福岡道雄 つくらない彫刻家

福岡道雄《Pink の残景又は黒の降下》1972 年 作家蔵 撮影:福永一夫 福岡道雄《Pink の残景又は黒の降下》1972 年 作家蔵 撮影:福永一夫

ひとり、大阪の地で「反」芸術を貫いた彫刻家・福岡道雄。その全貌にせまる、美術館では初めての大規模個展「福岡道雄 つくらない彫刻家」が、国立国際美術館で開催される。60年あまりにわたる制作の軌跡を98点の作品でふりかえる、回顧展形式の展覧会だ。

福岡道雄は1936年、大阪府の堺市生まれ。戦時中を中国北京、終戦後の少年時代を滋賀県で過ごした福岡は、19歳のころ、大阪市立美術研究所への入所を機に、彫刻制作を本格化させた。地中で生まれる不定形な彫刻「SAND」や、地面を這い散らばる「奇蹟の庭」など、“彫刻らしさ”を疑ってかかるそれら最初期の作品群で、福岡は早くも世間の注目をあつめている。

その後、反芸術的な傾向を強くおびる1960年代には、自らの生活感情を濃密に反映させた作品群「何もすることがない」や「ピンクバルーン」を発表。さらに1970年代以後は時代の流れに背を向け、いわゆる「風景彫刻」や「文字」などを黙々と、かつ淡々と手がけることになる。

作品個別のかたちは違えども、福岡はこれまで一貫して“つくる”のあるべきあり方を問い、彫刻に向き合ってきた。そんな福岡が制作活動に終止符をうったのは、2005年、「腐ったきんたま」と題された彫刻群を発表したときのこと。以後、「元・彫刻家」ならぬ「つくらない彫刻家」となった福岡は、いまなお、現在進行形で制作と生活との接点を探り続けている。

福岡道雄の彫刻家としてのあゆみは、いくつものシリーズを着想しては放棄していく、試行錯誤の連続だ。そこから浮かび上がってくるのは、くりかえされる逡巡、“つくる”と“つくれない”とのあいだを揺れ動く、真摯な葛藤にほかならない。本展は、福岡の彫刻をとおして、“制作”という根本概念についての問い直しをはかる、かっこうの機会となるだろう。

※関連イベントは、下記詳細URLをご覧ください。

開催期間 2017/10/28(土)~2017/12/24(日)
※イベント会期は終了しました
時間 10:00~17:00(金・土は20:00まで/いずれも入場は閉館30分前まで)
休館日 月曜日
入場料 一般900円/大学生500円/高校生以下・18歳未満無料/心身に障がいのある方とその付添者1名無料(要証明)
参加アーティスト 福岡道雄
会場
  • 国立国際美術館
  • 地下3F 展示室
  • 大阪府大阪市北区中之島4-2-55
会場URL http://www.nmao.go.jp/
詳細URL http://www.nmao.go.jp/exhibition/2017/fukuoka.html