。人を見るのも好きです。どんな人がどこを見て、どんなところを歩いているのかに興味がある。ちょっと時間があると、一つのエリア、たとえば今日は恵比寿の裏あたりと決めて観察しながら歩きます。
特にこの店、と言えませんが、話題になったところにはともかく行った方がいいですね。
 
青山にあるインテリア生活雑貨店で働いています。オリジナル商品も展開していますが、似たような店が多くてどうしようかと思っているのですが…。
確かに、価格帯もテイストも似た商品を扱う店が多くて『何をしたいのか?』と問いたくなります。デザイナーが有名ならば、とすべて任せてしまうのはおかしい。コラボレートとは、ファブリックデザインはあの人、形のデザインはこの人、色はこちらが決める、というように関わり合いから生まれるのが本来の姿です。「こうしたい」とビジョンを押し出すのは、常に依頼する側にあるべき部分だと思っています。
 

2003年4月26日、桑沢デザイン研究所にて
    講演の様子
 
 
 
 
 
 
講演の様子
 
 
 
 
 
 
講演の様子
 
 
 
 
 
 
講演の様子

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