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渡辺 力氏(1911年- )は、1949年にデザイン事務所を開いて以来、半世紀以上にわたり活動を続けてきた、日本を代表するデザイナーです。特に室内やプロダクトの分野で活躍する渡辺氏は、日本インダストリアル・デザイナー協会(JIDA)、日本デザインコミッティー、クラフト・センター・ジャパンなどの主要なデザイン団体の創立メンバーにも名を連ね、戦後に興隆した日本のデザイン運動を名実ともに牽引してきました。そして、今年も腕時計の新作デザインを発表するなど、94歳になった今でも現役として活動しています。
渡辺氏が手がけるデザインの領域は幅広いですが、本領はやはり家具。近代日本の生活スタイルを明快に表現した初期の≪ヒモイス≫や、伝統的な素材である籐をデザインの要素として捉え直した≪トリイ・スツール≫で、日本のモダン・デザインを代表するデザイナーとして高い評価を得ました。
東京高等工芸学校にてデザインを学んだ渡辺氏は、1951年第15回 新制作品展で≪ハサミ材による家具≫が新建築賞を受賞。翌年、国内初のデザインコンペである「新日本工業デザイン展」に≪ヒモイス≫を出品したところ、「居間用低廉家具」として大きな注目を集め、家具デザイナーとしての地歩を固めていきました。
その傍ら、清家 清(1918-2005)、廣瀬鎌二(1922- )といった若い建築家たちと共同で住宅家具を手がけ、近代的な住空間の創出に貢献したことも特筆されます。
ここからは渡辺氏の「モダン・デザイン」の代表作を紹介していきます。
≪書棚≫ (1942年) 松戸市教育委員会蔵
1940年、東京高等工芸学校木材工芸科の教授、木檜恕一氏の依頼により、渡辺氏は同校の助教授となります。この書棚はその2年後の設計で、学生の手により完成されました。出展されたのは、同校で絵画を教えていた和田香苗さんの旧所蔵品です。
棚は3段に区切られ、各段片側に1つずつ、計3つの開き戸で構成。木の素材感を生かした仕上げは、戦後の≪ヒモイス≫をはじめ多くの作品に共通する特徴で、生産性にも配慮しています。東京高等工芸学校が目指したデザインを継承し、実践した渡辺氏の戦前の活動を偲ばせる書棚です。
装飾などを省いた簡素なデザインは評価され「モダン・デザイン」の新たな一歩を切り開きました。
『一つのイスを見ると、それが置かれそれが使われる生活空間がイメージできる』
――「[人物登場(9) 渡辺 力]デザインは日常性のなかにあり」『室内』201号(1971年9月)から。
上記に綴られたように、渡辺氏は作品を作る際に「場所」を見るといいます。
スペースを感じ、そこからイメージし、デザインするというプロセス。今回の展示では、家具の背景にイメージ(写真)を展示する場面もあり、初めて見る家具でも何故か懐かしい気持ちにさせられます。絶妙なモダン・デザインの中から、ノスタルジィが漂ってきました。

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入り口すぐの壁には、モビールが鮮やかな影を作っている
≪モビール≫ (1975年)


≪書棚≫ (1942年) 松戸市教育委員会蔵

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