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横尾忠則 森羅万象
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 16 死 Death

横尾にとって、死は最も重要なテーマの一つである。早くも1965年、「ペルソナ」展に「自分自身のための広告」として出品したシルクスクリーン・ポスター≪TADANORI YOKOO≫の中に、首吊りをしている自分自身の姿を描き、「29歳でクライマックスを迎えぼくは死んだ」という意味の英文を入れている。またこの時期、自分の死亡記事や自分の交通事故の場面を演出した写真を、新聞や雑誌に掲載したりもしているし、1968年の最初の作品集も『横尾忠則遺作集』と題されていた。
1980年代以降の絵画作品では、より具体的な死のイメージが頻繁に登場するようになる。1980年代半ばの一連の作品では亡霊のような顔が繰り返し画面に登場するし、また心霊現象を主題とする陶版画のシリーズも作られる。おそらく横尾は1970年の三島由紀夫の死を契機として、より具体的に死の問題を考え始めるようになったのではないか。1990年代の作品では、三島は冥界の王のような姿で描かれている。




 17 赤 Red

1997年4月から兵庫県立近代美術館で開催された回顧展「私への帰還 横尾忠則美術館」で、赤い絵の連作の全貌は姿を現した。画面全体を赤と黒(ただし実際に使われている絵の具は緑色)のグリサイユ風の描法でうめつくした作品群は美術史上にも例を見ない。




 18 Y字路 ― 暗夜光路 'Y' Junctions : Anya Kouro

2000年9月に始められたY字路シリーズは、2001年10月から翌年1月にかけて原美術館で開催された展覧会「暗夜光路」として結実する。
「暗夜光路」展で発表されたY字路シリーズは、基本的には夜の街路で、横尾自身がフラッシュを焚いて撮った写真に基づいている。そのため、中心になる正面の街角と左右の街路の近景はフラッシュを浴びて比較的明るく、そして2本の分かれ道の先は暗い。最初横尾は、写真の情景をできるだけ匿名的なスタイルで忠実に写し取ることを試みたという。そのため、フラッシュ撮影に特有の光の効果がそのまま写し取られ、夜景を描いた絵画として類のない表現が生まれた。
シリーズを重ねるにつれ、横尾は、実景の忠実な再現から離れ、中央と左右で別々の街路を撮った写真を巧みに合成して、一つの存在しない風景を構成するようになった。そして、Y字路の夜景というモティーフはそのままに、さまざまなテーマが盛り込まれるようにもなっていった。


≪DNF:暗夜光路 旅の夜≫2001
182x260cm, 油彩 / カンヴァス 作家蔵

 19 Y字路、ふたたび 'Y' Junctions, Again

展覧会「横尾忠則 森羅万象」のために描かれた2002年の新作は、ふたたびY字路をテーマとした作品群である。しかし、「暗夜光路」展に出品されていたY字路の作品とはずいぶんと異なっている。そこに展開されているのは、百花繚乱とも形容すべき、Y字路のテーマにおけるヴァリエーションの数々なのである。 ヴァリエーションとは、たとえば描かれる場面のヴァリエーションである。フラッシュを浴びる暗く寂しい街角ばかりではなく、月影に照らされるY字路、雨の夜のY字路、夕暮れのY字路、晴れた昼間のY字路、花咲き乱れる春爛漫のY字路、紅葉のY字路など、様々な場面が色調も豊かに描かれている。それに加えて、スタイルの多様性が導入されている。写実的な様式に加えて、ある画面ではボナール風の色調とタッチが、別の作品ではゴッホ的な筆触と表現が、また時にはデ・キリコの影やモンドリアン的抽象主義、キュビズム的な色面処理さえ見ることができる。 「暗夜光路」では分かれ道の先の二つの闇の方へ退いていくように見えていた風景も、今度はむしろ中央の建物の方が主役となり、逆に画面から手前に突出してくるような絵画空間が生まれている。





取材日:2002年9月3日
取材協力:東京都現代美術館
参考資料:展覧会カタログ「横尾忠則 森羅万象」

横尾忠則 森羅万象:All Things in the Universe
会場:東京都現代美術館 東京都江東区三好4-1-1 TEL:03-5777-8600
会期:2002年8月10日(土)〜2002年10月27日(日)

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