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横尾忠則 森羅万象
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横尾忠則(1936生)は、1960年代初めのデビュー以来、グラフィック・デザイナー、イラストレーターとして、つねに時代をリードし、世界中の注目を集めてきました。東京現代美術館で開催中の展覧会「横尾忠則 森羅万象」は、40年以上に及ぶ横尾忠則の活動の全貌を、絵画を中心にグラフィック、版画、インスタレーションなどを交えながら、合わせて400点近い作品を通じ、総合的に紹介するものです。1965年の最初の個展の出品作から最新作まで、多面的な活動の全貌を19のテーマによって構成されています。

展覧会の構成
01 イントロダクション
02 愛とエロス 
03 楽園とユートピア 
04 ヤレ(透明) 
05 森と肉体 
06 カタストロフィ 
07 メッセンジャー 
08 芸術と芸術家 
09 ルッジェーロとアンジェリカ 
10 滝 Waterfalls
11 ポートレイト 
12 自画像 
13 三島由紀夫 
14 冒険と異界 
15 渦、螺旋 
16 死 
17 赤 
18 Y字路 ― 暗夜光路 
19 Y字路、ふたたび 

 01 イントロダクション Introduction

1965年11月、横尾は、永井一正・田中一光らを中心とするグラフィックデザイナーの自主企画による展覧会「ペルソナ」に参加する。デザイナーの主張を打ち出したこの展覧会に、横尾は自分自身のための広告を出品する。アーチ状に大きく書かれた名前のもと、薔薇を手に首を吊る作者。「29歳で頂点に達し、ぼくは死んだ」という英文のコピー。そして、横尾のトレードマークとも言うべき旭日。その目の眩むような光線の反復が、自らの過去を葬る死の悲惨さよりも、死の向こうにある来るべき生を暗示する。「モダニズム・デザインへの決別」を意図する作品である。
また、1966年には絵画の個展を南天子画廊で開くことになる。そこで発表されたのが、1ヶ月で描き上げたという連作「ピンクガールズ」。そこには、従来の絵画表現において、タブーとされるような要素がふんだんにもりこまれている。
後年、亀倉雄策が「横尾は画家でもないし、デザイナーでもない。(中略)彼の仕事のすばらしさはそういう区別を超えているところにある」(『毎日新聞』1995年1月1日)と評したように、すでにその萌芽はこの1960年代に認められる。

≪TADANORI YOKOO≫1965
103.0x72.8cm, ポスター(シルクスクリーン)
作家蔵

≪花嫁≫1966
53.0x45.5cm, アクリル絵具 / カンヴァス
東京都現代美術館蔵

 02 愛とエロス Love and Eroticism


≪天の岩戸≫1985
259x388cm, 油彩、鏡 / カンヴァス 広島市現代美術館蔵

「第13回パリ・ビエンナーレ」展(1985年)に出品された日本神話を題材にした作品群のひとつ。
横尾はこれまで愛やエロスを作品の中で様々に表現している。
1960年代後半に制作された≪性風景≫などの作品では、閉ざされた場での性交が開かれた風景の中に晒されている。版画によって写真に施された鮮やかな色面とぼかしが、その異様さを強調する。
1970年代になると、1960年代の作品に滲んでいた陰湿さを振り払うかのように、からりとした光に包まれた風景が立ち現れる。
1980年代以降、自身の肉体をもって描く歓びを味わうようになってからというもの、作家は絵画の歴史を引用し、それを様々なスタイルで表現しながら、自らの物語を紡ぎ出すようになる。
近作においては、性愛の場面や裸体、性器のみならず、自伝的要素を含む、それこそ森羅万象が画面に盛り込まれている。個別的な物語として愛やエロスを表しながらも、イメージを自在に引用し、それを背景となる天地や宇宙を思わせる無限の空間に放り込むことによって、もっと大きなものへの愛が語られている。


 03 楽園とユートピア Paradise and Utopia

1970年、交通事故をきっかけとして休業宣言をした横尾は、ワンダーランドやユートピアといったパラダイスへの志向を作品のなかで露わにしてゆく。この頃、事故による入院生活や霊的な体験、UFOの夢や三島由紀夫の死など相次いで起こった出来事に、横尾のなかには終末的な意識が広がっていたという。楽園願望はそうした絶望感と表裏一体をなすものであろう。
自らを取り巻く閉塞した状況に対し、地上の楽園を求めることにとどまらず、この世には存在しない、内なる魂のユートピアを築き上げることで、何らかの出口を見出そうとする思いがあったのかもしれない。また、ユートピアを想像し、その遥か彼方の存在を信じることで、横尾にとってのユートピアが極めてリアリティのあるものとなっていたのであろう。


上段:1974年に出版された作品集『千年王国への旅』のための試作ポスター。
中段:光を、神の世界を求めてひとりの男が旅に出るというテーマに基づいて作られたカレンダー。
下段:横尾のユートピア志向が、至高の境地シャンバラへの瞑想となって制作された作品。カンヴァスにシルクスクリーンで刷られており、4分割した画面には、それぞれ一版ないし複数の版が重ねられている。

 04 ヤレ(透明) Faulty Printing or Transparency

「ヤレ」とは、印刷物の重ね刷りをさすことばである。1955年、西脇高校を卒業した横尾は加古川市の黒田盛文堂に入社する。その印刷所でなによりも興味を惹かれたのがこの「ヤレ」であった。本番の印刷物を刷る前に、印刷インキが紙に定着するまで、別の不用になった印刷物の上に重ね刷りをする。その幾重にも刷られた絵柄に新鮮な驚きと美しさを感じたという横尾の作品には、この「ヤレ」のように重層的なイメージがしばしば登場する。さらに作品同士をつなげてみせる方法(ジュクスタポジション)やコラージュもこうした「ヤレ」の展開として考えることが可能であろう。
本来、印刷所の「ヤレ」は商品にはならない、捨て物である。それを逆に様々に取り込まれたイメージによって、時間も空間も飛び越えた場を創りだすことができるものとみなすことで、横尾はこれを作品として生かしている。


サントリーの各種商品を1点づつ取り上げた10点組のポスター。

 
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