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 ウェブスカイドア 現代篇
 



荒木珠奈
Araki Tamana


【略歴】
1992
  武蔵野美術大学 短期大学部美術科 専攻科修了
メキシコ留学 UNAM自治州立大学美術科にて、外国人聴講生として在学、油画、銅版画を学ぶ
1997
  武蔵野美術大学油絵学科版画コース卒業

【個展】
1994
  “Caja de Grabados”(メキシコ)
1996
  “旅・El Viaje”(ギャラリーアート倉庫/東京)
1997
  “旅のつづき”(「a’s」 gallery art sokocellar/東京)
“痛みを縫い取る”(「a’s」 gallery art sokocellar/東京)
“焦がれた跡”(ギャラリイK /東京)
1998
  “手の中の珠”(「a’s」 gallery art sokocellar/東京)
“夜に行く舟”(ギャラリーアート倉庫/東京)
1999
  “うち”(Gallery Jin/東京)
“銅版画展”(Za Gallery/東京)
“昼の朱、夜の朱”(松明堂ギャラリー/東京)
“落ちてきた 空の底”(GALLERY IDEA/東京)
2000
  “遠くで永く”(フォーラム・エキジビション・スペース/東京)
“手紙の届く日”(Za Gallery/京都,G.Hギャラリー/東京)
“銅版画展”(Tea&Gallery 花影抄/東京)
“途中の森”(Gallery Jin/東京)
2001
  “バス道”(松明堂ギャラリー/東京)
“サーカス前夜”(Tea&Gallery 花影抄/東京)
“Inner CIRCUS”(プラスマイナスギャラリー/東京)
2002
  “銅版画展”(Za Gallery/京都)
2003
  “Evoke under a circle”(ギャラリーブリキ星/東京)
“銅版画展・絵空事”(Tea&Gallery 花影抄/東京)
2004
  “地下の海”(松明堂ギャラリー/小平,アートスペース虹/京都)

2004〜2005年
  ポーラ美術振興財団在外研修生として、メキシコにて研修 中 2005年春公開予定映画、竹中直人監督作品「サヨナラCOLOR」の中で、ランプ を制作)

「夜に行く舟」
1998年

「うち」
1999年

「遠くで永く」
2000年

「途中の森」
2000年

「Evoke under a circle」
2003年

「白い仔達」
2002年

「湖のよる」

「地下の海」
2004年
旅の途上

珠奈さんの作品のなかには、いつも風が吹いている、という気がする。実際、最近のインスタレーション「地下の海」では、幾重にも垂れ下げられた半透明の青い布が、人工的に起こされた微風によって揺らめき、たゆたうことによって、海そのもののエッセンスがあらわされていたのだが、――ここで言いたかったのはもちろんそんな事ではなくて、むしろ「地下の海」においては、実際の風がけっして心のなかに吹く風の邪魔をすることなく、それらが両立していたということが、この作品の美点に数えられるべきなのだろう。具体化された作品の視覚的なあざやかさと、それが一瞬にして観客の想像力の翼をひろげて観念上の海へと誘う、そうした要素が同時にあるところが、作品を観る者をとても豊かに満たしてくれる所以なのである。 珠奈さんの作品の風通しがすごくいいように思える、そうした印象の理由は、おそらく、それらが理論や主題やコンセプトや、といったものにあまり拘泥せず、作者のあらわしたいヴィジョンや心情を、そのまま自然に提出したもののようにみえるからだ。もちろん、全体をつなぐテーマ性は、みようとすればみえてくる。作品を吹く風が運んでくるものは、旅、舟、道、椅子、家、故郷……といったものであり、それらは一見ありふれたもので、どこの地域や民族にも偏在するヴィジョンや観念であるのかもしれない。しかしそれらはありふれているからこそ、誰の心にも沁み、観客それぞれの人なりの物語を紡がせるのだし、作者は、それらのヴィジョンを新しくあざやかに提出する方法を充分に知っているのだ。小さな椅子をつるす、あるいは作品の入っている箱を開ける、という、ささやかな観客参加型の試みも、観るひとそれぞれの物語を紡がせるための方法なのだろう。 それと、珠奈さんはインスタレーションと並行して版画も制作していて、これがまた、すごくいい。たぶん、版画のイメージとインスタレーションのヴィジョンとが往還しているところが、彼女の作品をより豊かに膨らませているにちがいない。イメージの往復と交錯。これらの作品に登場するものたちは、世界と人生という広大な土地のうえにあって、みな、どこか旅の途上にあるような感じがする。

〜 倉林 靖/美術評論家