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第41回
スキン+ボーンズ ─ 1980年代以降の建築とファッション

 update 2007.07.18

リポート : 八木あすか / 美術・デザインライター 




私たちの身体を魂の器とすると、その器を護るための第一の皮膚が衣服(ファッション)、第二の皮膚が建築物、といえるではないでしょうか。
内側を護り、鼓舞し、育てる。外側へ向けてメッセージを掲げ、関係性を決定づける。揺りかごと鎧、二つの役割を兼ね備えたこの2枚の皮膚は、文明社会を生きていく上で、身体的にも精神的にも無くてはならないものとなっています。

しかし、ファッションと建築。出自と概念上の共通性はあれど、その表立った用途やスケール、使用素材や技術が異なることから、これまで、携わる人間や業界はかなり明確に分かれていました。そこへ1980年代以降、コンピュータをはじめとする技術の革新や情報流通の発達が双方に自由な表現の可能性をもたらし、両者の物理的な歩み寄りを促進するようになります。
そして現在。時代の声を聴きながら発達してきた、私たちを包む2枚の皮膚は、互いに刺激し合う中でその境を限りなく淡くしています。

今回ご紹介するのは、ファッションと建築を同時に俎上にあげることが無理なく実現できる時代ならではの展覧会。ロサンゼルス現代美術館(MOCA)で開催された展示会を日本向けにアレンジし、計230点ほどの建築作品とファッション作品が、両者のあいだに交わされるものを章のテーマとして掲げつつ展示されています。

I. 共通の概念

建築も衣服も、そもそもの出発点は気候の変化や外敵から人間の身体を守るシェルターにありました。そこに民族としてのアイデンティティーや政治・宗教的な意図が付加されることで外からの視点を獲得。“代替皮膚”であったものが、観念上、骨から独立し、色彩造形の工夫を採り込みながら発展。そしてここからゆっくりと建築とファッションは離れてゆきます。
現代の建築やファッションのなかにも脈々と受け継がれ、依然根本的なものとして息づいているそのルーツに光をあてたセクションです。

◆アイデンティティー

フセイン・チャラヤン《アフターワーズ》コレクション 2000-01年秋冬 【 1〜5 】
Hussein Chalayan, Afterwords Collection (Autumn/Winter 2000)
Photo © Chris Moore, Courtesy of Hussein Chalayan
Collection Musee d'Art Moderne Grand-Duc Jean, MUDAM, Luxembourg


白い部屋、灰色の家具、無彩色の衣服を纏ったよく似た背格好の4人の女性。
無色透明の記号のような彼女たちが、灰色の家具の皮膚を剥いてゆきます。灰色の裏側に隠されていた鮮やかないろどり。それを身につけることで初めて、見分けのつきにくかった彼女たちの、4つの個性が浮かびあがってきます。やがて、椅子は畳まれて旅行鞄に、卓袱台はロングスカートに変身し、旅立ちの準備がととのいます。

…この作品のテーマは、実は“亡命”なのです。本来の自分とは全く異なる色と形を上から着込み、既存の環境を組み替えて携帯可能なものにし、モンゴル高原をゲルと共に旅する遊牧民のように去ってゆく。何をスキンとし、何をボーンとするかはその時代・その場所によって如何様にも変化するのです。醒めない魔法を求めて彷徨い続けるシンデレラのようでもあります。

次ページに続く





アフターワーズ
【 1 】 フセイン・チャラヤン《アフターワーズ》コレクション 2000-01年秋冬
Photo © Chris Moore, Courtesy of Hussein Chalayan
Collection Musee d'Art Moderne Grand-Duc Jean, MUDAM, Luxembourg

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