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<JDN> <REPORT> <Berlin 散歩道>
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  ベルリン散歩道 <第3回>

中国現代アートのエキシビジョン “living in time” ─ ハンブルガー バーンホフ ─
October, 2001
"living in time" -29 Contemporary Artists from China-
@ Nationalgalerie im Hamburger Bahnhof, Berlin


デザインライター 林けいこ氏によるベルリンリポート、今回は中国現代アートのエキシビジョンのリポートです

■ART FORUM BERLIN
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既に木の葉がオレンジ色に染まりつつあるベルリン。日本よりも一足早く、ここでは芸術の秋を迎えている。

10月3日から7日までの期間、現代アートのメッセ“ART FORUM BERLIN”が開催された。一般公開初日がドイツ統一記念日で祝日ということもあり、会場内はバイヤーから学生、家族連れまで、様々な人で賑わっている。毎年開催されるこのメッセ、今年は28カ国、約160のギャラリーが参加。やはり主催国のドイツ国内のギャラリーがその大部分を占めるが、アメリカ、イギリス、北欧勢の参加も多い。絵画、彫刻、インストレーション アート等が所狭しと並び、その奇抜さ、ダイナミックさ、新しさを競う会場内は色の洪水。小雨のぱらつく肌寒い外とは裏腹に、エネルギッシュで希望に満ち溢れる会場内であったが、残念ながら撮影禁止。メッセの様子をご覧頂けなくて大変申し訳ない。

3時間ほどかけ一通りのブースを見て回り、ふと気が付く。28カ国が参加しているメッセではあるが、まるでナショナリティーを感じさせない(感じられない)アートばかりだ。確かに、グローバル化・ブロードバンド化が進む今日において、国という枠でアートを括るのは無意味かもしれない。情報伝達の速度や質は格段に上がった。瞬時にして国境や時差を越え、様々な手段で情報を得られる今日において、1つの価値観や常識にとらわれていては進化がない。また、自らの民族性だけで勝負出来る時代でもなくなってきているのであろう。
ただ、アートが自己表現・主張、個性のぶつかり合いのツールになることを考えると、個人の背景にあるカルチャーをもっと前面に押し出そうとするアーティストがいて良いのに、とも思える。メッセ会場を見回してみると、ナショナリティー不明のアートが溢れている。これは、良くも悪くもカルチャーの均一化を意味しているのだろうか?
そう考えていると、ふと1つのブースが目に留まる。中国のギャラリーだということは、作品を見れば一目瞭然。ガツンとナショナリティーを感じさせてくれるブースがあったのだ。プログラムに目を通すと、このART FORUMに連動して、ベルリンの国立美術館にて“living in time”という中国現代アートのエキシビジョンが開催されているとある。そこでメッセ会場を後にした。


■"living in time" @ 国立美術館、ハンブルガー バーンホフ
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ハンブルガー バーンホフは、戦災で破壊された駅舎を再建して作られたため、中央の展示部分には駅構内の面影が残る。外からの自然光が豊かに差し込んでくる館内には、ウォーホル、キーファー、リキテンシュタインら現代アートの巨匠の作品が贅沢に常設されている。
“living in time”と題されたこの中国現代アートのエキシビジョンには、変わりゆく中国の今を生きるアーティスト達の作品が、特にニューメディア(フォトグラフィーや映像)に着目し、多数集められていた。

話は少し飛ぶが、1980年代始めまで私の記憶を溯ると、そこには小学生として短い期間を北京で過ごした自分がいる。おびただしい数の自転車、猫や犬の肉まで売る市場、異様に小さな靴を履いた老女、化粧っけもなく人民服に身を包む女性達。紫禁城などの壮大な建築物や絹糸の刺繍、墨絵が、幼かった私の記憶に残る「中国アート」の欠片である。

約20年たった今日、私は中国の現代アートを目の前にし、しばし言葉を失った。当然のことながら、私の知る中国は過去のものになっていたのだ。恐らく、私の記憶にある中国には「自由」というものが欠如していたのだと思う。だが、各部屋には、自由な思想によって自己を表現するアーティスト達の作品で埋まっていた。それは、抑制されていた何かが、ぱっと外に飛び出してきたかのように思え、私に軽い衝撃を与えた。
中国の蒸し暑さが伝わってきそうなフォトグラフィー、北京市内が見渡せる模型、退廃的なニュアンスがむしろ斬新な墨絵、全ての部屋を繋ぐアルミの雲のオブジェ。そして各部屋、廊下に設置されたビデオによるアートが来館者の目を引き付ける。企画自体が「中国」という国に焦点を当てているだけに、「中国らしさ」が随所に見られるが、それは「新しい中国」の姿である。

中でも特に印象的だったのは、宋冬(Song Dong)の“Writing Diary with Water”というインスタレーションアートである。書道教室の様に部屋には机が並べられ、訪れた人が実際に筆と水を使い、石板上に自由に思いを綴ることが出来るようになっている。丁度部屋に入ってきた子供たちは、参加型の作品がいたく気に入った様子で、並んだ机を1つ1つ回り、全ての石板にイタズラ書きをしては、蒸発して水の字が消えた石板を探し、また繰り返し何かを書いていた。

石板に水で書き込まれた日記の文字や画は、時間が経てば乾いて見えなくなる。翌日になれば、またその上に新しい1日の出来事が記される。翌日も、そのまた次の日も。今日の出来事は石板に半ば染み込むように、また半ば空気に吸い込まれるように消え、まっさらな状態=新しい1日を迎える。まっさらな石板には、新しい可能性や未知の出来事が待っているのである。“Tomorrow is just another day”といった感覚か。そうやって時が経ち、時代が変わり、今日があり、明日へ向かう。まさに現在の中国の姿ではないだろうか?

あまりにも長い歴史によってがんじがらめになった価値観を、打ち破り始めた中国。急激な変化の時代を迎えている中で、中国のアーティスト達は、過去を過去として受け止め、その日その日の新しい可能性を求めて作品を生み出しているように思えた。きっと彼らはものすごいスピードで変化をし続けるであろう。“living in time”のタイトルそのままに、彼らはその時間、瞬間を生き抜いて行く。そして数年後にメッセで彼らの作品に再開したとしても、もしかしたら私は気がつかないかもしれない。それが中国のアートだということを。



Nationalgalerie im Hamburger Bahnhof
Invalidenstrasse 50-51, 10557 Berlin
Tel: +49-30-3978-3411
URL: http://www.smb.spk-berlin.de/hbf



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ハンブルガー バーンホフ外観

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“living in time”ポスター


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“Writing Diary with Water”


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