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桐山登士樹が選ぶ 注目デザイン&デザイナー

日本全国からさまざまな分野のデザイナーを紹介する「デザイン&デザイナー」。
旬なデザイナーと代表作品を、デザインキュレーター・桐山登士樹がセレクションしてお伝えしていきます。

 → 桐山登士樹 P R O F I L E 


 このページは、第81回から第125回までのインデックスです。
第1回〜第20回
第21回〜第40回
第41回〜第60回
第61回〜第80回
第81回〜第100回
最新の紹介
第125回
大治将典  Oji Masanori
大治将典 大治さんから送られてきた新作発表会の案内を見て、もっと大治デザインを見てみたくなった。この10年ミニマルデザインのオンパレードでいささか食傷気味。先日、蓮池氏から伺った話でイタリアの雑誌記者が蓮池邸の取材申し込みがあり、後日自宅に来られ視察し名デザイナーの作品が少なく取材をあきらめたという話しである。しかし、蓮池邸は100年以上前の調度品と現代の特注品で構成されている素晴らしい邸宅である。大治さんのデザインは地味だが丹念に作られた作品からは、生活の豊かさを連想させる。存在感という感性価値は、ミニマルデザインだけでないことを強く認識させられる。時代はやっと適正なバランス感覚を取り戻しつつある。まだまだこの調子で多くのプロジェクトを実践して欲しい。 (桐山登士樹)


第124回
アトリエタイク (臼田香太、飯島麻奈美)  ateliertaik (Kota Usuda, Manami Iijima)
アトリエタイク 臼田さん、飯島さんとは知り合ってから幾つもの仕事をご一緒していただいている。初めにお会いした時は、ホッピーのAD等パワー溢れるデザイナーの印象が強かった。その後、プロジェクト毎に様々な注文を出したが、ものの見事に満足のいくデザインを提供していただいている。デザインを完成していく上で妥協は禁物。お互いの考え方をいかにすり合わせていくか、何よりも会話が大切である。この行為さえ行えば、アトリエタイクは水を得た魚の如く、様々なデザインの引き出しを開けてくれる頼もしい存在だ。そして、最近のプロジェクトではグラフィックコミュニケーションの枠を超えて、ブランド価値醸成に切り込んでいる。ひとつ分野だけに留まらない全体を透視できる思考能力も魅力だ。 (桐山登士樹)


第123回
柳原照弘  Teruhiro Yanagihara
柳原照弘 6月下旬、外苑前の事務所から徒歩5分のPRISMIC GALLERYで「ISOLATION UNIT 柳原照弘展」が開催されていたので昼時ぶらりと覗いてみた。百聞は一見にしかず、絶えず自分の目で確認する事に勤しまないと目が腐ってしまう。コンパクトな展覧会であったが、この人も既に興味は彼方へ向かっている事を確認することができて良かった。真面目にデザインだけの事を語られても困ってしまう。何を考え、何を指向しているのか。そこに時代を透視する目とセンスがあるのか。改めて、そうした観点から柳原氏のデザインを見てみると静に宿る時の音が聞こえた。たぶんカタチに最大の敬意を払っているから中心と周辺がぶれずに構成(デザイン)できているのだろう。既にフィールドを国内外に広げているだけに楽しみな逸材である。 (桐山登士樹)


第122回
安積朋子  Tomoko Azumi
安積朋子 ミラノサローネのフィエラ会場で目に留まるデスク「AT-AT」(Röthlisberger社 スイス)があった。築15年のマンションを最近リノベーションし、これまでのカルテルのデスクから新たな机を探していた。ほどよい大きさ、コンピュータ等のコードの収納など、細やかな配慮があちらこちらに見られる。あまり真剣に見ていたせいか近づいてきた人がいた。安積朋子さんである。安積さんとは、伸さんとのユニット時代からの長いつき合いになる。05年からはソロで活動を開始し、持ち味を生かした精力的な活動を行っている。ついつい幾らで買えるかとストレートな交渉をしてしまったが、今日現在まだ迷っている。高価であるが100年を単位とした家具として捉えれば安い。さらに安積さんには、今年の富山プロダクトコンペテションの審査委員もお願いしてしまった。機能性を持ちつつチャーミングなデザインを実践している安積朋子さんには、今後もいろいろ協力をお願いしたい。よろしく!! (桐山登士樹)


第121回
坪井浩尚  Hironao Tsuboi
坪井浩尚 最近、気になっていたデザイナーの坪井さんとミラノサローネで名刺を交換した。若いのにおおらかなフォルム、ちらばるユーモア、醸し出す存在感が強く印象に残る。早速とある会にお呼びして、これまでの生い立ちを伺った。
美大を卒業後、実家との約束で鶴見にある諸嶽山總持寺で半年修行僧をした事。その時の鮮烈な体験が今日のベースになっている事などをを伺った。「仏教ではモノと環境を対峙して捉えるのではなく、モノは環境の中にあるものとして捉えるのです。」と、関係性について話され、SAKURASAKU glass等の坪井デザインの意味を確認することができた。私なりの解釈は、カタチに託しているのは時間をデザインすることであり、その後の行為に意味を見いだそうとするデザインであることと理解した。久しぶりに自らのバックボーンを熱心に話すデザイナーとお会いでき有意義だった。 (桐山登士樹)


第99回
三井直彦  Naohiko Mitsui
三井直彦 サローネ期間中に蓮池槇郎さんから招待を受け、原研哉さんとキヤノン酒井正明さん、三井直彦さんの計8名で食事をした。全面改装の終わった見事な蓮池邸で、町中の喧噪と離れて頂く食事会は至極幸せなものだった。ここでの会話はデザインの可能性を確認する内容だった。そして三井さんからは、現在実践しているデザインに加えプロデュースに関心のある事を再確認した。私の仕事に対する評価もいただいたが、以前に紹介した様に「狭い世界のデザインには興味がなくトータルでデザインを捉え、プロデュースをしたいと思っている」点は変わりのないものだった。今回は蓮池さんにセッティングしていただいたが、共に生きる仲間達とデザインの可能性を論じる場が必要なことを痛感した。
三井さんの紹介ページなので一言加えるとするならば、割り切りの良さ、仕立ての見事さ、そしてデザインを基軸としたスケール感は、間違いなく新たなステージを作れる一人である。さらに精進して欲しい。 (桐山登士樹)


第120回
松尾高弘  Takahiro Matsuo
松尾高弘 最近までオフィスを構えていた横浜のYCSビルの1階に現代アートを紹介するポートサイドギャラリーがあった(2007年7月閉廊)。2005年、このギャラリーで松尾君の展覧会が行われた。その時体験したインターラクティブの映像はなかなか新鮮で、人が行っている行為を眺めていても至極幸せな気分になった。その時からいつか機会があったら松尾君に作品制作を依頼したいと考えていた。そして今回、キヤノンの展示作品を依頼した。先月紹介した平田晃久さんとのコラボレーションである。サローネは難しい場所である。目利きの集まる場所だからかなり無理な注文を投げかけた。例えば、「過去の作品は要らない。」「第二フェーズの松尾作品を作って欲しい。」この数ヶ月松尾君はよく働いてくれた。同時に作品の完成度を上げるべく、たぶん今日も没頭していると思う。ミラノで評価されれば、世界が注目する。アーテイストにとって、こんなチャンスはない。 (桐山登士樹)


第119回
平田晃久  Akihisa Hirata
平田晃久 先日、建築家の平田晃久さんよりグラフィック社から上梓されたばかりの著書「animated」が届いた。お手紙には「建築が人工/自然という枠組みを越えて、生命体が持つようなしなやかさや強さを獲得できないか、という問いに向けた言葉です」とタイトルの解説=自らの未知の建築に向かう方位と意志が綴られていた。いまの時代を生きる建築家は、新たな領域を開かなければならない宿命を負っている。20世紀に完成したモダンの概念を越えて、意味や形態を模索し、さらなる可能性を提示しなければならない。幸い平田さんは、この様な解読を得意としこれまでも様々な実験と実践を行ってきた貴重な建築家だ。現在、平田さんに来月開催されるミラノサローネでキヤノンの会場デザインを担当していただいている。これまでに見た事のない新たな空間表現をここではご覧頂く予定である。 (桐山登士樹)


第118回
長坂 常  Jo Nagasaka
長坂 常 昨年11月、建築家の乾久美子さんから紹介され建築デザイナーの長坂常さんに上目黒のギャラリー兼オフィスでお会いした。元運送会社の車庫だった場所をギャラリーとオフィスに改造した空間は、心地よい明るさと空気が流れていた。10年ほど前、オランダのロッテルダムでリチャード・ハッテンやティオ・レミの工房を訪ねた時と同様な匂いを感じた。一つ一つに注力しコンセプチャルに作る作品からは、時にアーティストの顔が垣間見れ、建築家の顔になり、デザイナーの顔になる。つまりプロジェクトに無になって取り組むクリエーターとしての人となりを感じた。世間一般の凝り固まった評価とは一線を置き、必要以上にモノづくりに取り組む姿勢が爽やかである。そして、これらの作業を楽しんで実践されている点が、とても安心感と好感が持てた。 (桐山登士樹)


第117回
紺野弘通  Hiromichi Konno
紺野弘通 2009年のスタートに紹介するデザイナーは、紺野弘通さんである。十数年ほど前、富山のコンペでお会いしているらしいが、私の記憶はすっかり飛んでしまっていた。持参されたポートフォリを見るとデザインはただただ美しい。単に美しいだけでなく存在感がある。
久しぶりにデザインは造形なんだと感じさせていただいた。ロス・ラブローグに誘われ、のべ8年間の英国生活を経ているだけに何事にも動じない落ち着きがある。紺野氏によれば北欧では、しっかりとマーケティングを行い、ロットの検証を優先し製品化していくという。フェーズを踏み外さない確かなプロセスがロングライフを約束する。こうしたステップアップ方式の開発に慣れているのも紺野さんの特色の一つである。そして、これまでのクライアントはすべて海外企業だけ、今後は日本企業とも開発を行っていきたいと抱負を語る。確かなスキルと忍耐強く深化させていくプロセスと自分に課せた使命とを認識している紺野さんは、新たなトップランナーになる素質を充分持ち合わせている。 (桐山登士樹)


第116回
(松尾伴大、甲斐健太郎、下山幸三)  MILE (Bandai Matsuo, Kentaro Kai, Kozo Shimoyama)
参/MILE(松尾伴大、甲斐健太郎、下山幸三) 話べたなデザイナーが多い中で、参は饒舌な三人組である。ユニットの形態もフレキシブルで、それぞれがバラバラに活動を行いながらデザインプロジェクトとして成立している。この形態を楽しみ、実験を重ね、だれもが解明していない結果を模索している。私はそんな空気感を感じる。デザインは、それぞれに不思議な存在感・安定感がある。例えば、Something to Touchの造形美は、ただただ美しい。思わず手に取りたくなる。そうした行為を誘発する事を意図し、このデザインが成立している。参はデザインと人との距離をデザインしている。この関係が成立するデザインは、どうあるべきなのか、数値化できない感性を実証すべく、今日もどこかで実験を重ねている。故に同化しない三人の個性が生命線となっている。 (桐山登士樹)


第115回
式地香織  Kaori Shikichi
式地香織 2001年に開催された日伊の文化交流事業の目玉の一つ「生活のデザイン展」(横浜・神戸で開催)で、当時伊東豊雄建築設計事務所に在籍されていた式地香織さんとご一緒した。この展覧会は、スーパーバイザーにアンドレア・ブランジ、会場構成に伊東豊雄という両巨匠が経ち、毎月イタリアと日本と交互に会議がもたれた。この展覧会を成功させる為に、式地さんとは、日夜時間、距離を超えた作業が約1年続いた。様々な課題に真正面から立ち向かう姿勢とエネルギーを知り頼もしく思った。その後、表参道のTOD'Sビルのプロジェクトを担当して自ら建築設計事務所を設立し、何度か私の仕事をお願いしたこともある。現在は、住宅やリノベーションプロジェクトを主に担当されているが、潜在的な能力の高い人だけに今後の活躍を期待したい。 (桐山登士樹)


第114回
point (長岡 勉、田中正洋)  point (Ben Nagaoka, Masahiro Tanaka)
point(長岡 勉、田中正洋) 最近注目しているデザインユニットが「point」だ。長岡さんの父はインテリアデザイナーとして活躍している長岡貞夫氏。発想の豊かな方である。お姉さんともお会いしたことがあり、確かローマを拠点に活動されていたと記憶する。こうしたDNAを受けづく長岡さんだけに発想・活動は極めてフレキシブル。三年前に田中さんをパートナーに迎え入れ、その活動の幅は確実に広がっている。現在、改修プロジェクトが多いようだが、共通している点は「ゆるさのデザイン」である。場の力をどれだけ豊かにデザインし、そこに居合わせる人の心を解放するか。無機質な空間を柔らかな空間へ見事に変換している。画一的なデザインからは一線を置き、新たなデザインの可能性を追うこのユニットの活動を暫く注目してみたい。 (桐山登士樹)


第113回
倉本 仁
倉本 仁 毎月2回は富山に飛び富山県総合デザインセンターで勤務しているが、今年の4月から新所長として元NECデザイン社長の大矢寿雄さんが着任した。この大矢さんの口からよく出る名前が、倉本仁さんである。最近まで大矢さんの部下であった人である。上司が信頼する性格と才能を持ち合わせている人のようだ。今回紹介する7つのデザインは、インハウスデザイナーとして厳しく研鑽された形跡が随所に現れている。ディテールまで精巧に検討され、緻密にデザインされたフォルムからは美しさと存在感が漂う。倉本さんのデザインを見て思ったことは、日本のデザイン界はまだまだ優秀な人材を企業内に内包している。倉本さんが実践した様に内外でデザインを試し、やがて独立していく様な経過が一番望ましい姿だ。それだけに次が続く様に倉本仁として、更に飛躍してほしい。 (桐山登士樹)


第112回
高市 都市・建築・デザイン(代表 高市忠夫)
Takaichi Architect & Associates この日曜日にブリヂストン美術館に足を運んだ。現在開催中の展覧会を観賞する為でもあるが、同時にオフィスビルの下層階というタイトな条件を乗り越えて、見事にモダンで落ち着きある文化施設とした高市デザインを数年ぶりに確認する為でもあった。この20年間、高市さんの建築・デザインを見てきた。そして、ご一緒した異業種交流会や依頼したセミナー等々で何度かデザインに対する考え方を聞いた。実にブレのない考え方(信念)、建築家の社会的役割、そして力強く実践する安定感を持ち合わせた人である。そして、驚くべきことにメディアに発表していない。それには訳があり、チョイ出しを嫌い、すべてを知らしめるには一冊の本にまとめるのが良いと考えているからだ。このページで紹介することは稀であり、すでにストックされた数多くの作品を一冊の本にすべく編集作業が進行していると聞く。私からのお願いは、北海道で数多く手がけている文化施設を高市さんの案内で見て回ることだ。 (桐山登士樹)


第111回
小林幹也  Mikiya Kobayashi
小林幹也 この青年、若いのにデザインセンスがいい。あか抜けたデザインは、とても27歳のデザインとは思えない。このページでは30歳前のデザイナーはデザインの振れ幅が大きいのでスタイルが固まるまで取り上げないことにしているが、小林さんは数少ない例外とした。今回紹介するデザインはどれも確かなレベルをキープしている。特に今年のミラノサローネの出品作Cieloは非常に高いレベルでまとめられている。サローネの会期中サテリテのブースで立ち話をしたところす、既にイタリアの数社からオファーを受けているという。小林さんの爽やかな清涼感のあるデザインは、成熟したデザインが溢れる中でも改めていいものだと実感した。次のデザインを楽しみにしたい。 (桐山登士樹)


第81回
橋本 潤  Jun Hashimoto
橋本 潤 2004年に発表した「うすい・いす」の進化版でミラノサローネサテリテ2008デザインレポートアワードを受賞した橋本潤さんに再登場を依頼した。既に10年以上の実績を持つ橋本さんをサテリテの会場で見つけて「何やってんの、充分実績がある人が出る場所ではないよ」とストレートに進言。「賞をもらったのでこれでやめます」と返事があった。サテリテは11年の回を重ね、若手デザイナーの登竜門としてすっかり認知され、今年も十数人の日本人デザイナーが作品を発表した。そのレベルは甲乙つけがたいほど高い。やはり橋本さんを見ると実践の積み重ねが大きい。また、高度なデザインでも製作してくれる現場のレベルも高い。そういう意味では、日本人デザイナーは恵まれている。実績のある人は、サテリテではなく国際企業への売り込みやマスコミに対して、強くアタックして欲しい。また、代表格として先陣を切ってほしい一人だ。 (桐山登士樹)


第110回
グエナエル・ニコラ  Gwenael Nicolas
グエナエル・ニコラ 今年のサローネで一番魅了されたのは、グエナエル・ニコラとトネリコがコラボした「TOKYO WONDER」でした。光のボールが浮遊する「LIGHT-LIGHT」は、東京を的確に表現する手法として完成度が高く、気持ちよいショックが体内を走りました。例えるなら素材をいち早く見抜き、オリジナルレシピを創作し、料理を提供する一流のシェフの様に、ニコラは完璧なプロの技で他を圧倒しました。15年以上日本を拠点に活動し、客観的な観察眼と考察により新たな独自の世界観を作り上げているニコラは、日本人以上に日本人らしさに精通しているクリエーターだと言えよう。今回の展覧会を見て、日本でしか出来ないアプローチや可能なデザインのヒントをいただいた。また紹介する他のデザインは、すべてクリーンでクールにクリエーションされ、私には日本家屋や伊勢神宮のイメージと交差する。何か新しい事をご一緒したくなった。 (桐山登士樹)


第109回
廣川玉枝  Tamae Hirokawa
廣川玉枝 今回初めてファッションデザイナーを紹介する。注目していた新進気鋭のデザイナー廣川玉枝さんだ。経歴は三宅一生さんのニットデザイナーとして活躍後独立。現在「SOMARTA」というファッションブランドを立ち上げ、毎回東コレで意欲的なコレクションを発表している。彼女のクリエイティビティの高さは他を圧倒する。想像するにたぶん早い時期から独自の世界感を持ち続けて来たのであろう。初期のコレクションに見られた女性が立ち向かう強さは、先日のコレクションではしなやかさえへ進化している。しかもブレることのない美的エッセンスは、すでに成熟した域に到達している。川久保玲、山本耀司に続く、世界の舞台で活躍できるデザイナーである。若き才能の今後の活躍を注目していきたい。 (桐山登士樹)


第108回
CDL コミュニケーションデザイン研究所 (平野敬子、工藤青石)  CDL (Keiko Hirano, Aoishi Kudo)
CDL(平野敬子、工藤青石) アエラムック「ニッポンのデザイナー100人」の監修・選考を担当した時、監修者のひとり西山浩平さんが執筆された平野敬子さん、工藤青石さんが共同主宰するCDLを今回取り上げたい。西山さんは、紹介文の巻頭で「まず人の心に届くかどうかを念頭に置いている」とお二人を評している。この言葉が記しているようにCDLがデザインしたものは決して主張しすぎることのない上質な存在感が漂う。似た雰囲気を思い浮かべると竜安寺の石庭が脳裏を横切った。決して流されず、浮つかず、朝が来て夜になり、太陽に照らされ、時に雨となり、風がふく。しかし、どんなシチュエーションでも研ぎ澄まされた存在感(デザイン)は強く印象に残り、使用するものに安心感を与える。お二人がデザインした「SHISEIDO MEN」を今朝も使用し、落ち着いた一日が始まる。 (桐山登士樹)


第107回
藤原敬介  Keisuke Fujiwara
藤原敬介 何故いままで紹介しなかったのか振り返ってみた。存在としては申し分ない。そのデザインもしっかり脳裏に記憶されている。しかし、これまで紹介していなかったことにある日、突然気がついた。藤原敬介さんのデザインは、美的で好きだ。同時に静なる奥行き感を持ち合わせている。誰に向けてデザインしているのか、素材や色やカタチから不思議な力が発せられている。デザインの解説にもあるように「寒暖の色彩」「新旧の呼吸した空間」「華やぎ、落ち着き」二つの世界が共生する時間をデザインしている人なのだ。詩人の様に物静かな立ち振る舞いが、霞の様に存在をうまくけしている。いまのデザイントレンドと一線を画し、独自の世界感を作り上げいるとしたら時間のなかで注意深く追いかけてみたい。 (桐山登士樹)


第106回
assistant (松原 慈+有山 宙)  assistant (Megumi Matsubara+Hiroi Ariyama)
assistant(松原 慈+有山 宙) assistantを紹介するのは、大変難しい。お二人の不思議な存在感が良い。建築とデザインとアートの距離感が良い。しっかりとしたスキルを持ちながらおくびにも出さず自らが楽しんでいる行為にも好感が持てる。これまでの日本のデザイン環境にはない(少ない)新しいクリエイティブな感覚だ。そして手がける、どのデザイン(シュチエーション)にも物語がある。人に優しく夢中にさせる童話の様な世界観。この二人は、どんな仕事をしていくのか注意深く見守りたい。
先日、とある大手企業のワークショップに参加していただいた。しかし、企業側は悩んでしまった。企業デザインにはありえない均質、合理、制約といったキーワードがまったく存在しなかったからだ。それだけ対極にいる存在である。昔なら一緒のテーブルに着くことはなかったが、今の時代は可能とする。今回紹介するデザインの様に、多様な要素で構成された空気が支持される新たな創造時代に突入しているからだ。 (桐山登士樹)


第105回
DRILL DESIGN (林 裕輔、安西葉子)  DRILL DESIGN (Yusuke Hayashi, Yoko Yasunishi)
DRILL DESIGN(林 裕輔、安西葉子) 林裕輔さん、安西康子さんらで結成したデザインユニットがドリルデザインである。二人の生み出すデザインは、どこか優しく楽しい、そしてちょっとした工夫が込められている。生活の場に気持ちのよい風を運んでくれるデザインだ。設立から7年、第一期ドリルデザインのカラーは定着してきた。第二期に向かって、どのようなデザインを魅せてくれるのか楽しみな存在であり期待したい。個人的な希望を言えば、まだまだ若いユニットだけにアバンギャルドなデザインも見せてもらいたい。これまで多くのデザイナーと接してきた経験では、存在感のあるデザイナーには強い信念と強い精神力を感じた。ある面わがままに、ある面自由に、しかし唸る、感心するデザインを創出する力を持っている。これからのデザイナーは、二律の方向を自在に行き来できるたくましさが欲しい。 (桐山登士樹)


第42回
森田敏昭  Toshiaki Morita
森田敏昭 森田さんは教師となって成長した一人である。デザイナーとしては、繊細で緻密なスキルを持つ人で個人的には好きなデザイナーだった。7年前に札幌市立高等専門学校専任教員となり、環境が一変した。しかし、この間に実践した仕事は、若い学生達を開花させデザインの現場を知る機会を数多く作った。個人事務所を行っていた時には、経験することのない貴重な体験であった。9月に森田さんからメールを頂き、10月初旬事務所に尋ねて来られた。この4月から東京造形大学准教授に就任したことは、案内をいただいていたので知っていた。久しぶりに再会し、真面目な人柄と新に背負った課題に対して前向きな姿勢を感じた。人は節目節目で成長し、新たな使命を背負っていく。その時も「何か一緒にしたいね」と話した。それがビジネスであろうと社会に役立つことだろうと、何か一緒に出来そうな感じがした。 (桐山登士樹)


第4回
清水泰博  Yasuhiro Kiyomizu
清水泰博 清水泰博さんを紹介したのは9年前のことである。当然足掛け10年の間に清水さんの環境は一変した。主な肩書きは、東京芸術大学美術学部デザイン科助教授である。拠点も京都から東京に移され、これまでの実績は数多く列記された受賞歴や個展・グループ展から充分すぎるくらい伺い知ることが出来る。もともと作り手の家に生まれ、歴史的な価値あるものに溢れた環境で眼力が養われ、自ら建築を学び、そしてデザイン・アートのジャンルに捉われることなく創造人として日々実践してきたリアル感が自ずと滲み出る。彼の活動を、考え方を身近に聞きける芸大生は幸せである。年齢的にも熟成された領域に入り、今後さらに大きな役割を担うことであろう。 (桐山登士樹)


第104回
島津勝弘  Katsuhiro Shimazu
島津勝弘 2006年に開通した富山ライトレールは、全国紙でも数多く取り上げられるほどの成功例である。富山県総合デザインセンターでは、このプロジェクトをお話しいただくセミナーを企画した。タイトルは「環境のプラス領域に踏み込むユニバーサルデザイン」。講師は、プロジェクトの中心的な役割を担ったGK設計の宮沢功氏とクリエイティブディレクターの島津勝弘氏である。この会で島津氏のデザインを越えたパワフルな活動をお聞きし、またこれまで手がけたプロジェクトがサインデザイナー、グラフィックデザイナーの領域をはるかに超えた濃い内容に驚き、その場でこのコーナーへの登場を依頼した。美しいデザイン、美しいカタチへの追求を踏まえた上で、島津氏は使う人の目線で考え、使う人の立場にたったデザイン、その場のポテンシャルを最大限に生かすデザイン、さらには公共施設に参画する意味やCSRの視点などデザイナーを越えた仕事ぶりである。そのスケールの大きさと忍耐強さは見習わなくてはならない。こうした島津デザインは、今回紹介する他のプロジェクトにも共通する。全国各地には、まだまだ熱く頼りになるデザイナーがいるのであろう。 (桐山登士樹)


第103回
太田 登  Noboru Ota
太田 登 18年前、ニューヨークのチャイナタウンで世界を放浪する太田青年と知人を介して初めて出会った。建築が好きで、とくにアバンギャルドな建築が好きで、分析・解析するのが好きだった。その太田青年も40歳を過ぎ、大好きなニューヨークを舞台に日々建築デザインを追い求めている。確か、本日からソーホーのギャラリーで個展「アーティフィシャル・ランドスケープ」が開催されているはずである。これまで多くの建築デザインを見せてもらったが、やはりコロンビアで師事したハニー・ラシッドが主宰するアシンプトートで担当したプロジェクトが現在のベースとなっている。直接担当したノール社のための新たなオフィスシステム「A3」は、過去の形態にまったく捉われないイノベーティブなデザインだったと記憶する。これまで日本のメディアに登場することなく来たが、今後は新たなデザイン領域に取り組んでいるケースとして、日本での発表の機会があるといい。なぜならば、今回紹介するコンペティション応募作品からもその意欲が充分感じられるからである。 (桐山登士樹)


第102回
design office A4 (福井 守、婦木佑太、菅野大門)  design office A4 (Mamoru Fukui, Yuta, Fuki, Daimon, Kanno)
design office A4(福井 守、婦木佑太、菅野大門) A4は、二十代半ばのヤングデザイナー集団である。このページでは、基本的には二十代のヤングデザイナーは、紹介しないことにしている。というのも一発屋では困るわけで、少なからずデザイナーとしての将来性が確信できることを自らの判断材料にしている。今まで紹介してきた中で最も若いこのデザイナー集団はどこかで化けると信じ、その動向をこれまで注意深くマークしてきた。デザインは、若者らしくのびのびとしたデザインで気持ちよい。へんにカタチに走らずデザインに隔たりもないのもよい。最近は、コンペにも名を連ねるようになって、勢いづいている。将来の飛躍がもっとも楽しみなユニットとして、今回紹介することにした。ガンバレ!! 最後に一言、今回紹介する「faces stamp」は、黒木さんが感心していたデザインで、亡くなったその日にサンプルが黒木さんの自宅に届きました。 (桐山登士樹)


第101回
東海林弘靖  Shoji Hiroyasu
東海林弘靖 東海林博靖さんは、とてもいい奴だ。主宰するライティングデザインのホームページの「who」にその一端を見ることができる。銀座一丁目の事務所を訪れると透明なアクリルの分厚いドアが迎えてくれる。スタッフルームは畳敷きのカーペット。打ち合わせルームに座るとメニューが出され飲み物がチョイスできる。この段階で心はリラックス、こんな人と一緒に仕事をしたら楽しいだろうなと思わせる。その仕事ぶりは親切、丁寧、フットワークも軽く、じわじわ照明デザインの深さを知る。手がけてこられた仕事は、どれも建築雑誌等で紹介された一流の仕事ばかり。東海林さんとは、2001年仏製のバルーン照明を会場に持ち込み行った「生活のデザイン展」以来のお付き合いだ。照明は、人の心をリラックスさせてくれたり、都市・建築を美しく見せたり、また日常と非日常とを切り替えてくれる装置であったり、実に深い領域だ。しかし、あらためて今回紹介するデザイン(作品)を眺めてみると、どのプロジェクトも東海林さんチームの暖かなメッセージが込められていることを再確認する機会となった。 (桐山登士樹)



第100回
山田佳一朗  Kaichiro Yamada
山田佳一朗 山田佳一朗さんで100人目の掲載になります。足掛け9年の連載で100人に達しました。山田さんはミラノサローネのサテリテで連続発表してきた挑戦者である。今回、スーパースタジオの一角で再度これまでのデザインを見て改めてこの人を知りたくなった。というのも展示されていたデザインを見て、山田さんは創意工夫の出来る人、独創性もあり、そして美的センスもよいと感じた。後はデザイナーとしてのスケール感が欲しい。ここが一番重要である。相手に物言わせない圧倒的なデザインの力を示すことが出来れば、たぶんもっと活躍の場が広がるのではないか。しかし、言うは易しでこれまでのデスクワークでは生まれない。もっとフィールドを広げ、多くの分野や人と交流し見る視野角を広げないと駄目だ。しかし、いいところまで来ていることは間違いないだけに応援したい。


第99回
三井直彦  Naohiko Mitsui
三井直彦 三井さんから携帯に電話をよくもらう。三井さんには時差は関係ないようで、ミラノからでも東京からでもその声はさわやかだ。だぶん日本とイタリアを最も行き来しているデザイナーだ。年齢的にも仕事的にも乗っている。たぶんすべてが体感できる最良の時であり、その感覚、フットワークが羨ましい。デザインの仕事で身近に見ることができるのは、すっかり定着したあの分厚いアスクルのカタログである。ボリュームゾーンのデザインが良くなることはとても評価できる。現在アスクルのクリエイティブディレクターも務めているが、今後もっと三井カラーを鮮明にしていくであろう。期待しよう。さて、今回デザイン以外の仕事として建築を初めて拝見した。そもそも三井さんは建築を学び、マリオ・ベリーニに師事、協働。90年以降、ベリーニは建築プロジェクトを数多く手がけている。この時期に事務所にいたことになる。特に「Centro Culturale Torino」はベリーニと、どんなやり取りを行ったのか聞いてみたいプロジェクトである。私と三井さんの共通点は、狭い世界のデザインには興味がなくトータルでデザインを捉え、プロデュースをしたいと思っている点である。頼もしい行動派の三井さんだけに今後が楽しみだ。


第98回
山本秀夫  Hideo Yamamoto
山本秀夫 山本秀夫さんから現在松屋の日本デザインコミッティーで開催中「断面A-A 山本秀夫のプロダクトデザイン」のご案内状をいただいた。記憶は薄れたが最初にお会いしたのは十数年前だったと思う。改めて、今回紹介するデザインを見るとその熟成度に驚いた。無印のものなど日常気がつかず使用しているものも多かったのだが、ぶれのないフォルム、醸し出す存在感はプロ中のプロの仕事である。今回の展覧会担当の佐藤卓さんは「優れたプロダクトは、多くの意味が美しい断面に集約されています。」と書かれているようにフォルムの断面は図面以上に細部をさらけ出すことである。その度量と自信が成熟したデザイナー山本秀夫さんの存在感そのものである。今月16日まで開催さているので是非、足を運んで欲しい。


第97回
富田一彦  Kazuhiko Tomita
富田一彦 富田さんとは1月末パリのメゾンの会場でお会いした。デザインはモローゾ等サローネで何度も見ていたので初対面の気がしなかった。同時に富田さんの人柄が大陸的、ストレートなトークであっても嫌味がない。とても気持ちの良い方だ。さて、肝心のデザインは大らかなフォルム、ユニークな表情、生き物みたいな感覚、富田さんの気持ちを反映した分子がデザインワールドを形成している。最近感心するのは、イタリアの中小企業から日本の中小企業まで、これからデザインによって成長していくであろう企業に対して意欲的に協力している点である。その背景には、14年ミラノに住み著しい環境変化を生き抜いている強さがどこかにあるのではないかと想像する。私たちが魅せられたイタリアデザインを作った巨匠がだんだん少なくなり、ユーロによってかつての特色が薄くなっているミラノ。行動派の富田さんだけに新たなデザインの現場を求めても良い時期に来ている。


第96回
山本 章  Akira Yamamoto
山本 章 山本章さんへ本コーナーの登場を依頼し許諾を頂くのに約2年の時間を要した。本人曰く「まだ発表するほどデザインが揃っていない」という理由であった。僕はモダンデザインが好きで、特に50-60年代のイタリアデザインが好きだ。山本さんのデザインは、古きイタリアデザインの様にちょっとクールだが、なにかほっとする味わいを感じさせる。同時に99年より渡辺力氏と協働し、二人の会話によって時計からスツールまでコラボデザインが世に送り出されている。嬉しい限りだ。渡辺力氏は、かって実践していた「デザインの質」を再現すべく、山本氏にさまざまな注文を出す。この注文に応えるべき丁寧な作業が進められている。世の中はスピード社会だが、こんなスローな世界を実際に見ると安心する。そして微笑ましい。デザインに心を注入する渡辺力氏の真摯な姿勢は、間違いなく山本章氏へ継承されることだろう。


第23回
水 ともこ  Tomoko Mizu
水 ともこ 07年最初のデザイナーは、水ともこさんのデータを更新することにしました。23回目に紹介してからすでに6年が経過しました。前回のデザインと今回のデザインを比較すると、やはりデザイナーとしての成長が感じられる。月日は人を育て、人を成熟させる。同時にどんな環境で、何に悩み、何に刺激され、何を目標としてきたか、その人間性が反映される。水さんの周りには、アンドレア・ブランジを初め偉大なデザイナーがたくさんいる。また、イタリアの経済不況、産業変革のど真ん中でデザイン活動は大変難しく局面に直面している。しかし、水さんには、ミラノで20年実践している強さがある。また、アクリル樹脂の可能性を引き出すデザイントライアルによって、水デザインの安定感が増した。こうした軸が定まったことによって、それ以後の周辺デザインに良い効果が出始めている。もともと馬力のある方だけにまだまだ突き詰めて欲しい。


第95回
渋谷哲男  Tetsuo Shibuya
渋谷哲男 一見物静かなデザイナーだが、今回紹介するデザインの数々にデザイナー渋谷哲男さんのセンスが滲み出ている。あまり多くを語ったことはないが、ずぅーと富山のデザインコンペの常連であり、上位入賞者である。すでにデザイナーとして第二コーナーを走っている。これからがデザイナー渋谷哲男としての存在を示し、試される場になる。身体を鍛錬していないとその差が歴然と出る時期である。しかし、日常性の観察眼と構成力、デザインに込められたユーモアのセンスも悪くない。アッシュのヒット商品「TUBE DOOR STOPPER」ほか、今年の富山の準とやまデザイン賞作「Drop」などを見ると期待できる。日常性のデザインといった視点で、新たな可能性を見せてくれそうな逸材だ。


第94回
石上純也  Junya Ishigami
石上純也 石上さんは建築界のホープである。先日、乾久美子さんにお会いしたら「彼は天才だから!」と評していた。そうなんだと思い改めて石上建築、デザインを見直した次第である。2005年に開催したミラノサローネのLEXUSプロジェクトを04年の秋、妹島和世さんに依頼しに行った。その時妹島さんから紹介を受けたのが石上純也さんである。それからというもの当時池尻にあった彼のスタジオに通い続けた。その理由は、新たな提案やリクエストに対して、「ちょっと実験してみないと」と言うのが石上さんの口癖だったからだ。発砲モデルや霧発生の実験、照明実験等々あらゆることを体験した。けっしてコンピュータだけに頼らない、強い精神力と丹念な構築に石上スタイルが貫かれていた。それは何時しか当然の行為となり、関係者一同魔法にかけられた状態を称して石上マジックと呼ばれた。特に好きなデザインは、極小の構造計算上成立しているテーブルや発砲を硬質化し表面にレース加工した椅子など、きわどく成立している関係性の美に魅了された次第である。


第93回
合川通子  Michiko Aikawa
合川通子 合川さんはバイオグラフィーに記載されているように東京・品川にある原美術館の運営に長く携わった方である。それも学芸員ではなく、デザイナーという立場で美術館に集積する様々なアートやデザインをビジュアルコミュニケーション化した実績を持つ。独立後も美術館やそこで行われる展覧会を軸にデザイン活動を続けている。合川さんのような専門領域を独自なスタイルで活動しているデザイナーを私は知らない。海外ではオランダのトニックなど数名のデザイナーが思い浮かぶ。さて、私が最も合川さんを買う理由は、何時も絶えることがない笑顔である。展覧会をつくるプロセスは、緊張と重労働な毎日である。この合川さんの明るさに助けられた美術関係者は多いと推測する。今後も美術館を中心にミュージアムグッズのデザインやコミュニケーションデザインにまた新たな展開を見せて欲しい。


第92回
磯野梨影  Rie Isono
磯野梨影 磯野梨影さんのデザインを拝見して、四肢が爪の先までまっすぐ伸びたさわやかなデザイナーに出会った、そんな爽快な気分(余韻)が残る。どのデザインからもポジティブな指向が見てとれる。複眼的にデザインを作り上げていく能力に長けている人だとお見受けした。ソニー在席時に担当した「Beans Walkman」や退社後英国で所属したPSDでの「Swatch Twinphone」などに、磯野デザインの指向が顕在化してる。さらに成長を助長しているのは、生活者の視点ではないかと思う。カラフルな色や素材の織り成す磯野ワールドは、実生活と乖離しない強さの現われなのかもしれない。今年の夏、私の所属する富山県総合デザインセンター主催のガラスのワークショップに参加していただいた。この時に製作したデザインの内外の評価は高く、やがて市場に出回る可能性が高い。


第91回
森 豊史  Toyoshi Mori
森 豊史 非常勤で勤務している富山県総合デザインセンターからクルマで15分ほどの場所にタカタレムノスはある。今回紹介する森豊史さんが務める会社である。川崎和男さんのデザインクロック以降、この分野ではパイオニア的役割を果たしている。この会社のデザイン部門をまとめているのが森さんである。森さんのデザインは、この1〜2年で飛躍的に上手くなった。例えるなら長いトンネルから抜けた感じがする。地域のリソースをうまく引き出したり、他のクリエーターとのコラボレーション等々、まとめ方が充実した。力の抜けぐわいがとても良い。英国のコンランで採用された「Da+R(デザインアレイ・リボーン)」は、特に好きなデザインである。デザインは生き物であるが、同時に作り出すデザイナーも生き物である。そんな成長というか、時間軸でしっかりデザイナーを見続けることが大切であることを改めて知った一人である。本職の建築にも再チャレンジしているようなので、こちらでの成果も期待したい。


第90回
Ranch Box (中西仁史、滝波智津子)   Ranch Box(Hitoshi Nakanishi, Chizuko Takinami)
Ranch Box (中西仁史、滝波智津子) 04年8月、お台場で開催されたGマークの展示会でランチボックスの中西仁史さんと滝波智津子さんにお会いした。日常の道具に遊び心を取り入れたデザインが特徴の若いユニットであった。お二人のデザインを最初に目にしたのは、04年のサローネサテリテである。このユニットは、明るく、伸びやかでフレッシュな香りがするが、実際は試行錯誤の連続に違いない。今回、改めてデザインを拝見すると照明のデザインが圧倒的に多い。照明デザイナーと言えば直ぐにドイツ人のインゴ・マウラーを思い出す。私の知る限り20年間インゴを越えるデザイナーは出ていない。豊かで自由なクリエィティビティの持ち主のインゴは、この若いユニットには格好の目標地であると思う。いずれインゴ・マウラーを越える存在になってほしい。


第89回
GIBA (清水慶太、平社直樹、大城健作)   GIBA(Keita Shimizu, Naoki Hirakoso, Oshiro Kensaku)
GIBA(清水慶太、平社直樹、大城健作) 今年のミラノサローネでの収穫の一つがサテリテに出品していたGIBAとの出会いであった。デザイナーは、清水慶太、平社直樹、大城健作の三人からなる。この三人は、すでに卓越したデザインスキルを持つ。今回紹介するデザインは、キャリアを越えた発想とまとまりを感じる。また、送られてきた資料を見るとそれぞれが独立した仕事を持ち、目標を設定している。メンバーの一人清水慶太さんは、ミラノで活動し今年から横浜に活動の場を移した。お父さんをよく知っているだけにさすがカエルの子である。平社直樹さんは、昨年からミラノに拠点を移し活躍中。コンランショップのディスプレイヤーとして勤務するなど経験地が生かされているのを感じる。大城健作さんは、現在ピエロ・リッソーニ氏の事務所に勤務しながら独自の活動も行っている。サローネサテライト "GIBA"展デザインレポート大賞受賞を受賞している。とにかく私はこの三人に期待したい。一作一作妥協のない完成度をもったデザインを実践して欲しい。また、時に三人での共同制作も行って欲しい。nendoの佐藤大さんなども含め、次代を担う三十前後のデザイナーの顔が確認できてきたのが何より心強い。


第88回
ナツメトモミチ   Tomomichi Natsume
ナツメトモミチ ナツメさんは、近藤康夫さんに10年師事し独立。在籍していた期間は、近藤康夫さんがもっとも激しく、そして知恵を駆使しインテリアの領域を拡大していった時期である。当然、その日々の研鑽は今日のナツメさんの基礎となっている。記載された受賞歴をご覧いただければ、業界における期待値が読み取れる。今回紹介するインテリアプロジェクトの数々を見ても極めてバランスの良いアベレージバッターであることがうかがい知ることが出来る。本人にお会いすると、これまた気負いのない自然体の人だ。昨年、富山でのワークショップに参加いただき「ice & fire」と名づけられたデザインが完成した。この時、オリジナリティを作り出すのが難しい素材に取り組むナツメさんを拝見し、新たなエネルギーが芽生えていることを感じた。


第87回
斉藤ダイスケ   Daisuke Saito
斉藤ダイスケ 斉藤ダイスケさんにコンタクトすると「僕はまだ紹介いただくには早いのではないですか?」と控えめな返答。この連載は、私の気になる若きデザイナー(目処としては50歳未満)を紹介していくコーナーだから、と一喝(やさしく)する。気負わず自然体で良質なモノづくりに向かっている点が評価できる。今回紹介する「earth pick」のガラス、セラミックは特に好きだ。大地と一体となったデザインは、やさしく存在感を醸し出す。同時にどんな人が作っているのか知りたくなるデザインだ。本人が自覚するようにまだ、若い。こんなスケールでモノづくりに邁進していくと10年後は、さらに楽しみな存在になっているであろう。


第86回
金山元太+金山千恵   Genta Kanayama+Chie Kanayama
金山元太+金山千恵 アッシュコンセプトの名児耶さんが好む、創意工夫が感じられ、楽しいデザインを提供してくれるユニットをご紹介したい。物心ついたころから身近にあった風呂敷を見事なまでに現代「FUROSHIKI-BAG」に仕立て直した金山元太さん、千恵さんのコンビだ。「世界遺産」など良質なテレビ番組の放送作家として知られる小山薫堂さんが手がける金曜深夜の「デザインパラダイス」ではないが、クラシックなかたちをリ・デザインすることによって、まったく新しい価値を作り上げている点は見事だ。身の回りの何気ないモノをフォーカスする観察眼、仕立てのセンスもほど良い。そんなことを考えていたら「POP-UP-SLPPER」という新製品が登場した。「名児耶さん試してみるから一足欲しい」「良ければ買うから」「悪いわけないだろー」また、話のネタデザインが生まれた。


第85回
caro  山口英文 Hidebumi Yamaguchi(左)、折山優子 Yuko Oriyama(右)
caro 昨年のミラノサローネサテリテ会場で初めてお目にかかった。一つ一つは特徴があり、どこかエッジの利いたデザインなのだけれど、ブースとしてのまとまりがない。そのことを初対面ではあったが、お二人にお話した。多くの日本人デザイナーが必ず間違うのは、目いっぱい縁日の露店の様に風呂敷を広げてしまうことだ。こんなに情報が溢れ、速度が速い時代に引っかかってくれるのは、時間を持て余している人だけである。ビジネスマッチングの場であるサテリテは、いかに経営者の目に留まるかである。その為には、一つのデザインに特化したミニマル展示にするか、一つのデザインを空間全部を使って表現化するかどちらかである。今回、紹介するデザインでもお分かりのように、このユニットは大きく飛躍する質量を持っている。次回お会いするときは、頭の中に収めているビジョンを鋭く聞き出してみたい。チャンピオンを夢見るボクサーの様に前に向かうとする闘志を感じる。


第84回
馬場威彰   Noriaki Baba
馬場威彰 友人のアッシュ・コンセプトの名児耶秀美さんは、雪眼鏡を取り出しては「雪の結晶って知っている?これで覗けるんだ」とまるで子供のようにはしゃぐ。名児耶さんと話していると、デザインて楽しいものなんだと実感する。この雪眼鏡をデザインしたのは、馬場威彰さんである。馬場さんの存在を知ったのは、2002年の富山のデザインコンペティションの応募作品「flashbulb」の時である。このデザインに関して、次の様な解説が綴られている。「誰もが共通認識として記憶する電球の回転動作をそのまま鉛筆削りの使用行為に置換え、削る行為と削った後に生まれる“閃き”の要素を形にした鉛筆削りです。」この一文だけでこの人の潜在的な能力を感じ取ることができる。その後、様々な機会で馬場さんのデザインと遭遇するが繊細な観察眼、高度な想像力に溢れている。決して受け狙いのデザインはしない頑固な人である。これから大きく躍進する一人として注目している。


第83回
Design ship TORA (代表 中嶋尚孝)  Design ship TORA
Design ship TORA(代表 中嶋尚孝) Design ship TORAは、福岡デザイン専門学校で教壇に立つ中嶋尚孝さんを代表に集まった学生ユニットである。主に国内のデザインコンペティションに参画し、そのスキルアップを続けてきた。たった五年間でデザイン界の最前線に立ちえる潜在的なパワーを構築した(受賞暦参照)。しかも学生中心のユニットである。私は、このユニットを高く評価している。その理由は、固定の枠にはまらない豊かな才能(オリジナリティ)である。先日福岡県のデザインコンペの審査委員に招聘された際、学校を訪れメンバーの皆さんに今後の戦略をお話した。それはミラノサローネに出品し世界のジャーナリストやイタリアの企業経営者の皆さんの評価受けること。次にDesign ship TORAを学生ユニットから脱皮してビジネスユニットにすることの二点である。これまでのインハウスの流れではなく、独立ユニットとして新たな流れを作り上げて欲しい。その為の協力は惜しまないつもりだ。


第17回
伊藤 節  Setsu Ito
伊藤 節 先月、伊藤志信さんを紹介したところ、パートナーの伊藤節の掲載作品の更新を要請された。二人のデザインは、パートナーシップで活動されているので多少だかぶるがご容赦願いたい。節デザインは白紙に描く一本の線が重なり合って、おおらかな新たなカタチを生みす。デザインにとって、無理のない造形力がベースであることを改めて知る。反面マスプロダクションでは、この造形を具現化させるには金型との戦いが始まることを意味する。以前、節さんのスタジオに伺った時、カタチを生み出す為に鋳物の湯口をどのように設計したか熱心に話されたことを思い出した。キャリアに裏づけされた実践力は、デザインの可能性の追求と具現化に向けた取り組みに集中している。


第82回
伊藤志信  Shinobu Ito
伊藤志信 伊藤志信さんはパートナーの節さんとミラノを拠点に意欲的な活動をされている。特に最近のデザイン活動は冴えている。目が離せない。もともと企画力、造形力を持つ節さんと、感性が豊かでさまざまな可能性を客観的に見出す観察眼に長けた志信さんは、絶妙なパートナーシップといえる。節さんが引くおおらかなライン(造形)に志信さんは新たな意味や価値を付加する。結果として、時にエドラ社のソファー「AU」のように大胆なフォルムが誕生し、時に RITZENHOFF社のシャンパングラス「Peals」のように繊細な フォルムが誕生す る。今回、あらためて二人のデザインを見てみると、どちらか一方がいなくては成しえなかったデザインという印象を濃くした。今後もシナジー的展開を期待したい。
話は変わるが、二人が結婚式の時に撮影した写真(さまざまな場所でポーズをとった)を見せていただいたことがある。イタリアでは結婚式の大切な行事である。この写真の印象が絵画のように脳裏にしっかり焼きついている。イタリアに根付いたふたりだけに古典的な味を生かしつつチャレンジャーとして新たなデザイントレンドを作り上げて欲しい。


第81回
橋本 潤  Jun Hashimoto
橋本 潤 1981年にスタジオ80を設立以来、日本のデザイン界の顔として商・住空間から家具、工業デザインから地域開発まで幅広い活躍されてきた内田繁さん(現・内田デザイン研究所代表)の門をたたいて、橋本さんは10年の歳月が経とうとしている。仕事は、現スタジオ80代表の西岡徹さんのもとで住空間のプロジェクトを担当してきた。その合間をぬって、家具デザイン等、個人のスキルアップの機会にも恵まれ、ミラノサローネ、東京デザイナーズウィーク等で発表してきた。さて、これからである。幸いボスの西岡さんのキャラクターは最高。胸を駆りながらもプロジェクトにまい進できる。同時に若きスタッフの良き手本にならなくてはならない。担当しているプロジェクトのバランス感覚には特別注文はない。家具では、さらにチャレンジャーとして先輩諸氏をビックリさせるような荒々しさ(新境地)を見せて欲しい。



 このページは、第81回から第100回までの20人のインデックスです。
第1回〜第20回
第21回〜第40回
第41回〜第60回
第61回〜第80回
第81回〜第100回
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