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第17回
呼吸する風景 拡張する余白

 update 2005.02.02

リポート : 宮下美穂 / ランドスケープデザイナー






■ 呼吸する風景
去年の夏頃だっただろうか。
東京都下にあるアメリカ軍の施設後の建物や植物の写真を撮った。
クズやツタに覆われて、まるで今にも動き出しそうな、得体の知れない生き物のようだ。
まさしく、なぞの固まりが、密かに息を吹き、もぞもぞと動き出しそうな密度と存在感を静かな周囲に放っていた。そして、この皮膚の下にどのような存在が隠されているのかも、想像力を刺激する。

この、むせ返るような、息苦しいまでの存在感が秋から冬にかけ、いったいどのように変化するのか、夏の片割れを見るように、冬、眺めてみた。夏、あれほど旺盛に繁茂していたクズやワツタはすっかり枯れ落ち、期待した怪物のような不気味なものは現れず、どこか見知ったようなコンクリートの建物が露出した。
また、春には暖かな日差しと、自分の枯葉で富んだ地中で地下茎を伸ばし、呼吸するように残された建物を覆い隠すのだろう。

これまでも何度も人の住まない建物の風景や存在感について考えてみた。あるいはそこに広がるランドスケープの意味について。写真を写すと、人のいなくなった空間は、そこに人がいないことによって、さらに人間の存在感を傾れるように印象づける。

結局、これらの役割を終えたと思われる建物は、人の都合ではなく、あたかも自分たちの都合で息をしはじめ、そして自分たちの都合で朽ちることをはじめる。静かにひっそりと呼吸しているとしか思えない風景が始まる。人の残滓はあるのだけれど、当然ながらそこに人は存在しない。そこは、自ら朽ちようとする建物と、それを覆いつくす植物のものだ。あたかも静かに、深い呼吸を何度も繰り返し、息絶えていくようなものだ。 この空間には、この、数年、あるいは数十年に渡って、どこか宙に浮いたような、異なる次元があるように見える。わたしたちの日常からは浮遊した異次元をただよう、静かな、非日常的な、この場だけ流れる時間が、場所に独特の風景と存在を与える。ここに立つことで、見ることのできない空間の存在を体感する。

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