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桑沢デザイン塾【特別講座「デザインと経営戦略」】
 
■講演内容について
NIKE、swatch、WINDOWS・・・・これらのブランドのマーケティングに比べると、どうも最近のわが国企業のデザイン戦略やイメージ戦略は時代遅れの感が否めないし、高度情報化社会への立ち後れが見られる。こうした21世紀型の経営の根幹に関わる問題を考え直すきっかけを掴みたい、というのが今回のテーマ『デザインと経営戦略』である。もって平易に言うと「果たしてデザインはどのくらい経営に役立つのか」というお話。
さてその内容はどのようになりそうか。一端を(株)ケンウッドデザイン/竹川亮三社長とPAOS代表/中西元男(全体進行担当)の打ち合わせから類推していただきたい・・・・・。



中西 講義の形式は、お一人の講演でも私との対談でも、あるいはそれらの組み合わせでも。
 
竹川 KENWOODのCIは結果的には成功した。なぜ成功したか。社内的にもはっきりと解明されたわけではないが、CIを軸としたマーケティングが、販売・生産・デザインと言う別々に存在している組織を有機的にうまく統合させる概念として役立った。
 
中西 成功したCIでも先に内部から飽きてデザインを変えてしまうことが多い、それが最も起こっていないのがKENWOOD。外へ向けてのデザイン・オリエンティッドな発想や戦略が、当然のごとく定着している。それが15年以上にわたっての好イメージ保持の要因であろう。
当講座では、デザイナーにデザインのことを話してもらうのではなく、経営者にデザインのことを体験的に語っていただきたい。日本ではそれが可能なトップがそう存在するわけではないから、貴重な場になると思う。講師のメンバーはいずれも経営戦略的にデザインを語れる方たち。本講座の最初に私が全体を括るパラダイム(基本枠組み)についてお話しし、最終回は、一橋大学イノベーション研究センターの米倉誠一郎先生との総括対談で締めくくろうと思っている。
 
竹川 時代が変わったので、昔の観点からだけ話してもうつろになるだろう。
例えば、多くのデザイナーにはデザインはまだ単品のブツと受けとられており、コンセプトを作り上げる仕事がデザイナーやデザイン組織の仕事になってきているのにまだそんな経験はないし、会社の経営基盤になる仕事をしたことはない。これまで組織内ではそうしたことは商品企画組織がやってくれ、そこからの請け負いで仕事をしていればよかった。一方マーケティング部隊も自分たちのフレームが崩れどうしてよいか分からなくなっていて「デザインで何とかしてくれ」という言ってくる。ところがデザイン側も自身の頭の中では消化しきれない。
 
中西 当講座は激変期にあたりこれからのことを仮説法的に話してみたい。
工業化時代から情報化時代そして高度情報化時代のデザインの在り方とは一体何か?日本ではまだ作品主義のデザインが多いが、昨今のような状況下でのデザインの役割とはいったい何なのか。そういったお話を、欧米の状況もよくご存知の竹川社長に是非お話し願いたい。
 
竹川 アメリカやヨーロッパのメーカーとの競合関係から考えると、デザイナーの人は一度ご破算にしてやり直した方が早いのではないか。たとえば、NIKEにしても「たかが運動靴」などと言っているがあそこまでいくには相当に頭を切り替えなければならなかったであろう。エモーショナル(感動的)な仕掛けはプロダクトだけでやっていくのではなく、ブランドそのものを感動あるものにしていかねばならない。海外ではデザインそのものの位置付けが違うから、そういった資質を備えざるを得ないのである。日本は少し突っ込むと「そこからは企画の仕事」「その先は工場の仕事」などと、絵描きの領域を守ろうとしている。しかしそれだけでは済まないのだ。例えばNIKEの成功を見ると、あのようなブランド戦略が経営戦略の一番の基軸に入っている。
 
中西 日本が最も遅れつつあるのは、ともかく良いモノは作るが「モノづくり派」から抜け切れないこと。
KENWOODの場合は優れた先見性で工業化社会の時代にありながら情報化社会型の価値観で会社を引っ張ってきた。従って次なる課題は更に進んで高度情報化社会型に移行し、一歩抜けられるかどうかであろう。
 
竹川 全くその通り。CIのコンセプトが拡がったように、デザインのコンセプトも非常に拡がってきている。NIKEも、デザインの方向付けというより会社の理念やポリシーから関与し始めて、最後は作ったものの品質、CS(Customer Satisfaction)までどうデザインするかという発想が全部を統括した。日本の企業は一般的に各部門それぞれ3〜4人の親分がいる。社長がそれをグッと押さえていればよいが、今までの集団主義体質ではなかなかそれも難しい。今や日本の会社は企業理念の見直しという局面に差しかかっているのではないか。
 
中西 最近のわが国のCIは駄目になってしまい、まるでアメリカで1950年代に“コーポレート・アピアランス・コントロール”や“コーポレート・ルックメーキング”と呼ばれた表層レベルの時代に戻ってしまった。日本の多くのトップのこうした面での意識レベルは中国よりも低い。
一方デザイナーは「CIは難しくて、それはデザイナーの領域ではない」と言う。しかし、経営に深く関与してデザインを語るのだから難しくないわけがない。
日本のこの分野はいま現実には非常に由々しき事態になっている。三菱総研が'92年に行った上場企業のCIについての満足度調査では、65%もが「効果がなかった」と答えている。効果のあった事例の中身も知ってもらいたいのだが、要は多くの企業が効果の無いCIをやってしまったという厳しい実状である。
 
竹川 アメリカの最近の資料を読んでいると、CIに関してはまさに10年前の日本の状況である。ただし彼らはCIの実態を非常にうまく体系づけてきているし、日本では単にエモーショナルな表現だったものを整理しコンセプトにして言葉を与えている。そして、エモーショナルな商品、エモーショナルな会社経営というところまで既に発展させてきている。しかし日本はまだそれに気がついていない。バブル時にCIやデザインがパッと散り目がさめてみて、「あれは一体なんだったのだろう」という感じだろう。
 
中西 まだ「何だったんだろう」と考えることもしていないかもしれない。今回のセミナーでやりたいポイントはそこにある。企業経営とは諸領域が相互貫入しないとデザインそのものもダメになるし、経営にデザインをどう入れていくかということを旧時代のデザイナーに任せておくと、形・表現の領域から抜け出られないということになる。
 
竹川 「CI」という言葉も「デザイン」という言葉も、数年前に使っていた語意では既に語れなくなっているし、日本とアメリカでは「デザイン」という語の意味も全く違ってしまっている。そして「デザイナー」と名乗る場合、アメリカではマーケティング・コンサルタントのつもりでいるのに対して、日本は絵描きのつもりでいる。その差はとてつもなく大きい。
NIKEやswatchがあそこまで成し遂げたアクティビティを果たしてどう受けとめるのか。極論すれば、デザイナー出身の経営者がもっと増えてもよいのではないか。自分は最後には経営者にまでなるんだと思っているデザイナーが何人いるか。小さい事務所を持って絵を描いて一生終わると思っているに過ぎないのでは?
事業があり、金を出して買ってくれる人がいるから、自分はデザイナーとしての職があるということをもう一度捉え直すことができるのかどうかだ。
 
(事前打ち合わせの対談より抜粋)
 
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