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ミラノ - Life is design -
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 ミラノ - Life is design -
 


第1回
ミラノのセレクトとは? 10 Corso Como(ディエチ コルソ コモ)

 update 2003.01.29
レポート : 上田敦子 / インテリアコーディネーター 



店内へのアプローチ。11月から2月までは、このようにイルミネーションに出迎えられる。


CDコーナーのパネル。


CDコーナー。窓辺を飾っているパネル、壁面パネル、CDを飾っているテーブルの脚部全て円がモチーフで、それぞれの形を組み合わせて新たな形を構成している。


オブジェの展示。デンマーク製の陶器類。


オブジェ展示例。


キャンドルの展示。キャンドルもオブジェである。


和食器の展示。日本の南部鉄瓶もここで販売されている。


和漆器の展示。スプーンやフォークは、よく見るとフォルムが日本のものとは少しちがう。


木製のプレート。北欧のデザインオブジェが人気。ナチュラルな色使いのシンプルなデザインがその理由のよう。


洋服のコーナーの一部。それぞれのコーナーにオブジェの展示もされている。


着物も販売されている。帯はなく、着物と浴衣を合わせたような柄や色合い。


洋服のディスプレイ。




■ 10 Corso Como(ディエチ コルソ コモ)

コルソ ガルバルディからガルバルディ駅に続く付近一帯は、ミラノの中でもお洒落なショップが多く、今注目されている地域である。その中でもこのお店は別格。おそらくミラノ市民なら誰もが知っており、旅行客も足を必ず運びたいと言うお店である。ブランド通りであるモンテナポレオーネやスピーガ通りのお店とは全く違った店の構成である。日本でも、コムデギャルソンの川久保玲とコラボレートして東京にも進出しており、その名前を聞いた方も多いのでは・・・。

このお店は、10年前にオーナーである Carla Sozzani (カルラ ソッツァーニ) によってオープンした。ディエチ コルソ コモという店の名前は、この店の住所でもある。今やミラノを代表するセレクトショップで、プラダ、グッチ、ドルチェ&ガッバーナ、コムデギャルソン、ヨージヤマモトなど、Carla Sozzoni の眼にかなった洋服、アクセサリー類、陶器などのオブジェが販売されている。ここはカフェ、書籍・CDコーナー、ギャラリーも併設されており、通りの外とは別の空間を作り出している。通りから店内に入る緑のアプローチが続き、クリスマス前のこの時期は一面のイルミネーションに迎えられる。夕方に訪れると、さながらファンタジーワールドに来たかのようである。店内を囲む中庭にはカフェがあり、ひと時のカフェタイムを楽しみ、食事を取ることが出来る。



■ 「個性を演出するデザイン」を提供するショップ

この店のコンセプトは、生活のなかでのあらゆるデザインの美しいもの、質の良いものを、ということである。衣食住のどの分野も、どれ一つ欠けても成り立たたず、そのバランスが大切。似合う洋服を身に付け、心地よい音楽を聴き、お気に入りの絵画や本を楽しみ、そして身の回りのオブジェも自分の気に入ったものに囲まれて過ごす。この感覚が、イタリアンデザインの生まれる根底のような気がする。友人を家に招く、食事の準備をする、部屋を飾る、洋服を着替える。そのための食器、オブジェ、洋服それぞれを、自分らしく見せる為のものを選び、自分の個性を演出していく。そのためのデザインなのである。それを提供しているのが、このディエチ コルソ コモである。



■ ヒデや松嶋奈々子も・・・

さて、この店の中を少し紹介しよう。まず、メインである洋服のコーナーから。ここではほとんどのブランドの洋服を、一度に見ることが出来る。プラダ、ミュウミュウ、グッチ、ドルチェ&ガッバーナなどのイタリアンブランドだけでなく、ディオール、アライア、イヴサンローラン、バレンシアガ、そしてコムデギャルソン、ヨージヤマモト、イッセイミヤケまで。主だったものは全て存在し、それぞれのブランドイメージごとで小さなコーナーを設けてある。それぞれのデザイナーの特徴は様々だが、全体として黒・白・グレーを主体としたモノトーンのカラーが中心で、シンプルながら素材やラインにこだわりのある洋服が特徴だ。ブランド通りであるモンテナポレオーネのお店とは違いは、それぞれのブランドの選りすぐりであるということだ。選ばれたもののみが存在するのである。取材に訪れた日は土曜日であった為、店内は人であふれ返っており、その人気はこの店のセレクトの確かさを物語っていた。日本人も多く訪れ、コレクションの新作の時期はバイヤーが、また旅行者も少し離れた場所にもかかわらず足を運ぶ。最近ではサッカーの中田選手、松嶋奈々子も訪れたそうだ。



■ カフェ兼レストランと書籍コーナー

同じ一階の反対側はカフェ兼レストラン。通りの喧騒から逃れてお茶を飲み、食事をすることが出来る。サービスされる食器や小物類は、日本の漆器をデザインしたものもあり、色使いや形などはミニマルな日本の美が感じられる。しかし純和風ではなく、日本のエッセンスを加えたコルソ コモ風なのである。

書籍コーナーは建築、モード、写真、近代美術のセンスのある本が並ぶ。その横のCDコーナーから流れる選曲のいい音楽を聴きながら、自分の時間をくつろぐことが出来る。また、隣のギャラリーでは定期的に展示会が開かれており、この時期は Jean Baptiste Mondino の写真展が催されていた。



■ KRIS RUHS 氏による空間デザイン

店内のデザインは KRIS RUHS 氏によってされており、バールや書籍・CDコーナーなどの空間も、全て彼によるデザイン。彼のデザインの特徴は、シンプルなモチーフ、その組み合わせの面白さである。例えば、線や円の形を描いたパネルをいくつか組み合わせることにより、新しい形を構成している。その構成や配色がこのお店を特徴づけている。店内の至る所に彼のデザインしたパネルやパーテーションが、ともすれば装飾されすぎと感じる程に存在するが、このお店のイメージと一体化しているのは、個々のデザインのシンプルさであろう。また、商品全体としてカラーが抑えてあるものが多く、そのシンプルさと彼のデザインのバランスが上手く保たれている。ここではイタリアンカラーとイメージされるはっきりした色使いはあまり見かけることなく、どちらかというと同色の濃淡組み合わせなど、日本人の好む配色が多く見かけられる。色と形が上手く重なり合って、全体とのバランスを形成しているのである。



■ 生活スタイルのそのものの提案

日本のセレクトショップとこの店の違いは、洋服だけでも雑貨だけでもなく、生活全般にわたるものがあり、全てがトップクラスもの、ということである。全てがオリジナル商品ではないにも関わらず、この店の審美眼にかなったオリジナル商品のようである。そう思える何かがここにはあるような気がする。商品を通して生活スタイルを提案しているからであろう。

デザインたるもの必ず流行があり、ここでもオブジェなどは以前の日本ブームは去りつつあり、デンマークなど北欧のデザインを多く見かける。提供する側は、常にこれからのものを提案していく。しかし、消費者はその情報も踏まえて、自分達のものを選択していく。決して流行だけで物を選ばない。イタリア人はお金を使うことに関してシビアだと言われるが、消費者の眼も又厳しいのである。

洋服に気を使うのと同じように自分が生活する場もデザインする。外出している時だけが特別な時間ではなく、家で過ごす自分の時間こそ大切なのである。ここに来て洋服を見たら、その横にあるオブジェや本にも関心を持って見てもらいたい。自分の世界も広がりを見せていくはずである。ブランド品を身に付けるだけの豊かさから・・・。







Yoji Yamamotoの洋服のディスプレイ。プリーツのイレギュラーな重なりが美しいスカート。


ギャラリー。JEAN BAPTISTE MONDINO の写真展示。モードの写真などで活躍中の写真家。


ギャラリー。それぞれのコーナーの中央には座って見ることが出来るソファがある。アイアンと皮の組み合わせ。


書籍コーナーの壁面パネル。


書籍コーナーの壁面パネルとテーブル。


書籍コーナーの窓の飾り。円形のプラスチックパネルが連なる。


カフェ店内。夕方になるにつれ、店内の天井照明は照度が落とされていく。


カフェのカウンター。


店内風景。いろいろな要素がミックスされているが煩雑ではない。


クリスマスツリーをモチーフにしたパネル。ツリーは和紙を切り抜いたものをプラスチックパネルに張り、後ろから照明を当てている。


パッケージデザイン。お店の顔にもなっている紙袋(左上)。ラッピング類のロゴデザインがこのお店の特徴。


モード担当のショップのスタッフ。左から千葉宣宏さん(日本人スタッフ)、Danielaさん、Mauro氏。適切なアドバイスを受けられる。


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