topjdn.gif report.gif
<JDN> <REPORT> <西海岸再発見>
blackline.gif
mf1.gif
title.gif mf2.gif mf3.gif


第9回


アーキテクチャー&デザインコレクション
Architecture & Design Collection (ADC)

University Art Museum, University of California, Santa Barbara

リポート : 塚本葉子 / デザインライター 

「アーキテクチュラル・アーカイブ」いう言葉は、日本ではあまり耳慣れませんが、図面、模型、スケッチ、写真、文書記録、建築家・建築研究者の所蔵品などの収集・保存・公開を行っている建築史料館のことを言い、こういった施設は欧米には数多くあります。芸術作品の中でも、特に物理的な要因で安易に取り壊されてしまいがちな建築物においては、制作者のコンセプトが反映されている資料類が、造形に対する思想やスタイルを研究するのに最も重要な存在であると言えます。また、過去の建築物について記録を残すことは、文化遺産を蓄積することにつながります。そういった点で、アーキテクチュラル・アーカイブは公共性が高く、その意義も非常に大きいのです。カリフォルニア大学サンタ・バーバラ校にも、附属美術館の関連施設として「アーキテクチャー&デザインコレクション」(略してADC)という名称のアーカイブがあり、今回はそのレポートをしてみたいと思います。

ADCは、建築史家で同大学美術・建築史学科の教授であったDavid Gebhard (1927-1996)によって、1963年に創設されました。350人以上の建築家・デザイナーによる40万枚以上のオリジナル図面や、模型、写真などが、最も古くは1890年のものから現在のものまで集められています。

ニューヨークにあるコロンビア大学のアーキテクチュラル・アーカイブは、世界屈指の建築・美術図書館と言われ非常に有名ですが、ADCは所蔵数としてはそれに並ぶものがあります。ここには、アメリカ国内外で活躍する建築家・デザイナーのオリジナル図面はもとより、7回目のレポートでご紹介した、特色あるサンタ・バーバラの街造りに関する史料なども集められており、カリフォルニア、特に南カリフォルニアの建築関係史料に重点を置いていることが最大の特徴になっています。南カリフォルニアを拠点にしている著名な建築家としては、5回目のレポートでご紹介したRudolph M. Schindler (1887-1953)の他に、Irving J. Gill (1870-1936)、Albert Frey (1903-1998)、Gregory Ain (1908-1987)、Kem Weber (1889-1963)、Cliff May (1908-1989)などが挙げられます。また、建築史の主流ではないにしても、例えば映画館、ガソリンスタンド、ドライブインレストラン、ショッピングモール、プレハブ住宅など、カリフォルニア独自の造形で、世界的に影響力を持ち、現代の風景を変えたデザインの史料が集められていることも特筆すべき特徴です。

史料は、ほとんどが建築家・デザイナーを主軸に分類・整理されています。膨大な史料を分類する最初のステップとして、カードカタログを作成します。そこには建築家名、プロジェクト名、設計された場所や年、図面の枚数などが書き込まれており、これはアーカイブ内ばかりではなく、外部にデータを提供するためにも用いられます。コンピュータ上のデータベース化もこのカードカタログをもとに行われており、さらには史料を検索しやすい環境に改善する作業も進められています。

史料は、建築家・デザイナーのプロジェクトごとに無酸性紙のフォルダーに挟み、スチール製の引き出しに収納されています。また、文書や写真などはサイズが小さいため、無酸性紙の箱の中に整理されています。もちろん、収納しきれない大型の図面や模型、レンダリング(完成予想図)などもありますので、それらはスチール棚の上に置かれたり、天井から吊された棚の上に水平に置かれたりして保管されています。

アーキテクチュラル・アーカイブは公共性が高い、と先に書きましたが、ADCは上記のような状態ですので、開架図書室のように個人が自由に閲覧できるような場所にはなっていません。訪問する日時を予約し、その際にどういった内容の史料を見たいかをあらかじめ連絡しておく必要があります。膨大な史料の中から必要なものを取り出してもらうには、時間がかかるためです。閲覧時には、アーキヴィストがその際の規則(飲食禁止、ボールペンなどインク類の使用禁止、史料の持ち出し禁止など)を告げ、訪問者の質問に答えたり、史料に関する情報提供をしてくれたりします。史料の状態によっては閲覧できない場合もありますが、大半のものは見ることが可能のようです。また、複写サービスは有料で行われています。

日本においては、残念ながら、特に近代・現代建築史料を収集・保存・公開する、上記のような施設は存在していないようです。現在、無造作に扱われている図面や文書などが、のちに貴重な史料となることも多々あるでしょう。今後、日本国内でもアーキテクチュラル・アーカイブの重要性を認識し、その設立が急がれるべきであるように思われます。

今回、レポートをまとめるにあたり、「アーキテクチャー&デザインコレクション」(ADC)より貴重なオリジナルドローイングなどの画像を提供していただくことができました。ご協力並びにアドバイスをして下さった同施設のキュレイターであるKurt G. F. Helfrich博士に心からお礼申し上げます。

Architecture & Design Collection (ADC)
University Art Museum
University of California, Santa Barbara
Santa Barbara, CA 93106-7130
電話: +1-805-893-2724
Fax: +1-805-893-3013
E-mail: adc@uam.ucsb.edu
URL: http://www.uam.ucsb.edu/Pages/adc_front.html
閲覧時間: 月曜〜金曜の午後1時〜5時(要予約)


<参考文献>
中原まり「北アメリカのアーキテクチュラル・アーカイブに関する調査報告」
(『日本建築学会技術報告集』第8号、221-224、1999年6月)

カリフォルニア大学サンタ・バーバラ校


大学附属美術館



*

Office of George Washington Smith (1876-1930)
Perspective Elevation of Plaza de la Guerra
Showing Memorial Fountain to J. O. Craig (Project)
Santa Barbara, California (1923)
Rendering by Lutah Maria Riggs (1896-1984)
第7回サンタ・バーバラのレポート参照

*

Rudolph M. Schindler (1887-1953)
Kings Road House (Schindler-Chase House)
Perspective Elevation from Southwest
West Hollywood, California (1921-22)
第5回シンドラーのレポート参照

*

Karl Emanuel Martin (Kem) Weber (1889-1963)
Union Oil Company of California
Market Center Prototype (Project?)
Unknown (c. 1947)

*

Albert Frey (1903-1998)
McDonnell's Drive-In Restaurant
Los Angeles, California (nd)
Photograph by Albert Frey (c. 1934)

*

Julius Ralph [J. R.] Davidson (1889-1977)
Arts and Architecture, Case Study House #1
Cutaway Perspectice Elevation:
Bathroom/Bedroom (Project)
Los Angeles, California (1945)

* の表示がある画像5点は、次の機関に帰属します。
Architecture & Design Collection
University Art Museum
University of California, Santa Barbara


JDNとは広告掲載について求人広告掲載お問合せ個人情報保護方針ウェブサイト利用規定サイトマップ
デザインのお仕事コンテスト情報 登竜門展覧会情報

Copyright(c)1997 JDN
このwebサイトの全ての内容について、一切の転載・改変を禁じます。