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[Interview] ファビオ ノヴェンブレ Fabio Novembre

 イタリアデザイン界において、独特の存在感で異彩を放つファビオ ノヴェンブレ(Fabio Novembre)は、今年ドリアデより2つの作品を発表しました。

 去年のサローネでは、ミラノデザインミュージアムのあるトリエンナーレ内で自身の回顧展を開催したファビオ。エキセントリックなファビオワールドを展開したショーが記憶に残りますが、今年は少し落ち着いた感じも匂わせる作品発表となりました。おしゃべり大好きのファビオ節のおかげで、思いっきり飾り気のない楽しいインタビューができました。



— あなたは何故、デザインをするのですか?(まったく唐突な質問でしたが、ファビオはひるまず、0.1秒後に返事をしてくれました)

 何故?何故って、僕はデザインをしなければ、絶対に頭がおかしくなると思う。デザインはある意味僕にとってセラピーであり、自分発見の場所でもあります。



— もしあなたがデザイナーでなかったら、何をしていましたか?

 たぶん死んでたんじゃないだろうか?いやいや冗談冗談、詩人になってたかもしれないですね。でも、僕はデザイナーである今も詩人だと思っています。僕にとってのデザインとは常に3Dの詩、触ることのできる詩を書いている様なものです。



— 確かに、去年のサローネでのあなたの回顧展のパンフレットに記載されていた自己経歴は、普通に経歴を説明したものではなく、愛の詩みたいでしたよね?興味本位の質問になりますが、あなたは日々の生活を普通に送ることに対して、何か問題がありますか?(苦笑)

 あなたにまずわかってもらいたいのは、僕の目に映る世界では“普通”は存在しません。すべてが普通ではなく、ひとつひとつ、ひとりひとりが特別です。これは絶対に忘れてはいけない事実です。僕は特別ノーマルではないし、あなたもかなりノーマルではないのじゃないでしょうか?(笑)



— 自分がかなりノーマルではないという事実から、“Nemo”という椅子を作って自分の存在を消そうと思わせたのですか?

 一つの要素になったのは事実です。でもどちらかというと、アブノーマル性ではなく私自身の自我がかなり強いので、時々その強靭すぎる自我を消したくなる時があります。自我をインスタントに消すことを助ける道具として、Nemoは生まれました。



— 今回のサローネでドリアデ社より発表した二つの作品は、ある意味まったく逆の印象を与える作品だと思います。Luciola(蛍)という名前のシャンデリアは童話の白雪姫で例えると、白雪姫、そしてあなたの隠れ家の椅子Nemoはいじわるな魔女を思わせます。ご自分の二面性が作品に表れることについてどう思われますか?

 白雪姫と魔女の例えはおもしろいですね。僕が思うに私達全員が善と悪を心の中にもっています。どちらかというと、常に良いやつでいようと心がけているのですが、時々自分の悪の部分がデザインの中や、日々の生活に自然に出てしまうんでしょうね。一つ言える事は、悪い魔女がいなければ白雪姫の童話は存在しなかった、というか、魔女ぬきではつまらない話ですよね?(笑)



— 今回の作品に限らず、あなたがデザインした作品は全てファビオノヴェンブレそのものというか、作品のみを鑑賞することが不可能に感じます。例えば、デザインの歴史で名作中の名作、カスティリオーニの“Arco”は、作品として“Arcoのみ”を見ることができます。あなたの作品はすべてあなた自身、分身であり、製品の後ろにあなたの亡霊がついてるというか(笑) はたしてこの効果はいいことでしょうか?

 絶対に良いことだと思います。ビートルズとかボブディランの曲を聴いたときに、誰も彼らと彼らの曲を切り離して考えるひとはいませんよね?それと同じだと思っています。それと僕の作品をけなす人がいれば僕をけなしていることと同じなので、いつでも受けて立つぞ!と思ってます(笑)



— 今のところお金が無いので購入できませんが、もし私がお金持ちだとしてもあなたの作品を購入する心構えというか、ファビオの亡霊もしくは魂と一緒に生活する決心をするのは、なかなか難しいかもしれません。

 わかりますよ。ヘビーですよね。僕自身、時々ヘビーに感じるので気持ちはよくわかります。飲み物で例えると僕は一杯の水ではなく、一杯のすっごい強いウィスキーみたいなものなので、常に必要ではないし、中には僕を受け付けない人も要ると思います。でも、きっといつかあなたが僕の作品を購入してくれることを祈ってます(笑)



— 今年のミラノサローネで、見に行く予定の展示はありますか?

 ガエタノペーシェ(Gaetano Pesce)とマーテンバース(Maarten baas)の作品は見に行こうと思っています。ただ、他のデザイナーの話を聞いていると、あまりにも自分がデザイナー的思考を持ち合わせていないことに恥ずかしくなることがありますよ。彼らはデザインで問題を解決しようとするのに対し、僕は僕であるという事実が問題を大きくしてしまうんです。



— 最後に若いデザイナー達にむけて、あなたの成功の秘訣を教えてください。

 僕が初めてデザインをしたのが20歳のときで今から23年前です。急がず、ゆっくり色々な物事に興味を抱き、吸収しなければいけません。この23年間ずっと心がけているのは、気持ちの上ではずっと自分は学生だと思っています。ずっと学び続けていくというのが自分のモットーです。ある意味ずっとベイビーかモンキーの様でありたいと思っています。



ファビオ ノヴェンブレ(Fabio Novembre) プロフィール

 1966年イタリアLecce生まれ。1992年ミラノで建築の勉強をした後、短期間映画製作をニューヨーク大学にて学ぶ。 1994年に最初のプロジェクトとして、Blumarineの香港店のインテリアを手がける。同年、個人のスタジオをミラノにオープンする。2000年から2003年の間、イタリアの有名なモザイクメーカー〝Bisazza”のアートダイレクターをつとめ、“Bisazza”の名を世界に広める。2001年よりプロダクトデザイナーとしても Cappellini, Driade, Meritalia, Flaminia, Casamania.等のブランドに作品を提供している。43歳の若さで、2010年までにミラノにて2度の回顧展を開催。イタリアデザイン界・注目のデザイナー。


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噂のNemo!かなり巨大な顔があなたを見つめます...
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横からみたNemo
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Nemo座面
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“善”のデザインのLuciola。日々の生活を忙しく過ごしている人々へ常に純粋な気持ちを忘れないための手助けとして蛍を鳥かごにつめたというコンセプト
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顔(失礼!Nemo)の夜集会?!
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赤もあります!
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The tickle factory を頭の中で主宰する、おいしいものとおもしろいものが大好きなミラノ在住の大阪人

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