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■ 「まとめ」にかえて
明治期に有松絞り等の産業を通じて経済的に繁栄した有松の町は、からくり山車を譲り受けた。また都市化の波をのがれて江戸期の町屋建築が生き残っているのも、有松という町の奇跡でもあろう。城郭に使われた漆喰の塗りごめ作りが町屋建築にみることができるのは大変珍しい。東海道五十三次の池鯉鮒(ちりゆう)の宿(現在の知立)から鳴海の宿までの間の有松には松林しかなく、追いはぎが続出したので治安維持のために有松のまちづくりが始まったわけだが、ここに伝統産業となった有松絞りと江戸時代の街並みが生き残ることになったのは歴史のパラドクスのようにも思えて興味深い。
とにもかくにも、有松絞りという産業と江戸時代の街並みの保存、さらに江戸時代の精密技術としてのからくり山車がある有松という町は、貴重な存在である。特に全国にさきがけて町並みの保存に力を入れ、町並み保存運動の重要性を示したことは意義深いものとして記憶されるだろう。
ところで、人の暮らしには、気候や風土という環境とどのように付き合うかは避けられない問題である。宗教学者の山折哲雄氏によると、日本は地震が多いために日本人のこころには「天然の無常」なるものがあるという。つまり、日本人はどんなに自然を克服するために努力しても地面が揺れてしまえばすべて空しいものとなるので、自然に逆らわず、自然に学び、自然と寄り添いながら暮らすことを知恵としてもったのだという。
現代の日本人はどうも自然に逆らい、自然から離れて暮らすことが多くなったために、衣食住という基本的な軸が失われつつあるのではないかとの危惧がある。
有松の絞りの美しさはどこまでも緻密な手作業によるものであるし、現存する江戸時代の町屋建築には気候風土にあった知恵と工夫に満ちている。300年以上も前のからくり人形が表現する動きはたくさんの人の心に感動を与えていることを思うと、科学によってもたらされる地域を超えた利便性と文化という地域の中で深められる心の世界のバランスが求められているように感じる。
歴史と伝統を残すためのエネルギーは途轍もないものに違いない。文化は一度失ってしまうと取り戻すことができないので、世界的にも文化遺産を守るという運動が巻き起こっているのだと思う。だからこそ私たちはもっと身近な暮らしの中に伝統と文化を見直して、子孫に何を残すべきかを明らかにすべきではないだろうか。
東海道を通る機会があれば、一度、有松の町に立ち寄って、ゆっくりと江戸情緒を味わっていただきたいと思う。
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【 20 】
山車会館


【 21 】
有松・鳴海絞会館


【 22 】
服部家の土蔵(名古屋市指定文化財・都市景観重要建築物)


【 23 】
井桁屋(愛知県指定文化財・都市景観重要建築物)
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