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ミラノサローネ特集 2010
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土地に根付く良質な北欧デザイン
篠崎 恭子 レポーター
篠崎 恭子
SENSIBILIA (センシビリア)代表
クリエイティブディレクター
ライフスタイルという軸を中心に多岐に渡るデザインに従事。ミラノサローネは、2000年より、足繁く通うこと10年。五感すべてで感じた新鮮な情報をお届けしていきます。
http://www.sensibilia.jp

 前回に引き続き、RHO FIERA (ロー・フィエラ)の模様をレポート。DESIGN (デザイン) のホールは、欧米を中心としたデザイン・コンシャスな企業が多く、その精度の高いプロダクトは新しいライフスタイルを感じさせるものであった。中でも、北欧企業のクラフト的なものづくり、時代のながれを見据えたかのような完璧なデザインバランスは、落ち着きのある安堵感と、新しい潮流が共存したものであり、モダンかつ美しい生活のあり方を想像させるものだ。


 Hall 8 に出展していたスウェーデンの KASTHALL (カストホール) 社の新しいラグは、会場では非常にとても注目を浴びていた。PETRA LUNDBLAD-FRIDÉNのデザインによるMIRRORINGS は、鏡を重ね合わせたときに続いていく形をグラフィック処理により表現したものだ。にじんだ水彩画のように重なる陰影は、室内に非日常の幻想的な空間を創りだすことだろう。

 また、AIKOと日本の女性の名前が付けられたラグは、GUNILLA LAGERHEM ULBERGによるもの。日本庭園に咲く花から影響を受けて、オリエンタルな個性をもつ美しいラグを作り上げた。それは、まるで幼い頃に手にした千代紙のような郷愁的な憶いを感じさせた。ブースの天井から吊り下げられた、ラグのマテリアルであるウールの「ボンボン」も可愛らしく、マテリアルを上手く生かしたウィットに富んだ空間であった。

 ほかにHall 5 に出展していた、同じくスウェーデンの KINNASAND (シナサンド) 社は、VINTAGE CLASSICと名付けられたキリムのコレクションを提案。シンプルなテクスチャーの織りに、優しいカラーのパターンを配色することで、現代的でモダンな空間に合うプロダクトに仕上げられた。ピンク・イエロー・ブルーと、淡いカラーのコーディネーションは、北欧独特の雰囲気を感じさせるものであった。

 そして同ホール、Yチェアの製造で知られている、デンマークのCARL HANSEN&SON (カール・ハンセン&サン) 社の新しいプレゼンテーション。HANS J. WEGNER のYチェアを、先立って発表されたオーシャンカラーシリーズに続き、グリーン系のシトラスカラーシリーズ4色を発表した。白とナチュラルなウッドの配色で構成された空間の中に浮かびあがる爽やかなチェアは、サスティナビリティーのあるデンマークの森林から伐採されたビーチ材を、塗装している。

 ミラノ市内のポルタ・ヴェネツィア駅の近くに位置するインテリアショールーム SPOTTIでは、オーシャンカラーシリーズのYチェアがウィンドウに展示されていた。名作と呼ばれるチェアの象徴的な形が、今もなお新しく見えるのは、ものづくりの姿勢と他にない価値観があるからだろう。

 また、HANS J. WEGNERの製品化されていなかったイージーチェアCH468の発表。展示されていたのは、1960年にデザインされたプロダクトである。2010年においても色褪せることはない。当時の試作品から再生されたものだ。その他にも、名作のチェアが、シトラスカラーに染められて提案され、清々しい空気を感じさせる展示となった。


 新しいマテリアル、新しい形状だけがデザインではない。テキスタイル、ファニチャーともに大切なことは、土地に根付いた文化や経験、真摯な姿勢で取り組む良質なものづくりである。それらのプロダクトは、暮らしの中で快適性を望むためには重要なファクターであり、最も心地の良いデザインの形であると確信した展示であった。
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天井からウールのボンボンが吊り下げられたKASTHALL社のブース。壁面に展示された右から2枚が新作のMIRRORINGS
天井からウールのボンボンが吊り下げられたKASTHALL社のブース。壁面に展示された右から2枚が新作のMIRRORINGS

AIKOはオリエンタルスタイルのシックなラグ
AIKOはオリエンタルスタイルのシックなラグ

KINNASAND社のVINTAGE CLASSICは優しい色合いのトーンが北欧モダンを引立てる
KINNASAND社のVINTAGE CLASSICは優しい色合いのトーンが北欧モダンを引立てる

ピンクのカラーを配されたキリムはさまざまなシーンのバリエーションを感じさせる
ピンクのカラーを配されたキリムはさまざまなシーンのバリエーションを感じさせる

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ホワイト&ナチュラルで構成されたCARL HANSEN&SON社のブース
ホワイト&ナチュラルで構成されたCARL HANSEN&SON社のブース
   
シトラスカラーシリーズのチェアは、伝統と新しさのモダニズムを生み出している
シトラスカラーシリーズのチェアは、伝統と新しさのモダニズムを生み出している
   
50年の時を超えて製品化されたCH468
50年の時を超えて製品化されたCH468

シトラスカラーのCH07
シトラスカラーのCH07
ダイニングチェアCH29はホワイトにペイントされ、ストライプのグリーンをコーディネート
ダイニングチェアCH29はホワイトにペイントされ、ストライプのグリーンをコーディネート
ポルタ・ヴェネツゥイア駅に程近いインテリアショールームSPOTTI。提案されたオーシャンカラーシリーズのYチェア
ポルタ・ヴェネツゥイア駅に程近いインテリアショールームSPOTTI。提案されたオーシャンカラーシリーズのYチェア

ミラノサローネ2010レポート
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・  役目を終えたマネキンが妖艶なシャンデリアに
・  ミラノサローネ2010 分析レポート
・  多くの新作でにぎやかだったMOROSO(モローゾ)
・  2年に一度のエウロ・クチーナ(ユーロ・キッチン)
・  つぼみが開花したような美しいチェア
・  フオーリサローネの中心、トルトーナ地区
・  インテルニの表紙を飾った魅惑のチェア
・  日本の伝統的かたちを、現代の空間に。
・  ミラノ大学構内で開催のイベント、THINK TANK。
・  [Interview] ファビオ ノヴェンブレ
・ FUORI サローネの光と影
・ ミラノサローネ 今年のデザイン傾向
・ Kartell(カルテル)の黒と白の世界
・ 土地に根付く良質な北欧デザイン
・ DIESEL—メーカー三社とのコラボレーションライン
・ カリム・ラシッドデザインの色鮮やかなエコ空間
・ MOROSOの圧倒的なプレゼンテーション
・ 速報!色彩美豊かな空間 キヤノン「NEOREAL」
・ 速報!アウトサイドイベントFUORI SALONE
ミラノサローネ2010出展者情報
[ あ行 ]
・ 安積伸
・ 安達さくら
・ 伊藤節+伊藤志信
・ ILLIRICO BANK

[ か行 ]
・ KARIMOKU NEW STANDARD
・ 川野 博
・ 喜多俊之
・ キヤノン株式会社
・ グエナエル・ニコラ

[ さ行 ]
・ SIDES CORE
・ サトー マサコ
・ Sfera
・ センガ ケイ
・ sozo_comm
・ ソニー株式会社

[ た行 ]
・ 竹内茂一郎
・ デュポン™コーリアン®
・ 株式会社 東芝
・ TONERICO:INC.
・ TOMITADESIGN
・ DRILL DESIGN × Keiji Ashizawa

[ な行 ]
・ naomi sugita
・ にほんのかたち展

[ は行 ]
・ 橋本潤
・ パナソニック電工株式会社
・ ハンスグローエ社
・ 深川製磁
・ books
・ Voice in Itinere
・ 堀 真寿

[ ま行 ]
・ MAGIS
・ 松岡智之
・ 株式会社マルニ木工
・ mist-o
・ METAPHYS

[ や行 ]
・ 
吉岡徳仁

[ ら行 ]
・ ランドスケーププロダクツ
・ Leif.designpark
・ RENDS DESIGN WORKS
ミラノサローネ特集2010バックナンバー
・ 2009年
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