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第9回
ウッツォンの建築を訪ねて
─ キンゴー・ハウス、フレデンスボー・テラスハウス、パウスチャンなど ─


 update 2008.02.06

リポート : 和田菜穂子 / デザインキュレーター 




デンマーク人建築家ヨーン・ウッツォン(1918-)はシドニーのオペラハウスを設計したことでその名が知られています。1957年の国際コンペで一気に世界デビューを果たしますが、当時は「無名の建築家」でした。

彼の大胆なプロポーザルは構造の専門家から実現不可能といわれましたが、幾度となく検討が重ねられた結果、あの美しいコンクリート・シェル構造が誕生したのです。途中オーストラリアの政権が変わると、工期の大幅な遅れと莫大な建設費用が問題となり、1966年こころざし半ば設計責任者の地位を降りることになります。その後プロジェクトは他の建築家に引き継がれ、1973年ようやく完成に至ります。完成後その美しい建築形態はシドニーの新しいランドマークとして世界各国から賞賛を浴び、2007年には20世紀を代表する優れた建築として世界で最も年代の新しい世界遺産に登録されました。ヨーン・ウッツォン自身も2003年に建築界最高峰といわれるプリツカー賞を受賞し、「悲劇の建築家」から「名誉ある建築家」へと転じています。そして彼の類まれな才能は世界中の誰もが認めるところとなりました。

今回のリポートでは、ヨーン・ウッツォンとその息子キム・ウッツォンが設計した建築をご紹介したいと思います。

■ Kingo Houseキンゴー・ハウス(1960年)/Fredensborg Terrace Houseフレデンスボー・テラスハウス(1963年)
デンマーク国内においてヨーン・ウッツォンが設計した最も有名な建築は、ヘルシンオアにあるキンゴー・ハウスでしょう。配置計画が優れている点において、集合住宅建築計画の成功事例としてよく引き合いに出されます。その配置は中央に池を配し、ゆるやかに起伏のあるランドスケープに溶け込む形でデザインされています。中庭型の雁行する配置計画は、その後デンマーク国内外で様々な形で応用されています。

全部で60棟からなる平屋建ての住居は、デンマークの伝統的な黄色煉瓦を用いたブロック造です。しかしウッツォンはアジアの住居形態に関心を抱き、中国、日本、トルコ等の伝統的住居を参照しています。実際に訪れてみると、随所に日本らしいデザイン・テイストが見られました。

プランニングは原則として縦横15×15メートルの正方形の敷地に、プライベートな中庭を擁したL字型住戸が少しずつ雁行する形で立ち並んでいます。前面道路に面したファサードをみると、木製の質素なエントランスとビルトインの駐車場入り口、格子がかかった小窓が目を惹くだけで、外に対して完全に閉じています。しかし住戸内部に入ると、大きなガラス張りの開口部が中庭に面して開かれており、各部屋に採光が充分に行き届くよう配慮されています。住民専用の中庭には四季の折々の木々や草花が植えられ、さらにその向こうには雄大な美しいランドスケープが広がり、その眺望を借景として楽しめます。

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キンゴーハウス外観
【 1 】 キンゴーハウス外観

キンゴーハウス
【 2 】 前面道路に立ち並ぶキンゴーハウス。

ファサード
【 3 】 黄色の煉瓦ブロックのファサードには、質素な玄関、駐車場入り口、格子のかかった小窓のみで、外に対して完全に閉じています。

池から望むキンゴーハウス
プライベートの中庭
子供用遊具
【 4 】 池から望むキンゴーハウス
【 5 】 プライベートの中庭
【 6 】 住民が作成したパブリックスペースに設置された子供用遊具。


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