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フィンランド西岸の世界文化遺産の町ラウマ。この町に、アートとコミュニティ、アーティストと市民をつなぐための様々な実践があります。
■ 世界文化遺産の町ラウマ
ラウマは、フィンランド西岸に位置する人口約4万人ほどの町です。フィンランドで3番目に古いこの町は、1442年に誕生し修道会と港を中心に発展してきました *1 【 写真 1 】。歴史的な木造家屋が残るラウマ旧市街は、1991年ユネスコの世界文化遺産に登録されました。赤や黄色のカラフルな木造建築と、家々の隙間に突然現れる狭い小道が、街並みを特徴づけています。【 写真 2 】
この町のアート振興において重要な役割を果たしている施設のひとつが、ラウマ美術館です【 写真 3 】。1970年に開館したこの美術館は、ラウマ地域やバルト海を囲む国々の作品紹介に力を入れてきました。毎年開催している展覧会の中でも興味深いのが、「子どもと若者のため」と題したコンテンポラリーアート展です。展示作品は子どもだけを対象に作られたものではありませんが、展示方法や対話形式のガイドツアーは、色々な年齢の子どもに対応するべく企画されています。この展覧会の最大の狙いは、美術館やコンテンポラリーアートに対する子どもの関心を高めること。そして、子どものアートへの参加や、アートについての議論を促すことです。
2002年から続いているこのシリーズ、2011年は“MIDDLE OF NOWHERE”というテーマで開催中です(“MIDDLE OF NOWHERE”とは、一般的に「どこか遠くの特に何もない場所」、「荒野の真っ只中」といった意味で使われる言葉です)。空虚、永遠、無限、荒野、森林、死を扱った作品が展示されています。大人にとっても難解と思われる作品のコンセプトを、子どもたちはどのように受け止めるのでしょうか。近所の学校から来館していた子どもたちと一緒に、ガイドツアーに参加しました。
■ 子どもは最高の「アート鑑賞者」
展覧会のツアーは、ガイドの方の問いかけから始まりました。「この美術館に来たことはありますか?今まで見たアート作品で覚えているものはありますか?」子どもたちはにぎやかに反応します。学校のクラス単位で訪問したり、家族で繰り返し来館している場合も多く、子どもたちにとって「美術館での思い出」は参加しやすい話題のようです。
子どもたちはアート鑑賞を楽しめるのだろうか。途中で飽きてしまうのではないか。という心配はあっさりと覆されました。驚きの声をあげたり、笑ったり、凝視したり、呆然としたり…。予想以上にのびのびと、そして真正面から展示作品と向き合っていました。「死」という究極のテーマを扱った作品の前でも、子どもたちは目を背けることはありませんでした。その作品は、2階建ての展示コースの前半、1階の最後のコーナーに設置されていました。葬儀のプロセスが映し出された映像作品で、亡くなった老人が棺に納められる様子も出てきました。子どもたちは立ち止まり、じっと作品を見つめていました。
この展覧会シリーズの企画者、ラウマ美術館キュレーターのヘンナ・パウヌさんに今回の企画意図をうかがいました。
「近年、子どもたちはゲームなどで毎日のように暴力的で不自然な“死”を見るようになりました。現実の“死”とはどういうことかを見つめる機会を作ることはとても重要だと考え、今回の展覧会で取り上げることにしました。ただし、展示場所を1階の最後のコーナーにすることで、引率者である親や教員が、子どもにこの作品を見せるかどうかを選べるように配慮しています。また、この作品を見た後に2階に上がると、森や自然をテーマにした展示や広がりのある空間が待っています。“死”を展示の最後にするのではなく次に“自然”を配置することで、カタルシスの効果を狙いました」
「子どもと若者のため」の企画を9年に渡って実施してきたヘンナさんは、子どもは最高の「アート鑑賞者」だと語ります。【 写真 4〜5 】
「子どもは作品に対して素直に反応します。大人の鑑賞者はしばしば、この作品は私にでも作れそうだから価値がない、と言ったりします。子どもは逆に、私にもできそうな楽しい作品だと言います。子どもは、大人のようにアーティストに嫉妬したり、皮肉を言ったりしません。余計な先入観を持たずに、作品と真正面から向き合える素晴らしい鑑賞者だと思います」
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