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桐山登士樹が選ぶ 注目デザイン&デザイナー

 樹幹通信 B A C K N U M B E R

 2 0 1 2 J a n u a r y

 2012年はどんな年になるのであろうか、どんな年にしなくてはならないのか、ただ平坦な年ではなさそうだ。
 年初の日本経済新聞に米テスラ創業者イーロン・マスク氏の記事「革命なき会社に未来はない」が掲載された。2012年は、これまでの既存概念に捉われない新たな創造社会に突入した事は確かである。クリエーションを日常の仕事にしているのはデザイナーだ。このデザイナー達の新たな活動の場=スキームづくりが必要とされている。
 このコーナーも足掛け13年目。これまで紹介したデザイナー、建築家、アーティストは150名に上ります。そろそろ古くなったデータを更新しなくてはなりません。クリエーターの皆さんよろしくお願い致します。

 第二回目となるエステー・デザインアワード2012は、審査委員に佐野研二郎さん、鈴野浩一さんをお迎えして斬新なアイデアを求めています。
 1月20日から開催されるメゾン・エ・オブジェにこれまで以上に日本の各地の企業が参画されます。私がプロデュースを担う「KANAYA」も世界のマーケットへ向けて出航します。 (桐山登士樹)


 2 0 1 1 D e c e m b e r

84万人を集めた第42回東京モーターショー
 今年も後20日余である。デザイン界にとって今年は厳しい年であった。総体的にデザインの質は上がり、大企業から中小企業までデザインを経営戦略として重要視する企業は増えた。しかし、ブランド体系を作るまでの厚みはなく、結局は短命で消えて行くモノ作りを相変わらず繰り返している。デザインだけでなく、コンシューマーとの関係性を継続的にどう継続し向上できるのか、それぞれのリソースを生かした循環型のモノ作りが求められる。
 さらに踏み込むと細分化された専門分野ではこの時代は生き残れない。やはり冷静な分析が求められる。参考にすべきは、現在世界的に活躍する建築家の動向だ。彼らの緻密なプロジェクト分析、人々(クライアント)に夢を与える、期待を膨らませるデザイン、生み出された建築の持続可能な地域社会への関係など、学ぶ点が多い。やはりこれまでの開発ではない新たなスキームが必要と考える。
 今年の仕事を振り返ると個人的には、「キヤノンNEOREAL WONDER」に7万人の方々にご来場いただいたミラノサローネだ。企業のブランド、リソースを感動を伴うカタチで示すことのできるプロジェクトにステップアップした。新たなブランドコミュニケーションの手法を完成させたと思っている。また、9月にOZONEで開催した川上元美さんの展覧会「MOTOMI KAWAKAMI CHRONICLE 1966-2011」ではデザイナーの卓越したスキルと社会的な関係性を改めて確認できたことだ。私たちは時代のイノベーターでなくてはならないことを改めて認識した一年だった。 (桐山登士樹)


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川上元美さんの事務所で展覧会の打ち上げ
 東京都現代美術館で始まった「建築、アートがつくりだす新しい環境―これからの“感じ”」展は、建築家一人一人の社会と向き合う姿勢が垣間みれて興味深い。すでに人類の発明によって生まれた様々な技術によって高度な社会インフラがほぼ完成している。しかし、人類の進化は不思議なもので新たな生活形態や様々な技術改革、デザイン、コミュニティの変化によって次の扉を開けようとしている。それぞれの建築家のトライアルは次代を透視する機会でもあり、それぞれの目(センス)を確認する機会でもある。
 例えば、SANNAのローレックス・ランニング・センターを映像化したヴィム・ヴェンダーズの3D作品は、昨年ヴェネツィア・ビエンナーレで視聴したが余すことなくこの建築のコンセプトと意味を表現している。言い換えれば、建築への期待感が助長されている。
 東京の街は、デザインタイド、デザイナーズウィークで真っ盛り、おまけにIFFT(インテリア ライフスタイル リビング)の開催も重なりこれまで沈静化していた街に人が出ている。東京は元気でなくては、世界の先端都市でなくては、新たな可能性が芽生える都市でなくては、そんな想いを持ちながらデザインの様々展示を見て回りたい。今日気づいた点は、総体的にデザイナーが介入することで展示品の質が向上している。デザイン表現に幅が出ていることを感じた。どちらもポジティブに評価して良い点だ。 (桐山登士樹)


 2 0 1 1 O c t o b e r

左から、岩田賢二(準とやまデザイン賞)、松山祥樹(とやまデザイン賞)、門田慎太郎(黒木靖夫特別賞)の各氏
 これ見よがしのデザインには関心が薄れて、例えば国立新美術館のスーベニアフロムトーキョーの様な、カルチャーを感じる見せ方には支持(人)が集まる。この違いは何か、今デザインの抱える問題である。いけてないデザイン、気分を反映していないデザイン、生活者との関係性が持てないデザインは振り向きもされない。秋田道夫さんとバイヤーの山田遊さんと私の三人で富山のデザインウエーブのセミナーで語り合った点である。プロダクトデザインコンペティションは最終選考に残った10名のデザイナーから三名が選出された(左写真参考)。特にとやまデザイン賞は、久しぶりに自分でも欲しいと思うデザインに遭遇した。30万個は売れるであろうと読んでいる。

 「川上元美 デザインの軌跡」展は、年代を超えて高い評価をいただいた。最も心に刺さった言葉は「デザインとは、根無し草のように時代と浮遊するものでは無く、個を超えてある普遍に至りながらも、なお個が貫かれているものと解釈している」と語った川上語録を再確認することが出来たことだ。

 毎年9月に香港で行われる世界最大のジュエリーフェアに、昨年に引き続き日本ジュエリー協会は出展し、そのお手伝いをした。海外展示会はマーケットの推移を肌で感じ事が出来る点が魅力。一週間に二回香港を往復し、空港や街や展示会場で日本が忘れかけているエネルギッシュな躍動感を体感でき、エネルギーを頂いた。

 こうして見るとデザインが次の扉を開くには、デザイン関係者だけで群れる現状状況から脱却しマーケットと語り、闘わなくてはならない。そんなデザインスキームが必要である。


 2 0 1 1 S e p t e m b e r

恒例のビール祭り、米谷裕史(トネリコ)、坪井浩尚、亀田和彦(wow)の各氏
 私の机の上に二通のカード会社からの明細書が置かれている。毎月同日に必ず配達されてくる。開封すると航空券やら高速道路代、飲食代、趣味のモノなど、かなりの金額が刻まれている。カードが発達することでキャッシュレス時代が到来し、ネットショップが日常化してリアル店舗が衰退している、正確に言えば消えようとしている。大型総合家電売り場やCD、本売り場を彷徨い歩くことが好きだったが、本屋とスーパーと長年愛用しているブランド以外は、ほとんどネットでの購入になった。朝、注文すれば夕方には配送される便利なシステムが可能となり、この先商業店舗の生きる道は厳しい。
 先日、お台場で開催されたグッドデザインエキスポは多くの人で賑わっていた。鮮度と知る楽しさは人間の知的欲求を刺激する。この知的欲求を促すポスト商業施設を考える時期に(例えばJDNを核に)遭遇している。

【展覧会お知らせ】
 2011年9月9日から9月25日まで新宿リビングデザインセンターOZONE、パークタワーホールにて、約50年間日本のデザイン界を牽引して来た川上元美さんの展覧会「MOTOMI KAWAKAMI CHRONICLE 1966-2011 川上元美デザインの軌跡」を開催致します。若い世代に見ていただきたいという川上さんの想いを具現化する為に会場構成をトラフ建築設計事務所、グラフィックデザインを山野英之(高い山)に依頼しました。特に川上さんの活動をまとめた特大の年表をじっくりご覧下さい。入場は無料です。


 2 0 1 1 A u g u s t

 アーティストの動きに注目している。しがらみやシステムの中で働かざるを得ないデザインとは違い、アーティストの活動は自己の表現に軸足を置いているだけに強く、ストレートだ。また最近のアート作品は、四角四面のスペースから開放され、多様な自由表現に拡大している点にも興味が湧く。例えば、村上隆氏や名和晃平氏の制作現場はデザインのモックアップ工房さながらである。素材の活用、制作に使われる様々なマシーンや職人技はデザインプロセスと同様だ。束芋氏の映像投影技術や投影スクリーンの設定も基本は変わらない。作品(表現)として違いは、表現の豊かさ、メッセージの強さにある。
 先日、イタリアで開催中の第54回ヴェネツィア・ビエンナーレを視察した。多くのアート作品が人との対話であり、人との関係性であり、生命を題材に成り立っている。そこに時代を透視するアートの強さを感じた。ひっくり返った戦車の上をただただ走り続けるジェニファー・アローラ&ギレルモ・カルサディーラの作品「Gloria」(アメリカ館)は、アイロニカルな作品(左記写真)だ。この作品から発せられるキャタピアの回る音は、会場のあるジャルディーニにメッセージとして鳴り響いていた。デザインが取り戻さなくてはならないのは、システム化されたインダストリーに再び人との関係性を強く見いだす事である。多様な人種、価値観を越える自由なメッセージ(個性)がデザインにも必要である。


 2 0 1 1 J u l y

岩崎一郎氏と伊東史子氏と意見交換
 1996年に新宿OZONEで開催された「ニューヨーク近代美術館巡回 現代デザインに見る素材の変容展(Mutant Materials in Contemporary Design)」は、デザインを素材から見直す新鮮な切り口で話題となった。この展覧会に訪れた方は、デザイン関係者に加え、素材メーカーの研究者、技術者、工業試験場職員など予想以上に広い職種だった。この展覧会はパオラ・アントネッリがMoMAのデザインキュレーターとして、初めて担当した展覧会であった。東京都現代美術館で8月28日まで開催されている「名和晃平 - シンセシス」は、ビーズ、プリズム、発泡ウレタン、シリコンオイルなど素材の特性を最大限に活用しオブジェ化し対峙する者との会話(身体性とのコミュニケーション)を引き出している斬新な展覧会である。
 ポーラミュージアムアネックスでは7月10日まで「松尾高弘インターラクティブアート展 - LIGHT EMOTION」が開催されている。透過性のスクリーンをレイヤー構造に活用した「Aquatic Colors」2011バージョンやアクリルパイプにLEDを組み込んだ「White Rain」など身体との共鳴(インターラクティブ)に力点が置かれている。
 インダストリーではボーイング最新機787が話題となっている。ボディに炭素繊維を使用し軽量化し燃費効率を高めている。この機体の製造分担率35%は三菱重工業、川崎重工業、富士重工業の3社によるものだ。
 3.11以降エネルギーの効率化が叫ばれる今日、例えばアーティストの想像を超えたクリエーションと日本企業の潜在的な技術力を活用したスキームもある。私自身も素材による新たなスキームづくりを行っているが、参加者の理解を得るのに時間を要している。 持続可能な精神のエネルギーも同時に必要だ。


 2 0 1 1 J u n e

キヤノンNEOREAL WONDER打ち上げ
 ミラノサローネの滞在期間は設営期間を入れると2週間強になるので、日々忙しいクリエーター達が最終日まで残ることは難しい。しかし、今回は賞も受賞したし全員が揃った状態で祝杯を上げたいので、サローネ終了後40日も経った5月30日に打ち上げを行った。 久しぶりに再会したメンバーは古くからの友人の様で、心が落ち着く。サローネプロジェクトは、いつも会期が終わるまで緊張感が続き、通常の体調に戻るまでには時間を要する過酷な場である。しかし、世界の頂点にいるデザイン界の目利きやメディアに見ていただける機会だけにヤリガイはある。そして、この機会から得られた多くの要素を次にどう生かして行くか、新たなスキームを作り上げなくてはならない。
 古稀を迎えたデザイナー川上元美さんの展覧会「MOTOMI KAWAKAMI CHRONICLE 1966-2011」(会期:9月9日〜25日、会場:新宿OZONE3Fホール)の制作に取りかかっている。1000点以上もの実作は出来るだけ精査して、個々のデザインではなく本人のダンディニズムを通じてデザインを解体したいと思っている。
 今年で18年目を数える富山プロダクトデザインコンペティションには、これまで多くのデザイナーに参加していただきました。日本のデザイン界は、このコンペの応募デザイナー達によって支えられているといっても過言ではない。この実績を元に<デザイナーの登竜門>として機能強化に力を注ぐことにしました。(桐山登士樹)


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ミラノサローネ最終日の打ち上げ
 写真は4月17日、サローネ最終日の打ち上げの様子を撮影したものだ。既にメンバーの何人かはミラノを後にしたので、残っていたメンバーのみの記念写真である。朗報は22時に飛び込んで来た。今年から制定された、サローネとフォーリサローネすべての現代カルチャーとデザインのイベントを審査対象とした「エリータ・デザインアワード2011」のグランプリに「キヤノンNEOREAL WONDER」が選ばれたというものだ。一同、達成感と最高の評価に歓喜を上げ美酒に酔った。1986年からサローネに通い始め、メンフィス、スタルク旋風、ミニマルデザイン、デザインアートと四半世紀のデザインの変遷を体感して来た。2005年からは、見る側から創る側に転じて、LEXUSアートエキジビジョンキヤノンNEOREALをプロデュースして来た。そして、この四年間の出展でNEOREALは、サローネの顔とも言うべき展示となった。絶えず一番の評価と話題を意識し、徹底的にデザインの可能性を追い求めて来た。自分としても一つの達成感を感じた今年のサローネであった。しかし、時代は高度に重層化し個々のライフスタイルが基軸となって動いている。一時の美酒を味わったので、気持ちは次へ向かい始めている。

 2 0 1 1 A p r i l

桜の開花が待ち遠しかった2011の春
 一億二千万の日本人が打ちのめされた地震、津波、原発の三重苦に重い空気が日本列島を漂う。日経新聞Web版に掲載された、海外からの支援部隊に深々と感謝のお辞儀する被災者の写真を見て涙が出た。そして、日本人の礼儀正しさに精神の美しさを感じた。人としての素朴さ、暖かさは、何かしなくてはならない気分にさせられた。下向きな忍耐強さと高い精神性から生み出されたのが日本のモノづくりである。対峙する事によって、より深め、高まるモノとの関係性。幾多の試練が先人達を推敲なモノづくりへと育てていった。マスではなくヒトに向けたモノづくり、イタリアの巨匠エットーレ・ソットサスは生前、「贈って感謝されること」と話していたのを思い出した。1923年の関東大震災を契機に立ち上がった民芸運動の様に素朴な美の世界に焦点を当てる機会でもある。
 遅まきながら今回の震災を契機にtwitterを始めました( http://twitter.com/trunk_tk )。まだ慣れていません。さて、本日からミラノです。いち早くサローネ速報をお届けする予定です。強いニッポンの復興を願いプロデュースしているキヤノン「NEOREAL WONDER」では、「がんばろう、ニッポン」を記したいと思います。


 2 0 1 1 M a r c h

参加クリエイターのトラフとWOW
 2月16日にキヤノンからNEOREALの概要が発表された。昨年の11月頃から「キヤノンは出るのか」「来年は誰を起用するのか」の質問攻めに硬く口を閉ざして来た。契約上の機密保持事項だから当然だが、ちょっと辛い期間であった。今年はスーパースタジオ・ピューのアートポイント825平米を借りた。この三年間はトリエンナーレ美術館で開催し、高い評価を頂いた。四年目となる今年は、エネルギーがみなぎるトルトーナ地区で新たな映像体験を目論んでいる。その為、名前も「NEOREAL WONDER」とした。起用クリエイターは、空気の器で人気のトラフ建築設計事務所とヴジュアル表現では定評のあるWOWにお願いした。キヤノンのブランドイメージを高め、誰も体験したことのない新たな出会いを創出する為に8ヶ月間様々な試行錯誤を繰り返し準備してきた。今年はどんな評価が頂けるか今から楽しみだ。同時に、さすが日本、元気な日本とも言われたい。期せずして50回目の記念すべきミラノサローネ、私は86年より通算26回目となる。時代の変遷を強く感じている。
http://canon.jp/milano2011/exhibition/index.html

 18年間非常勤で勤務する富山県総合デザインセンターがプロデュースする「越中富山お土産プロジェクト」の発表会を2月22日に丸ビル1階丸キューブで行った。起案してから三年弱の時間を要したが、なかなか素敵なブランドとなった。
単に食品ブランドを企てただけではなく、地域ブランドのあり方と財源に関しても考えたプロジェクトである。時折依頼される講演等で詳しく伝えて行きたいと思っている。
http://osusowake.toyamadesign.jp/archive/


 2 0 1 1 F e b r u a r y

バスキア展のチケット売り場
 ミラノ出張の帰路に、「メゾン・エ・オブジェ」に立ち寄り視察した。翌日、飛行機の出発までの時間を利用してパリ市立美術館で開催中の「バスキア展」を観るために開館10分前から並び35分後にやっと入場できた。「寒風吹く中、子供も大人も老人も根気よく並ぶなぁ」と感心した。大人社会は、文化の感心の高さと比例するのか、並び待つ人たちのマナーが素晴らしかった。さらに展覧会の作品構成も素晴らしく、会場はエネルギーに満ち溢れていた。1980年代のエネルギーは、社会と自分との関係性の葛藤から生み出されたものだと懐古した。
 さらに欲張ってポンピドゥーセンターで開催中の「モンドリアン展」に向かい、運良く10分程度で入場できた。ここではモンドリアンのデッサン力と年代別のアートワークやアトリエの再現に見入った。しばし中央に置かれた椅子に座り込み体を休めた。何せ二つの展覧会のエネルギーに心身ともに消耗した。当時の時代を振り返る絶好の機会となった。
 本日、2/2から21_21 DESIGN SIGHTで「倉俣史朗とエットーレ・ソットサス展」が始まった。純粋に社会と向かい、悩み、傷み、そして独自のスタイルとムーブメントを生み出した創造エネルギーに驚嘆する。エネルギーの拡散している時代だけに、良質な展覧会を通じてデザインを確認する意味を改めて思い知った。

 お知らせです。新宿OZONEで「デザインが生まれる瞬間」と題してトータル三回のトークセッションを開催しています。私がコミュニケーターを務め、第一回目は和田智さん(終了)、二回目は2/7に廣田尚子さん、三回目は2/21に名児耶秀美さんと行います。
http://www.ozone.co.jp/event_seminar/seminar/seminar_c/detail/1080.html
http://www.ozone.co.jp/event_seminar/seminar/seminar_c/detail/1081.html



 2 0 1 1 J a n u a r y

大木大輔氏が撮影した寒椿
 正月明けの日経新聞夕刊に、経産省が推進する「クール・ジャパン」に関する記事が掲載されていた。新聞報道によると自国の文化産業を海外に普及させれば、国のイメージアップと13兆円規模の輸出が可能だとしている。国を挙げての取り組みには、既にイタリア、フランス、北欧、英国、最近では韓国の先例がある。このような文化戦略に関しては、バブルが弾けた頃から先輩諸氏が口に出されていた事でもある。しかし、当時は受け入れる側の理解が整っていなかった。個人的には20年前からデザイナーは知財だと明言してきた。そして、1993年から「デザイナーバンク」というコンセプトでデータベースを整備し15年間実践的な活動を行った。取りかかるのが遅すぎると思うが国の新たな展開に注目したい。
 次のような、国策に頼らない流れもある。「新建築」1月号には、台湾、中国で魅力的な建築を手がけている伊東豊雄、團紀彦、隈研吾各氏のプロジェクトが紹介されている。ファッションでは、韓国・中国で地元企業・投資家と一緒になって新たなマーケットを切り開いているコム・デ・ギャルソンの動きに要チェックだ。今年は次のクリエーティブの世界を担う若手デザイナー4〜5人と一緒になって、新たな開発に取り組みたいと思っている。いずれにしても「動」の1年である。



 2 0 1 0 D e c e m b e r

トラフ鈴野浩一さんと能作克治さん
 会津若松の漆器ブランド「BITOWA」の開発に携わって6年が経過した。ジャパンブランドの優等生と言われているが、まだまだ実態は満足できるレベルにない。今年から高岡銅器のプロデューサーを仰せつかり、新たなビジネス創出に向けて着々と準備を進めている。ただ、この両者に共通するのは、「ブランド」に関する知識、経験、戦略的意味が浸透していない。勉強不足だ。 「直ぐに売りたい」「何処でも扱ってくれる所に」これではブランド=価値を醸成する事はできない。しっかり子供を育てる様に戦略的に事を織り込んで行く作業がビジネスの成功への基本だ。時間を工面して、いま行っているブランドストーリーを本にまとめなくてはならないと感じている。先日ご一緒した川島蓉子さんは、協力しますと言ってくれた。何とも心強い。
 昨日、ミントデザインズの勝井さん、八木さんとお昼をご一緒した時の会話が印象に残った。欧州では着ている洋服でホテルやレストランの対応が変わる。だから気を入れ自分を見せる努力を惜しまない。日本人はみんな公平だからファストファッションでもブランドでも何でも良しとする社会だ。だからファッションに拘らない人が増加している、といった内容だった。競争心や向上心のない社会がデザインにとって、危険な兆候である事をわからせるのもデザインの重要な課題だ。



 2 0 1 0 N o v e m b e r

プロダクトデザインコンペションの審査風景
 10月は国内外を飛び歩き、事務所にいたのは4日間のみ。行く先々で出会うデザインと、デザインを取り巻く環境は刺激的だった。
 ヴェネチアビエンナーレでは建築環境のボーダーレス化に接し一時混沌としたが、ヴィム・ヴェンダースのロレックス・ランニングセンター(設計:SANAA)の3D映像を3回見て「精神と秩序」に結びついた。某大手企業のパリでの発表会では、日本の企業と歩むべき方位について確信を得ることができた。その帰りの飛行機で、妹島和世さんと遭遇。プリッカー賞とビエンナーレの総合ディレクションのお祝いと、日本人の活躍がいま国際社会で最も必要な時なので本当に嬉しいと伝えた。
 17回目の富山プロダクトデザインコンペティションの審査会では、明確なデザインプロデュース体制を築かなくてはならないと自らの課題を認識した。ただ、現在活躍している多くのデザイナーがこのコンペを登竜門としている事は素直に喜びたいが、そこそこの実績で満足する場合でないという自覚。ジャパンブランド一年目の高岡は、自ら設定した開発テーマとデザインで今後の産地の核となるビジネス(マーケット)を作りたいと考えている。その為、ついつい参加企業、メンバーに熱く語ってしまっているが、この性格は変えられない。
 22日で終了した東京コレクションのファッションショーや、現在開催中のDESIGNTIDE TOKYOのミッドタウン会場、OZONE「HIRAMEKI」、AXISなど、時間の許す限り観て回っている。すべてに共通するのは、デザインと領域の拡大、変化であり、それぞれの存在の明確化である。
 最後に、安藤忠雄さんから電話をいただいた。安藤さんは11月3日に文化勲章を授与されるとの事。信念に基づく数々の快挙、本当におめでとうございます。受賞直後の11月5日に世田谷区民会館ホールで開催される「「安藤忠雄・建築との出会い、人との出会い」」で喜びの声を聞きたい。



 2 0 1 0 O c t o b e r

香港のジュエリーフェアのJJAブース(デザイン:乾久美子)
 今回の香港出張は先閣列島のニュースが飛び交う物騒な出来事の最中であったが、現地はいつものエネルギーにみち溢れていた。政治は政治、経済は経済、これがグローバルスタイルだ。情報化時代では、ニュースに踊らせない客観的な視点と分析が必要だ。
 さて、週末からミラノ、ベニス、パリへ出かける。ベニスでは妹島和世さん監修の建築ビエンナーレが楽しみだ。建築家石上純也氏の金獅子賞の作品はアクシデントで壊れてしまったが、その延長作品は現在開催中の豊田市美術館で観賞可能、というメールを石上氏から頂いた。帰国後に訪れるのが楽しみだ。そういえば映像アーティストの高橋匡太氏からは愛知万博跡地に完成した地球市民交流センターに常設の作品「Color Globe」が完成したと映像が送られて来た。ナガオカケンメイ氏から金沢21世紀美術館での案内が執筆中に届いた。こうして見ると都市は新たなクリエーションの機会を創出することによって、都市イメージの再構築を図っている。この動きを冷静に観察・分析する事によって、新たな形態が考え出せるかもしれない。

 お知らせを2つ。10/19午後から富山の第一ホテルで富山プロダクトデザインコンペティション2010の最終公開審査会があります。その後、建築家の平田晃久さん、カーデザイナーの和田智さんのデザイントーク、参加は無料です。11/5に世田谷区民会館ホールで安藤忠雄さんの講演会と一夜限り安藤作品展を行います。こちらはチケット代1000円です。

●富山プロダクトデザインコンペティション2010
http://dw.toyamadesign.jp/
●講演会「安藤忠雄・建築との出会い、人との出会い」
http://www.city.setagaya.tokyo.jp/040/d00009119.html



 2 0 1 0 S e p t e m b e r

オフィスでビールパーティ、9月も開催予定
 知人(大御所)のジュエリーデザイナー石川暢子さんからの要請で、今年から日本ジュエリー協会の海外展開分科会長の役を仰せつかり、事業展開を練っている。日本のジュエリー産業の歴史は意外と浅く、約半世紀ほどだ。昔は国内需要だけで成立していたが成熟期が過ぎ、今後は新たなマーケットを開拓しなくてはならない。ここまではどの産業も同様だ。しかし、世界の並みいるコンペティターと対等に競争するとなると、日本の「技術」「品質」「デザイン」の三軸を明確化し、ジャパンブランドの「価値=強さ」をアピールしなくてはならない。

 その第一弾として、9月16日から香港で開催さる「Hong Kong Jewellery & Gem Fair 2010」に出展する。会場構成は建築家の乾久美子さんさんに依頼し、メンバーの作品から特色あるジュエリーを選考し出品する。これまでの海外ブランド展開の私なりの経験があるので用意万端だが、果たして躍進著しいアジアの富裕層にどう映るやら。次の展開に繋がれば良いと思っている。

 同時期、上海で開催される「上海国際創意産業博覧会」もボランティアでお手伝いしている。今後は中国との関係も密になるので、すべてが厳しい条件だが最低限のクオリティはキープし日本の意志を示したいと思っている。



 2 0 1 0 A u g u s t

写真左からステファノ、伊藤節、ジェームス、富田一彦の各氏
 ミラノに出張中の7月17日、森ひかるさんのスタジオでパーティが開催された(写真)。ステファノ・ジョバンノーニやジェームス・アーヴィンなど、多くの知人に再開した。帰国して、さっそく酷暑を乗り切るべく事務所でビールパーティを開催。川上元美さん、名児耶秀美さん、平田晃久さんなど、多くの友人知人が集まってくれた。最近はネットやブログ、ツィターに頼る傾向があるが、時にじっくり語り合えるサロンが必要。何故なら物質的なモダンデザインから距離感を埋めるデザインへ大きくシフトしている時だけに、異脳の交流が必要だ。年齢、ジャンルを超えた大きなウネリを作りたい。
 東京から6時間クルマを飛ばして金沢に来た。金沢21世紀美術館で今月31日まで開催している「ヤン・ファーブル × 船越桂―――新たな精神のかたち」観賞と長距離ドライブが目的。この展覧会では二人の作家の個性は際立っていてよかったが、コンセプト展示のブース14はキュレーターが結局何が言いたいのか、何故この作品なのか、消化不良のまま見終わった。出る様、図録を買い求めて新たな精神のかたちとやらを解読中。
 友人の吉岡徳仁氏がアーティストとして参画している「ネイチャー・センス展」は、なかなか見応えのある展示。特に初めて出会った栗林隆氏の作品に興味を持った。最後に17回目となる富山プロダクトデザインコンペションの締め切りが迫っています。新人デザイナーの登竜門、新人デザイナーはトライアルして下さい。



 2 0 1 0 J u l y

佐藤オオキ、佐野研二郎の両氏によるデザイントーク
 エステー・デザインアワード2010の最終選考会はとても新鮮な機会であった。最優秀賞を決定する審議会は多いに揺れた。「アワードとして相応しいデザイン」と「ビジネスとして相応しいデザイン」の真っ向勝負となった。季節限定品ではあるが、この冬に製品化され販売される事を公募の約束していたので企業側は真剣であった。方や佐藤オオキ、佐野研二郎の両氏は、デザインが及ぼす効果や企業姿勢に評価の力点が置かれた。その結果、最優秀賞は榮井慎也さんの「SHOSYU POWER'S」に決定。審査員特別賞は、高浜崇さん、高浜真代さんの「Sweet home」と岩水亜沙子さんの「HAPPY AND LOVE」の2点。この審査員特別賞から商品化を検討することになった。発表の前に行われたデザイントーク(写真)では、デザインの見方、捉え方の変化に花が咲いた。ちなみに会場お越しになられた方へのアンケートでは「HAPPY AND LOVE」がナンバー1だった。

 カルフォルニアのfrogdesignやziba DESIGNに在籍されていたブレーンの渡辺弘明さんからLEDライト「CCFL light」が送られてきた。その後、オフィスに来ていただき商品化までのストーリーお聞きした。本人的にはまだまだ改善したいようだが、この一ヶ月実際に使用してみて良さがだいぶ理解できた。先ずは本体が発熱しないのでこの時期、特に嬉しい。また、アームがスリムなのでインテリアを邪魔しない。存在が気にならない。気にしていたパーティーラインも使用上はぜんぜん気にならない。主張するデザインではないが「ミニマル」なデザインとしてデザインの方向には合致している。また、新たな事業立ち上げに尽力された点も評価したいポイントだ。www.nisshotec.co.jp



 2 0 1 0 J u n e

オフィスの机の上のiPadとPC
 「空気をかえよう」という企業スローガンを掲げるエステーが、デザインアワードを実施したところ、800数件のエントリーがあった。アワードの実施は今回が初めての事だったので、協議の結果、既存商品の着せ替えデザインを求める課題となった。第一次審査の作品を拝見すると、応募者の年代層がひろく、消臭剤といえどもインテリアグッズとして楽しめる要素が求められている事を知った。第一次審査では、多くの作品の中から11点に絞った。また、設定された課題から飛躍した作品にも目を引くデザインがあった。最終審査発表とトークショーは、6月26日17時より六本木・ミッドタウンガレリアにて、佐藤オオキ(nendo)と佐野研二郎の両氏で行われる予定である。(作品展示は、25・26日11:00-21:00)、大賞はこの秋に商品化され発売される。

 5月10日のiPadの発売予約日、迷いに迷った末、注文ボタンを押した。基本PCマシーンは、Mac3台+Win 1台の計4台を使用している。プラス携帯+iPhone+iPadの3台にEMのPocketWiFiと海外用携帯で計5台となる。ますます軽快になる流れに逆行している。しかし、新しいものは先ずは使ってみる事を信条としているだけにしょうがない。28日に届いたiPadを週末使用してみて、この機種に魅了された。詳しく書きたいがスペースが足りない。そして、iPhoneはどこかの時点で、さようならしようと決意した。この機種は、海外にいる時に機内モードにしないと、とんでもない使用料金がかかる。今年1月の出張の際は、うっかりしてスイッチを切り忘れ、後からローミング代として4万円弱の請求が届いた。そんな体験から携帯とiPadが理想のスタイルと決意した。

 2 0 1 0 M a y

会場にお越しいただいたアンドレア・ブランジ夫妻
 アイスランドの火山噴火の影響で滞在が三日間延びたが、キヤノンの仕事をやり終え気分はとてもハッピーなミラノサローネだった。後日、ロンドンの安積伸さんからメールが届いた。「サローネの即物的な価値観が支配する場所に高度なレベルで映像作品を提示するのは本当に難しいことだと思いますが、今回のNEOREALでは、それがいまだかつて例を見ないほどに成功していたと思います。今年のサローネを振り返り最も記憶に残る作品でした」、とても嬉しいメールだ。安積さんありがとう。来年サローネは、通算50回目の記念の年となる。

 この数ヶ月間に二回、デザイナーの柴田文江さんとご一緒する機会があった。話題のカプセルホテル、ナインアワーズプロジェクトのお話を聞いたのだが、明確なデザイン考、自然な語り、随所に際立つプロとしての存在感。さわやかでかっこいい。また自分の感性を磨く為の時間を惜しまない。様々なジャンルの人たちと会い、気になるものは購入して使ってみる。その意欲的な姿勢が素敵だ。サローネで若手のデザイナーにたくさんお会いしたが、柴田さんのライフスタイルはプロを目指す人には参考になる。要チェック!!

 初めて首相官邸にメールを送った。普天間の件についてである。宇宙ステーションの時代に感情や利権が絡む特定の土地に基地を作る発想はあまりに古すぎる。日本の土木技術とデザインで海上に浮かび移動できる基地を作るべきだと書いた。故黒木靖夫さんは、生前アメリカの使用済みの空母を海上に停泊させて基地にすべきだと語っていた。ここにも時代に相応しいクリエーティブな発想が必要だ。

 2 0 1 0 A p r i l

NEOREALトリエンナーレ会場
 本日からミラノサローネがスタートした。1986年から四半世紀ミラノサローネを取材しデザインの動向を伝え、2005年からはレクサス、そしてキヤノンのブランディングプロジェクトを担当してきた。その間にサローネで成功する秘訣を編み出し、自信をもって臨めるようになった。
 今回のキヤノン「NEOREAL」は、八カ月の時間をかけて作り上げた。その間、様々な戦いもあり、その都度調整に追われた。会場選定から制作、運営までどれもが重要な要素だ。しかし、今回の作品は、我ながら凄いと思う。キヤノンが標榜する「デジタルイメージングカンパニー」を具体的にプレゼンテーションできたと思っている。詳しくは下記URLより参照下さい。オープニングパーティは、本日19時からミラノトリエンナーレ会場にて、お待ち申し上げます。
 NEOREAL http://canon.jp/milano2010/exhibition/intro.html
 先月お伝えしたようにミラノサローネには、日本企業数社と、デザイナーが多数参加する。成熟した時代ではモノ(デザイン)を発表するのではなく、コンセプトをメインに置いた発表であって欲しい。モノのオンパレードでは何も変わらない。時代を動かすコンセプトが最も重要ファクターだ。この数日、目にするのはポストモダニズム時代の象徴であるメンフィスの作品があちらこちらのショップの展示什器として使われている。25年前のあの時代が懐かしい。
 3月末に開催された東京ファッションコレクションを三箇所視察した。最近の建築、ファッション界のクリエーター達のアグレッシブな姿勢に注目している。既成概念に捉われない自由な発想、先人達が行った文脈ではないオリジナリティを求める姿勢はたくましい。特に彼らの視野角、表現、コンセプトに刺激を受けることが多い。やっぱデザインは「強く楽しく」ないと駄目だ。

 2 0 1 0 M a r c h

9月に京都の長屋のスタジオで撮影
アーティストの高橋匡太氏(左)

 日本企業の各社からミラノサローネに関するリリース発信が始まった。経済の低迷の影響を受け、縮小するデザイン界は新たな活路を見出すことが出切るのか?その動向、展開に興味が募る。
 SONYは「Monolithic Design」と題して、ZONA Tortona会場で、英国のBarberOsgerbyを起用し、ホームプロダクツの新デザインコンセプトとして”2010 International CES(国際家電ショー)”にて発表したホーム・エンターテインメント製品の新しいデザインコンセプト「モノリシックデザイン」の世界の発展形を提案する。
 刈谷木材工業は「KARIMOKU NEW STANDARD」と題して、市内アートギャラリーを使い、柳原照弘(ISOLATION UNIT)を初め国内外で活躍する外部のデザイナーを起用し、間伐材を使用した新家具ブランド「KARIMOKU NEW STANDARD」を発表する。
 パナソニック電工は、「(standard)3-smart スタンダードの3乗」と題して、昨年と同様にブレラ地区でマルティノ・ベルギンツの会場構成で「デザイン」と「快適・エコ」技術が調和したスマートな暮らしを発表する。東芝も建築家田尻誠による展示を予定している。
 私がプロデュースしているキヤノンは「NEOREAL」体感映像の原動力 ― キヤノンデジタルイメージングと題して、過去二回と同じトリエンナーレ美術館の700平方メートルのスペースで、アーティストの高橋匡太と建築家の平田晃久のコラボレーションで「プリズムリキッド」と名づけた作品を発表する。会場構成は森ひかるが担当する。(各氏敬称略)私はサローネは企業ブランディングの場であり、世界に向けたコミュニケーションの場であり、デザインの可能性を追及する場であると定義している。
 この時期、不眠不休と花粉症との闘いの日々だ。でも楽しい。

 2 0 1 0 F e b r u a r y

メゾンの会場にて
1月22日〜26日までムーブル・パリで開催されたメゾン・エ・オブジェに立ち寄った。会場でばったりロンドン在住の安積伸さん、ミラノ在住の冨田一彦さんに遭遇、近くのカフェの片隅でデザイン談義が始まった。お二人からは、欧州におけるアジアのデザインと言えば、日本ではなく韓国になっている。雑誌のデザイン特集でも韓国記事が大部分で片隅に日本が紹介される程度まで評価が下がっている。これは由々しき事だ。政治経済のニュースを見ると、どうでもよい低俗なニュースばかり。これでは国力を著しく失墜させてしまう。こんな事をしていて喜ぶのは隣国の成長勢力だ。日本はもっと世界の中で何を話すべきか、何を伝えるべきか、考えなくてはいけない。という話題で盛り上がった。凄いと言われた日本を取り戻すには、もっと戦略的に国が、デザインが、機能しなくてはならない。日本を遠く離れて自力だけで戦う二人だけに切実な問題だ。胸を張って誇れる国に、企業に、製品に、日本のグランドデザインは再考しなくてはならない。厳しい経済環境下のなか、春のミラノサローネに向けた準備が着々と進行している。次号ではその動向をお伝えしたい。

 2 0 1 0 J a n u a r y

弊社のURLが変わりました。
www.trunk-design.jp
新年おめでとうございます。
昔から高いところが好きでした。悩むことがあれば、高いビルの最上階にあるカフェでコーヒーを啜り、頭の整理をしていました。例えば、新宿パークハイアットのピークラウンジは、今でも好きな場所です。大晦日の23時40分頃、東京タワーが見える場所に行き「2010」に切り替わる瞬間を写真に撮りました。この美しいタワーも後二年足らずで、634メートルの高さとなる東京スカイツリーに主役の座を奪われることになります。翌日も芝のザ・プリンス・パークタワー東京のスカイラウンジで東京の風景を眺めていました。
このマンモス都市にはエネルギーが不足しています。活力が足りません。「変化」を求められる時代、デザインはいいかげん表層のデザインからエネルギー源へと進化しなくてはなりません。今年もたくさんの年賀状をいただきましたが、前向きなコメントも数多くありました。具体的に絵(カタチ)で表現できる力は財産です。あとはスキームです。デザインは、そろそろ個人から脱皮して、明確な目標と指針を作成する戦略集団が軸となり、その上で個々の才能を生かす=プロデュースする時代へ切り替えていかなくてなりません。真面目に考えた正月でした。

 2 0 0 9 D e c e m b e r

IFFTインテリアライフスタイルリビングの設営会場で
アッシュコンセプトの名児耶さん

仕事の一環としてデザインの潮流を毎月データベース化しているが、その中で最近気になったものは柴田文江さんがデザインしたカプセルホテル「ナインアワーズ京都寺町」。単なるカプセルホテルの領域を超えて、新たな可能性を見出すことができる。例えば、銭湯の様な場に発展するか?、はたまた他の業態連携を生み出すか?このカプセルが今後どんな広がりを見せるのか楽しみだ。私は整体+アロマがプラスされたリラクゼーションスペースとして使いたい。日航の経営問題が話題となっているが、片や全日空は、欧米便の内装を一新した。これまでの味気のないインテリアから半歩踏み出したデザイン。2月20日からの導入なので4月の出張時には使用してみたい。カプセルホテルと飛行機って似てると思いませんか。
本日から始まるインテリアライフスタイルリビングの施工会場で、またまた知り合いのデザイナー、事業主、コーディネーターにお会いする。産地の置かれている状況はどこも同じ、地域を越えて横軸のスキームで新たな商品開発を考えたい。数人のプロデューサーが先頭に立てば可能な企画だ。
友人の建築家高市忠夫さんから13年におよぶプロジェクトをまとめた作品集が届いた。仕様はハードカバーでずっしり重い。ブリヂストン美術館、六花亭など、多くの仕事を手掛けているが、書に綴られた「残る」「残す」のキーワードが重く響く。限定本なので世の中には出ないが、視点を定めたぶれない仕事ぶりは見事である。

 2 0 0 9 N o v e m b e r

コンペの審査員をお願いした安積朋子さん
16回目になる富山プロダクトデザインコンペティションも無事に終了。例年になく提案デザインが拮抗しており賞選びは大変だった。その中でもコンペテーマに対して、新たな解読を示してくれた参(マイル)と関達也さんの二組は個人的には二重丸。このコンペは、デザイナー同士の交流の場としても良い刺激と機会を創出している。そのことが直に嬉しい。次回はコンペを更に進化させたいと思っている。
今週、外苑前のオフィス界隈はデザインの街と化している。今年は精力的に視察しているが、当然ながら玉石混交。デザイナーの世代交代も進んでいる。東コレではSOMARUTAとmintdesignsを視察。ますますファッションとプロダクツの境界がなくなってきている。
これまで行きたかった展覧会も精力的に見て回っている。オラファー・エリアソンの常設を見たくて三時間クルマを飛ばして群馬のハラミュージアムARCへ。東京都の現代美術館で始まったレベッカ・ホルン展はなかなか良い。以前テート・モダンで見た作品もあり時間をかけて観賞してほしい。同時開催のラグジュアリー展は、妹島和世さんのコムデの会場デザインが必見。感銘したのは森美術館のアイウェイウェイ展。京都近代美術館で行われていたウィリアム・ケントリッジ展のフィルムとドローイングも原点を感じさせる内容だった。川久保玲さんが大阪に開いたアートギャラリーSixの草間彌生展もパワー全開。また、飯倉片町のAXISで開催された「三保谷硝子店−101年目の試作展」は力量感溢れる完成度の高さに感服した。時代の低迷とは裏腹にアーティストの熱い闘志やぶれない姿勢が刺激を与えてくれる。こんな楽しい日本、東京をもっと元気な街にますます頑張らなくてはならない。最後に友人の石上純也君が最年少で日本建築学会賞を受賞、おめでとう!!

 2 0 0 9 O c t o b e r

代々木上原の川上元美氏のオフィスにて
現在の混沌とした時代で思い出すのは、私に影響を与えてくれた(与えてくれている)年長者の存在だ。純粋に夢を語り、経営とビジネスを説いたのは黒木靖夫氏だった。デザインの良し悪しを冷静に分析してくれるのはミラノの蓮池槇郎氏である。そして、プロのデザインを実践している川上元美氏の緻密さと大らかさは学ぶ点が多い。「感性価値」と「機能価値」を企業の新たなコミュニケーションとして確立し、デザインのポテンシャルをアップする為に我流でプロデュースの世界を切り開いてきたが、時に迷いが生じた時は年長者の言動を思い出すことにしている。
今、一番心配なのは美大生の就職先である。毎年多くの人材が社会に送られてくるが、就職環境は依然厳しい。友人や知人の紹介で若い卵達に会う機会も多いが、総じて何かが欠けている。デザインがうまい、へたという問題ではなく、大きな目標が欠けている。私は国内外の年長者の言動に刺激され続けてきたが、この様な若き才能を刺激する環境が欠如している。もちろん個人の資質の問題は当然スキルアップしていただくしかない。しかし、急ぎすぎていてステップが踏めない人、自分の人生設計のリアリティが欠如している人・・・。これらは、若者だけの問題ではなくデザイン界の大きな課題として、新たな機会や環境を作らなくてはならないと思っている。

 2 0 0 9 S e p t e m b e r

須藤玲子さんからテキスタイルの説明を伺う
布を主宰されている須藤玲子さんにAXISのショップでお話を伺った。最近、テキスタイルの国際学会ではハイテクの話しが中心となるらしい。確かに宇宙ステーションで何日も滞在したり、世界陸上では人間とは思えない早さで走ったり、建築空間では規正の領域を越えて様々な変化が起こっている。併せて、環境への配慮も必要だ。さらに高質なテキスタイルを可能とする職人さんとのコラボも生命線である。須藤さんは、こんなに大変な仕事を真正面からシャキシャキと行っている。かっこいい。具現化されたモノはセンスに溢れ、心地よい刺激をたくさん頂きました。
27日から三日間、東京・六本木ミッドタウンホールBで今年のサローネに発表したキヤノン「NEOREAL」の東京展を開催しました。多くの方々にご来場いただきありがとうございました。これまで企業の技術とデザインを生かす、高める事の大切さを幾度となく繰り返し訴えかけてきましたが、今回のプロジェクトは満足のいくものでした。時代の変化(人類の進化)に機敏に対応していく前向きな姿勢は、個人でも企業でも重要な事だと考えています。

 2 0 0 9 A u g u s t

映像と音と異空間を充分体験してください。
この春、ミラノトリエンナーレ美術館で展示したCanon「NEOREAL」展は、今月27,28,29の3日間のみ東京・六本木ミッドタウンで巡回展を行うことが決定した。今年最後の夏休みを子供から大人までインターラクティブの世界で楽しんでいただきたい。また、丁度21_21DESIGN SIGHTで開催中の「骨」展の会期終盤にもあたり、久しぶりにミッドがクリエーティブの場となればいいなと思っている。私も三日間の会期中は、会場にいるのでどうぞ声をかけて下さい。

日本の産地のモノづくりにスポットが当たって久しくなる。どの産地も特有の課題をまだまだ沢山抱えてはいるが、何も東京の雛形で覆う必要はない。一つ一つを確認し構築するだけの時間は、かろうじて残されている。郡山から会津若松に向かうローカル電車の中で、これまでとは一変する景色を車窓から眺めながら地方特有のオリジナリティの継承と創造を考えていたら駅に着いた。私自身の直近の課題はBITOWAをビジネスで成功させる事だ。

富山のプロダクトデザインコンペティションはまもなく締め切りです。多くの人材の登竜門として参加頂き、本当に多くのデザイナーに支えられてきた。
若き熱い才能の片鱗を見せてください。

 2 0 0 9 J u l y

プンタ・デラ・ドガーナの全貌
6月中旬、ミラノ出張の合間をぬって日帰りでベネチアに出かけました。目的は「第53回ベネチア・ビエンナーレ」の視察に加えて、6月6日から一般公開が始まった安藤忠雄建築の新美術館「プンタ・デラ・ドガーナ」をいち早く見学したかったからだ。現代美術の世界的なコレクター、フランソワ・ピノー氏のコレクションを展示したこの美術館は、06年に改装された「パラッツォ・グラッシ」と共にベネチアの新たな文化芸術都市のスタートを切る施設となった。そして、何よりこの美術館は安藤美学に満ち溢れた作品となっている。15世紀に建てられ、倉庫や事務所として使われていた建物を匠に残し、新たな空間展示要素を加えている。細やかな作業であり、またベネチアの景観を匠に生かした建築となっている。また、美術館としての規模もヒューマンスケールである。実は近年巨大化する美術館において、もっとも大切な要素だと思っている。私の好きなフランク・ゲーリーのビルバオ「グッゲンハイム美術館」、フランクロイド・ライトのNY「グッゲンハイム美術館」、ヘルツォーク&ド・ムーロンのロンドン「テートモダン」、マリオ・ボッタのバーゼル「ジャン・ティンゲリー美術館」に新たな美術館が加わった。ベネチア・ビエンナーレに関しては、近日「日曜美術館」で放映されるらしい。 7月14日に世田谷区民会館ホールにて2016東京オリンピック・パラリンピックのプロモーションの一環として、「東京〜夢の都をつくる安藤忠雄と語る」が開催されます。予席は後100席程度です。是非お時間のある方はご参加下さい。 → http://www.japandesign.ne.jp/HTM/JDNREPORT/090603/ando/

 2 0 0 9 J u n e

左からグラフィックデザイナー中山真由美さん、下尾さおりさん、関秀道さん、下尾和彦さんの面々
明日から始まる「インテリア ライフスタイル / Interior Lifestyle」の設営で、お台場のビックサイトで作業しているといろいろな方にお会いした。先ずは、小泉誠さんと「新しい仏具が時代的に求められている事等々」の立ち話。名児耶秀美さんとは「昨年の富山プロダクトデザインコンペの受賞作、小林幹也デザインTATE OTAMAの商品化等々」、増田尚紀さんとは「山形と富山のものづくりの環境面での話等々」、まるで同窓会の様であった。また、これまでメゾン・エ・オブジェで、三年間ジェトロの「Japan Style」プロジェクトをプロデュースしお世話になった全国各地の企業も数多く出展している。メゾンで選定していただいた事が転機となったとお礼を言われ、照れくさかった。みんな厳しい経済環境である事には違わないが、何年も何百年も続けてきたモノづくりは簡単にはなくならない。また、自らの立ち位置を持つ人間はどんな環境下でも強いことを実感。この三日間は、久しぶりに楽しい機会となりそうだ。私が担当したのは、以前にこのコーナーで紹介したデザイナー、下尾和彦さんからの依頼で高岡で仏具・美術品の製造・卸を手がける関菊さんの展示デザイン。下尾さん、関さんの確かなモノづくりをご覧いただきたい。
昨年、9月末に他界した渡辺英夫さん念願の経営デザイン本が上梓された。タイトルは、「超感性経営」ソニー伝説のストラテジストが授ける渡辺流・マネージメントメソッド:25という副題がついている。私も寄稿している。故人は多くの人に読んでいただきたいと熱望していた。

 2 0 0 9 M a y

シカゴのデザイナー リック・バレセンティとは15年ぶりの再会
長期に渡ってミラノサローネを視察・分析してきたのでデザインの変遷がよくわかります。
80年代はメンフィスに代表されるイタリアデザイン全盛の時代、90年代はシンプル、ミニマルデザインに象徴される大量生産型デザインへ移行し、21世紀に入りマーケットの拡大、同時に投資家によるブランド統合、そして昨年秋のリーマンショック以後世界的な経済不況へ。イタリアは一部の企業を除き、この数年間は低迷しています。
自信を失ったイタリアデザイン界には、80年代に見られた様な威厳はありません。しかし、イタリアデザインのアイデンティティを取り戻し、再構築する機会だと考えます。結局、身の丈以上の量を求めると生産形態を換えなくてはなりません。それが如何にアイデンティティを阻害するか、経営者は難しい課題を抱えてしまいました。
そんな中、サローネはトリエンナーレ美術館で行われた「SENSE WARE」と「Canon NEOREAL」が話題を独占しました。日本の技術とデザインを核とした表現は、現地デザイナー達には必見だった様です。
キヤノンブース運営のためトリエンナーレ美術館にほぼ缶詰状態だったので、多くの古き良き知人友人と再会する事ができました。特に嬉しかったのは15年ぶりに再開したシカゴのリック・バレセンティ、一番の古き友人ミケーレ・デ・ルッキとも3年ぶりくらいでした。
デザインの可能性を求めて、来年のサローネに向けて新たなスタートが始まります。

 2 0 0 9 A p r i l

私の事務所にて田中千尋さん(左)と石渡ゆみかさん
ミラノサローネまで3週間に迫ったこの時期、現地との施工に関する打ち合わせ以外は平穏な日々をエンジョイ。オフィスのある青山界隈の桜も今週末が見頃。
イタリアのメジャー企業の数社が景気低迷で出展を取りやめたニュースが飛び込んでくる。やはり日本企業と若手デザイナーが例年通りパワーを示す事になりそうだ。初出展のTOSHIBA、2度目のCanonPanasonic電工、5度目のLEXUSが主な出展企業。私は昨年に引き続きキヤノンの総合プロデュースを手がけています。ここでは製品を活用したパワフルな展示を企画制作しています。(オープニングパーティは、22日19時からトリエンナーレ美術館)。
現在のデザインで何が欠けているかといえば色気です。シンプルモダンのデザインは好きですが、暫くは購入したくありません。それより色気のある知恵と存在感とセンスに溢れたデザインが欲しい。デザイナー諸氏には、さらに奮起していただきたい。そんな折、事務所に作品を持って訪ねてくれた田中千尋さん(写真参照)は、なかなかの逸材でした。この若さで、頭脳とデザインとビジネス感覚を持ち合わせている楽しみなクリエーターだ。最後に西武コミュニティカレッジからの依頼で「ニッポンデザインの力」というタイトルで5回の講座を持ちます。毎回、ゲストをお招きして炸裂トークを繰り広げたいと思います。

 2 0 0 9 M a r c h

Frankfurt messe Ambiente の会場で
変化を探る、可能性を探る、この時期ほどこうしたことを考えるに適した時間はない。日々様々なジャンルの方にお会いし、考え方を聞き、キーワードが注入される。暫くはこうした時間を大切にしながら次の時代提言を考えなくてはならない。振り返ればバブルがはじけた91年、横浜で「AGGRESSIVE展」をキュレーションした。当時も社会は混迷した時期だったが、だからこそ精力的に実践しているクリエーターを世界のシーンから選び協力していただいた。建築家のマイケル・ロトンディやアレッサンドロ・メンディーニ、リック・バレセンティ、フィリップ・スタルクらである。再びクリエーションの磁場をつくらなくてはならないと考えている。
今月16日午後、佐藤卓さんとミッドタウンで対談する。今の私の思いをお話ししたいと思っている。
3月28日午後、芝浦工大の田町キャンパスに誕生する「デザイン工学部」を記念し柘植学長と対談する。マクロ・ミクロについてお話しする予定である。
そして、来月に迫ったミラノサローネの準備のため神経を注いでいる。昨年と同じトリエンナーレでキヤノン「NEOREAL」の空間体験を体感していただく予定である。

 2 0 0 9 F e b r u a r y

私が担当したジェトロ広報ブース
世界的に低迷する経済状況だけに心配して望んだメゾン・エ・オブジェは、心配もよそに出展者も人の出足も好調。みんなが打ち萎れているわけでない事を知り安堵する。年々、規模・華やかさも増し高感度な見本市に成長。今後、主催者のフランス見本市協会は、規模の拡大維持と全体の質とのバランスに頭を痛めることになるだろう。
さて、今年のジェトロの広報ブースは7Bホール。今年は日本の文化と環境を考慮し、紙に焦点をあて商品セレクションを行った。もちろん会場デザインもテーマ性を貫いた。しかしこのパビリオンは仮設の大型テントの為、初日に吹いた強風により安全上の問題から運営事務局から突然入場ストップがかかるという前代未聞の事態が発生。翌日からは、天候も安定し無事に終えることができた。この時期に併せて、日本からはジェトロブース以外に27社(団体含む)も単独出展。プラスしてSOZO_COMM、市内の三越エトワールではJAPAN BRANDの展示商談会が開催され、日本の存在感をあらためて示すカタチとなった。また、お会いした企業の経営者からは、来年は単独出展したいと意欲的な方も多く心強く思った。あえて助言するなら、どの場所で、どんな商品構成で、どんな展示を行うべきか。同時に欧州マーケットへの事業戦略をしっかり練り込んでから来てほしい。これだけ情報過多の時代には、削ぎ落としたシャープな見せ方(デザイン)の方が欧州のビジネスでは可能性が高い。

 2 0 0 9 J a n u a r y

東京が世界の都市モデルにならなくてはならない
新年おめでとうございます。この正月は、今後の産業とデザインを考えるには良い時間でした。
第一に一昨年急逝した黒木靖夫さんは「これからの企業は、増収増益ではなく減収増益を考えなくては駄目だ」と熱く話していました。以前にも記しましたがソニーの創業者のひとり井深大氏は、起草した設立趣意書の経営方針に「徒ラニ規模ノ大ヲ追ハズ」と記しています。先達の透視眼を改めて感じています。
第二にどんな時代でも消費者の欲求は失せないという事実です。だからこそ、どうしても欲しくなる魅力(デザイン)を真剣に考えなくては駄目です。欲しい物は我慢ができません。
第三に四マス媒体の失墜です。代わって文化的アプローチによるコミュニケーションに可能性を見いだしています。20年間数多くの展覧会を行ってきた結果、たどり着いた「場」と「波紋」によるクロスメディア・コミュニケーションです。
12月にオフィスを横浜から東京・青山に移し、毎日の移動が少なくなり自由な時間が多くなりました。今月末からはパリ、フランクフルト、ミラノと飛び回りますが、新たなデザイン潮流を青山から発したいと思っています。


 2 0 0 8 D e c e m b e r

建築家・藤本壮介氏の仕事場
日頃から建築家・デザイナーは知財であると明言してきた。資源のない国が生きていくには尊敬される開発が生命線であり、それを実践できるのは開発に携わるクリエーターである。こうした考え方をベースに15年前に横浜ポートサイド地区にYCSデザインライブラリーをオープンさせた。小さいながらこのライブラリーは全世界のクリエーター600名のデータを保有し、これまで数多くのプロジェクトに建築家・デザイナーを紹介してきた。この運営に祭し、地区や大手企業のバックアップがあった。そのライブラリーも来年3月末で閉館することが決まり、そろそろ横浜での役目は終わりにしてよいかなと思い、早速オフィスの一部を東京・外苑前に移した。来年4月からは完全に東京に移転することになる。新しい部屋からは、六本木ヒルズなど東京の景色が見える。知財を生かした東京での活動がスタートする。


 2 0 0 8 N o v e m b e r

コリーンさんとガブリエルさん
この時期、東京はデザインの話題で花盛りになる。多いに結構なことだが外苑前やミッドタウンの会場を見て回っても何か物足りない。それはデザインがデザイン外へ訴えかける力が不足しているからだ。何故、東京デザイン宣言ができないのか?。金融危機に単を発する経済不況下で全世界がマイナススパイラルに向かっている。こんな現状だからこそデザインは今後どうして行くのか、力強い声明が必要だった。
富山で先月末行ったデザインウエーブin富山は、なかなか密度の高い内容だった。このイベントの展覧会をスタイリストの長山智美さんにお願いした。詳しくは、彼女のブログ( http://blog.excite.co.jp/diarymumu/ )に掲載されているのでご覧いただきたい。
今月末トヨタから発売されるIQのプロモーションの一環として、絵画館前のテントで「IQ×SOMARTA MICROCOSMOS」が開催された。今年のサローネのキヤノンで起用した廣川玉枝さんがここでも独自の世界観を再現している。石上純也さんを初め、私が紹介する人が活躍している姿を見るのは嬉しいものだ。同時に自分の視野角をさらに磨かなくてはと思った。
知人のデザインナー ガブリエルからメールが入り、滞在していた日比谷のペニンシュラホテルで会った。彼は現在、エルメスのデザインマネージャー。一緒にお会いしたコリーンさんはイノベーションディレクター。お二人からエルメスの戦略を聞き大変興味深かった。


 2 0 0 8 O c t o b e r

花婿ではなく展示品を物色中の長山智美さんと展覧会担当の西中川京さん
世界的な金融不安の重い空気が漂う中、昨日は久しぶりに仙台へ出かけた。日本商工会議所、全国商工連合会が共同主催するJAPANブランド・フォーラムの講師として呼ばれたからだ。このフォーラムでは、山形工房のリーダーで家業15代目となる菊地保寿堂の菊地規泰さんや東京ミッドタウンでTHE COVER NIPPONを経営する赤瀬浩成さんらとご一緒した。このお二人、私より年が若いのになかなか肝が据わった方々で頼もしい発言が聞けた。JAPANブランドの良い点は、日本のモノ作りの歴史・原点を確認できる点である。400年以上続く源泉は、いまの様な難局を幾たびも乗り越え今日がある。先達からすると右往左往するこの様相は滑稽でさえあろう。地に足が着いたモノ作りは大変ではあるが、やりがいがあり成功させなくてはならない。
今月22日から開催するデザインウエーブ2008イン富山では、スタイリストの長山智美さんに展覧会を要請した。その為、長山さんは富山の会社を訪れ様々物色していただいている。彼女の手にかかれば埋もれてしまった製品に命を再び与えることができるかも知れない。乞うご期待。また、11月4日には世田谷区主催の安藤忠雄講演会をコーディネーションしている。アジェンダを見ると、この秋はデザイン一色になっている。


 2 0 0 8 S e p t e m b e r

もう20年来の付き合いになるナガオカケンメイさん。
月曜日まで銀座松屋で開催された「デザイン物産展ニッポン」は、疲弊している地方の物産メーカーに自信を与える展覧会となった。
コミッショナーを務めたナガオカケンメイさんの作り手に対して送った「日本らしいものづくりをしているから・・・」の強いメッセージは、産地とデザインと消費者との関係を再考する機会となった。私も二度会場に足を運んだが、800円の入場料を払い途切れる事なく多く人が入場され、熱心に見入り、友人同士か会話が生まれ、なかには購入していく人もいて、これまでのデザイン展とは違う場の雰囲気がなんとも新鮮だった。ナガオカさんに聞いた所、予想以上の売れ行きで用意した選定品は売り切れ、補充で大変だった。
この企画は、できれば松屋で定着してほしい。また来年は、自分ではなく他のコミッティのメンバーがやってほしいと寛大な発言をされたのが印象的であった。企画次第で根強くたくましい消費者がいる事を実感して、今年4年目を迎えている会津若松のジャパンブランドの「BITOWA」や16年通い続けている富山県のデザイン開発にさらに注力しようと思った次第である。尚、今回富山県の展示に選定していただいた「デザインウエーブ」の初日(10月22 日)に富山で講演をお願いした。その後、旨い寿司を食べにいく事も。


 2 0 0 8 A u g u s t

テートモダンからウェストミンスター、シティーサイドを望む
ミラノでの短期出張を終えて、久しぶりにロンドンに立ち寄った。二日間だけですが。その目的は、テートモダンで開催中の「Cy Twombly展」とデザインミュージアムで開催中の「リチャード・ロジャース展」を観賞する為です。両展覧会とも丁寧な展示が印象的でした。テムズリバーサイドのシティでは、近代的な建築が建設されています。ウェストミンスターに代表される古き建築と新たな建築がどう整合していくのか、ロンドンの建築・デザインも分岐点に立っていると感じた次第です。もう一日は、パディントンから1時間列車に乗ってオックスフォードで下車。ほとんどの時間を本屋とカフェで過ごしましたが、この街に漂う学術の匂いは、しばし時間を忘れさせる魅力がありました。

最近思うに、そろそろバウハウスの呪文から開放されないと、魅力的な商品が誕生しないのではないかと危機感を持ち始めています。「軽薄短小」以降の約30年間のモノづくりは、日本のインダストリーを頂点にまで高めました。しかし、モノの価値の定義は緩やかに進化、固定的なモノだけに捉われない価値や情報の価値が重要視されるようになりました。iphoneに代表されるように新たな潮流に対応するには、根本的にデザインを再考する時期に来ていると思います。この点は、研究会等々で今後論議し研究して行きたいと思います。

富山のプロダクトデザインコンペティションはまもなく締め切りです。ここで会えるデザイナー、ここから巣立っていったデザイナー、コンペという場の大切さを実感しています。
詳しくは、http://dw.toyamadesign.jp/DW2008/compe2008.htmlで。

 2 0 0 8 J u l y

大の甘党のnendoのイトウアキヒロ氏と佐藤オオキ氏
ミラノサローネをオーガナイズしているコスミットは、ニューヨークとモスクワでも同様な展示会の開催にむけて動き始めている。今日の二ユースでは資源を持つロシア、カナダ、南アフリカ、ブラジルの四国の株価が急騰している。これまでとは違って先進国、経済大国などと胡座をかいている時代は過ぎ去った。この国の国力をアップさせないと、この先どうなってしまうのか不安な空気が漂う。私には、4、50年先の安定生活を夢見る新人類と言われる世代の安定志向の心理は理解できない。
いささか飛躍するがデザインの強みは、相手に感性価値で存在を示す事ができことである。故にデザインは、その最前線の表現として最も大切である。先日、情熱大陸に出演したナガオカケンメイ氏は、ロングライフデザインを提唱し粘り強い活動を展開している。また、同氏は8月27日から日本デザインコミッティーの主催で松屋銀座で開催される「デザイン物産展ニッポン」のコミッショナーとして日々奮闘している。ミラノサローネで話題となったLEXUSの会場構成とデザインを行ったnendoは、その後世界各国から引っ張りだこだという。世代を超えて信念を持ったデザインとそのアクションは、次の門戸を開くと固く信じている。


 2 0 0 8 J u n e

露出量の多かったプラダ携帯の広告
東京表参道駅に貼られたポスター、屋外広告、見開きの雑誌広告、15段の新聞広告、異常とも思える数の露出量、広告宣伝費をかけたLG製のプラダ携帯。あたらしモノの大好きの私は、もちろん真っ先に行きつけの有楽町のB店の店頭に立ちました。しかし、しばらくして購入するのをやめました。その理由は「何か違う」と感じたからです。docomoの新しいロゴの導入を契機に売り場が一新されていました。なにか時代迎合するような派手派手の売り場のデザインとプラダ携帯は、明らかにミスマッチ。広告媒体で見せていたような先鋭的なイメージは微塵も感じ得ませんでした。客観的に見てみると、とても怖い事です。ブランドのデザイン戦略を仕事にしているせいか、こうした売る為には手段を選ばない扱いは、時間軸で見るとプラダ、LG、docomoにとってマイナスイメージに繋がります。直営のショップデザインに重きが置かれている現在でも、簡単に自分たちの生命線を軽視してしまう。これからは量販店にもデザインが必要だと感じました。尚、この携帯は現在品切れ中のようです。


 2 0 0 8 M a y

この世界の先駆者の一人、小池一子さんからも高い評価をいただいた。左はキヤノンの酒井所長、その隣はSOMADESIGNの福井さん。
前号で、ミラノサローネを「そろそろ卒業しようと思いながらも」と書いたら「まだ卒業するな」と、いろいろな方から言われた。ちょっと嬉しく思った。4月16日の夜に開催したキヤノン「NEOREAL」のオープニングパーティーには、多くの方々が訪れてくれた。そして6日間の会期中、不順な天候にも関わらず、この波は絶えることなく続き、22年間通い続けて一番来場者が多い年になったと思う(ラ・トリエンナーレの公式発表はまだでていない)。これまで数多くの展覧会を20年間手がけてきたが、一番気になるのは展覧会の評価より人が来てくれるかどうかである。そういう意味では、第一の難関はなんなく突破した。後はマスコミや関係者がどのように評価してくれたかである。一都市に6日間で30万人弱の人が、世界中から集まるサローネは、改めて凄い機会(デザインビジネスとデザインイベント)でした。
サローネに関して、私の考えはこれまで繰り返してきている通りである。サローネを見ても良いデザインは当たり前になった。日本企業や日本人デザイナーの質量は世界のトップランナーであることを実証した。その上で、私達が世界に向けて発信しなくてはならないことをもっと模索する時期に来ている。例えば、環境問題や資源問題は避けては通れない課題である。サローネ自体も新作デザインを核にしたビジネス面では機能しても新たな機会の創出の場としての機能がないとこのポテンシャルを維持していくのは難しくなる。


 2 0 0 8 A p r i l

椅子のモデルを検討する廣川、福井の両氏
いよいよ来週末にはミラノへ向かう。そろそろ卒業しようと思いながらも22年目のミラノサローネとなる。前号でも記載したようにミラノサローネは、家具の新作発表商談会からブランドコミュニケーションの場へと変化している。
新たなモノはなくても生活できる現代社会で支持されるには、単なるモノだけではない企業の可能性や経営のセンス、さらには独自に提案されるブランドの世界観がマスト条件となり始めている。デザインの新規性やデザイナーの名前だけで注目されるような時代ではなく、そのモノと自分との関係性が重要な視点となっている。わかりやすく説明すると「必要か」「必要でないか」、「もっと関わりたいか」「関わりたくないか」、まるでコンビニ3秒ルールの様に瞬時に判断されてしまう厳しい時代である。それ故、新たな対話の技が必要となってきている。これまでの日本的な暗黙知の世界やマス媒体だけでは、対話が成立しない。この数年よく使われてきたエクスペリエンスな機会にするには、鮮烈なインパクトとロジカルで深い会話(シナリオ)が必要である。今回、総合プロデュースを手がけたキヤノンは、このような私なりの考えをベースに組み上げた。サローネに来られる多くの方々と4月16日の夜、ミラノトリエンナーレの会場でお会いできれば幸いだ。


 2 0 0 8 M a r c h

ミートパッキング・ディストリクト地区に誕生したヨージのショップ
今年のミラノサローネでは、二つの企業のお手伝いをしています。一つは、参画して早4回目となるLEXUSです。今年は佐藤オオキ氏率いるnendoに依頼しました。彼らの新たなチャレンジにご期待いただければと思います。もう一つは、今年初めてサローネに参画するキヤノンです。タイトルを「NEOREAL キヤノンが創り出す新しい感性の世界」と題し、こちらは総合プロデュースを担当しています。本日、内田社長への報告会を終え若干安堵していますが、残された時間で更なるクオリティーアップを図らなくてはなりません。依頼したチームメンバーは、建築家の石上純也、ファッションデザイナーの廣川玉枝、建築・デザイナーの森ひかる、グラフィックデザインの粟辻美早、そしてデコレーターとして深澤里奈の各氏です。私のスタッフも総動員です。企業デザインや技術をどう伝えるか、このコミュニケーションの技とセンスが最も重要なテーマです。次号で、詳細をお伝えしたいと思います。
そんな中、NYへ1泊3日の短期出張をしてきました。大雪で交通マヒはありましたが、往復26時間のフライトは日ごろの睡眠不足の解消と冷静に考える時間となりました。現地で新プロジェクトの打合せ後、石上氏の最新プロジェクトのヨージ・ヤマモトのショップとSANNAのニューミュージアムの二件だけ視察しNYを後にしました。


 2 0 0 8 F e b r u a r y

ジェトロの広報ブース
今年もパリ、メゾン・エ・オブジェでのジェトロ広報ブースのプロデュースを依頼され、22日から1週間パリに滞在しました。昨年と違い天候に恵まれ、また昨年の反省を踏まえ設営・展示の準備をしてきたのでスムーズに準備が完了。今年のキュレーションの軸は「ディテール」。日本国内40ほどの地場産業から17品を選び展示。 全体としては、あらためて日本のものづくりの質の高さが評価され想像以上の引き合いがありました。課題は、こうした質的に高く、美しい日本の地場製品をどう世界の市場に送り出すかです。また、その為の新たな戦略が必要で、現在企画中です。
今回のパリ滞在で時間を調整して、二つの博物館・美術館に行けたのが収穫でした。 一つは、以前に一度訪れたことのあるミュゼ・デ・アール・エ・メチエ(Musee des Arts et Metiers)、メカが好きな私は一 日でもいられる場所です。特にフーコーの振り子時計は飽きない。もう一つはジャン・ヌーベルの建築で知られるケ・ブランリ美術館(Musee du quai Branly)。やっと訪れることが出来ました。この二つの施設を見て、改めて教育の大切さを実感しました。高度な展示の仕方を含めて、まだまだ日本の文化施設の脆弱さを感じた次第です。日本にもそろそろ本格的なデザインミュージアムの必要性を感じています。


 2 0 0 8 J a n u a r y

年末には吉岡徳仁さんとナガオカケンメイさんと久しぶりに食事。
世界のデザイン界の巨匠エットレ・ソットサスが12月31日に90歳の生涯を閉じました。合掌。実際に何度かお会いしたことがあるのでショックでした。生前エットレが語っていた「人が喜んでくれて、おもわず頬にキスしてくれるようなデザイン」の話しが脳裏に焼きついています。マスプロダクションでこうした理念を具現化するのは大変難しいことですが、しかし最も大切な視点です。とかく購入までが楽しいバーチャルなデザインが溢れる中、購入した後も大切にしたくなるデザインへ、デザインには重量感が必要です。
日本のなかでも東京は、さまざまなデザインに対してポジティブな都市です。海外からの旅行者は、東京のスケール、密度、そして秩序に驚きます。世界に類のない街なのです。この東京を世界の最先端のデザイン都市にしたいと私は夢見ています。
この二十年間、日本のデザインは技術+デザインだと思ってきました。強い力ではなく、賢い力が必要です。わかり易い世界観に陥ることなく、これまでご一緒したことのない企業や専門家と交流し、新しい価値を醸成するデザイン都市を作らなくてはなりません。これが今年の抱負です。


 2 0 0 7 D e c e m b e r

富山プロダクトデザインコンペティションの審査員(公開審査会)
通算17回目を数えるデザインウエーブは、富山県が実施しているデザインイベントである。一見、田舎のイベントのように映ると思うが、その実最も進んだ内容を有している。デザインをこれだけ真正面から捉え、包み隠さずオープンにした企画は他にはない。それというのもデザインは、人々の五感を刺激する最もデリケートで、最もインパクトの強いものであるからだ。参加したデザイナーは、時に熱く語り、時に稲妻が体を通り抜け、そして戻っていく。今後も私が関わるとすれば、アスペンやダボスの様な場としていきたい。
商品開発でマスマーケティングほど妖しいものはないと思っている。定量的な数値は、ややもするとデザインの進化を阻害する。耳障りのよいフレーズは、何か妖しさを含んでいる。あなたに喜んでもらえるデザインとはどんなものか?いま最も関心があり、直面している課題である。
今年もいろいろなデザインを見て周り、購入した。ベストは「iPodtouch」とSonyの「有機テレビXEL-1」である。そして最も気になったデザインは、Audiの「メトロプロジェクト・クワトロ」とトヨタの「iReal」である。今後製品化されたら一番に購入してみたい。常に進化を求めて、信念を持って具現化する大切さをひしひしと感じている。企業と生活者との距離感やその後の共有の場づくりも次の重要な課題である。


 2 0 0 7 N o v e m b e r

ミラノは2015年のEXPOを誘致し、新たな経済力のアップを目論んでいる。
例年この時期は忙しい。今年も沢山のデザインウィークの案内をいただいた。お送りいただいた皆さんには大変申し訳なかったのだが、31日からミラノへ出張に行かなくてはならず何一つ見ることはできなかった。機中泊を含めて三泊の短期滞在だったので、ショッピングや地方へ足を伸ばす時間は持てなかった。イタリア経済は、相変わらずの低成長で追い討ちをかけるようにユーロ高が生活者を苦しめている。その中で目に付いたのは、リナシェンテデパートの7階が食品売り場に大改装され、回転寿司屋もオープン。街中ではフィアットのチンクエチェントが可愛らしい姿で走り回っていた。そういえばプリウスも随分増えた。偶然横を入りぬけたNIVEA装飾のトラムは可愛く、慌ててカメラを取り出したが時すでに遅かった。トリエンナーレでは、カルティエ財団のデビット・リンチ展が開催されていたが、展示作品は好きになれなかった。来年のミラノサローネに向けて水面下で準備が進むが、サローネが今後のデザインムーブメントを生み出す場となるか、例年同様発表会で終わるのか、その後の世界のデザイン界にとって重要な機会となろう。
いま発売の「Pen(2007年11/15号)」のデザインアワードは力作。私も審査委員の一員として名を連ねているので興味のある方は見てください。


 2 0 0 7 O c t o b e r

11月8日から富山県高岡市で黒木氏の回顧展を計画している。
ミスターウォークマンと言われた黒木靖夫氏を偲ぶ会を企画し開催した。黒木氏の所持していたウォークマンや扁平ブラウン管ペチャトロンのモックアップのほか、生前親しかったナムジュン・パイク氏が黒木氏に宛てた書簡や作品など、四つのコーナーに分類して展示した。また、数多い写真ビデオを編集し足跡を振り返った。黒木氏と交友の深かった諸先輩方やデザイン関係者に来ていただき、私としては25年に及んだお付き合いに一つのけじめをつけることが出来た。「感性というのは非常にいい言葉でして、日本人は非常に優れている。特に若い人はですね。それを育てる。それが私達の義務である。」と生前黒木氏は語っていた。この言葉を日本のデザイン界のために継承していきたい。

9月22日に予約しておいたiPodtouchが届いた。この操作性の快感は、iPhoneで体験済みだが実際に使ってみるとすばらしいの一言。またtouchは、音楽専用に特化した商品であることがわかった。そのハンディーゆえ、この二週間でYouTube、Videos、Calendarはフル活用。Safariは接続できる便利性はあるがアクセスが限られる。しかし、アップルの戦略にまんまとはまり、WinPCと同等にMacBookがフル活用。ここまで来ると8-10インチのMacモバイルが欲しい。こうした魅力的な製品を手にすると、ますます黒木さんが活躍されたSONYは、過去の会社となりつつある。


 2 0 0 7 S e p t e m b e r

Bohlin Cywinski Jackson によるアップルストアーの建築インテリアはすばらしい。
私のもの好き、初物好きは、友人知人の間ではちょっと有名である。時間があると有楽町の某量販店にたむろするのが大好き。先月、久しぶりにニューヨークに渡航し、アップルストアーにまっしぐら。お目当ては「iPhone」。指先と連動したスムーズな操作性には正直驚きました。やはり新しいものに触れるドキドキ感やヤラレタ感はたまらなく好きである。身近なものとしては、これまですべてのバージョンを購入した「iPod」が上げられる。他には、川久保玲氏のデザイン哲学に魅せられ、ブランド立ち上げ時から早30年間買い続けている「コムデ」とか。トヨタの技術開発の傑作であるハイブリッドシステムに感銘し、二代10年間で11万キロを走破した「プリウス」とか。「人間が考える葦である。」のことわざではないが、人の考えが色濃く反映されたものに出会う、触れるのが好きだ。
最近、東京の展覧会はなかなかの企画が目白押しだ。高くなった入場料を除けば質・量とも世界トップレベルだと思う。その中でも国立新美術館で行われた「スキン+ボーンズ 1980年代以降の建築とファッション」は、とても新鮮で刺激的だった。かって権威の象徴だった建築とは距離を置き、ファッションのようにかろやかに街に人に溶け込み、その存在感を極力消している建築デザインの数々。まさに次代の可能性と進化を感じさせる。


 2 0 0 7 A u g u s t

Honolulu Neiman Marcusで、私のスタッフと
ウォークマンのプロデューサーとして知られる元ソニーの名物ディレクター、黒木靖夫氏が静かに天に召されてしまった。長く癌との闘いだったので、いずれこの日が来ることは覚悟していた。しかし、その日は突然やってきた。25年に及ぶお付き合いだった。特にこの14年は、富山県総合デザインセンターの所長とデザインディレクターの関係だったので、年20回程度富山に飛び一緒に勤務してきた。富山滞在中は、毎夜酒を酌み交わした。黒木さんは、新しいことが大好きだった。そして熱かった。時にデザイン評で意見が分かれることもあったが、それ事態を楽しんでいる節もあった。私利私欲に走ることなく、極めてピュアでバランス感覚のよい方だった。そんな黒木さんの側近として、これまで一緒にいられたことを心から感謝しなくてはならない。黒木さんから教わったのは、物事の透視力・判断力である。黒木さんは、亡くなる直前までハワイでのバケーションを望んでいた。期せずして私は、来ることのできなかった2名のスタッフを除く7名のスタッフと一緒にハワイにいる。これからは、この世代に受け継ぐ何かを使命として生きなくてはならない。黒木さんを偲ぶ会は、10月2日黒木さんの75歳の誕生日に計画している。
 >> 黒木靖夫氏 http://www.sony.co.jp/Fun/design/activity/interview/kuroki_01.html


 2 0 0 7 J u l y

ブランドデザイン研究会でお話しする中塚重樹さん
6月6日から三日間、ビッグサイトで行われたインテリアライフスタイルは、この手のトレードショーとしては充実した内容で見ごたえがあった。中でも招待展示の「Disney+WA-Qu展」は、京都を活動拠点とする建築家、デザイナー、アーティストがデザインする新しい和の世界と、あのウォルト・ディズニーとが一緒になって商品開発。アーティストの堀木エリ子さんのミッキーの照明から御香、爪楊枝、手拭など、二者の絶妙なコラボレーションに感服した。早速20年来の友人で、和空のプロデューサーの中塚重樹氏にコンタクト。私が汐留イタリアで、月一で開催している「ブランドデザイン研究会」の講師として来ていただいた(写真参照)。ウォルト・ディズニーが考える新たなブランド戦略と京都のモノづくりの伝統を現代に置き換えようとする和空のブランド戦略とが一致し、二者が求める上位概念のハイパーゾーンをどう商品開発できるのかこれからが楽しみだ。旬だと思った私は、今月12日より新宿のリビングデザインセンターOZONEで開催する「夏の大茶会2007」のメイン会場への出展を強引に要請した。 興味のある方は、このブランドをご自身の目で確かめて、意見を下さい。


 2 0 0 7 J u n e

河合寛次郎記念館。左手に二畳の部屋がある。
京都に出張したついでに一泊し、翌朝相国寺承天閣美術館で行われている「若冲展」を見に行った。親族と自身の永代供養のために献納した釈迦三尊像と動植綵絵を見れたのはやはり感動でした。しかし、つぎつぎと押し寄せる人で早々に相国寺を後にした。向かったのは、河合寛次郎記念館。あいにく小雨のふる日でしたが、より京都を感じさせ、心地よい時間でした。人一人歩いていない路地を入った所に記念館はある。この河合の自邸は、京都に行くと一番立ち寄りたい場所。昇窯の手前にある二畳の部屋が特に好きな場所で、この窓から見える母屋や庭の景色、一輪挿しを通して知る季節感、河合の美学が見て取れる。また、この記念館の中に置かれている自作の椅子や道具一つ一つがセンスについて教えてくれる学校でもある。そして、この記念館にいると時間を忘れさせてくれる。心が癒される。デザイナーを志す人は、デザインを学ぶ前に、先達の美学に触れて欲しい。そんなお勧めの場所についても今後綴ってみたい。
今月9日午後、川崎市岡本太郎美術館で開催中の「青山時代の岡本太郎1954-1970」を記念して、建築家の長大作さんと私とでトークを行う。これまた先輩達のエネルギーを再確認する場となりそうで、精神を集中して望みたい。



 2 0 0 7 M a y

LEXUSの設営会場で 乾久美子さんと中牟田洋一さん
過酷なミラノサローネを取材して、いろいろ考えさせられた。先ずは、日本人はプレゼンテーションが下手だ。サテリテに出展した若手デザイナーもトルトーナに出た日本企業も海外でコミュニケーションする為にはもっと考えなくては駄目だ。世界で最大のデザインフェアのサローネで国際的な評価を得る為には、展示コンセプトの明確化と展示シュミレーションの検討に時間をかける必要がある。日本のデザインは世界でナンバーワンと繰り返し明言している私としては、このままだでは恥ずかしい。来年出展を予定している企業やデザイナーは、投資に見合う成果が得られるように総合的に検討して欲しい。サローネの取材分析は、5月中には本サイトで掲載して頂く予定であるが、5月17日にはOZONEでセミナーを行う。既にかなりの方が申し込まれているそうだが興味のある方は、参加してください。もう一つ、ユーロの高騰は何とかしなくてはならない問題である。実態経済としては125円〜130円くらいが適切だ。何十年も渡航していて、今回ほど高いと感じた事はない。このまま為替ルートが容認されるようだと海外建築家・デザイナーの起用は難しくなり、サローネ出展にも影響を及ぼす。ここでも多様な選択肢があり適正価格で何でも手に入る日本は、なんといい国なのか強く実感した次第である。


 2 0 0 7 A p r i l

3月20日国内外の要人、関係者600人が集まりパーティが開催された
来週末には、21回目となるミラノサローネに出かける。今年は例年にも増して日本の大手企業の出展が予定されている。国際家具見本市として歴史を重ねてきたサローネも数年前からデザインウイークと称されるようになり、あらゆるデザインを受け入れるようになった。その背景には、生活スタイルの変化に対応せざるを得ない事情とイタリア経済が近年低成長(昨年あたりから底入れしつつある)で一部の企業を除き、多くの企業が新たな製品を開発できる余裕がなかったことが挙げられる。また、こうした隙間を埋めたのが日本人デザイナーであり、この数年間は日本企業の異常な進出である。特に今年はトルトーナ地区に日本企業が集中する。何をコンセプトにどんな展示を行い、どんな効果を狙っているのか、一時的なブームで終わるのか、今年はじっくり視察分析したいと思っている。
新たな街づくり施設づくりに関与しているShiodomeitaliaクリエイティブセンターは、3月20日に全施設が完成してオープニングパーティが行われた。ルーティ伊副首相も来られ記念すべき日となったが一番脚光を浴びたのは黒木靖夫氏のスピーチであった。「日本の企業や社会は美しいか?それぞれのパーソナリティが生かされ、尊重され、また同時に甘んずることなく自立しているか」という提言は、成熟社会に対する年長者からの警鐘であった。最も面白い都市東京をより高度な街にするのは、一人ひとりのパーソナルデザインである。


 2 0 0 7 M a r c h

ギャラリートークの後で歓談。納谷学・新、廣田尚子、塚本カナエの各氏
ニッポンのデザイナー展」は無事に会期を終えた。この展覧会には若いデザイナー達がたくさん来てくれた。展示に協力していただいた建築家、デザイナーからは異なるジャンルのデザイナーと知り合うことができ大変有意義だった感謝された。世界で一番質量的に突出しているニッポンのデザイナー達には、もっと活躍できる場が必要だ。また、村社会で群れることをやめ積極的に社会との関係性を構築していかなくてはならない。その上で、それぞれの固有名詞と何が得意なのか、存在意味を明確化しなくてはならないと考えている。今回の展覧会では、4回に渡り会場内でギャラリートークを行った。展示作品を見るだけではなく、デザイナーの考え方、生き方、その上で生まれてくるデザインについて身近な距離で聞く会である。直接本人からデザインを解説いただきとても新鮮だった。
一ヶ月後に迫ったミラノサローネには、今年多くの日本企業、日本人デザイナーが参画する。今年もお手伝いしているLEXUSは、会場構成は乾久美子さんに依頼した。女性建築家にお願いしたかったことと、乾さんのディオール等の作品を見て、美の表現、美の表情に魅せられたからだ。特に今回のためにデザインされた家具「nohara」は、これまでの椅子の概念を覆す意欲作である。乞うご期待下さい。


 2 0 0 7 F e b r u a r y

JAPAN STYLE 2007 design meets craftの展示風景
1月26日からパリのノール・ヴィルパント見本市会場でメゾン・エ・オブジェが開催された。プロデュース担当したジェトロの日本ブース「JAPAN STYLE 2007」は、深夜の作業となり、寒さと進行のス ローさから渡航したメンバー三人がダウーンしてしまった。しかし、展示は大変好評で日本人の丁寧な仕事を再確認でき、発表することができ満足している。 昨日からは汐留イタリアで「ニッポンのデザイナー展」がスタートした。会期中には、秋田道夫、近藤康夫、西山浩平、佐藤卓、隈研吾、佐藤大ほか各氏によるデザインセミナー、ギャラリートークを予定している。URLでご確認頂き、一緒に日本のデザインの今後について前向きなディスカッションを行いたい。同会場で2月14日にはジャパンブランドの一つ会津若松のBITOWAについて、塚本カナエさんとフォーラムを計画。詳細は下記URLをご覧下さい。
 →BITOWA http://www.aizu-cci.or.jp/BITOWA/
週末OZONEで開催された「JAPANブランドエキジビション」はなかなか見ごたへのある企画展示だった。認定された全国30のジャパンブランドは、それぞれ個性的であり、いずれも高いクオリティを持っていた。しかし、マーケティングと新たなルート開拓など問題も山積している。デザインビジネスは、もっとアグレッシブに詰めの作業を行わないと未来は開けないと実感した。


 2 0 0 7 J a n u a r y

パークアクシス青山一丁目タワーから美しい東京が眺望できます。
2007年、明けましておめでとうございます。写真は青山一丁目でいま建設している現場の31階でフォトグラファーの大木大輔さんが初冬に撮影したものです。東京がデザインの力で魅力的な街になることを夢見ています。
さて、現在はパリで1月26日から30日まで開催されるメゾン・エ・オブジェのジェトロブースの総合プロデューサーを授かり、地域で起こっている新たなブランド開発を調べ選定して「JAPAN STYLE 2007 design meets craft」を企画しました。同じくメゾン・エ・オブジェに出展する会津若松の新しい漆器ブランド「BITOWA modern」は、エレガントな日常をコンセプトに世界で評価される地域ブランドにすべくデザイナーの塚本カナエさんと共働しています。
汐留シオサイト5区のイタリア街に12月誕生しました「Shiodomeitaliaクリエイティブ・センター」では文化軸での街づくりに参画しています。2月6日より3月4日まで「ニッポンのデザイナー展」の開催に向け、展覧会と同時にセミナーやトークなどを企画しています。日本のデザインシーンを作っている建築家・デザイナー約80名に参画していただきデザインパワーをぶつけてみたいと思います。今年最初のコーナーなので自己アピールみたいな文章になってしまいましたが、デザインの可能性を信じ具現化するためにも力が必要です。


 2 0 0 6 D e c e m b e r

「イタリアデザイン界のマエストリ達展」の展示風景。21人のイタリアの巨匠デザイナーを紹介。展示品は、デザイン好きにはたまらないラ・トリエンーレ・ディ・ミラノのお宝(パーマネントコレクション)が展示されている。
12月1日汐留シオサイト5区イタリア街の一角に「Shiodomeitalia クリエイティブ・センター」がオープンした。建築・デザイン関係者であれば知らない人がいないくらい有名な「ラ・トリエンナーレ・ディ・ミラノ」の世界初進出の常設展示場が整備された。こけら落としの展覧会は、「エットレ・ソットサス 定理に基づいたデザイン」、「イタリアデザイン界のマエストリ達」、「1960・ミラノ:日本デザインの挑戦」の三本、入場料は三展で一般1200円である。この9日(土)14時からは、「1960・ミラノ:日本デザインの挑戦」と題したフォーラムも開催される。当時坂倉準三建築研究所に所属し、この展示会を担当した85歳の現役デザイナー長大作さんと私のトークセッションである。今とは違って1960年当時は、世界へ向けてデザインや技術、製品を発表する場が限られていた。国を挙げて企業もデザイナーも一丸となって心血を注いだ日本のデザイン界の挑戦であり原点でもある。


 2 0 0 6 N o v e m b e r

広島オリエンタルホテルのロビーにて
横森美奈子さんと内田繁さん

今年のTDWは一度も足を運ぶことなく終わってしまった。個人的に最も忙しい時期と重なったことが理由の一つだが、イベント自体に遊びが多くなり興味が沸かなかった。多くの知人・友人から案内を頂きながら申し訳なく思っている。参加デザイナーのスキルを問題にしているのではなく、このイベントの目的やテーマに新たなエネルギーを感じないからだ。私たちの先輩達が溢れんばかりのエネルギーを発し、日本の発展を夢見、独創性を競った時代はもう過去のものなのか?こんな自問自答が脳裏を横切る。同時代性の乾いた環境下で取り戻す為のバックボーンは、1952-1960年の先達の心(精神)を知るところにヒントがあると思っている。
アエラデザイン「ニッポンをデザインした巨匠たち」でお世話になったと内田繁さんからお電話を頂いた。電話の内容は、広島のオリエンタルホテルを手がけられ、そのオープニングパーティに招待してくれるという。当日、お会いした面子は、年齢不詳の著名人がほどよい人数で介する会であった。空気はモダンで、熱き心を持つセンスの良い大人の会に加わることが出来て嬉しかった。翌日案内された上田宗箇流の茶室の素晴らしさは、さらに感動的であった。エネルギーは良質の環境で生まれることを実感した次第である。


 2 0 0 6 O c t o b e r

安藤忠雄氏がリノベーションしたヴェネチアのパラッツォ・グラッシ
9月10日ヴェネチアビエンナーレ第10回国際建築展の初日、アーセナル会場のチケット売り場に真っ先に並ぶ。チケットを買い求めて会場に入るとCITTAの文字が大きく飛び込んできた。今年は都市がテーマと知る。なかでも印象的だったのは東京の人口3500万人と記された表示である。正確には首都圏エリアの総人口であるが、ロス、上海、ロンドン・・・どの都市と比べてもこの密度は際立っていた。緑化率、オゾンなどなど、高密度な東京は、まさに世界の先端都市、実験都市であることを知る。初日だったせいか、まだ人も少なくゆっくり展示を見れたことは幸いだった。一方、日本館では都市のカオスとは一線を画す藤森照信氏らによるユニークな展覧会が行われていた。また、私の好きな美術館の一つパラッツォ・グラッシが安藤忠雄氏の手によりリノベーションされ、ピノーコレクション(仏)が展示されていた。ピノーのコレクションは個人的にはあまり好きではないが展示構成は空間とマッチングしており素晴らしかった。今回も3泊の短い旅行であったが、内容の濃い打ち合わせと丸一日のヴェネチアの休日(夏休み)を堪能した。目線が上がる機会と休日の必要なことを強く実感した次第である。


 2 0 0 6 S e p t e m b e r

世田谷美術館「クリエイターズ」会場にて
長大作さん

世田谷美術館で「クリエイターズ - 長大作/細谷巖/矢吹申彦 まだ見ぬ日常への案内者たち」が今月24日まで開催されている。三人の先達の創意工夫の結晶の作品を集めた展覧会であり、さらに今も日々実践しているリアリティに驚嘆する展覧会である。まだ若いが姿勢が凛々しい学芸員の野田尚稔さんが担当された。足を運んで欲しい展覧会の一つである。昨日、世田谷美術館の酒井忠康館長にお会いした。酒井館長の語る文化論に時間を忘れて聞き入ってしまった。現実と本来あるべき姿、マスの解釈、慣例と打破など、文化に関して更なる持論(軸)が必要なことを強く実感し刺激を受けた会見だった。その夜、オペラ演出家の岩田達宗さんにお会いした。劇場という限られたホールの中で密度の高い演出に欠かせないのは、インターラクティブであると話された。いまのマスメディアにない双方向性の密度の濃い関係性の構築こそ、高い文化創造に繋がる。そしてこのことは、他のジャンルにおいても充分応用できるキーワードである。


 2 0 0 6 A u g u s t

ALICE'S TEA PARTYの会場風景
5回目となるOZONE夏の大茶会は、無事に終了した。今年は金沢21世紀美術館で好評を得た「T-room project」(隈研吾、岩井俊雄、原研哉、深澤直人)やデザイナー集団nendoによるリプトン来航10周年記念の「ALICE's TEA PARTY」など、これまでと違ってOZONEらしい企画も取り入れた。このプロデュースが終わるとやっと前半戦が終わる。いつのまにか節目の祭事になってしまった。この大茶会からは様々なことを学んだ。茶の意味(参考までに8月の日経新聞「私の履歴書」は、小堀宗慶遠州茶道宗家の連載である。一読されると茶人の心を知ることが出来る)、同時に茶室や茶道具の意味や歴史観など、先たちによって重層された日本人の精神性を知る機会となったことは大きかった。
商品化を目標としたデザインコンペ「富山プロダクトデザインコンペティション」は今年で13回目となる。気がつくとずいぶん長く続いたものである。コンペの賞金額はグランプリ50万円と、他のコンペと比べると少ないものの入賞作品を商品化すべく、その後の試作をデザインセンターが面倒を見ている。過去の商品化実績やデザイナーの登竜門としてデザイン業界に寄与できたことは自信となっている。今年のテーマは「ホスピタリティのあるオフィス用品」である。関心のあるかたは応募して欲しい。

 2 0 0 6 J u l y

shiodomeitaliaクリエイティブ・センターのプレパーティの仮設会場
大阪ATCのデザイン振興プラザで開催した「ニッポンデザイン界のマイスター展」は、会場始まって以来の来場者で溢れかえった。最終日の入場者は700名だったそうだ。この展覧会の基となったのは、朝日新聞から発行し爆発的に売れた「ニッポンのデザイナー100人」である。引き続き監修した「ニッポンをデザインした巨匠たち」もお蔭様で好評に売れているらしい。新潟のウルシヤマ金属工業から発売した調理器具「ireco」の発表会には、多くのマスコミおよび関係者に集まっていただいた。地方の会社のデザイン開発は忍耐を要するが、やりがいのあるプロジェクトである。
27日には「shiodomeitalia クリエイティブ・センター」の記者発表兼プレパーティを開催したところ600名もの人たちに集まっていただいた。気合を入れて、この日のためにテント会場を設営し準備を行った。結果は大成功で久々に懐かしい顔とも再会できた。この11月末のオープンに向けて、集中力を高めていかなくてはならない。
7月13日からは5年目になる「OZONE夏の大茶会」が始まる。また、13日には品川のコクヨホールで「PRODUCT DESIGN FORUM 2006」に出演。すでに夏がはじまっている。

 2 0 0 6 J u n e

高井戸の渡辺力邸にて
5月23日高井戸にある渡辺力さんのお宅にお邪魔した。レイ・イームーズ夫人に贈った時計の復刻モデル(写真)について、力さんのデザインコンセプトを伺うのが目的であった。私の矢継ぎ早の質問に怪訝な顔をするではなく、ゆっくり思い出しながら口を開いた。特に1957年の第11回ミラノ・トリエンナーレでの事など、聞いておきたかった。偉大な先達に直接お会いできる機会もそんなに多くない。戦後の動乱の中で意匠による新たな価値を追い求めた獅子たちの話は、すべてが均質化し同質化していく時代のなかで大変参考になる。まもなく監修にした「日本をデザインした巨匠たち」が発売になる。前作「ニッポンのデザイナー100人」が好評を得た為、その続編として発刊される。現役のデザイナー35名に登壇いただいたこの本の編集にたずさわったメンバーからは、「実際にお会いしてお話を伺い、改めてその存在、凄みを感じた」と話してくれた。
今月は、塚本カナエさんにデザインを依頼した調理器具「ireco」を発表する。都会で前向きに働く女性をターゲットに想定した製品である。また、月末27日には、ミラノ・トリエンナーレのディレクターを初め、イタリア関係者が集まり11月に誕生する「汐留イタリア クリエィティブ・センター」のプレス発表会とプレパーティを予定している。大阪港南では、大阪デザイン振興プラザにて「ニッポンデザイン界のマイスター展」。(6月18日まで入場無料)を企画構成した。睡眠不足をのぞけば、心地よい緊張感の続く月である。

 2 0 0 6 M a y

安藤忠雄さんの建築空間に行列の出来る人ごみと響き渡る人の声はマッチングしないと個人的には思っている。次に来るのは何時の日か?
2月のオープン以来、相変わらず人が途切れることのない表参道ヒルズに足を運んだ。今回が三回目である。最近人ごみに出かけるのが億劫になったが、開催されている「ヴィム&ドナータ ヴェンダース写真展」を見る為には仕方がない。焼かれた印画紙に写る静なる描写の奥に人や音、喧騒が聞こえてくるようであった。藤原正彦著「国家の品格」ではないが、時間を静止して、自身の環境に散見する行為や情緒を考える良い時期なのかも知れない。その後、ディエチ・コルソコモ コム デ ギャルソンで見た帽子デザイナーのスティーブン・ジョーンズ特別回顧展は、なかなかの力作で感心した。スティーブンのインスピレーションの豊かさと再現されている緻密さ、美しさは、単なる帽子の枠を超え、作家の内面(知識)の豊かさが滲み出ている。ファッションブティックの新たな可能性を探る意味においても、川久保怜さんのアバンギャルドが健在なことを感じる意味においても、うれしい一時であった。

 2 0 0 6 A p r i l

施工が完了して発表を待つ「Tokujin Yoshioka × Lexus L-finesse」会場
今年もミラノサローネの時期がやって来た。私にとって今回は20年の節目の年に当たる。フィエラ会場も新しくなり、サローネがかつてのようにデザインムーブメントを打ち出す祭事として蘇るのか、単なる表層的なデザインイベントで終わるのか大事な節目である。予想では日本での異常な取り上げ方に反して、イタリア企業は模様眺めといった気配が感じられる。滞在ホテル界隈では、4月5日からの本場に向けて、入れ替え陳列作業が日夜行われている。ちょっと覗くと確かに仕上げの美しさ、上質さなど洗練度は格段に上がっている。しかし、星の数ほどある家具がこれ以上いるのか?存在するならば明確な理由を示してほしいという気分である。
今年もレクサスの展示展覧会にアドバイザーとして参画、昨夜でほぼ施工が完了し4月5日のオープニングを迎えようとしている。参加アーティストは、吉岡徳仁、木本圭子の二人にフラグシップカーLSの構成である。この展示会では、次代の可能性を模索するイノベーティブなコラボレーションを試みている。会場は「ミュゼオ・デ・ペルマネンテ」、5日の夜会場でお会いできることを期待して、また来週の水曜日には速報を掲載予定。

 2 0 0 6 M a r c h

あらたなデザインの役割にしてついて語る、ステファノ・ジョバンノーニさんとパートナーのエリーザさん
ミラノ滞在中の予定をやりくりして、ステファノ・ジョバンノーニさんのオフィスを訪ねた。ステファノは、おもむろに口を開き最近のデザインについて語り始めた。このところ台湾、中国に渡航する機会が増えていること。そして、取り出した台湾の新聞「民生報」には、故宮博物館のためにミュージアムショップで販売するキャラクターデザインをしていること。すでにアレッシーと第一弾として30アイテムの開発が進んでいることを話してくれた。これまでの「モダンデザイン」はスローダウンし、代わりに地域の特徴を生かした「ローカリティデザイン」が主流になると断言した。日本でも経済産業省のバックアップのもと、地域ブランドの活性化策が顕在化している事例を前号で紹介した。再度、私たちの足下を検証する時期である。
2月の渡航の主目的は、今年の11月に汐留に誕生する「Japan & Italy Design Center」の打ち合わせのためである。多くの歴史を作ってきた「ミラノトリエンナーレ」の海外初の拠点が東京・汐留に誕生する。365日、日本にいながらにして、トリエンナーレのデザイン文化を体感できる。ご期待下さい。

 2 0 0 6 F e b r u a r y

写真はメゾン・エ・オブジェの「BITOWA」ブース
今回メゾン・エ・オブジェに参加して、この展示会の規模がほどよく充実していることを実感した。誰もが感じるように椅子だけの展示会や溢れんばかりのテーブルウェアの展示会では見るのも嫌になる。その点、このパリ・メゾンは展示品の量、質感、会場のサイズ、レストラン等付帯設備の充実度などバランスとれている。市内からRERの鉄道ラインの汚さとパリの底冷えさえなければもっと気分はとても晴れやかだったはずである。次の課題としては、デザイナーの存在にもっとフォーカスを当てれば、ポテンシャルは間違いなくアップする。また、フランス人の上品な色彩感覚、装飾性もいまの時代にマッチンングしている。
「ホテルライクな上質な生活」をコンセプトに開発し展示した「BITOWA」ブランドの評価も上々でした。後は確実に流通ルート(特にコントラクト)をつくり、漆のハイエンドブランドとしてよく、ホテルやゲストルームなどで使っていただきたいと願っている。ほんとうにデザインがリソースの確認から始まり、コンセプト、デザイン、パッケージ、ツール、ネーミング、カタログ、ホームページ、プレスリリース、ショップデザインまで、トータルに関わらなくてはならないことを強く実感しました。

読者からデザイン展の解説・批評など様々リクエストを頂いています。できるだけ応える方向で考えます。
→ BITOWA ウェブサイト http://www.aizu-cci.or.jp/BITOWA/

 2 0 0 6 J a n u a r y

ベッド、テレビスタンドから小物まで28アイテムを新たに開発した新ブランド「BITOWA」
新年明けましておめでとうございます。昨日の日経新聞朝刊にBALSの15段広告が掲載されていました。この広告の「デザインは価値を創り出す。」「デザインは信じられる。」という文案が目に留まりました。デザイン界の長嶋茂雄と尊敬している黒木靖夫さんは、「デザインは実践である。」というのが口癖です。デザインが期待され、その成果が問われる2006年であると自分なりに位置づけています。
1月末に開催されるパリのメゾン・エ・オブジェで、デザイナーの塚本カナエさんとご一緒してきた会津若松の漆器の新ブランド「BITOWA」を発表します。欧州の方々にどんなふうに映るのか、いまから楽しみです。「ホテルライクで上質な生活の提案」をコンセプトに歴史に磨きあげられた職人技とデザイナー、会津若松の将来を担う三・四十代の経営者達から成るスキームで、ほぼ計画通り遂行できたのは嬉しい限りです。貴重な体験となりました。
今年は、このメゾンでの発表に続き、新ブランドの開発が進行中です。また、秋には汐留に新たなデザインセンターが誕生します。今年も全力疾走の年になりそうです。新たなデザイン環境を作り上げる為に、ざまざまの方々と連携し共働したいと思います。どうぞよろしくお願いします。

 2 0 0 5 D e c e m b e r

ブースデザインは式地香織さん、グラフィックデザインは粟辻デザイン。
あっという間に一年が過ぎ去ろうとしている。早いものだ。最近の仕事としてはブランティングのプロジェクトに関わることが多い。企画レベルでは差異がわからない内容をどう差別化するか、プロデュースするかちょっと自信が芽生えている。今回は書けないが、次号では手掛けているプロジェクトをお話できると思う。
また、最近企業の展示会をデザインすることが多い。これも広義にはブランティングの一環である。写真は、10月に横浜パシフィコで開催されたPDF展の様子である。スペースデザインは、伊東豊雄事務所を卒業した式地香織さんにお願いした。式地さんとはイタリア年のデザイン展を一緒に手掛けたチームメンバーの一人なので気心が知れている。自由に基本設計をしていただいたのだが、さすが伊東事務所のOBだけあって、これまでにないデザインを提案してくれた。展示会をオリジナリティの高いものにするか、廃材をださないエコ展示にするかは今日大きなテーマであるが、今回は前者を選択し、新しい試みができた。11月11日に安藤忠雄さんのセミナーをコーディネーションした。講演終了後、安藤さんとジョージ・国広さんの三人で夕食。東京の建築について、意見交換でき刺激的なひと時でした。

 2 0 0 5 N o v e m b e r

12世紀に設立されたナポリの絶景が楽しめるCastel dell'Ovo(卵城)で、森ひかる、マウリッオ・ジットの両氏
10月のビッグニュースは、関康子さん、西山浩平さんと一緒に執筆した「ニッポンのデザイナー100人」が朝日新聞社から17日に発行されました。好調な売れ行きとのことで1週間足らずで重版決定。睡眠を削っての作業だったので安堵しています。編集部の谷さんご苦労様でした。
風の盆で有名な八尾でイタリアからファビオ・ボルトラーニ氏を招聘してアート展をコーディネート、9日の午後には陣内秀信(法政大学)教授や宮口(早稲田大学)教授らとフォーラムでパネラーを務める。独自の地域文化を再確認する有意義な会でした。13日からイタリアへ、土日の休日を利用してナポリへ飛ぶ。79号で紹介した森ひかるさん、マウリッオ・ジットさんの建築を視察するのが目的。しかし、お二人の粋な計らいでナポリ、アベリーノ、アマルフィ海岸へのドライブと美食に大満足。持つべきはよき友を実感。南イタリアは、本当にきれいな所です。26日は富山のプロダクトコンペティションの選考審査会。現デザインを支えている26名を指名させていただいてコンペを実施。デザイン賞は隙のないプレゼンテーションを行った澄川伸一さんに決定。しかし、これだけのメンバーが富山に集まっていることに我ながら大満足。本当にみなさん、ありがとうございました。

 2 0 0 5 O c t o b e r

左から選考委員の名児耶さん、廣田さん、安藤さん
日本には各地に美しい寺があるが、私は曹洞宗高岡山瑞龍寺が一番好きなお寺である。この寺は加賀二代藩主前田利長公の菩提をとむらうために1643年から20年かけて建設された。現在、国宝、重要文化財に認定されている。9月13日、デザイナーを26名指名して行ったデザインウエーブの一次選考会を終え、名児耶秀美さん、廣田尚子さん、Pen編集長の安藤貴之さんら選考委員とこの寺に立ち寄った。幸い訪れる人は少なく、私たちはタイムスリップして、暫し選考会の疲れを癒した。尚、今月26日には参加デザイナーのプレゼンテーションを含む最終公開選考会とnendoの佐藤オオキさんと名児耶さんの対談も予定している。
今月はこれまでにも増して忙しい月だった。相変わらず国内外の出張も多く、パリのメゾン・ド・オブジェにも足を運んだ。秋から来春にかけて発表を行う様々なデザインプロジェクトの準備や、2年後を予定している展覧会の仕込みなど、自分でも感心するくらい守備範囲が広い。それだけデザインの場が広がっているともいえる。併せて、朝日新聞からの依頼でデザイナー本の発刊に向けて、西山浩平さん、関康子さんの三人で執筆している。実はこの執筆が遅れ、遅れを取り戻すべく根性を入れて睡眠3時間の毎日を2週間続けて脱稿した。いゃ正直本当に大変だったが、関係者には大変迷惑をかけてしまった(反省)。さて、気持ちを引き締めて過密なスケジュールの今月を乗り切りたい。

 2 0 0 5 S e p t e m b e r

8月26日に行われた展示発表会でデザイナーの菰田和世さん
私はガラス造形が好きで箱根のラリック美術館や諏訪の北澤美術館など、国内主要施設からヴェネチアのガラス工房まで足を踏み入れている。さて茨城県竜ヶ崎にカガミクリスタル創立者、各務鑛三氏の小さな美術館がある。ここに展示されている作品は緻密で大胆な作品が多く、完成度は非常に高い。1937年開催のパリ万博での金賞を初め、世界のあらゆる権威ある賞を受賞したのも頷ける。同時に日本の創始者たちの底流に流れる「心技体」を実感することができる。このカガミクリスタルからの依頼で、1年数ヶ月を要してデザイナーシリーズを完成させた。現場に流れる心と技の継承と現代におけるクリスタルの接点を模索し完成したのが「Benedetto」である。デザインは、繊細な情景を作り出すのに長けている菰田和世さん(ミラノ在住)にお願いした。現在は、東銀座、中部国際空港のセントレア、大阪の三箇所のショールーム&ショップのみの展開である。ご興味のある方はご覧下さい。
こうした脈々と流れる日本のモノづくりのリソースを今日的な価値に再生しなくてはならない。また、こうした仕事はデザイナーの本領が発揮できる場でもある。

 2 0 0 5 A u g u s t

文中で紹介したメンバーのほか、色彩デザイナーの小倉ひろみさん、インテリアデザイナーの森美香子さんら二十数名が集まった。
8月1日建築家の三沢亮一さんのお誘いで、神宮外苑花火大会を鑑賞する会が開かれた。3年前にイタリア貿易振興会のご招待で、イタリアの建材を1週間に渡って視察したメンバーらが顔を合わせた。日本設計の崎山茂さん、三菱地所設計の田村誠さん、建築家の寺田尚樹さん、インテリアデザイナーの南部昌亮さんらである。帰国中の蓮池槇郎さんもお連れした。須藤洋子シェフの作られるイタリア料理を味わいながら至福の時が流れた。数日前には食環境プロデューサーの木村ふみさん宅にお招きいただき、深夜までホームパーティを楽しんだ。最近ホームパーティに参加して、しみじみ都心居住のあり方が変わりつつあることを実感する。プライベート色の強かった住宅のバリアーがじょじょに緩やかになり、こまかな仕切り壁が取り除かれ、キッチン、リビングが一体化したセミパブリック空間が豊かさを演出する。気の合う仲間たちとの情報交換や互いの頑張りが適度な刺激を生み、個人の意外な側面(料理がうまいとか)を知る機会となり、ホームパーティは商業施設では味わえない心地よさがある。こんな経験が暮らしのデザインを変えていく。

 2 0 0 5 J u l y

現代美術国際展示場のメインストリート、右下の作品はスペイン人アーティストJuan Munoz
毎日をフルスケジュールで動いている私に突然空白の時間が生まれた。ミラノ滞在48時間でチッテリオ事務所で建築の打合せ、蓮池槇郎邸で新製品の撮影、ブランド会議、ブルガリホテルで10月にミラノで行う展示会の打合せ、ミラノブランチの打合せ、菰田和世さんの新製品発表の打合せを終え、中央駅にタクシーを飛ばし、列車でヴェネツィアへ移動。翌朝、ヴィエンナーレを2時間視察してマロコポーロ空港へ向かったのだが、旅行会社の予約ミスで搭乗できず。かなり落胆したが、突然生まれた一日を気を取り直してエンジョイすることにした。
新たにホテルを予約し、気温32度の炎天下直射日光をいっぱいに浴びながら歩き回る。時間の関係で行けなかったアーセナレ会場を見る。現代アートを見ていると二つのことに気がついた。一つは、映像表現に依存しすぎた作品が多かった最近の傾向に歯止めがかかり、アーティスト自らの世界観(思考と表現)に手わざ感が戻ってきた。特にフランス館には感動した。また一つは産業文化にアートが大きく寄与していることをここでも実感した。企業戦略にアートは欠かせない時代が来ている。
さて、いよいよ帰ることができる。今月は特に忙しい。14日から新宿OZONEで始まる「夏の大茶会」の運営ディレクションを行う為、一週間かかりきりになる。お時間がありましたらプラチナの茶室を見に来てください。

 2 0 0 5 J u n e

グランプリは、芦田秀一さんの「jellyfish」
5月12日、東京デザインセンターで積水デザインコンペの最終公開審査会が開催された。審査委員は、廣田尚子さん、名児耶秀美さん、積水の開発本部長の角山正和さんと私の4人である。過日応募デザイン四百数十点から10点を選考し、今回10人のデザインを公開で審査する会であった。私は一作品7分と定められたプレゼンテーションに耳を傾けた。そして、「このデザイナーはどんな問題意識からこのデザインに到達したのか」、「このデザインは良いが、次も期待できるデザイナーなのか」を考えた。プレゼンが終わり、その時点で私なりにグランプリ作品を決めた。当日、会場にいらしゃった方はご承知のようにすべてはっきりお話した。最後の賞の決定は、別室の予定だったが最後まで公開で審査することを希望し受け入れられた。審査委員が何を評価するのか、このことを知っていただく良い機会となったと思う。審査後、参加デザイナーやお会いしたデザイナーが口々に刺激になったと感想を漏らされた。デザイン力、企業力が試され、ぶっかる公開審査は極めて健全だ。

 2 0 0 5 M a y

蓮池邸の中庭で、蓮池さんと奥さんのフランカさん
JDNでのサローネ特集を初め、さまざまな媒体で紹介される記事によりミラノが日本村と化した事はすでに速報済みである。では何故デザイナーだけではなく、企業までミラノで展示会を行なうのだろうか。それは日本が企業内デザイナーによって構成されていることと、国際的な舞台でのデザインの評価が必要とされていること。モノデザインだけではなく、空間を構成する他のデザインとの相関性が必要となっていることなどが上げられる。そして、何よりミラノサローネが一流の目利きが集まる場であることが大きな要因である。世界広しといえども世界のデザインを動かすトップデザイナー、企業の代表者、メディアがこれだけ集まる機会はない。個人的には大衆化しているミラノサローネともおさらばして、もっと客観的な分析できる場に移行したいと思いながらも、ミラノサローネからは逃れられない。その理由は、この機会に出会う友人・知人が多いからだ。4/13の夜は手掛けたLEXUSの会場トリエンナーレ・テアトロの入り口で5時間来客対応した。ここで久しぶりに再会する知人が多く、中には空港から直行してくれた友人もいて感激、この場を借りてありがとうございました。
延べ10泊の滞在中に2日間は自由な時間が持てた。その機会にナビリオにある蓮池槇郎さん宅を訪問した。中庭の老木の藤棚は見事であった(写真)。夕暮れのひと時、温かいおもてなしにも感激。この秋には蓮池さんと一緒に手掛けている新製品を発表予定。ブルガリホテルの建築でさらに評価が高まったアントニオ・チッテリオさんに依頼しているプロジェクトも現在進行中。世界のトップレベルとご一緒する時間は、なによりのカンフル剤である。

 2 0 0 5 A p r i l

アルマーニカーザストアのエントランスで、左より建築家・安藤忠雄、ジョルジオ・アルマーニ、インターオフィスオーナー原田孝行の各氏
今月もいろいろ飛び回りました。3月4日、ステファノ・ジョバンノーニのお宅にお邪魔して、15名で深夜までホームパーティ。ジェームスや伊藤節さんなど知り合いの顔もありましたが、ミラノのデザインがどこで深まっているのかを直視。夫人のエリーザの料理は、最高でした。成田から六本木ヒルズに直行して、DMNでデザインプロデュースのレクチャー。3月10日には悲しいニュースがありました。突然「Design News」が休刊になりました。269号の歴史を持ち、日本のインダストリーデザインの発展と共に会ったあったメディアの休刊は至極残念。エネルギッシュな山田裕一編集長ご苦労様でした。新たなチャレンジをしてくれるものと信じている。3月18日の私のパーティには120名ものデザイン関係者が集まってくれました。4月1日の朝、インターオフィスが新たに手掛けるアルマーニカーザストアの発表会がありました。裏原宿に現れた新スポット。それも安藤忠雄氏の建築、アルマーニの家具・インテリア、バイタリティ溢れる原田氏の経営戦略に感服。イタリア本国では投資家にB&Bを初め家具メーカーがどんどん買われている。ますます資本力が必要となっている。業界地図が変わりつつあるサローネ取材に9日から出発。ミラノに10日間滞在し取材活動を行なう予定。

 2 0 0 5 M a r c h

2/18 講演する中村政人さん
今月は東京芸大助教授で美術家の中村政人さんと富山にご一緒した。1月に世田谷でセミナー講師を依頼したのだが、その向かうべき姿勢に刺激され再びお誘いした。生れながら優れた才能を持つ芸術家は多いが、加えて中村さんは自分のスタイル(環境→観察→発見→調査→検証→計画→実現→環境)を確立している。そして、観察眼に長け、構築と創造を繰り返し、伝播の可能性も考え、規模に左右されること無く実行する情熱を持つ。稀な方だ。是非、何かプロジェクトをご一緒してみたい。
現在、数社のブランディングのお仕事を頂戴している。一概にブランドづくりといってもデザインだけではなく、企業の中長期にわたる経営戦略と核となる人材の有無に深く関係する。本日、2月28日の日経新聞「私の履歴書」に書かれていた文面が目に留まった。筆者ピーター・ドラッカーは、「コンサルタントが組織の一部になったら有害でしかない」と綴っている。確かに、今の自分には強烈に響く言葉であった。とかく協調路線を探り勝ちだが、外部の存在や価値はチームになることではない。更なる研鑽に向けてギヤをシフトしなくてはならない。
さて、日ごろの感謝とお詫びを込めて、3月18日の18時から横浜のポートサイドギャラリーでギャラリートークとパーティを開催する。これは、「FIVE JAPANESE DESIGNERS IN ITALY イタリアでデザインの仕事をするということ」という展覧会の一環のイベントである。当日、トークの後に寺田尚樹さんにカルパッチョを料理していただき、私は生ハムを大量に切って振舞う予定。お時間の許す方は、デザインパーティに来て下さい。


 2 0 0 5 F e b r u a r y

規模大にして質伴わず「イタリア・フェスティバル in 東京ドーム」の会場
1月9日、本日から始まる「イタリア・フェスティバル in 東京ドーム」にイタリアから来た二人の友人と三人で出かけた。会場に入るのに待つこと30分。長者の列に並びやっとの思いで入場。展示を見るなり心の底から怒りが込上げてきた。近年まれに見る期待はずれのイベント。すべてにおいて中途半端。どうしたらこんなことが出来るのか、信じなれない光景であった。こんな場所にイタリアの権威ある「コンパッソ・ドーロ」が展示してあるのも寂しかった。ミラノのトリエンナーレの展示とは雲泥の差。友人も呆れ顔、デパートの物産展以下と痛烈な批評が飛び交ったが、その後のマスメディアの過大な報道に怖さを感じた。気を取り直して丸ビルで行われていた「日本クラフト展」を見る。クラフトマンの質の高さに脈、平常値に戻る。
1月16日、クライアントのご招待で両国の国技館で大相撲初場所を観戦。LEDの電飾化粧まわしを見て、古き伝統社会にも進化が押し寄せていることを実感。同時にデザインのよき勉強にもなった。お茶屋さんからもらった魁皇の名入りプラスチックコップは、歯磨きコップとして愛用中。サイズがジャストサイズ。1月30日上映中の「オペラ座の怪人」を観賞。実は大のミュージカル好きでロンドンのハー・マジェスティーズ・シアターに三回足を運び、青山の子供の城でケン・ヒル版も見ている。ロイド=ウェーバーのファンでもあるが、映画でも多彩であることを確認。そして主役の三人が吹き替えナシと聞いてびっくり。サラ・ブライトマンとは違う、エミー・ロッサムの清潔感ただよう美声も見所聞き所。観賞をお勧めしたい。


 2 0 0 5 J a n u a r y

年末年始の出来事写真
2005年最初のメッセージである。姿勢を正してデザインが企業戦略の核になる(より現在化する)年にしたい。デザインが文化領域に発展する年にしたい。そして楽しく、面白く、頑張りたい。昨年は忙しい年であった。スタッフとの打ち合わせの時間も満足に取れないほどであった。したがって交友関係はますます広がり、今日に至っても年賀状の執筆に追われている。本当に多くのデザイン展のご案内や著作物をお贈りいただき、満足に足を運べていない、礼状も失礼していることをこの場を借りてお詫びしたい。
そんな事もあって、正月三箇日は完全に仕事を忘れることにした。携帯やメールにも触れない生活がどんなに開放的か実感。懲りずにまた購入したipodminiにBOSEのヘッドフォンを耳に当て、押井守監督の「イノセンス」のサントラ盤で主題歌を歌う、伊藤君子さんのアルバムを聞きながら都心を散策する。手には松葉一清さんからいただいた「新建築ウォッチング」がナビゲート。本当に東京は凄い都市になったことを実感する。久しぶりに東京フォーラムにも足を運び「レーニングラード国立バレエ」を鑑賞。ソリストのイリーナ・ペレンの美しさに魅せられるものの解釈や切れ味はいま一つ。1980年当時のミハイル・バレシニコフ率いるアメリカン・バレエ・シアターの優美な動きや醸し出す雰囲気が懐かしい。休憩の合間は、隣席したオバちゃん軍団のおせち料理やら紅白歌合戦の話題でボルテージは最高潮に達する。まぁいいじゃない、文化を大衆化する大事な人たちなのだから。しかし、繰り返すが東京は凄い都市になった。年齢性別問わず、かなり高度な人種の集合都市になった。さぁ、この東京をどう料理するか。最高のデザインスタジアムが整いつつある。楽しみな年だ。


 2 0 0 4 D e c e m b e r

DESIGN WAVE 2004 in TOYAMA の展覧会会場にて、歓談する深澤直人さんと森ひかるさん
富山でデザインコンペティションを開始して11年間が過ぎた。当時、富山県にはグラフィックデザイナーを除くとデザイナーがほとんどいなかった。その為、県外のデザイナーに参画していただくデザインコンペを企画した。応募側のデザイナー、富山県の企業の双方が恩恵を受けるものでなくてはならなかった。いつしか話題となり川崎や海南の人が尋ねてこられ、他県のコンペの土台にもなった。その富山デザインコンペの公開審査会を去る11月24日に開催した。最終選考に残った10作品をそれぞれ応募デザイナーからプレゼンテーションしていただき審査を行った。
さすがに最終まで残ったデザインは、着眼点もよく、デザイン力もあり、質の高い審査会となった。欲を言えばデザイナーがちょっとおとなしすぎた。公開で審査される、人前で話す緊張感があるのは当然としても、自ら手掛けたデザインにもっと自信を持つべきである。
このコンペの発表展と同時にイタリアで15年以上暮らし、活躍する女性デザイナー 5人からなる「FIVE JAPANESE DESIGNERS IN ITALY展」を開催した。ミラノで無 から自分のステージを作り上げた力強い女性デザイナー展である。


 2 0 0 4 N o v e m b e r

We LOVE CHAIRS 展会場風景。会場デザインは佐々木博一さん。
島崎信先生と一緒に監修させていただいたOZONE10周年イベント「We LOVE CHAIRS わたしたちは椅子が大好き」展を10月21日に無事オープンすることができました。この数ヶ月、事務所は椅子に関する書類や資料で溢れ返り凄い有様。しかし、オープニングパーティには、たくさんの方々に集まっていただき、久しぶりに多くの友人・知人、年長者との再会の機会となりました。振り返ればこの10年間、OZONEの展覧会やイベントを担当し貴重な経験をさせていただいた。なかでもアキッレ・カスティリオーニとの出会いは、生涯の宝である。師の楽しげに、熱く語る姿はいまでも鮮明に記憶する。デザインは日常の世界に存在し、その何気ない機能や形に生命を吹き込むことができるのがデザインである。また一方、多くの方々が倉俣史朗氏の足跡を記憶し、いまも強く支持していることを確認できた事が嬉しかった。その為、代表作であるアクリル素材の薔薇椅子「ミスブランチ」を所蔵しているコクヨさんへ強引に依頼し借り受けたることができた。今は亡きこの両人の残した意思を未来に継承していかなくてはならない。
椅子展がらみでもう一つ情報、友人の建築家・河辺哲雄さんが関わり、私は非力で協力はできなかったが「20世紀デザインの鬼才ジャン・プルーヴェ展」が神奈川県立近代美術館鎌倉で来年1月16日まで開催しています。こちらも必見の展覧会です。


 2 0 0 4 O c t o b e r

ヴェネチィアヴィエンナーレARSENALE展示会場。金獅子賞は妹島和世建築の21世紀美術館。
9月は多忙な月でした。寸分の時間も惜しみ、ガッガッと働いた月でした。先ずは、富山県総合デザインセンターの第一次コンペ審査会はなかなかの作品が集まり安堵。その後の深澤直人、谷内田章夫、名児耶秀美、近藤康夫の各氏と西麻布に繰り出し楽しい美食会。翌日、パリに飛びメゾンドオブジェを視察。溢れんばかりのインテリア小物に食傷気味、カルティエ財団のゴルチェの展覧会に唖然。ミラノでバナナ2本の悲しい夕食、打ち合わせ後、空港へ直行し帰国。慌しく仕事を深夜までこなし数日後、またミラノへ向け出発。ステファノ・ジョバンノーニの新しいオフィスと家の広さに脱帽。数日後、蓮池槇郎さんのお宅に招かれ4000uの大邸宅に驚嘆。ベローナのアビターレ・イル・テンポの会場で伊藤節、志信夫妻と会談。ヴェネチアビエンナーレのアーセナル会場のデザインは、元スタッフのNY在、太田登君がハニー・ラシッドのもとで担当(写真参考)。妹島さん、受賞おめでとう。今月は早川邦彦さん、原研哉さん、千住博さんともご一緒し、広島、富山の国内出張もこなした月でした。皆様に感謝。
10月7日夕刻には東京デザイナーズブロックに出展しているためパーティーを開催。場所は骨董通りと青学の間の道を入ったところ。21日からはOZONEで10周年イベント「We LOVE CHAIRS展」を島崎信先生と二人で監修。是非、来てください。


 2 0 0 4 S e p t e m b e r

高岡滞在中は必ず立ち寄るお寿司屋にて
この写真は高岡のお寿司屋さんの女将さんが撮ってくれた一枚である。私の隣にいるのはチッチリア・ファビアーニさん、ジャーナリストである。その隣は、ミキ・アストリさん、ヌンツィア・パオロ・カラッロさん、そして一番奥がジェトロ富山の所長の温井邦彦さんである。8月24日、富山県総合デザインセンターが主催する事業の一環として、イタリア人のデザイナーを日本へ招聘した。翌日から4日間に渡り県内企業を視察し、製造業の経営者、職人等々とコミュニケーションを重ねた。ミキさん、パオラさんの両デザイナーは、親日家である。私たちより日本の素晴らしい名所旧跡や名建築、伝統工芸に接し知見を高めている。食の面でも滞在中の食事はすべて日本料理にして欲しいとリクエストされた。欧州のデザイン界にジャパンテイストが定着しようとしている。空間インテリアからモノにいたるまで、シックで落ち着きある日本の色や道具は、トレンドを凌駕してきたアッパーミドル層に新鮮に映るらしい。日本の高い技術力と繊細な行いとの微妙なバランスが彼らを刺激している。
8月28日、お台場の展示場で行われたGDPのプログラムでショートプレゼンテーションを行った。トネリコさんを初め8名のデザイナーと壇上に立てたのが嬉しかった。また、つたないお話にお付き合いいただいた皆さんにも感謝です。


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遠州流「綺麗さび」で行われたお茶席
1987年11月、当時「ブループリント」の編集長だったデャン・スジャック氏にロンドンのオフィスで会った時、「THE CONRAN SHOP」というコンセプトショップがサウスケンジントンのミッシュランビル内にオープンすることを聞いた。当時、この地区にはノーマン・フォスターが「キャサリンハムネット」のブティックデザインを行うなど、デザインの芽が育ち始めていた注目のエリアであった。たぶん日本人でも一番早く訪れた一人(オープン日)であると思うが、来店するなり魅せられてしまった。こんなショップを是非東京で開店したいと夢を見た。夢は適わなかったが、93年7月に東京ガスが西新宿のOZONEに開店したことは周知の事である。その10周年を記念して「My Favourite CONRAN」展が31日までOZONEプラザで開催されている。このたった一軒のお店がロンドンの都市を大きく変えるきっかけになった。
OZONEで開催した「夏の大茶会2004」は無事に終了することができた。様々な課題の調整に体力を要するイベントだが、お茶を通して茶文化に触れるきっかけができて楽しい。また運営をお願いする25名の学生アルバイト君たちの人柄や可能性に触れるのも心地よい。この若く可能性のある才能を日本の企業はもっと活用すべきである。ミラノの菰田和世さんからの紹介で、30日の夕方、青山のホテルでガブリエレ・ペッジーニさんに会った。この人の人柄、才能にも魅せられた。渋谷の片隅の日本料理屋で夕食を共にしたが、地に足がついたなかなかの逸材である。次回このページで紹介したい。
富山のデザインウエーブのコンペ は、まもなく登録締切です。課題は「収納」。大きな収納から卓上の収納まで、お持ちの考えをデザイン提案してください。今年も強力な審査員が前向きに対応いたします。


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デザイナーの長大作さんと、スタッフの矢崎はるかさん
ウォークマンの生みの親で知られる黒木靖夫さんが71歳にして大病を患い一時心配したが、先日2ヶ月ぶりに羽田空港で会い元気な姿を見て安心した。到着後、富山空港のレストランでカレーを食べる姿は、まさに不死身、驚異の回復力に脱帽。4月にベルリン、ミラノを一緒に回る予定を順延したので、秋に決行する計画を練る。私も自らでも信じられないオヤジ(年齢)になったが、まだまだ老馬の智に学ぶことは多い。巨匠エットーレ・ソットサスも80半ばにして現役デザイナー、時たまお食事をご一緒する長大作さんも80歳半ば、皆さんお元気で特に精神に老いはない。感服の至り。それに比べて、企業デザイナーは元気がない。若いデザイナーの焦りや不満が蠢く。背景にはデザインを日常会話として話せる上司や経営者の少ないことが上げられる。しかし、嘆いても始まらない。デザインのコミュニケーションはもっと英知を出して考えるべきだ。何せデザイナーには定年はない。先の三人のように生涯デザイナーとして、魅力的な存在感を醸し出して欲しいと願っている。
先週木曜日、この15日からOZONEで始まるお茶展の打ち合わせで、遠州茶道宗家十三世家元小堀宗実家を訪ねた。茶道界でもそのお道具には定評はあるが、そのたたずまいに感服した。日本人が日本人としてまだ見ていない、見落としている世界があることを実感した。自分に高度な刺激を与えてくれる環境が何より大切だ。


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開発が進むみなとみらい地区(オフィス屋上から)
「デザインで都市を変える」をキャッチフレーズに2000年にスタートした東京デザイナーズブロック(TDB)のキックオフパーティーが昨夜(6/7)開催された。今年のテーマは、「1968 REVOLUTIONS」。振り返ると当時影響を受けた音楽や映画、アート、そしてテレビから送られる学生運動のシーンや国会中継など、様々なシーンが記憶として蓄積されている。人々が自由と権力からの解放を求めエネルギーが満ち溢れた時代であった。TDBのプロデューサーの黒崎輝男さんは「もはや世界を本当に変えられるのは、広い視点を持ち、本質を突いたデザインの革命とその力しかない、そう確信している」と語る。友人でもある黒崎氏のメッセージに共感を覚える。一方、私は自分のホームグランドの横浜を新たなデザインステージとして、立ち上がらせたいと思っている。今年に入り、みなとみらい線の開通、日産の本社機能の移転計画発表などグッドニュースが続いている。横浜市の中期経済活性化会議で1年間議論してきた経済インフラの政策は、次のフェーズに入ろうとしている。日々開発が進む都市開発にハードソフトの両面からデザインが必要とされている。何十年先に回顧される「2004 Reality」でなくてはならない。
デザイン&デザイナー紹介も65回目の連載になり、過去紹介したデザイナー達も、その後独立されたり、ユニットが発展的解消をしたり、また多くの実績を生み出したり日々成長している。今月号から随時リューアルしていくことにしました。


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今年のお茶展のポスター。この他にグリーン、イエローを媒体ごとに展開予定。デザインは粟辻デザイン。
サローネをJDNに掲載したところ二つの反響があった。一つは、私の単純なキャプションミスである。機中で原稿を書き、約700枚の写真を瞬時に選び掲載したところ、直ぐに一箇所間違いがあるとの指摘があった。本当にURLは凄い、怖い、今後はさらに慎重と反省。余談だが持参した810画素のデジカメの性能にも感服。使い慣れたコンタクスや645カメラと同等、場面によっては、それ以上のレベルを保証してくれる。初期のデジカメから数えて5台目でやっと満足いくカメラに到達した。デザインもかっこよい。二つは、ミラノサローネが一般紙誌にも取り上げられ、各人のリポートを見ても盛況なのに私のリポートは評価が低いと言う質問である。もともとミラノサローネは、商談の場なのである。こんなお祭りになったのはここ数年。成熟し盛り上がれば盛り上がるほど衰退するのが世の常である。ビジネスやイベントの場としては評価しているが、デザインは新しい価値を創造し具現化していく活動と定義している私には物足りない。片肺だけで盛り上がっていては将来が心配。水面下ではそこそこのデザイナーはもういらないなんていう話が、実しやかに話されています。
OZONE夏の大茶会を企画コーディネーション中です。今年は、7月15日から6日間、OZONE10周年節目のイベントとして、昨年同様12万人の来館を予定しています。私自身は、お茶の専門家ではないが日本の文化を再発見する機会となっている。最後に4月27日「EGG FORM」の発表会、当日の悪天候にもめげず250人ものマスコミ、デザイン関係者、バイヤーに集まっていただきました。感謝。


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「EGG FORM」世界最高水準を目指して商品開発は行われた。
デザイナーは高市忠夫さん。

富山県総合デザインセンターのデザインディレクター職も12年目を迎えた。世田谷区の財団は6年目になる。長期にわたって地方行政に関わり、リソースを生かしたデザイン開発から新たなマーケティング手法や生活者との出会いの場を企画し実践してきたせいか、このところ他の機関からのラブコールが多い。信頼いただき嬉しいことだ。しかし、同時にプロデュースとかコーディネートを行う人材が不足していることの表れでもある。星の数ほどデザイナーはいるが、スキームの中心に座る人材の欠如がビジネス創出の大きな問題点である。
2年間開発に時間を要してきた富山県企業、北陸アルミの鍋・フライパンの新ブランド「EGG FORM」の発表会を4月27日青山で行う。このためにデザイナーと綿密な打ち合わせを行い、ロゴ、カタログや取説のグラフィック、パッケージングにも力を入れてきた。同時に首都圏のライフスタイルショップ400店舗あまりも調べ、流通デザインまで取り組んだ。新たなブランドの誕生にワクワクしている。
日曜日からはミラノサローネの取材に出かける。この5〜6年はイタリア年絡みやクライアント絡みで多忙な取材であったが、今回は取材オンリーだ。17年間連続して視察分析してきたが、そろそろ隔年にするか迷っている。もちろん新たなデザイントレンドを発見できれば来年も取材したい。こちらは後日、綿密なリポートを掲載する予定です。

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ループデザインセンターのクリエーティブディレクター、フランシスコ・コッポラ氏。このセンターは元製粉所。昔の道具が要所要所にインテリアの一部として使われている。
今月から私のエッセイを掲載していただくことになった。デザイン&デザイナー紹介も丸5年が過ぎ、6年目に突入した。近々、海外デザイナーも紹介していく予定である。このページを連載していて一番の喜びは、創造人(デザイナー)に出会えることである。この知の結集こそ、次代の可能性を広げることになると信じている。
ところで、1月末にアッシュコンセプトの名児耶さんをゲストに行ったデザイントークは、歯切れの良いジャブが炸裂した会だった。40数名の皆さんをもてなすために、イタリアみやげの生ハムを1時間かけて切り続けた私も満足だった。塚本カナエさんが日大生17名を引率してオフィスに現れた。日ごろの考えを話しただけであったが、翌日数名の学生から再会希望のメールをいただいた。今月は時間を割き、相談に乗る予定である。
2月19日、ボローニャ郊外に誕生したループデザインセンターを訪問した。彼らからタイルとクルマ産業の盛んなリソースを生かしたデザイン戦略を聞き、久しぶりに熱くなった。
2月21日、イタリアでの仕事を終えて、6時間だけフランクフルトのメッセで開催されているアンビアンテを視察する予定であったが、大雪でミラノマルペンサ空港は閉鎖。結局5時間遅れで飛行機は飛んだが会場には行けず、フランクフルト経由で打ち合わせのあるパリへ飛ぶ。アンビアンテ、特にプラスデザインを視察できず至極残念だった。
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桐山登士樹 Toshiki Kiriyama
デザインマーケティング、ブランドプロデュース、建築デザイン展のキュレーションおよび運営を行う株式会社TRUNK代表、デザインディレクター。
主なブランド開発、デザイン開発、施設開発には、「パークアクシス青山一丁目タワー」(07年Gマーク)「EGG FORM」(03年Gマーク)「DESUS」「Benedetto」「ireco」「BITOWA」「YCSデザインライブラリー(15年間横浜で運営)」など。
主な展覧会は、「クランブルックデザイン展」「アグレッシブ展」「MoMA ミュータント・マテリアルズ展」「フィリップ・スタルク展」「イタリアデザイン界の巨匠 アキッレ・カスティリオーニ展」「Droog&Dutch Design展」「イタリアと日本 生活のデザイン展」「ステファノ・ジョバンノーニのデザインスーパーマーケット展」「80歳現役デザイナー長大作展」「蓮池槇郎のデザイン展」「WE LOVE CHAIRS展」「ニッポンのデザイナー展」など。
ミラノサローネでは、LEXUS 「L-finesse」(05,06,07,08年)アドバイザー、Canon 「NEOREAL」(08,09,10,11年)総合プロデューサー、パリメゾン・エ・オブシェではJETRO広報ブース「 Japan Style」(07.08.09年)総合プロデューサー
共書に「ニッポンのデザイナー100人」「ニッポンをデザインした巨匠たち」(朝日新聞社)など。
現在「富山県総合デザインセンター」デザインディレクターを兼務。
桐山氏

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