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第7回
メディア・アーティスト : 馬場哲晃

 update 2004.08.04

リポート : 田北雅裕 / デザイナー 




7月23日、「MSC Messenger (ミュージック・メッセンジャー)」という新しいメッセンジャー・ソフトが発表された。開発したのは、九州芸術工科大学(現:九州大学)大学院生の馬場哲晃氏 * 1 。2000km離れた遠隔地まで、ほぼ遅延なしでリアルタイムに双方向演奏 (セッション) ができるという代物である。

通常、インターネット上のコミュニケーションで用いられるメッセンジャー・ソフトは、言語(テキスト)情報のみを扱うものである。そうではないとしても、データのやりとりに時差は伴い、ましてやセッションともなると難しい。彼が開発したものは、ADSL環境において、音の遅延をほぼ30ms以内に抑えられるという。

一般家庭に普及しつつあるパソコンとADSL環境で、音楽によるリアルタイムなコミュニケーションができること。この手軽に「離れている人を近づける」仕組みは、彼の作品群に一貫してみられる姿勢である。今回は、馬場氏の他の作品(インスタレーション)を紹介しながら、そのコンセプトについて考えてみたい。


■ 言語情報の氾濫により見えづらくなっているもの
馬場氏は、いわゆるデジタル技術を用いて作品を発表しているが、その中でも特に、デジタル・コミュニケーションで頻繁に用いられる言語に対して、強い関心を抱いている。例えば、言語と関連付けながら作られた作品に、「言霊 -KOTODAMA-」というものがある。 【 動画 1 】

「言霊 -KOTODAMA-」は、参加者の言語を発する行為により「言霊(CG)」を生成させ、同じく言語を発する行為により「言霊」を変容させるものである。また、「言霊」を生成させる際には、「ビー玉を入れる」という身体的行為を伴わせ、言語の存在をより強く認識させる。「言霊」へと昇華された言語は、異なる参加者の言語を発する行為によって、再び生気を与えられることとなる。

参加者により解き放たれた美しい抽象的な「言霊」は、言語が持ち得ているはずの強いベクトルそのものを表象している。参加者は、そのベクトル操作を、言語を発した相手ではなく、「言霊」そのものへのコミュニケーションを通して行うこととなるのである。

「言霊」を介したコミュニケーション。それは、「普段のバーバルコミュニケーション(言語によるコミュニケーション)も、そういうものなんだよ」と、教えているようにも感じられる。

とりわけメールやチャット等、言葉によるコミュニケーションが氾濫している情報社会の中で、「言霊」という存在は見えにくい。なぜなら、言葉は、その意味(言葉を発した側の伝えたいこと)を伝える情報媒体として扱われるからである。さらに多量の言葉は、そのそれぞれの存在を希薄にしてしまう。

彼の作品は、言葉という記号により見えづらくなってしまった現代の「言霊」を、現代のデジタル技術を用いて眼前に突きつけるのだ。





* 1 馬場哲晃
1979年4月25日、長野県中野市の小さな村に生まれる。1999年九州芸術工科大学に入学、2003年同大学院に進学。現在、九州芸術工科大学大学院芸術工学研究科修士課程。Tele-existence, Performance designをキーワードに、コンピュータが結ぶ人と人のコミュニケーションをテーマにインタラクティブ作品を制作している。
「Fureru Furereba Furerutoki」:学生CGアートコンテスト、インタラクティブ部門優秀賞受賞。
NHKデジタルスタジアムにノミネート。
「ちゃっとツナゲテ」:NHKデジタルスタジアムにノミネート。

m01.jpg
【 動画 1 】
言霊 -KOTODAMA-

http://tserve01.aid.design.kyushu-u.ac.jp/~baba/jdn/kotodama.mpg
( MPGファイル 32.2 MB )




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