| <JDN> … <REPORT> … <JDN リポート> | ||
![]() |
|||
|
|
|||
|
■大衆にとってデザインとは 大西 ── 先ほどのアザラシのようなラジカセではないですが、本来はGマークに選ばれるべきでは無い商品まで選ばれている。逆に、選ばれなくてはいけないのに洩れているものもあるのではないでしょうか。川崎さんが委員長になって、どういったところを変えていくつもりでしょうか。 川崎 ── Gマークにした方が良いものが洩れてしまうのは、多数決で決めてしまっていたからです。僕は、基本的に応募者の立場に立ちたい。応募者は選定してもらいたくて応募しているのですから、落とされたものについては、僕が応募者の立場に立って、審査員に徹底的にディベートを仕掛けるつもりです。審査委員が明快に論理展開できなかったら、自分で決めてしまおう、と思っています。 審査員自身の能力も求められます。ステンレスの鍋で、取っ手を違う素材の金属で留めている。イオン化傾向が違うから腐食するに決まっているのに、Gマークにしてしまう。本当のプロとは何なのか、問い詰めていかなければなりません。 僕の審査が厳しい、という噂が立ったのは、おそらくiMacを落としてからでしょう。ポリカーボネイト素材を使っているiMacを大賞にする事に対し、僕はNOと言いました。日本の大衆はバカだから、そういうものが蔓延してしまうだろう、と思ったからです。案の定ポリカーボネイトは蔓延し、フリーのデザイナーは、皆スケルトンのデザインを強いられる事になりました。僕は徹底的に討論して、結局iMacは普通の賞になった、といういきさつがあります。 都築 ── 「バカな大衆」という話をされましたが、本当の大衆と、メーカーが幻想している大衆は、必ずしも一致していないと思います。数年前に流行ったデザインで、パステルカラーで丸っこい「女性向けのデザイン」というのがありました。ですが、聞いてみると、女の人はあんなものは全然欲しがらない。もちろんデザイナーも作りたくない。つまり、作り手の意見も、使う側の意見も、両方通っていない。そんな奇妙な状況は、製造業の内部の問題ではないのでしょうか。 川崎 ── 僕にも同じような経験があります。インハウスのデザイナーだった時に、オーディオを作って秋葉原のオジサンに見せにいく。このオジサンの言う事を聞かないと、商品を売ってもらえない。するとそのオジサンが、趣味の悪いカフスボタンを見せて「このブランドのカフスボタンと同じ仕上げにしてこい」などと言うわけです。僕は「何だ、そのボタンは」と思って帰ってきちゃいましたが、嫌々そんなデザインのものを作らされるデザイナーもいっぱいいるわけです。 大西 ── 川崎さんと都築さんの話を聞いていると、「これを大衆が欲している」と誰かが誤解して思い込んでいるものを、無理やりインハウスデザイナーが作らされている、という不幸が、今の現状のように思えます。ただ、私が言いたいのは、Gマーク制度は、もう50年の歴史があるわけです。Gマークの受賞がデザイナーの地位向上に繋がる、と川崎さんはおっしゃったが、50年経っても、デザイナーの置かれている立場は変わっていないのではないでしょうか。 川崎 ── Gマークを選定するにあたって、評価基準というものがあります。これはものづくりの最適のチェックシートともいえ、700年の歴史がある越前打刃物の産地に行って、職人さんにこれを教えることによってものづくりとして成功した事もあります。Gマークは基準であり、水準である、という言い方ができるかもしれません。 都築 ── 例えば、このデザインではケガをするだろう、とか、先ほどのiMacのように、ポリカーボネイトはリサイクル上問題があるだろう、という事で、「水準を満たしていないので、Gマークで排除する」というのは分かります。ですが、デザインの中には、それがカッコいいか否か、という、非常に恣意的な事が含まれますよね。 川崎 ── Gマークの評価基準の最初に、美しいか否か、という項目があるのは事実です。世界の先進国は、ほぼ全ての国がデザインの制度を持っていますが、どこでも美学性は審査の基準に含まれています。 デザイナーから見た時に、なんだこれ、というデザインもあります。ただ、先ほどのアザラシのようなラジカセではないですが、その時代を表していればGマークにしなければならない、という事もあります。 大西 ── Gマークは売る側にとっても威光のようなものに繋がるのでしょうか 川崎 ── かつてコジマ電機が、異なるメーカーの商品の色を統一したシリーズ(フレッシュグレーシリーズ)を出し、それがGマークを受賞し、大ヒットしました。インハウスデザイナーがやりたくてもできなかった事を量販店にやられた、という事で、各家電メーカーのトップが視察したそうです。Gマークの大きな効果といえるでしょう。 大西 ── それほど効果があるGマークを50年も続けていて、どうして日本の工業デザインは良くならないのですか。 川崎 ── ひとことで言うと、サラリーマン社長が多すぎて、ほとんどデザインが分からないからです。 今、自分がデザインをする時は、取締役会に出られて、デザインの決定権の半分を自分が持つ事、を条件にしています。ですが、インハウスデザイナーは、それが不可能に近いんです。 Gマークを数多く取って、企業内での立場を上げるデザイナーもいます。企業名は言えませんが、大賞受賞がきっかけとなって取締役になったデザイナーもいるのです。 ■審美性の判断 都築 ── Gマークは企業側から推薦されて応募されるものですが、有名なのに応募してこない企業はあるのでしょうか。 川崎 ── あります。そして、そのメーカーはどんどんデザインが悪くなっています(笑)。 その企業のマークが付いているだけで、いいデザインだと思っている大衆がたくさんいます。プロの目から見ると、こうやったらすぐ壊れる、と一発で分かってしまうようなデザインでも、ブランドイメージだけで売れていく。中身をきちんと見て欲しいと言いたいですね。 甘糟 ── 私は素人なので失礼なのですが、グッドデザインの対象はどこまでなのでしょうか。 川崎 ── 自動車、下着、空間…生活用品全てです。ビジネスチャンスやビジネスモデルになるようなものでも、デザインが加味されていれば入ります。また、今年からコミュニケーションデザイン部門が出来たので、デジタルコンテンツやポスター類も対象になりました。 甘糟 ── 銀座のエルメスの新しいビルは、川崎さんとしてはOKなのでしょうか。 川崎 ── もし応募してきても、僕はGマークはあげられないと思います。ガラスブロックはデコレーションに過ぎないし、都市機能性があるとは思えなかった。大衆を引き付けるための喚起材にはなっているけど、それ以上ではないと思うからです。ただ、全体会議の中で、それが日本の国家のために役に立つものであれば、当然Gマークを出します。 都築 ── これからどんどん審査のフィールドが拡大していく中で、美しい、という基準をどこで守るのでしょうか。広くなればなるほど、個人の感性でしか判断できない部分も増えていくのではないでしょうか。 川崎 ── 審査は複数のチームでやっています。美的なものは主観性ですが、チームで審査する事によって、客観的な結果が生まれてきます。 世界的には、デザインの審査は審美性、機能性、合目的性。通常は、この3つだけです。Gマークは、ものすごく多くの評価基準で審査しています。今までは、美しいか否かで減点していましたが、僕は加点する項目を多く作りたいと思っています。 甘糟 ── 私は多少使い勝手が悪くてもカッコイイものを使う、という事がある程度あるのですが、使い勝手が良くて、その上カッコいいものでないとGマークには選ばれないのでしょうか。 川崎 ── ものにもよります。例えば携帯電話のデザインは、ひどいものも多いですよね。デジタルカメラなどにもいえますが、特に情報機器についてはポリティカルに選んでいる部分もあります。ここのデザイン部門が消えてしまうかも、と考えると、選んでおいてトップを納得させておく必要があるからです。危険な状況にあるデザイナーを救うためにも、Gマークは必要なのです。 都築 ── 僕は、まだ審美性という部分がひっかかります。川崎さんは、審査委員の意見がたくさん集まれば客観的になる、と言いましたが、僕はそうじゃないと思う。逆に、多くの評価基準から零れ落ちるものの方が、ドキッとする美しさに繋がるのではないでしょうか。
|
![]() 立川裕大(たちかわゆうだい) デザインプロデューサー 1965年長崎県生まれ。甲南大学経済学部を卒業後、(株)カッシーナジャパン入社。その後ギヤコレクション、Shop i.Oでの勤務を経て、'99年にフリーランスのデザインプロデューサーとして独立。家具をはじめとする製品の開発プロデュースやコンサルタント業務とともに、「CASA BRUTUS」「LIVING DESIGN」「マンスリーM」などでデザイン関連の執筆、評論を手がける。'00年9月には、日本の現代的な家具を商材とした提案型のインテリアショップ「5151」を東京・目黒に開設。一過性のデザインブームでなく、日本の生活シーンに根ざしたデザイン文化をめざす活動を続けている。 ![]() 甘糟りり子(あまかすりりこ) コラムニスト 1964年横浜生まれ。玉川大学文学部卒業。アパレル系企業勤務を経た後、女性誌や週刊誌でファッションや流行に関する執筆活動を始める。着実なフィールドワークと鋭い観察眼に基づいた姿勢が支持されており、特に自動車についての、いわゆるモータージャーナリストとはひと味異なった視点からの論評には定評がある(自身の愛車もアルファロメオ・スパイダーという、大のイタ車党である)。現在は「FRaU」「ENGINE」「DIAS」などで、最先端の店やホテル、商品などをテーマにコラムと小説を連載中。これまでに著書として「東京のレストラン」「最新明解流行大百科」(光文社文庫)、「贅沢は敵か」(新潮社)などがある。 ![]() 大西若人(おおにしわかと) 朝日新聞社東京本社学芸部 記者 1962年京都市生まれ。東京大学工学部都市工学科(都市デザイン研究室)卒業、同修士課程中退。'87年朝日新聞社に入社。'90年より西部本社(福岡)、東京本社、大阪本社の各学芸部にて、美術、建築、デザインなどについての執筆を担当する。また「AXIS」や「住宅特集」での連載、美術展カタログヘの寄稿などを手がけるなど、専門性を活かして活動の場をさらに広げている。 ![]() |
|
JDNとは | 広告掲載について | 求人広告掲載 | お問合せ | 個人情報保護基本方針 | ウェブサイト利用規定 | サイトマップ デザインのお仕事 | コンテスト情報 登竜門 | 展覧会情報 Copyright(c)1997 JDN このwebサイトの全ての内容について、一切の転載・改変を禁じます。 |