今回の展覧会に出品された作品は約85点。近年に行われた展覧会に出品された作品の中から厳選し、森正洋氏の陶磁器デザインの流れを回顧します。改装工事が終わり、今年からリニューアルオープンした国立近代美術館の会場で、森正洋氏ご本人にもお話を伺うことができました。
■Gマークの顔の「しょうゆさし」
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今年で75歳になる森正洋氏(1927年生)。その名前を知らなくても、森氏がデザインした、この「醤油差し」を見たことがない人は少ないと思います。1958年に作られ、現行の審査形式になって初めてのグッドデザイン賞で、Gマーク商品に選定されました(1960年)。以来、40年以上にわたり、現在でも生産され続けている超ロングセラー商品で、Gマークの顔ともいえる存在です。
あまりにも身近な商品として我々の生活に溶け込んでいるため、デザインを意識しにくい製品ともいえる「G型しょうゆさし」。あらためてデザインに注目すると、ポイントは“象の鼻”とも形容された、伸びた注ぎ口にあります。この形状によって、醤油をさした後の裏洩れ(注ぎ口の裏側に醤油がたれてしまう事)がありません。また、安定した形態でありながら持ちやすく、生産性にも考慮されています。
生産された当時は、単なる「しょうゆさし」でしたが、Gマークに選定された事をきっかけに、「G型しょうゆさし」と呼ばれるようになりました。
佐賀県塩田町出身の森氏は、多摩造形芸術専門学校(現・多摩美術大学)に学び、在学中に商工省工芸指導所(後の通産省工業技術院産業工業試験所、略称・産工試)の研究生となります。産工試には剣持勇、豊口克平、勝見勝など当時の日本デザイン界を代表する面々が顔をそろえており、そこで大きな経験をつんだそうです。卒業後に学習研究社に務めた後、故郷の九州に戻り、56年に長崎県波佐見町の白山陶器に入社。以来、この「G型しょうゆさし」を始め、モダンでありながら普通の生活に無理なく入っていける数々のデザインを生み出していきます。ちなみに、現在までにGマークに選定された商品は、111点。「100まで行ったらやめようと思っていたのに、いつの間にか超えちゃった(笑)」と話しますが、おそらくその数は最多選定記録でしょう。
■機能がもたらすロングセラー
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G型しょうゆさし (1958)


展示されたG型しょうゆさし
右はP型コーヒーセット (1947)
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森氏は「G型しょうゆさしは、恵まれていた」とも言います。発売当初に婦人雑誌などに紹介され、現在でもGマークの顔として扱われる事も多いため、おのずと人々の目にとまりやすい存在になっているから、という事です。そういう機会が少ないにもかかわらず、ロングヒットを続けている商品として「T型灰皿」(1960)があります。
今でも旅館などでよく使われているこの灰皿。開発当時はエアコンの無い時代ですが、客室の窓を開けっ放しにして風が入ってきても、灰皿の灰がこぼれません。また、酔客がタバコを適当な場所に置いても、燃えカスが畳に落ちません。重ねて持ち運びできるので、清掃にも便利。角張ったところが無いので、丈夫で壊れない…。シンプルな形状に見事な機能性を兼ね合わせ、特別なPRをしなくてもロングセラーを続けている好例です。
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T型灰皿 (1960)
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