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ミラノ - Life is design -
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 ミラノ - Life is design -
 


第2回
イタリアにおける日本ブーム

 update 2003.02.26
レポート : 上田敦子 / インテリアコーディネーター 



URUSHIの店内風景。


ゆかたも販売されている。


南部鉄瓶と茶碗。形がおもしろいトレイ。


テーブルセッティング。お皿は重ねてあることが多い。


テーブルセッティング。シンプルな白の磁気の器。


ショーウィンドーのディスプレイ。


店内の棚を飾る和の小物類。日本のスタイルを紹介した本もある。


モダンな和の小物類。


ショーウィンドーを飾る浮世絵。後ろ側からライトが点灯され、次々に浮世絵が点滅して映し出される。


ミラノにある人気の日本食レストラン「大阪」の店内風景。自家製のラーメン、餃子などを目当てに訪れる日本人も多い。


寿司カウンター。寿司を担当の板前は尾嶋琢宏さん。カウンターに座るとその日のお勧めをいただくことも出来る。




ここイタリアでも数年前から続いているアジアブーム。そのブームはそろそろ去りつつあるとも言われているが、ミラノにあるお店では日本の人気はまだまだ健在である。食においては日本食レストランで寿司やてんぷらなど日本食を食べることがファッションのようになっている。日本ではイタリアのあらゆる情報が知らされており、またイタリアを訪れる観光客も多い為、イタリアの文化についても知れ渡っているといえるだろう。しかしイタリアではそうではない。イタリア人にとって日本ははるか遠いアジアの国、未知なる国なのである。未だに、日本イコール富士山、芸者。日本人は毎日寿司を食べていると思っているくらいである。全てのイタリア人が、ではないが、そう思っている人が多いのは事実である。もちろんテレビの番組などで日本を紹介するものもあるが、その番組も間違ってはいないものの、少し履き違えた情報を提供していたりするのである。例えば日本らしく演出する為に、真冬の季節に浴衣を着て外を歩いているシーンがあったり・・・。そんなこともあるためか、日本というものを理解している人はごくわずかである。だが、同時に関心を持っている人も多い。イタリア、ミラノの中の日本を少し紹介しよう。



■ イタリアンアレンジ

ミラノにある URUSHI (うるし) というショップでは日本の漆器などの食器や家具、ふとん等を販売している。入り口には竹が飾られており、通りを通っていく人々の目を引きつけている。ここで見かける家具は、日本のものというよりは日本をイメージした家具というほうがわかりやすいであろう。例えば、椅子の座面には畳マットを使用してあり、マットを外すと中に収納スペースになる。ベッドのフレームは日本らしい仕様であるが、その上に使用しているのは布団ではなく、布団仕様のマットレスである。日本人のように畳の上に布団のみを敷いて寝るというのは、ベッドでマットレスに慣れているイタリア人には難しいのかもしれない。布団マットレスの中身も、ラッテクスやラテックスとココやしのミックスしたものなど、日本ではまず見かけることのないものであった。(最近イタリアではマットレスもスプリングマットレスよりもラテックスマットレスが人気である。) ベッドの頭部分には障子をイメージしたヘッドがつけられており、反対側から見ると、茶室のにじり口のようである。そして最後の締めくくりは日本のスリッパ、ぞうりが置いてある。所々が日本らしく、所々にアレンジが加わり少し違っていたりする。



■ テーブルコーディネートは和洋折衷

テーブルの上に目を向けてみると、西洋式お皿のセッティングのように、お皿が重ねてある。そしてお箸は、中国のように縦向けに置いてある。中国と日本はよくミックスされるが、ここでもそれを見かけることが出来る。日本のスタイルを紹介した本もあり、禅スタイルといわれる日本スタイルが書かれている。そういった影響か、キャンドルにも「禅」などと書かれたと文字を見かける。その横には日本のお香も売られている。キャンドルやお香というのはこちらでは普段の生活の中にもよく使用する為、取り入れやすいのかも知れない。店内の色彩のメインは朱色とベンゲ色でモダンな日本風といった感じである。



■ 個性の演出のために・・・。

ショップは大通りに面しており、ショーウィンドー越しに足を止めて中を興味深く見ている人をよく見かける。こういった日本スタイルに非常に興味あるところだが、ここにあるスタイルそのままを取り入れようというのではない。よく耳にするのは誕生日にお箸やお寿司セットをプレゼントしたり、和紙の照明を部屋に取り入れたり・・・。イタリア人にとってミニマリズムに代表される日本のシンプルな美ももちろん好むものであるが、クラッシックもそれ以上に人気を保ち続けているものなのである。イタリアで見かける日本のスタイルはどちらかといえばモダン、従来からあるイタリアのスタイルはクラッシック。そういったモダンデザインとクラッシックのミックススタイルといったものを家の中でも見かける。最終的には各々のスタイルを作り出しており、どこかのショールームや雑誌から抜け出てきたかのようなものは、日本と違ってここではもてはやされない。やはり個性が大切なのである。



■ 和食はお洒落?

食においては、日本食レストランに行くことがあたかもファッションの一部のようになっている。週末のみならず平日でも、家族でまたカップルで日本食レストランには多くのイタリア人が食事に訪れている。イタリア人だけでなくもちろん日本人も多く、その他に香港、アメリカ、イギリスや他のヨーロッパの人々も訪れる。日本料理はそれぞれの料理によって器の大きさや形や色が異なり、料理とのバランスといった彩りの美しさも手伝ってあたかも一つの絵画を見るようなのだろう。もう一つの人気の理由は日本食のヘルシーなイメージも手伝っているのかもしれない。ミラノのような大都市でもイタリア人の中では日本食を口にしたことがない人も多く、お箸を使っておすしやてんぷらなどの日本食を食べることが出来るということは自慢できることのようである。誕生日を祝ったり、ファッション関係の打上げに利用したりと、特別な日の食事としても日本食レストランは利用されているようである。イタリア人は一つのお皿を取り分けることはしないが、取材をしたレストラン「大阪」では日本人のようにシェアするイタリア人も増えてきているようだ。料理ではおすしやてんぷら、照り焼きが人気のようである。納豆が大好きなイタリア人もいるとのこと。食文化にも日本は浸透しつつある。



■ ショーウィンドーにも浮世絵

モンテナポレオーネの 「GUCCI」 の新作の服、着物のディスプレイとおなじくショーウィンドーを飾っているのは、日本の浮世絵である。いくつもに組み合わされて後ろから照明が点滅して点灯されている。葛飾北斎などの風景画ではなく、人物描写である。着物はメンズでパンツと組み合わされており、着物というよりは着物ジャケット的な要素が強い。セクシーなジャケットといった風で、その後ろを飾る浮世絵もよく見ると日本のエロチズムを代表するものばかりである。ブランドイメージであるセクシーさと浮世絵の演出効果が上手く組み合わさったディスプレイである。高級ブランド街であるその通りに不意に現れた浮世絵の新鮮さに、道行く人も足を止めていた。



■ 新しいものと古いもの・・・。

イタリア人は古いものに代表される伝統をとても大切にする。国民の約95パーセントがカトリック教徒であり、おそらくその影響が大きいためと思われるが、新しいものに対して日本人のように何でも受け入れるわけではない。自分達の今まで築き上げてきた伝統を非常に重んじる。インテリアに関しても、一般の市民の中ではクラッシックがまだまだ人気を保っている。人を家に招くことがとても好きな国民性もあり、インテリアへの感心はかなりのものである。雑誌も多く出版されているため、そこからの情報で日本などのアジアンスタイルを知ることも容易に出来、そこから街のなかのインテリアショップで実際に手にとって確かめる。それ故に、ショップ 「URUSHI」 のディスプレイそのものを取り入れるというのは少ないかもしれない。その中からのエッセンスを自分達のインテリアに加えるというのがイタリア人流なのであろう。日本のブームは一時期のものではなく、衣食住のそれぞれに少しずつ根付いてきているように見受けられる。


URUSHI
Corso Garibaldi, 65
20121 Milano
tel: +39.02.86915587
fax: +39.02.86912353
site: http://www.urushistyle.com


レストラン 大阪
Corso Garibaldi, 68
20121 Milano
tel: +39.02.29060678
fax: +39.02.29060235
12:00-15:00 / 19:00-23:00






ヘッド部分として置かれているのは障子。フレームの中に畳マットを乗せている。リネン類に使用されている色はまさしく日本の色である。


上記のベッドの反対から見たもの。障子はべっどのヘッドボード的に使われている。ぞうりが置かれた部分はさながら茶室のにじり口といったところか。


ベッドフレームの高さはかなり低い。ナイトテーブルの上に和紙の照明を行灯のように配置してある。


HOKKAIDOという名前のテーブルセット。


HOKKKAIDOの椅子。座面は畳が使用されており、その中に収納できるようになっている。


キャンドルにも禅という文字が・・・。


線香も販売されている。イタリアでも日本のものだけでなくお香は人気。


メンズの着物は丈が少し短く、パンツと組み合わされジャケットのようになっている。


カウンターでお寿司を食していたイタリア人カップル。


お店の中には掘りごたつ式のテーブル席もある。竹のパーテーションで仕切られた空間は日本ムード満点。


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