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<JDN> <REPORT> <JDN リポート>
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clear.gif 今年からグッドデザイン賞(Gマーク)の審査委員長になった川崎和男氏は、あえて生活者という曖昧な視点を排して「ユーザーの視点とプロのデザイナーの視点を結び合わせた視線の中でグッドデザインのより本質を探りたい」と述べています。一方、デザイナーや専門家の見識と美意識によって選ばれるグッドデザインは、ユーザーの求めている等身大のデザインを反映していないという指摘も多くあがっています。
日本産業デザイン振興会(以下 産デ振)の発行する雑誌「Design News」主催による「フェイス・トウ・フェイス・トーク」。今回は、デザインを評価するプロの視点とユーザーの視点を元に、川崎和男氏と気鋭のデザインジャーナリストたちによる、グッドデザインをめぐるオブジェクションです。新しいデザインの価値を新しい時代に作り出していくことはできるのでしょうか。会場は満員のデザイン関係者・デザイン愛好者で埋まりました。
(2001年7月17日/東京デザインセンター ガレリアホール)
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川崎 ── 今年からGマークの審査委員長をする事になりました。僕が初めてGマークの審査委員になったのが15年前。デザイナーになって来年で30年ですが、そのうち15年はGマークの審査をしていた事になります。僕は以前より「Gマーク審査委員は50歳定年」を唱えていましたが、すでに自分が52歳になってしまいました。
実は、僕は今年でGマーク審査委員も辞めようと思っていました。自分が審査委員をやっていると、自分の作品に賞を与えにくくなる。それはクライアントに対して非常に申し訳ない事だ、と思っていたからです。産デ振に話したところ、逆に審査委員長を依頼されました。いろいろ考えたのですが、審査委員長としての権限を認めてくれるのなら引き受けよう、という事となりました。
自分はデザイン学者だと思っているので、軽薄な雑誌はあまり読みません。たまに目を通すと、世の雑誌はデザインに対する偏見に満ち溢れています。今日は、グッドデザインを誤解しているデザインジャーナリズムの皆さんに、川崎和男に喧嘩を売って欲しい、と思ってここに来たつもりです。

都築 ── 軽薄代表の都築です(笑)。最近「ストリートデザインファイル」という写真集を刊行しましたが、これは素人のデザインを集めた本です。
僕が思うに、かつてデザインは、もっと我々をドキドキさせてくれるものだったと思います。最近のデザインを見ると、プロのデザインとして作品の完成度は上がっていますが、同じデザイン言語で語られてるだけで、刺激が薄くなってしまったように思えます。僕が扱った素人のデザインはその対極にあると言えます。もちろんそれが全てと言うつもりは無いですが、両方を見ていく必要はあるのではないでしょうか。
デザインの世界では、川崎さんは異端の立場から厳しい事を言うアウトサイダー的な立場の人だ、と僕は思っていました。その川崎さんがGマークの審査委員長をする、という理由について聞きたいと思っています。

甘糟 ── 私はこの中ではデザインについては一番素人だと思います。今回は素人なりに聞きたいことがいくつかあって来ました。
本を書いていて、いつも思うのですが、使えないモノには意味が無い。ただ、そればかりを追求していくわけにもいかない。モノをつくる立場として、そのあたりの葛藤をお聞かせ願えれば、と思います。

立川 ── 僕はジャーナリストではありません。最初にご紹介いただいたように、家具屋です。製造やプロデュースをしつつ、目黒で自分の選んだ家具を販売しています。今回は、流通に携わる立場から、Gマークの位置づけなどについてお話できれば、と思っています。

大西 ── 私は新聞記者です。新聞はメディアでも不特定多数の人に読まれるものです。しかも読者から購読料をもらっているので、大衆の代理、という意識があります。
そもそもグッドデザインの表彰制度とは、誰のためのものなのか。産業界のためにあるか、消費者のためか。また、選定されるモノの数が非常に多いので、一般の人が分かりにくくなっているのではないでしょうか。そのあたりをお聞きしたいと思います。


■お上が与える「良いデザイン」
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都築 ── 公開トークでは、普通‘なあなあ’で終わってしまう事が多いのですが、今回は喧嘩別れに終わってしまうかもしれません(笑)。僕から話をさせていただくと、現在は民営化されたようですが、Gマーク制度は、元々はお上(旧通産省)の制度ですよね。お上が、良いデザインのお墨付きを与える、というのがそもそもおかしいのではないでしょうか。
Gマークは英語では「グッドデザインアワード」ですが、アワード=賞というなら、普通は1つ選ばれて「賞」というはずです。2000点の中から900点選ばれるのは、賞では無くお墨付きでしょう。ですが、デザインの良し悪しを決めるのは、お上ではなく消費者だと思います。戦後のモノが無い時代ならともかく、皆がモノをもっている時代に、上の方から「これは良いデザインです」というのは、僕は聞きたくないと思います。

川崎 ── Gマークは制度ですから、お上が与えているように見えるかもしれませんが、各審査委員はお上に成り代わってやっているわけではありません。「アウトサイダーの川崎が審査委員長」については、僕が今まで外から批判しても何も変わらないので、中に入って改革しよう、という事です。ちょうど、スペインの画家のゴヤが、宮廷画家となって発言力が増してから、自分の本当の意見を言い出したように。
日本は貿易立国であることを忘れてはいけません。鉄鉱石1トンは2000円です。鉄板1トンにすれば、5000円になります。1トンの電器製品になれば、100万円になります。原材料を加工して、付加価値を付けることによって、日本は食べていっているのです。国家戦略的にも、この制度は日本を支えているのです。
消費者がどれだけ審美性を持っているのでしょうか。インハウスのデザイナーは、秋葉原に並ぶようなデザインをしたいとは、誰も思っていないでしょう。営業や技術に、やりたくもないデザインを「強いられている」現状がある。僕は、この制度でデザイナーの職能を守っていきたいと思っています。

都築 ── Gマークを取ることによって、商品にメリットは生まれているのでしょうか。

川崎 ── 商品そのものへのメリットは、あまり無いでしょう。ただ、インハウスデザイナーにとっては、Gマークを取るかどうか、という事は、社内での競争に繋がっています。
本当に自分のやりたいデザインを、営業の力で曲げられてしまう。誰もあんなアザラシのような変な形のラジカセは作りたくないのに、強いられている。虐待されているデザイナーがたくさんいるのです。社内での圧力に対し「Gマークをこれだけ取ったじゃないか」と言えるようにしたいのです。
ジャーナリズムはGマークの批判をしますが、あなた方ジャーナリズムは、誰のおかげで成り立っているんだ、と言いたいですね。貿易立国における知能労働者としてのデザイナーを、ジャーナリズムは分かっていないのではないでしょうか。
誰の為のGマークなのか、と問われたら、まずインハウスのデザイナー、次にフリーランスのデザイナーの為のものだ、と僕は答えます。

立川 ── 日本全体で、デザイナーの肩書きの名刺を持っている人は約8万人いるそうです。それは、EU全体のデザイナーの数と同じだ、と聞きました。そもそも、そんなにデザイナーの数が必要なのでしょうか。

川崎 ── 本当にデザイナーがそれだけ必要かどうかは、僕も疑問に思っています。今、僕は福井県の鯖江で眼鏡のデザインをしています。鯖江に眼鏡のデザイナーは千数百人いますが、その人たちのほとんどはパターンをやっているだけです。世界的な視野に立った本当の眼鏡のデザイナーは、40人ぐらいではないでしょうか。


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川崎和男氏
川崎和男(かわさきかずお)
デザインディレクター
1949年福井県生まれ。金沢美術工芸大学産業美術科卒業。(株)東芝に入社後、Aurexブランドのオーディオ機器の開発などに携わる。'79年に川崎和男デザイン室を開設、以来IDとプロダクトデザインを中心に幅広いデザイン業務を行う。'96年名古屋市立大学教授に就任、現在は同大学院芸術工学科教授(医学博士)。また今年度のグッドデザイン賞(Gマーク)審査委員長を務める。
近作として、マルチメディアモニター「GAWIN M-10」、眼鏡フレーム「MP−690 Anti-tension Frame」などがある。これまでに毎日デザイン賞、iF賞ほか内外のデザイン賞を多数受賞。著作には「デジタルなパサージュ」「プラトンのオルゴール」「デザイナーは喧嘩師であれ」(アスキー出版)があり、自らのデザイン観をストレートに表す姿勢にファンも多い。

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都築響一氏
都築響一(つづききょういち)
エディター
1956年東京都生まれ。'76年から「POPEYE」「BRUTUS」で現代美術やデザイン、建築などの企画を担当したのを皮切りに、以降これらの分野に関する執筆や評論、編集活動を精力的に続けている。特に、自ら撮影を手がけ、英訳版も出版された「TOKYO STYLE」('93年)や、木村伊兵衛賞を受賞した「ROADSIDE JAPAN」('96年)は大きな注目を集めた。'97年からは、アンチ・プロフェッショナリズムとしてのデザインマニフェストとも言えるシリーズ「ストリート・デザイン・ファイル」(アスペクト)の刊行を開始、先頃全20巻を完結させた。近年は雑誌連載などに加え、東京・恵比寿のクラブ「MILK」のプロデュースなども手がける。またデザインに関する寄稿や発言も多く、“リアリティに欠けた”デザインのあり方に厳しい視線を投げかけている。
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会場風景
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