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集合住宅で暮らすことには、土地代や工事費を節約するという経済的なメリットがあります。しかし、それだけでは、集合住宅の最大のメリットを活かしきっているとは言えません。住民同士が生活面で支援しあったり、刺激や活力を得たりといった、人間の心情に関わるメリットにこそ、住まいの夢があるのです。欧米には、経済的に余裕のある複数の家族が集って住み、子育てにおける夫婦間の分担をバランスよくしたり、家族構成の変化にともなって部屋数を調整したりといった事例が多くあります。このような成熟社会に根ざした集住生活の実際を調査した建築家、渡辺真理氏と木下庸子氏は、日本における集住の意味を、今一度考える時が来たと言います。

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渡辺 真理(わたなべ まこと);写真左
1950年群馬県生まれ。1997年京都大学大学院修了。1979年ハーバード大学大学院修了。1981年磯崎新アトリエに勤務。1987年設計組織ADHを設立。法政大学工学部建築学科教授。
木下 庸子(きのした ようこ);写真右
1956年東京都生まれ。1977年スタンフォード大学卒。1980年ハーバード大学大学院修了。1981年内井昭蔵建築設計事務所勤務。1987年設計組織ADHを設立。日本大学生産工学部建築工学科、芝浦工業大学工学部建築工学科講師。
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[設計組織ADHの主な作品] 「湖畔の住宅」(1987年 吉岡賞受賞)、「沼津の住宅」(1989)、「NT」(1999)、「SK」(1999)、「NT」(2000)、「NN」(2001)他

[著書] 『孤の集住体』(渡辺真理・木下庸子共著 1998 住まいの図書館出版局)、『住宅という場所で』(渡辺真理・木下庸子他共著 2000 TOTO出版)他がある。

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オールタナティブハウジング ─住まいの「もうひとつ」の可能性について

公営住宅の標準プランとして「51C型 」が採用されて以来、日本の集合住宅に深く浸透した「nLDK 」プラン。このプランに対する疑問は、本セミナーでも何度か話題になっていますが、渡辺、木下両氏も同様の疑問を持つ建築家です。「nLDKプランではない集合住宅とはどういうものかと、7、8年前から探し始めましたが、なかなか見つかりませんでした。」
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両氏がその思いをレポートにまとめた結果、1995年、「ハウジング・アンド・コミュニティ財団若手デザイナー助成研究」の対象者に選出され、北ヨーロッパのデンマークやオランダ、アメリカの西海岸および東海岸の集合住宅を調査することになりました。
セミナーでは、渡辺氏がデンマークの5事例とオランダの2事例を、木下氏がアメリカの4事例を紹介。いずれの事例も、集合住宅内の共有スペースを住民同士のコミュニケーションの場として大いに活用し、住人一人ひとりが生活の質の向上に積極的に参画している、いわゆる「コハウジング 」であることが特徴といえます。
-51C型
戦後、食寝分離の理論を元に考案された公営住宅の標準プラン。食事室と寝室との兼用をやめ、台所と並んだ一つの空間に食事専用のスペースが確保された。これが日本のダイニング・キッチンのはじまりとなった。

-nLDK
部屋数、リビング、ダイニング、キッチンという部屋の機能で、住居の間取りを表現する方法。

-コハウジング
住民が直接参加することによって、従来にない共同生活を指向した住宅。またはそのような住まい方。
米建築家夫妻、キャサリン・マッキャマントとチャールズ・デュレットがデンマークタイプのコレクティブハウジングを著書 "Cohousing(1987)"で紹介。コハウジング名付け親とされている。コハウジングの「コ-Co」は一緒に、平等にという意味。
→ 夫妻が立ち上げた「コハウジング・カンパニー」最初のプロジェクト
 「ドイル・ストリート・コハウジング・コミュニティー」について

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世界の集合住宅事例

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 トルネヴァングスゴーン
 ティンゴーン第一・二期
 デット・ブラー・ヨルネ
 ディアナス・ヘーブ
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セントラル・ヴォーネン・レリスタット
セントラル・ヴォーネン・デルフト
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ドイル・ストリート・コハウジング・コミュニティー
ヴェストポケット・コミュニティー
キャプテン・クラーレンス・エルドリッジ・ハウス
アニー・マキシム・ハウス
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 「トルネヴァングスゴーン」1978年
設計;アーキテクト・グルッペン
敷地;デンマーク/コペンハーゲン郊外ビルケロー
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全戸数6軒の小規模集合住宅。100平米程の住宅2軒がひとつのユニットになり、中庭を囲むようにして三つ配置されているプランです。各住戸は中2階を含めて3階建で、玄関を抜けるとダイニングキッチン、少し降りるとリビングルーム、反対にあがると主寝室と子供用寝室二つとなり、日本の言い方で言うと3LDKプラン。
「核家族を対象としていますが、僕たちが行ったときにはお子さんが独立した後だったので、中2階の間仕切の一部を取り払って広い仕事部屋に改造していました。」
敷地内には、もともと建っていた大きな納屋を改築した「コモンハウス 」があり、全6世帯で共有しています。子どもが小さかった頃は、1階の広いキッチンで、住人同士が交代制で食事をつくっていました。
「コモンハウスにキッチンを設置する背景には、女性が男性と同じように仕事をしているという社会通念があります。毎日の食事の支度から主婦を解放することで、より有意義なライフスタイルを獲得しようというわけです。」
食堂のわきにはワークショップがあり、簡単な家具の修理ができます。2階は多目的室で、子どもたちが高校生くらいの時にはバンド演奏をしたようですが、現在はゲストルームとして活用しています。その他、洗濯機などの大きな電気製品も「コモンハウス」で共有し、各家庭の居住スペースを少しでも広く使えるように考えられています。
-コモンハウス
個人で所有する住宅の他に、住民同士が生活の一部を共有するための施設。共同のキッチンやランドリーを設け、食事を一緒につくって食べたり、洗濯などの家事を分担したり、保育を共同で行ったりする。

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 「ティンゴーン第一期」1978年
設計;ヴァンクンステン設計事務所
敷地;デンマーク/コペンハーゲン南部郊外ヘルホルエ
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 「ティンゴーン第二期」1984年
設計;ヴァンクンステン設計事務所
敷地;ティンゴーン第一期の隣
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「第一期」は、コペンハーゲンの郊外にある比較的大規模な集合住宅です。78軒の住戸が6つのグループに分かれていて、各グループに「コモンハウス」や「プレイロット(幼児対象の公園)」があります。各住居は2.5階建で、45から60平米の1寝室をベーシックユニットとし、補助ユニットを適宜挿入することで、5寝室タイプまで対応可。基本的には賃貸住宅で、家族人数によって部屋数が選択できるしくみです。「コモンハウス」の屋根がソーラーパネルだったり、バイオマス を使ってエネルギー活用したりと、住民の環境保全に対する関心の高さが伺えます。
「第一期」の成功をきっかけに、隣地につくられた「第二期」は、より都会的な雰囲気で、若い単身者を対象としている集合住宅です。「コモンハウス」の下の階が食堂とキッチンで、上の階の多目的室がラウンジやサロンとして使われている点は「第一期」と共通です。
-バイオマス
エネルギー源または化学・工業原料として利用される生物体。また、生物体をそのように利用すること。


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コモンハウスからプレイロットのある公園を見る
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コモンハウスの片流れ屋根がソーラーパネルになっている

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