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アニマリス・モデュラリウスの動き 【 映像 23〜25 】
風に羽根をはためかせ、背中に並ぶペットボトルに空気を貯めておき、必要なときに解放して動くアニマリス・オルディス。会場では土日祝日に限り、彼を動かすデモンストレーションをおこなっています。海風の代わりにエアコンプレッサで空気を送り込まれた後、人間の手を借りながら羽根を広げ、その巨体のすみずみにまで栄養を行き渡らせてから、おもむろに動き出します。頭のそなえられた方向にではなく、観客席側へ向かって。
蠢く多数の脚と巨大な質量とが、ひといきに眼前に迫ってくるそのプレッシャー。あまりの迫力に、よろめきながら後ずさる人々も。自然界ではあまり見かけない横方向への素早い動きには、一瞬恐怖を憶えるほどでした。このビースト、人間と同じように、日によって機嫌が変わるそう。温度や湿度によって、塗布されたグリースの硬度や、内部の気圧などが変化するためだそうです。ちなみに、この動画を録った日の彼は、「ちょっと眠そう」な状態だとか。
恐竜をおもわせる巨大な姿ですが、これは世界の記憶からさまざまなことを学んだ人間が生み出した、という意味では、私たちよりも先をゆく、もっとも新しい生きもののかたちであるのです。もちろん彼らはこれからも進化を続けます。現在はまだ、10分間貯めた空気で2〜3分しか動くことができませんが、さらに改良されてゆくでしょうし、元はといえば、良い餌=風を得るために海辺を生息地に定めたのですが、もっと適合する環境が見つかれば一足飛びに進化することも考えられます。創造主たるテオが、ギリシャ神話の神のように気紛れを起こしたり、懐古主義に走ってみたりすることもあるかもしれません。私たちはいったい何世代先のビーストまで見届けることができるのでしょうか。
例えばキーボードを打ったり、あくびをしたり、名前を呼ばれて返事をしたりする、私たちの日常の小さな動作のひとつひとつに、いったいどれだけの記憶が宿っているのでしょうか。なにかに衝き動かされるように行動を起こしたり、旅に出たり、ゆえなき感情が身のうちに渦巻いたりするとき、それは実際のところ何の要請によるものなのでしょうか。
太古の昔からの膨大な記憶で構成されている私は、見ようによってはちっとも私ではなく、しかし現在を生きている限り、どこまでも自分であるのです。私たちは、過去も未来も、もう全部自分の内に持っていて、そこに現在を生きながら、何かを感じたり考えたりするたび、加わってゆくものがあるのです。アニマリス・モデュラリウスのデモンストレーションを、いっしんに見つめていた子供たちの瞳の輝き。
私たちは、たとえ遺伝子の乗り物にすぎなかったとしても、器の嬉しさ、ゆたかさを知っています。
ひとつだけ、微かな戦慄を憶えた想像が。
ビーストたちが日比谷に”上陸”した当初、それはそれは砂まみれだったといいます。このビーストたちの故郷オランダの砂、展示用にある程度ぬぐわれていますが、化石たちの関節や神経の繋ぎ目にほんのり残っています。日比谷の風に乗って少しずつ飛んでいったり、来場者の靴についてさらに遠くへと旅する砂もあるのかもしれません。
…ビーストの、そして私たちの、進化の主役であったと思われた遺伝子ですが、実は裏の主役は“砂”だったのでは…。
遺伝子の乗り組んだノアの方舟が最後の浜辺に漂着したとき、そこにはいったいどんな景色が広がっているのでしょうか。

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テオ・ヤンセン展 ― 新しい生命のかたち ―
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会場:東京 日比谷パティオ特設会場(三信ビル跡地)
会期:2009年1月17日(土)―4月12日(日)
休館日:なし
時間:10:00〜21:00 (最終入場は20時30分)
観覧料:一般 1,500円
URL:http://www.hibiya-patio.com/theo
その他:デモンストレーションのスケジュールなど詳細は公式サイトでお確かめください。
問い合わせ:03-3519-6671
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